短期から住み込みまで。農業バイトの仕事と働き先の農家の選び方

農業バイト、あなたに最適な種類をご紹介

トラクターに乗って農業をする

(出典) photo-ac.com

このページにたどり着いたってことは、「バイトで農業するのもありかな」って思っていますよね。そう思った理由はなんですか?

将来の夢は農家だから? 大自然のなかでのんびり働けそう? それとも体を動かしたいから? 当然、おカネですか?

農業バイトといっても、働く場所や作業内容ごとに、いろんな特徴があります。ふだん農業に関わりのない人が自分にあった内容のバイトを選ぶのは大変です。

そこで、農業バイトに興味を持った理由別に、あなたにぴったりの職場をご紹介しましょう。

将来の夢は農家、という人にオススメなのは?

農作業

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すでに新規に就農する意思が固い人は農業大学校(各都道府県が設置する農業に関する専修学校)に通って知識を身につける手もあるのですが、まだ本格的に決心がつかないなら、バイトで農家の仕事に触れてみて、現実を知ったうえで進路を決めるのがよさそうです。

農業バイトでは、夏休みなどを利用しての短期の住み込みバイトに人気が集まりやすいのですが、農業志望者にまずオススメしたいのは「通いの単発バイト」。そのなかでも「四季を通じて様々な作業に声をかけてもらえる」状態を目指すことです。

というのも、短期の住み込みバイトは、収穫作業がメイン。野菜の種類は違っても、作物を刈り取って収穫し、ダンボールに詰めてトラックに載せる作業の繰り返しが基本です。それも農作業のひとつの場面ですが、他の仕事を担当させてもらうことは難しいので、「農業をひととおり実感」みたいな状態とはちょっと違います。

さらに、収穫は多くのバイトが一斉に作業するので、頑張って働いても農家の人の記憶に残りづらいのが難点です。「頑張るヤツ」「できるヤツ」として顔をおぼえてもらって、小さな仕事でもちょくちょく呼んでもらえれば、経験を積むことができて農業をリアルに実感できるんじゃないでしょうか。そういう点からも、大量募集の時期や案件を避けて、単発バイトからはじめるのがよさそうです。

ただし、単発バイトは短期の住み込みバイトと違って案件が少ない場合もあるので、求人を探しにくいこともあるかもしれません。そんなときは、地域の農協や自治体(市町村)に事情を説明してバイト先の農家を紹介してもらうという手があります。最近は新規就農者を探している自治体や、農家の人手不足の支援に取り組む自治体も多いので、よろこんで相談に乗ってもらえるはずです。

ちなみに、会社形態の農園などでは、見込みのある若者をバイトから昇格させることもあると聞きます。バイト先として会社形態の農園を探すのもいいかもしれませんね。

休暇中、大自然のなかでバイトして稼ぎたいという人には?

田園風景

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「休暇中に自然に囲まれた環境でバイトしたい」「非日常を感じながらリゾートバイトっぽく稼ぎたい」という人は、住み込みながら働ける短期の農業バイトを選ぶと希望を叶えられるかもしれません。

たとえば、夏に募集が多い住み込み農業バイトとして「高原レタスの収穫」があります。高原レタスの産地は涼しい気候の土地が多く温泉に近い場所もあるので、場所的にはリゾートの要素があるともいえそうです。

とはいえ、あまり優雅なバイト生活を期待するのは考えものです。野菜は旬を逃すと出荷できなくなるので、一気に出荷作業を終えなければなりません。つまり、収穫時期を逃さないために、天候が悪くても、夜になっても、ギリギリまでスケジュールを詰めて作業するのです。収穫済みの野菜を入れたダンボールは重く、筋肉痛に過密スケジュールによる睡眠不足もあいまって、期間満了前に多くのバイトが辞めていくといったことも。辞めた人の仕事は残りのバイトでカバーするので余計重労働に。そんなハードな肉体労働のおかげで休日は体を休めることで精一杯になってしまい、リゾート気分どころではなかったという経験者も多くいます。

しかも、じつは農業には「自然に囲まれる」的な要素はそんなにありません。売り物になる野菜を育てている以上、畑は人工的に開墾されて整備されています。野菜の一大産地だと見渡す限り畑とビニールハウスばかりで、「すごく遠くに見えるのは山と林かな?」という程度のところも。

労働環境で「こんなはずじゃなかった…」という状態を防ぐには、個々の農家の評判よりもバイト先の「地域」の評判をよく調べることです。農家同士の結びつきが強い地域では、ルバイトの扱いが各農家で似通ってしまう傾向があるからです。たとえば高原レタスは収穫を短期間に行うため毎年多くの産地で短期バイトを募集しているのですが、「××村は労働時間が長くて仕事がキツい。期間前に辞める人が多いので、残ったバイトの負担が重い」「◯◯村はアットホームで、仕事後に温泉チケットをくれる」など、地域によって労働環境にかなり差があるのだとか。

ただし、再度強調したいのは農業バイトはかなりの肉体労働だということ。日常的に体を動かしていない人にとっては、どんなに素晴らしい労働環境でもリゾート気分どころではなくなってしまう可能性が高いのです。体を鍛えて出直すか、最初はそんなもんだと割り切ってリゾート気分は2回目からのお楽しみにしましょう。

体を鍛えたい!筋肉がほしい!という人に向くのは?

野菜を詰めた段ボール

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農作業は体を動かすことも多いので、体を鍛えるいいチャンスです。実際に、農業バイトをはじめてから筋肉がついてキレキレの体を手に入れたという経験者の声も聞きます。筋肉目的で農業バイトを選んだ人は、なかなかいいところに目をつけたんじゃないでしょうか。

農業バイトのなかでも、さらにあなたの筋肉増強を加速させそうな職場、それは「キャベツ農家」「スイカ農家」そして「白菜農家」です。担当業務は「収穫作業」や「収穫物を入れたダンボールの積み込み」を志願すべき。そして、住み込みの短期バイトがオススメです。

数ある農作物のなかでもキャベツ・スイカ・白菜をオススメするのは、ズバリ「重い」から。これらは野菜のなかでも水分量が多いため、体積あたりの重量が重いのです。ちなみに、レタスは体積のわりに軽いので筋肉づくりには不向きです。普段はせいぜい一個くらいしか持たないからわからないかもしれませんが、キャベツだと出荷用ダンボール1箱で8kgから10kgくらいになります。

「なんだよ軽いじゃん、そんなんじゃ俺の筋肉には役不足なんだよ」と思うかもしれないけれど、見切りをつけるのはまだ早い。たとえば、日本で1・2を争うキャベツの生産地である愛知県では、農家1戸あたりの平均耕作面積は93a(アール、100a=1ha=10,000平方メートル)です。イメージしやすいよう坪数に換算すると約2,800坪になります。ちなみに、これでも耕作面積は全国平均より狭いくらいです。ここに、全国平均の夏秋キャベツの10aあたり収量4,440kgをかけると、一戸あたり9.3×4,440=41,292kg。すなわち41トン以上の収穫量になります。そして10kg入る箱が4,100個以上。ひとりで全部運ぶつもりで自分を追い込め!耕地全部キャベツなの?とか、何人かで手分けするんでしょ?なんていう疑問もあるかもしれませんが、そんな雑念は捨てましょう。

「ダンボール運びって上半身でしょ、下半身メインに鍛えたいんだけど」という人にも朗報があります。雨の日の収穫作業は下半身の筋肉をいじめ抜くのに最高らしいんです。野菜を元気に育てるには、若干空気が含まれたふわふわした感じの土がよいとされます。耕す、という行為には土に空気を含ませる意味もあるんです。そんなふわふわの土に雨が降ったらどうなるか。当然、硬い土よりもかなりぬかるんでドロドロ、足場は最悪になります。その最悪の足場のなかを、前述の10kgの出荷用ダンボールを2・3個積み重ね、農道に待機しているトラックまで運ぶのです。さて、ここで先ほどの愛知のキャベツ農家の1戸あたり平均耕作面積93aをキリよく100a=1ha=10,000平方メートルと考え、耕作地が正方形と仮定すると、その一辺の長さは100m。つまり、トラックが土地の一辺にしか待機していない場合、ドロドロにぬかるんだ畑の中を20kgの箱を抱えて100m×何往復もしなければいけない可能性が。対角線上ならもっと長くなるのかもしれませんが、もう計算しているだけでも筋肉痛になりそうなので、この辺で止めておきます。とにかく、重たい荷物を持ちつつ結構な距離を歩かされるので、足腰が鍛えられるんじゃないでしょうか。

ちなみに、出荷スケジュールは農協単位であらかじめ決まっていることが多く、葉物野菜は収穫日をズラすとみるみる痛みだすため、雨が降ったくらいでは収穫は延期されません。安心ですね。

最後に、筋トレ目的の人に住み込みの短期バイトをオススメした理由を2つ挙げておきましょう。

1つめは、短期バイトに多い住み込みなら、ストイックに自分を追い込んで体を仕上げるのに最適だから。酒を飲みながら夜更かしみたいな生活とはおさらばできます。さらに、複数のバイト仲間がいることが多いので、ハードなトレーニング(仕事)に心が折れそうになっても、仲間の手前、心理的に逃げ出しづらいんじゃないでしょうか。意思弱めの人にもオススメです。

2つめは、住み込みの収穫作業のバイトを募集するのは耕作面積が大きめの農家が多い傾向にあるから。上で試算した愛知県のキャベツ農家は耕作面積がとくに大きいわけではありません。さらに大規模農家なら、運べるダンボールの数と運べる距離が増えて筋肉もさらに増えるんじゃないでしょうか。

ちなみに関東近郊のキャベツ産地としては、群馬・千葉・神奈川の三浦半島などがあります。どうしても住み込みのハードルが高いという人は、まずは居住地に近い産地で単発バイトをすることから始めてみるのもいいかもしれませんね。

効率的に稼ぎたいなら農業バイトは不向き、それでもやるなら?

農業体験をする男女

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「バイトといったらとにかくお金!効率的に稼ぎたい!」という人は、農業バイトではなかなか難しいようです。残念ながら農業バイトは時給や給与が低い傾向にありますし、効率的に稼げるともいえません。

地方の農家は最低賃金が抑えられています。住み込みバイトなら期間中の食費や勤務地までの交通費で収支マイナスなんてことにもなりかねないのです。

さらに、農業は時間外労働・休日出勤・深夜労働などをしても割増賃金を支払ってくれるとは限りません(労働基準法の一部適用除外業種、労基法37条の適用除外)。にもかかわらず、収穫作業なんかは深夜にやることもありますし、天候によっては急遽作業が発生することも。コンビニバイトのノリでウッキウキで深夜作業をしたら通常時給のみ、なんてことになったら泣きたくなるはずです。

給与や金銭という観点から最も気をつけたいのは、「有償ボランティア」の名目で求人しているケースがあることです。作業内容は事実上バイトと変わらないのですが、あくまでボランティアに来てくれた人にお礼をするという建前なので、最低賃金が問題になりません。つまり、時給換算すると最低賃金以下のお金しか手に入らないことも。

ここまで読んでもまだ、稼ぎと農業バイトを両立したいという人もいるかもしれないのでアドバイスを。

「稼ぐ」という観点からは、有償ボランティアという求人は避けたほうがよいでしょう。基本的にはボランティアとなり、一日働いて3,000円、みたいな世界です。時給高めの農業バイトを探すのであれば、都市近郊でのバイトでしょうか。場所柄、最低賃金は高めです。また、果樹や花、高原レタスの農家は比較的時給が高めという声もあります。これらの作物の市場価格は高めなので利益を載せやすく、バイトにも還元しやすいということが関係していそうです。市場価格が高めの作物の農家で募集しているバイトを探すのも手かもしれません。

求人の見つけ方と履歴書・面接のポイント

履歴書とペン

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求人の見つけ方

求人サイトでの募集もありますが、各市町村の農政課や農協も農家の求人を取りまとめて窓口になっています。地域の農業の現状や労働条件について率直に聞くことができるので、働きたい地域が決まっているのなら、自治体や農協の窓口に問い合わせてみるのがオススメです。

求人票はよく確認して、労働条件や賃金などをチェックしておきましょう。有償ボランティアなのかバイトなのかや、時間外の割増賃金は出るのか、短期の住み込みバイトでは契約期間前にリタイアした場合に交通費が全額支給されるのか、などを重点的に確認しておきたいところです。

応募書類や面接のポイント

いくつかの職種でバイト経験のある人でも、農家が注目する履歴書や面接のポイントなんて想像つかないよ、という人もいるかもしれないのでそのあたりの解説を。

結論から言うと、履歴書や面接はごく常識的な内容で問題ありません。

履歴書の志望動機は「食べ物の作られる現場で働いてみたい」とか「野菜が好きなので」といったところでOKです。

面接時の服装は、ジーンズなどのカジュアルな普段着で問題なかったという人が多いようです。スーツなんて着ていったら、むしろ場違いな感じになりそうな気がしますよね。受け応えについては、周囲と協力して作業できそうかを確認するための面接なので、普通にコミュニケーションができれば大丈夫です。安心しましょう。