行政書士になるには?働くために必要な資格と経験者に聞く勉強法

行政書士の仕事内容

メモをとる男性

(出典) photo-ac.com

行政書士とは

行政書士は「行政書士法」に基づく国家資格者です。官公署に提出する許認可などの申請書類の作成・提出手続き代理などを行います。手続きは煩雑なものが多く、また書類の作成には高度な知識が必要です。こうした業務を専門性の高い行政書士が代理することで、国民の生活上の諸権利や諸利益が守られ、行政においても効率的な処理が保証され公共的利益があることから、行政書士の役割は重要だといえます。

行政書士の役割

行政書士は、国民の生活に密着した法務サービスを公正・誠実に行うことを通じて、国民と行政を結びつけ、国民の生活向上及び社会の繁栄進歩に貢献することを使命としています。具体的には、官公署に提出する書類の作成・提出の手続き代理や遺言書の作成支援、遺産分割協議書の作成、土地や建物の賃貸借の契約書作成、交通事故に関する手続き代理などが行政書士の仕事です。

具体的な仕事内容

前述した業務以外にも、行政書士はさまざまな仕事を請け負います。主な仕事の内容は以下の通りです。

  • 官公署に提出する建設業許可・古物商許可・飲食業許可など許認可に関する書類作成と手続き代理
  • 自動車登録・車庫証明・運送事業許可など自動車に関する手続き代理
  • 在留資格認定証明書交付申請・永住許可申請などの外国人の手続き代理
  • 株式会社などの法人の設立手続きとその代理(法務局への会社設立登記手続きは除く)
  • 文化庁への著作権登録申請業務代理、電子申請・電子調達手続き代理

このように多くの仕事を担う行政書士は、人々が暮らしていく中で欠かせない存在といえるでしょう。

出典:
行政書士法
日本行政書士会連合会

行政書士になるには

パソコンを操作する男性

(出典) photo-ac.com

行政書士とは、以下のいずれかに該当する人を指します。

  • 行政書士試験に合格した人
  • 弁護士となる資格を有する人
  • 弁理士となる資格を有する人
  • 公認会計士となる資格を有する人
  • 税理士となる資格を有する人
  • 国または地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間、及び行政執行法人または特定地方独立行政法人の役員または職員として行政事務に相当する事務を担当した期間が通算して20年以上になる人

行政書士試験とは

行政書士試験は年に一度です。試験科目は以下の2つとなります。

「行政書士の業務に関し必要な法令等」憲法、行政法、民法、商法及び基礎法学の中から、択一式及び記述式の形式で出題されます。

「行政書士の業務に関連する一般知識等」政治・経済・社会、情報通信、個人情報保護、文章理解について択一式で出題されます。

行政書士試験合格点

試験に合格するには、以下の条件を全て満たさなければなりません。

「行政書士の業務に関し必要な法令等」の得点が満点の50%以上(122点以上)
「行政書士の業務に関連する一般知識等」の得点が満点の40%以上(24点以上)
試験全体の得点が満点の60%以上(180点以上)

出典:一般社団法人 行政書士試験研究センター

資格保持者が行政書士として働くためには

行政書士として働くためには、行政書士の資格を取るだけでは足りません。行政書士名簿というものに、住所、氏名、生年月日、事務所の名称及び所在地、その他日本行政書士会連合会の会則で定める事項などを登録する必要があります。

これらの手続きは日本行政書士会連合会に対し、所属事務所の所在地(都道府県)に設立されている行政書士会を経由して申請を行う必要があります。

行政書士の働き方

行政書士には大きく分けて2つの働き方があります。ひとつは法人に所属して働く、もうひとつは独立開業して働くという方法です。

前者の場合は、行政書士事務所、行政書士業務を行っている弁護士事務所などへの就職となります。後者の場合は、資格取得後に行政書士事務所などへ就職し、経験を積んだのちに独立することも可能です。また、資格取得後すぐに開業するのもひとつの選択肢となります。

行政書士は大変?

行政書士は、他の士業と比較して廃業率が高いといわれることがあります。

行政書士が資格を生かして報酬を得るためには、「行政書士会」への登録が必須です。ところが行政書士は基本的に独立開業が想定されている職種で、「企業内行政書士」として登録することが認められていません。

税理士や社労士のように「企業で社員として働きながら実績や人脈作りをする」という選択肢がなく、仕事の確保に苦しむケースが多々あります。

また近年は社会全体のデジタル化が進んでおり、行政書士も電子申請・電子調達手続きへの対応が求められるようになってきました。顧客のニーズを満たすにはシステムや電子手続きなどの決まりにも精通する必要があり、行政書士になってからも常に法律や実務に必要な知識を学び続ける必要があります。

経験者アンケートから見る行政書士のホンネ

電話をしながらメモをとる女性

(出典) photo-ac.com

スタンバイでは、実際に行政書士として働いていた人に、「仕事のやりがい」「努力したこと」「将来性」についてインタビューを実施しました。

インタビューの対象者

  • 女性(東京都在住)
  • 実務経験年数:4年

Q1.行政書士に必要な学歴・学部を教えてください(独学での合格は可能?)

私自身は法学部ですが、やはり法学部が最も有利だと思います。学部時代に行政書士の試験に合格する人もいますし、司法試験や公務員試験の練習のために受ける学生も多いです。実際私は学生時代に国家公務員試験の受験経験があり、卒業してから数年後に行政書士試験を受け、合格しました。

独学での合格はもちろん可能だと思います。憲法・民法をきちんと理解できれば、何とかなるはずです。行政法も得点上課題ですが、行政法は考え方というよりある程度暗記で対応できるかと思います。

大学などの教養で法学的なことを学んだことがない方は、一度その考え方をどこかで学んでから勉強すればスムーズだと思います。考え方を知らずにチャレンジすると、おそらく混乱するのではないでしょうか。

Q2.行政書士試験に合格するために努力したことを教えてください

私の場合は公務員試験の勉強をしていたことがあったので、その時の経験を活かしました。行政書士用の勉強としては、試験前に過去問を3年分くらい解きましたが、公務員試験受験時代の問題集には行政書士試験の問題も混ざっていたと思うので、それがそのまま対策になっていました。

他の資格試験と比べると、記述があるというのが多くの方にとって課題だと思いますが、大学の試験で扱われるようなポイントとなる条文を押さえれば、たいていはそれが出るので対応できるはずです。

記述対策には判例百選に出るようなものもおすすめです。ストーリー仕立てで覚えておいて、あとは条文を分割してポイントとなる要件を意識して覚えるというイメージです。

時事問題は残念ながら運だと思います。

Q3.行政書士のやりがいと将来性についてどう思いますか?

IT化が進むにつれ、仕事がなくなるともいわれています。確かに、ただ事務作業を代行するようなイメージでは、食べていけなくなるだろうと感じます。

しかし、これだけ幅広く業務分野を持つ資格はあまりないので、その強みを活かして、コンサルタントとしての力量をつけていくことが求められると思います。その意味では、多種多様な業種に触れられる、とても刺激的な仕事だと感じています。また、政策に左右されることもよくあるので、「代書屋」という側面だけでなく、行政や政治に関する企業コンサルタントでもあるという意識が必要だと思っています。

もちろん、高齢化に伴う問題が多々ある中で、市民法務での活躍も求められています。予防法務といった観点からも、日々他士業と連携しながら、地域の法律家として気軽に相談していただけるような存在であらねばと思っています。