訪問介護員(ホームヘルパー)になるには?仕事内容と全国の求人の傾向を紹介

訪問介護員とは

車いすに乗る高齢女性と介護士

(出典) photo-ac.com

訪問介護員とは、介護を必要とする高齢者や障害者などが、有する能力に応じて自立した生活を送れるように介護を行う職種です。訪問介護員は、ホームヘルパーとも呼ばれます。訪問介護を行うために必要な入門資格であった「ホームヘルパー2級資格」は廃止となり、2013年度から「介護職員初任者研修」に変更されました。

訪問介護員の仕事内容について

訪問介護員の仕事内容は、介護を必要としている利用者の自宅を訪問して介護を行うことです。介護保険法により要介護や要支援と認定された方を対象とします。介護内容は利用者によって異なります。介護内容の計画作成を専門とするケアマネージャー(介護支援専門員)がケアプランを作成し、利用者及び家族と相談して介護内容を決定します。利用者や利用者の家族が希望すれば、ペットの世話や庭の草むしりなど保険適用外のサービスを提供することもあります。手がける支援や介護の種類には次のようなものがあります。

身体介護

利用者の体に直接接触して介助を行います。日常生活動作能力(ADL)や意欲の向上を目指し、専門的知識と技術をもって利用者の日常生活や社会生活の向上に取り組みます。

具体的には、排泄介助、食事介助、健康状況に合わせた専門的な配慮が必要な調理、清拭(体を拭く)、入浴介助(部分浴、全身浴、洗面等)、身体整容(身だしなみ)、更衣介助(着替え)、体位変換、椅子への移乗、移動介助、通院・外出介助など生活に必要な介助を行います。

例えば寝たきりの場合、体位変換は重要な介助です。数時間おきに体の向きや床との接地面を変えないと、血流の悪化から床ずれが生じ、皮膚が壊死して感染症を招くなど、高齢者にとって重大な結果を引き起こすことがあります。その他、起床・就寝介助や服薬介助なども行いますが、利用者の有する能力に応じた自立生活支援を行うことも介護の一環となるため、声掛けや見守りで自立生活をサポートすることもあります。

家事援助

身体介護以外の訪問介護となり、日常生活の援助を行います。利用者や家族が、家事を行うことが困難な場合に行われます。

具体的には、掃除、洗濯、ベッドメイク、衣類の整理や補修、一般的な調理や配膳、買い物や薬の受け取りなどを行います。

掃除の際に介護される人が必要な物を使いやすい場所に戻したり、炊事で相手の好みの味に近づけたりと、思いやりの心が重要です。

医療機関との連携

かかりつけ医や医療機関と連携して、日常生活の様子から健康状態を把握することが重要です。利用者が医療機関に連絡できず、不測の事態が起こらないように、利用者及び医療機関と信頼関係を築くことも重要です。しかしながら現状、利用者の状態を記す介護データと医療データの連携は不十分です。簡単な問題ではありませんが、介護・医療・予防が三位一体となり、利用者のQOL(生活の質の向上)を第一に考えた仕組みが、高齢化社会には必要になってくるでしょう。

家族への指導

利用者の家族に、適切な介護を指導するのも訪問介護員の役目です。また家族や利用者に対する精神的なケアもあわせて行い、訪問介護ができない状況でも、利用者とその家族が快適に暮らすことができるように配慮します。

訪問介護員になるには?

会話をする訪問介護士と高齢女性

(出典) photo-ac.com

自宅を訪問して介護行為を行うためには、介護職員初任者研修を修了する必要があります。介護職員初任者研修の修了認定は、「ホームヘルパー2級」の認定制度廃止に伴って設けられたものです。ホームヘルパー2級の取得者が再度認定を取り直す必要はありませんが、新たに訪問介護員を目指す方は「介護職員初任者研修」を受講することになります。情報サイトの一部では、情報が更新されておらず、必要な資格として「ホームヘルパー2級」と記載している場合もあるので注意が必要です。

なお、旧認定資格の「ホームヘルパー1級」に相当するものとしては「介護職員実務者研修」が設けられました。介護職員初任者研修の次に受講を目指すべき研修です。また資格以上に、「人のために」という福祉の精神や、利用者と信頼関係を築くための思いやりが重要です。介護は人との関わりそのものが仕事となります。人付き合いが苦手であっても、ひとつひとつに真心を込めて介護に取り組みましょう。

介護職員初任者研修の概要

介護職員初任者研修は、受講者の住む都道府県により実施要項の内容が異なります。多くの場合、受講できるのは原則として16歳以上です。講座は各都道府県の認定する民間スクールのほか、一部のハローワークでも受講できます。ハローワークには無料の講座がありますが、無料受講には条件がありますので、ハローワークに問い合わせておくとよいでしょう。受講に必要な期間は、最短の民間スクールであれば1ヶ月程度です。働きながら取得を目指す場合は、3ヶ月から4ヶ月を目安としましょう。座学と演習を修了すると認定されます。働きながらでも修了認定を取得しやすいよう、座学のうち一定の時間数を通信教育によって受講できる民間スクールもあります。自治体によっては修了前にテストが実施され、合格点を取ることで修了認定が得られます。合格点に達しなかった場合は、数時間の補講を受講することで修了認定を受けられます。

訪問介護員のキャリアパス

老夫婦と訪問介護員

(出典) photo-ac.com

高齢化による要介護者人口の増加で、介護職の需要は高まります。2025年には約38万人の介護従事者が不足すると予測されており、介護業界の人手不足は深刻な状況です。訪問介護員が、社会に必要な職種であることは間違いありません。

介護従事者の人手不足を解消するために今後、必要になるのが、介護現場で指導ができるスキルを身につけた「介護福祉士」です。介護福祉士は、介護職員実務者研修の修了者が、より高度な介護における専門性を証明する国家資格となります。2013年に行われた介護関連資格の再整備にあたって、訪問介護員のキャリアパスとして、介護福祉士が推奨されるようになりました。

キャリアパスとしての介護福祉士

介護職員初任者研修を修了して訪問介護員となった人は、介護に関するいわば基礎知識を身につけた状態です。より高度な介護の専門的知見を持っている介護福祉士として、介護現場の指導ができれば、よりよい介護を提供できると考えられます。また、介護業界を新たに目指そうとする人にとっても、指導体制が明確なほうが介護職に対する心理的な敷居も低くなります。そこで新制度では、介護福祉士を介護の現場を牽引する立場として位置づけています。

2017年からは介護福祉士試験の受験資格に介護職員実務者研修修了認定が加えられ、訪問介護員の介護福祉士へのキャリアパスが明確になりました。詳細は未定となりますが、認定介護福祉士という介護福祉士の上級認定制度も検討されています(2017年6月現在)。このように、制度改革により資格の位置づけとキャリアパスが明確化されました。訪問介護員を入り口に介護業界を目指そうという人は、将来のキャリアパスのひとつとして介護福祉士を目指すことを検討してみるのも良いかもしれません。

求人の給与情報から集計した訪問介護員の年収帯

※スタンバイ掲載中の全求人データ(2017年6月時点)から作成

訪問介護員の求人から年収を分析すると、400万円台が34.4%、500万円台が24.2%、300万円台が20.9%と、日本の平均年収に近い値になっています。700万〜800万円以上の求人も存在することから、経験と実績があれば、高い年収を目指すこともできるのかもしれません。

訪問介護員の求人傾向

高齢女性と介護員

(出典) photo-ac.com

訪問介護の求人はパートやアルバイトが比較的多めです。賃金は地域によって異なるほか、担当する介助の内容(身体介護か、家事援助なのかなど)によっても異なります。未経験者でも応募できる求人や、採用先で実践的な介護の研修を受けられることをアピールしている求人もあります。また、介護職員初任者研修の修了認定を応募の必須要件として挙げている求人がほとんどです。