管理栄養士になるには?養成施設の選び方と勤務先ごとの仕事内容

管理栄養士になるには

栄養士の女性

(出典) photo-ac.com

管理栄養士になるには、「管理栄養士国家試験」に合格する必要があります。同試験の受験資格は栄養士に与えられます。つまり「管理栄養士」の資格を取得するには、まず「栄養士」の資格を取得しなければならないのです。

その栄養士資格を取得するには、栄養士養成施設を卒業する必要があります。高校卒業後、「管理栄養士養成施設(4年制)」や「栄養士養成施設(2年制・3年制・4年制の各種あり)」として認定されている大学・短期大学・専門学校で所定の単位を取得して卒業すると、都道府県知事から栄養士として免許を受けられます。免許は、申請さえすれば卒業と同時に無試験で交付してもらうことができます。

無事に栄養士免許を手に入れることができても、すぐに管理栄養士国家試験に挑戦できるとは限りません。「管理栄養士養成施設(4年制)」を修了して栄養士資格を手にした人は卒業後すぐに管理栄養士試験の受験資格を得られます。

一方、「栄養士養成施設」を経て栄養士資格を取得した人は、学校の修業年数と厚生労働省が定める施設での実務経験年数を合算して5年以上(または5年以上の見込み)にならないと、管理栄養士の受験資格をもらえません。

管理栄養士養成施設と栄養士養成施設、選び方のヒント

「管理栄養士養成施設」と「栄養士養成施設」にどのような学校があるかについては、「公益社団法人 日本栄養士会」のサイトで確認できます。それぞれカリキュラムや修業年限、学費、主な就職先などに違いがあるので、管理栄養士として将来どのような働き方を目指すのかという観点から自分に合った学校を選びましょう。

4年制大学は、管理栄養士養成施設に認定されている学校が大半です。ひとくちに管理栄養士養成校といっても、栄養学部系統に養成学科を設置している大学や、家政学部系統に養成学科を設置している大学などが存在し、学部によって専攻内容には大きな違いがあります。

例えば、栄養学部は理系なので、実験や計算を頻繁に行うのが特徴です。実験にかかる教材費などによって学費は高めの大学もありますが、大学院への進学や病院・研究機関への就職を考える場合には科学的な知見が有利に働く可能性もあります。

文系である家政学部系統の学校は、社会的な側面から食の意義を学びたいという人に向いています。さらに、栄養教諭の資格を取れる学校もあるため、学校で働きたい人にも適しています。理系に比べて難易度が若干低めの傾向の学校が多く、入学しやすいのも特徴です。

短期大学には2年制の学校と3年制の学校が存在します。いずれも栄養士養成施設で、管理栄養士養成施設はありません。専攻によってカリキュラムが異なるのは4年制大学と同様です。専門知識を身につけながらも早めに社会に出られるため、早く実務経験を積みたい人は短大の栄養士養成施設への入学を検討してみるとよいかもしれません。

専門学校には2年制と3年制のほか、ごく少数、4年制の学校も存在します。4年制の学校は管理栄養士養成施設です。2年制・3年制は栄養士養成施設に認定されています。専門学校は、栄養士に関する実務や座学に集中したカリキュラムが組まれているのが特徴です。卒業後は栄養士として活躍する人が多く、学校給食の調理員など、早く現場で料理を作るという仕事を専門的に担当したい人に向いています。

学校によっては特定の就職先に強みを持っていることもあるので、卒業生の進路や教員の出身校・出身分野なども調べておくとよいでしょう。

管理栄養士試験の概要

管理栄養士国家試験の概要は下記のとおりです。

・受験資格
管理栄養士養成施設を修了して栄養士免許を取得したか、栄養士養成施設修了後に栄養士免許を取得して修業年数と厚生労働省の定める施設での実務経験年数が合わせて5年以上(または見込み)の人。

具体的な「実務経験」の該当内容については、厚生労働省の定める施設で、献立作成・食品材料の選択・栄養に関する教育・栄養に関する調査研究・栄養行政に関する業務・栄養に関する相談指導・栄養に関する知識の普及向上に携わった場合です。

実務経験を証明するためには、勤務先に実務証明書を発行してもらう必要があります。担当している仕事が実務証明書を発行できる業務内容であるか否かの判断は、最終的に勤務先の考え方による部分が大きいようです。確実に実務証明書を発行してもらうためにも、管理栄養士国家試験を受験するつもりであることを、応募する段階で勤務先に相談しておくとよいでしょう。

なお、パートや非常勤で勤務している場合は、1週間あたり一定以上の時間、勤務している必要があります。

・合格率
2022年に実施された第36回管理栄養士国家試験は、受験者数16,426人に対して合格者は10,692人となり、合格率は65.16%でした。

免許申請と就活

管理栄養士国家試験に合格後、管理栄養士の免許を取得するには各都道府県に対する申請が必要です。

・免許申請
管理栄養士の免許は厚生労働大臣が付与するものですが、申請の事務手続きは申請者の住所所在地の都道府県が担当しています。申請に必要な書類や手続きの方法は都道府県により異なりますが、管理栄養士国家試験の合格証書や栄養士の免許証などは共通して必要になるようです。詳しくは各都道府県に問い合わせてみましょう。

なお、管理栄養士免許の発行には2~3カ月の期間が必要となります。就職活動などで使用する場合には早めに申請しておきましょう。

・就活
取得した管理栄養士資格を生かして就職活動をはじめる場合には、出身の養成校から求人の紹介を受けられます。また、日本栄養士会では、実際の現場で働く人のナマの声を聞けるセミナーを開催しているので、うまく活用すれば挑戦したい業務について具体的なイメージがわくでしょう。

自治体が運営する病院・各種施設や行政関係に就職する場合は、公務員試験を別途受験する必要があるので、各自治体に問い合わせてみましょう。公務員試験の受験にあたっては年齢や実務経験年数によって受験資格の制限が存在することもあるため、注意したいところです。

管理栄養士の仕事とは

調理師の女性

(出典) photo-ac.com

「管理栄養士」は、食と栄養に関する専門的な知識と技術に基づいて、健康な人や病気の人、老齢で食事が取りづらくなった人に対して栄養指導や給食管理・栄養管理を担当します。

仕事内容

管理栄養士の仕事内容は栄養指導や給食管理・栄養管理が中心ですが、勤務先は医療施設・各種福祉施設・介護保険施設・学校・行政機関・民間企業・研究機関など多岐にわたります。各施設を利用する人や集団の年齢やライフステージによって、仕事内容は少しずつ異なっています。

医療施設の管理栄養士

病院や診療所といった医療機関に勤務する管理栄養士は、医療チームの一員として医師や看護師、薬剤師などの職種と協力して働く立場の人です。いまや栄養の摂取についても効果的な医療に不可欠な要素とみなされており、患者1人1人の病状に合わせた食事の提供や栄養の指導を通じて病気の治療や再発防止、合併症の予防を目指します。

学校の管理栄養士

学校に勤務する管理栄養士は、学校給食の献立作成や成長期に必要な栄養素の計算をして、子どもたちに適切な給食を提供するのが役目です。近年では、食生活の改善や食物アレルギー・肥満・糖尿病などに対して個別的な指導を担当することもあります。学校で働く管理栄養士には、子どもの成長をサポートするため、食事や栄養素に関する知識が必要です。

民間企業の管理栄養士

社員食堂や社員寮などに勤務する管理栄養士もいます。食堂で提供する献立を作成するほか、栄養についての正しい情報提供を通じて、働く人の健康づくりをサポートするのが仕事です。若い人からベテランまで幅広い年齢層を対象に、やせすぎや太りぎみなど、個人の課題に合わせた対応が必要となる難しさがあります。

福祉施設の管理栄養士

福祉施設(特別養護老人ホームや障がい者支援施設など)に勤務する管理栄養士は、高齢者や障がい者が快適な生活をおくることができるよう、介護スタッフと協力して1人1人の生活状況や身体の状況を把握し、それぞれの状態に適した食事の提供と栄養管理を行います。

高齢者や障がい者には身体の機能が低下して、食べにくくなることや飲み込みづらくなる人がいるため、少量でも適切な栄養がとれるように献立を工夫しなければなりません。栄養学の知見のほかに、介護福祉士など介護関連の資格を取得すると、施設利用者の背景が理解しやすくなるでしょう。

児童養護施設をはじめとする児童向けの福祉施設に勤務する管理栄養士は、未満児も含めた子どもたちの成長に必要な食事を提供しています。食物アレルギーのある子どもも少なくないため、適切な食事提供には保護者や保育士・医師・看護師との連携が重要です。

行政機関の管理栄養士

都道府県・市町村、保健所・市町村保健センターなどに勤務する管理栄養士は、地域の健康づくり政策の企画・立案を担当するほか、地域住民に向けて食による健康づくりの講座を開いたり、栄養相談を行っています。

研究機関の管理栄養士

国や自治体、大学や企業などの研究室に勤務する管理栄養士は、栄養や食物に関する知見を生かして調査や実験に従事し、健康に役立つ成果物や商品の開発につなげています。アンチエイジング関連の商品のヒットが相次ぐなか、高機能化粧品や美容食品の開発現場で栄養学の知識を持つ管理栄養士が活躍しています。

研究機関に勤務するには、専門学校で学ぶよりも大学・大学院で学位を取得するほうが有利です。さらに、大学によって管理栄養士を養成する過程を置く学部が理系・文系に分かれます。研究機関への就職を考えているなら、理系学部で管理栄養士を目指せる学校のほうが有利になるでしょう。

管理栄養士と似ている仕事(隣接職種との違い)

たくさんの野菜

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管理栄養士と栄養士の違い

管理栄養士資格を取得するための前提となる「栄養士」は、健康的な人を対象に栄養指導や給食指導にあたるのが主な仕事です。

栄養士は実際の調理に携わることが多いのに対し、管理栄養士は栄養などに関する「管理」を重点的に行うことが違いです。さらに栄養士が主に健康な人に向けた指導にあたるのに対し、管理栄養士は病気の人や老齢の人の指導にも従事することも大きな違いでしょう。

また、免許の発行主体が栄養士の場合「都道府県知事」ですが、管理栄養士は「厚生労働大臣」という違いもあります。施設の種類や食事の供給規模などによっては、栄養士または管理栄養士の配置が義務付けられていたり、配置を推奨されたりしている場合があります。

例えば、集団給食施設で1回100食以上を提供する場合には栄養士か管理栄養士が、1日300食以上を提供する場合には管理栄養士の配置が義務付けられています。このような配置義務の違いも、栄養士と管理栄養士が異なる点です。

管理栄養士と調理師の違い

どちらも食に関する国家資格が必要な職業という点では共通しており、さらに「栄養士」は管理栄養士に比べて調理実務を担当することが多いので、調理師と業務が類似する度合いは高いです。

調理師は料理店などで調理するプロであるのに対し、栄養士と管理栄養士は、栄養学に基づいた献立の作成や調理を行う専門家です。

両者の主な違いは、調理師は味覚の観点から食を組み立てるプロであるのに対して、栄養士・管理栄養士は栄養の観点から食を組み立てるプロであるという点にあります。加えて、栄養士・管理栄養士は調理師に比べて食材発注や献立作成にかかるデスクワークも多いという特徴があります。

資格の取得方法も異なり、栄養士・管理栄養士は必ず栄養士養成施設を修了しなければなりませんが、調理師は飲食店での実務経験があれば受験資格を得られるという違いがあります。

薬剤師との協力

医療施設で働く管理栄養士には、薬剤師と協力して働く人も増えています。栄養の摂取や制限が薬物療法と合わせた治療の一環となることもあるためです。治療には、患者の状態に合わせて摂取する成分のきめ細かい調整が必要な場合もあるため、近年は管理栄養士の積極的な医療現場への参入が期待されてるのです。

管理栄養士の年収

※スタンバイ掲載中の全求人データ(2017年6月時点)から作成

厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査」によると、栄養士の平均月給は約24万6,400円です。年間賞与その他特別給与額は60万8,200円となっているため、平均年収は356万5,000円と計算できます(勤続年数約7.7年、平均年齢約35.4歳での数字)。

職種を問わない全国の平均年収が400万円台であるため、平均的な年収と比べてやや少ない傾向といえます。ただし、年収1,000万円以上の求人も存在しており、勤務先によっては高収入を目指すことが可能です。定期昇給が定められている公務員なら、勤続年数が長くなるほど年収は上がっていきます。

管理栄養士の求人傾向

バインダーを手にした白衣の女性

(出典) photo-ac.com

栄養に関するスペシャリストへのニーズは年々高まっており、特に食品関連企業では、消費者窓口や新製品開発の分野で栄養の専門知識を備えたプロフェッショナルが求められています。

大規模給食施設や福祉施設は管理栄養士の設置義務があるため、求人が多い傾向があります。大半の求人では実務経験を不問としており、養成施設を卒業してすぐ管理栄養士になった人もチャレンジしやすいでしょう。

管理栄養士の雇用形態は正社員からパートまでさまざまです。しばらく実務から遠ざかっている場合も、ライフスタイルの変化に合わせて復帰しやすいでしょう。

出典:
厚生労働省「管理栄養士国家試験」
神奈川県「管理栄養士免許申請」
公益社団法人 日本栄養士会「管理栄養士・栄養士養成校案内」
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」

高安ちえ
【監修者】認定栄養ケア・ステーション ラシーネ練馬中村橋 代表管理栄養士高安ちえ

鎌倉女子大学を卒業後、管理栄養士国家資格を取得。食品メーカーでコンビニエンス向け商品の企画開発、営業を経験後、給食委託会社へ転職。給食事業の新規事業立ち上げ、エリアマネージャーを経験後、栄養士としての施設勤務を経て独立。おばんざいカフェ「おはしごはん」の主宰およびレシピ監修、セミナー講師など多岐にわたり活動中。

URL:
https://ncsracine.com/