小学校教師になるには?詳しい仕事内容と気になる先生の年収

小学校教師とは

先生と生徒

(出典) photo-ac.com

小学校教師は、6歳から12歳の児童に教科学習の指導と、社会生活の基盤となる教育を行います。日々の授業や活動を通し、児童が知識や思考力・表現力を身に付けられるように指導し、さらに学習への意欲や探求心が向上するように手助けをするのが役割です。

子供たちと長い時間を一緒に過ごすため、子供たちへの愛情はもちろん、人間としての魅力やコミュニケーション力が求められます。

教科や生活を指導する他に学校行事に関する仕事もします。また家庭や地域と連携を取り、子供たちの健全な活動を支えることも重要な役割です。

小学校教師になるには

小学校教師

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小学校教師になるためには、小学校教員免許状を取得しなければなりません。小学校教員免許状には、一種免許状、二種免許状、専修免許状があります。大学卒業では一種免許状、短大や通信制大学卒では二種免許状、大学院修了では専修免許状を取得できます。この区分は教職課程の取得単位数の違いであり、実際に指導する内容に違いはありません。

免許状の取得方法で一般的なのは、大学の教育学部で教職課程を修了し一種免許状を取得することです。教育学部は教員養成が主な目的であるため、免許に必要な科目を効率的に履修できます。また教師としての資質や能力を身に付ける機会も設けられています。

なお、教員免許取得の要件として、盲学校、聾学校もしくは養護学校または社会福祉施設その他の施設で、7日間以上の介護などの体験も必要です。一般学部から小学校教師になる場合は、卒業に必要な単位と教職課程の単位に十分注意しましょう。履修の負担が大きいため、現実的なのか教授に相談してみるのがおすすめです。

その他の免許状取得方法としては、高卒または高卒と同等の資格があり20歳以上であれば、小学校教員資格認定試験を受けることができます。小学校教員資格認定試験は、受験者が二種免許取得に相当しているかどうかを判断する試験で、合格すると二種免許状を取得することが可能です。

小学校教員資格認定試験には「一次試験」と「二次試験」があります。1次試験は「教科及び教職に関する科目(Ⅰ〜Ⅳ)」です。一次試験に受かった人だけが、「教職への理解及び意欲,小学校教員として必要な 実践的指導力に関する事項 」の二次試験を受験できる仕組みです。二次試験では、指導案の作成や模擬授業といった実践的なスキルが問われます。全ての試験に合格し、都道府県教育委員会に申請すると、二種免許状を取得できます。

免許状を持っていても、公立小学校の教員になるためには、都道府県指定都市教育委員会が実施する「教員採用試験」を受けなければ教師として採用されません。合格すると採用候補者名簿に載り、地方公務員となります。その後、採用説明会や学校等への紹介などを経て、教師として働くことになります。

4年生大学に通っている場合、教員採用試験は大学4年から受けることが可能です。試験問題は自治体によって違うため、過去問題やテキストで対策したり模擬試験を受けたりするのが効果的でしょう。

私立小学校の教員になるには、学校に直接応募し選考試験を受ける方法や、私立学校教員適性検査(私学教員適性検査)を通して採用となる方法、大学の就職課や人材派遣会社の紹介によって採用となる方法などがあります。欠員が出た場合に募集されることが多いため、こまめな情報収集が必要です。また私立小学校の採用形態は、正社員と同様の「専任教員」、授業のみを担当する「非常勤講師」、雇用期間が決まっている「常勤講師」に分けられ、非常勤講師は授業以外の業務を担当することはありません。

近年は社会人から教師になる人も多いようです。教員免許を持っている場合は、教員採用試験を受けて合格すれば教員として働けます。免許を持っていない場合でも、学士課程を終えていれば、教員養成の大学に編入したり、通信課程で学んだり場合は教職課程のみを修了することで免許の取得が可能です。

通信課程ではレポートやスクーリング、テストで単位を取ることになります。通信課程を持つ大学は首都圏や関西圏にあることが多く、大学の場所やスクーリングの日程の確認も必要でしょう。 自治体によっては教員採用試験の受験年齢を制限している場合があるため、受験する教育委員会の情報を確認しておきましょう。

小学校教師の仕事内容と1日の流れ

女教師

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教科・生活の指導

小学校教師は、自分が担当するクラスの生徒に全教科を教えます。図工・音楽・体育・家庭科は専任教師が教えるケースもありますが、国語や算数などの主要教科は担任が受け持つのが一般的です。

授業では、生徒間で学習進度や理解度に差が生まれます。教師は個々の状況を把握しながら、適切な指導計画を作成しなければなりません。他の教師と協力し、教材の作成や授業研究なども行います。

「規則正しい生活」「思いやりのある心」「あいさつの徹底」など、生徒の生活面の指導をするのも教師の役目です。小学校は社会生活の基礎や人間関係を学ぶ大切な場所であるため、教師の責任は大きいといえるでしょう。

学校行事の運営・保護者との連携

小学校教師の業務範囲は、教科・生活指導だけではありません。小学校は、運動会や遠足、社会科見学といった「学校行事」が多く、各教師は行事の企画や運営に追われます。

課外学習の際は1日の流れを計画し、しおりや保護者用資料を作成します。当日は他の教師と協力しながら、学年がバラバラにならないように誘導しなければなりません。

教師の仕事の中でも特に重要な任務といえるのが「保護者との連携」です。生徒の成長を保護者に伝え、家庭での様子を知るために「家庭訪問」や「保護者懇談」など実施します。保護者から要望やクレームが出された場合はその処理に追われることもあります。

1日のスケジュール例

学校にもよりますが、小学校の「朝の会」は、8時半頃に始まります。職員室で10分ほど打合せをした後、担当クラスの朝の会に参加して、生徒の出席確認や提出物集め、スケジュールの確認などを行います。

小学校の授業は1コマ45分で、授業間の休憩時間は5~10分です。2時間目と3時間目の間には、20分ほどの「中休み」を挟む学校もあります。教師は、休憩時間に次の授業の準備をしたり、テストの丸付けをしたりするのが通常です。

午後の授業が終わった後は「帰りの会」をして、生徒を下校させます。クラブ活動の指導・学級通信簿の作成・丸付けなど、授業後もやるべきことは山積みです。教師の主な仕事は教科・生活指導ですが、校務分掌も多く、帰宅時間は19時を回ることも多いようです。

小学校教師に向いている人の特徴

先生と生徒

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人を育てることが好き

主な仕事は教科・生活の指導ですが、何かを教えるだけが教師の仕事ではありません。小学校時代は社会生活の土台を学ぶ大切な時期です。学校で過ごした6年間が未来を左右するケースもあるため、教師は生徒1人1人の人格を尊重しながら、健全な成長をサポートしなければなりません。

小学校教師に適しているのは、「人を育てることが好きな人」や「愛情を持って生徒に接することができる人」です。小学校教師は、6歳から12歳という多感な時期の子供たちを相手にするので、一筋縄ではいかないことが多いでしょう。責任感があり、根気よく丁寧に生徒に向き合える人が小学校教師に向いているといえます。

コミュニケーション力がある

教師に限ったことではありませんが、人と接する職業ではコミュニケーション力が求められます。小学校教師は、生徒・教師仲間・保護者・地域の人々とコミュニケーションを取る必要性が生じるため、「人と接するのが苦手」「会話のキャッチボールができない」という人には務まらないでしょう。

コミュニケーション力は、伝える力と聴く力の両方を指します。言葉だけを理解するのではなく、仕草や目の動きから相手の心理を読み取ることも、コミュニケーション力の一種です。

頭ごなしに相手を否定したり、自分の意見や価値観を一方的に押し付けたりする傾向がある人は、生徒との距離を縮めることは難しいでしょう。保護者からのクレームにもつながります。

観察力がある

1クラス30人近くの子供たちを教師1人で見なければならない小学校教師は、体力的にも精神的にも大変な仕事です。しかし、いくら忙しくても生徒1人1人に目を向ける必要があります。

教師に向いているのは、「観察力に優れている人」や「公正な判断ができる人」です。小学校低学年は自分の思ったことを言葉でうまく表現できないことがあるため、表情や目の動き、態度などから生徒の心を読み取る力が求められるでしょう。

子供同士のトラブルがあったときは、当事者や周囲から事情を丁寧に聞き取り、適切な解決方法を見出していきます。「よくあるふざけ合い」と軽く見たり、特定の生徒の話だけをうのみにしたりすると、取り返しの付かないいじめ問題に発展するケースも少なくありません。

教師に高い観察力と正しい判断力があれば、トラブルの芽を早期に摘み取れる可能性が高いでしょう。

小学校教師に必要なスキル

小学校

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小学校教師は、国語や算数などの教科を1人で指導するため、学習内容を十分理解し子供たちに分かりやすく教える技術が要求されます。音楽や美術、水泳などの実技教科は専門教師が指導する場合もありますが、主要教科同様に教えられることが必須です。

ピアノ、水泳、デッサンなどは採用試験の実技試験に必要とされる場合が多いため、早めに習得することが望ましいでしょう。

近年では、英語、リズムダンス、プログラミングなどが必修教科として追加されています。しかし教師自身が未熟、未経験な場合も多く、指導技術の低さが懸念されているのが現状です。自治体では教師向けの講習や試験などを取り入れ、また一般企業でも教員向けの研修を主催しています。

教員向けの研修としては、英語指導に関する講座、ダンス指導のための研修会、プログラミングを指導するための勉強会などがあります。

英語教育に関しては、新学習指導要領に基づいて2020年度から必修化されました。現在5年生と6年生は正式な科目として、3年生と4年生は「外国語活動」として英語を学びます。教科としての授業では教科書を使用しカリキュラムに沿って進めることになるため、カリキュラム作成や教案作成に留意し、担当教師同士も密に連携を取らなければなりません。教師の英語力だけでなく、外国語の指導カリキュラムをマネジメントする能力も求められるようになってきています。

同じく2020年度からは、プログラミングも小学校で必修化されました。授業時にコンピューターを利用し、文字の入力のような操作に慣れること、インターネットなどを利用し学習内容を充実させること、さらにプログラミング的思考を育成することなどが目標です。

小学校教師のやりがい

男性教師

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学校教育の場で教師が果たす役割は大きく、指導力、人間性、コミュニケーション力などさまざまな資質が要求されます。負担が大きい仕事です。一方で、指導によって子供が成長し、その喜びを分かち合えるのは大きな魅力です。

子供の喜ぶ姿や晴れやかな表情を見ると、教師でよかったと思えるでしょう。立派な大人になった教え子が会いに来たり結婚して子供を見せに来たりすると、自分のことのようにうれしくなる人も多いはずです。

また、頑張っている子供の手本になるようにと自分を律する機会が多々あり、日々新しいことに向き合えるのも教師だからこそ味わえる醍醐味でしょう。

小学校教師の年収帯

通帳と現金と電卓

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総務省の「令和3年地方公務員給与実態調査」によると、小・中学校教育職の平均給与月給は40万9,427円です(諸手当を含まず)。年齢や地域の差もありますが、年収平均は約490万円前後になるでしょう。

公立の小・中学校教育職の身分は公務員であるため、収入は比較的安定しています。福利厚生も充実していますが、原則として公立学校の教員には残業代が支払われません。残業代の代わりに「教職調整額」が支払われるものの、調整額の範囲を超えた長時間労働が常態化している実態があります。

小学校教師の求人傾向

廊下を歩く教師

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小学校教師になる方法としては、非常勤講師や臨時講師などもあります。公立小学校、私立小学校ともに、年度途中でも非常勤講師を募集しています。私立小学校の場合、正社員としての募集も少なくありません。

全国各地で募集がありますが、首都圏や関西圏の求人が多いようです。求人案内は、ハローワークや民間の求人情報サイトにあります。近年は、教師専門の派遣会社に登録し仕事を探す人も増えています。

※文中に記載の各種数値・内容は、2022年5月時点のものになります。

出典:
令和4年度 教員資格認定試験|独立行政法人 教職員支援機構
私学教員適性検査概要|一般財団法人 東京私立中学高等学校協会
学習指導要領「生きる力」:文部科学省
給与・福利厚生 | 東京都公立学校教員採用案内「東京の先生になろう」
表現運動|文部科学省
令和3年地方公務員給与実態調査結果等の概要|総務省