サービス残業を自主的に行うリスクとは?発生する理由や防止策を紹介

サービス残業は、企業や労働者にとってさまざまなリスクをもたらす行為です。しかし、業務量の多さなどから、自主的に行っている人も少なくありません。自主的なサービス残業に当たるパターンや起こり得るリスク、防止策などについて解説します。

自主的なサービス残業の例

残業疲れ

(出典) pixta.jp

まず、どのような例が自主的なサービス残業に当たるのか確認しておきましょう。主な例を3つ紹介します。

家に持ち帰って仕事をする

よくある例の1つが、仕事を家に持ち帰って作業することです。就業時間内にできなかった業務を家に持ち帰って終わらせたり、仕事帰りにカフェなどで作業したりすることがこれに当たります。

本来は会社の就業時間内に終わらせなければならないものの、それが難しい状況に起こりがちなケースです。この場合、リモートワークが認められていなければ、仕事を持ち帰ること自体がルール違反になるので注意しましょう。

残業時間を正しく申告しない

実際の残業時間より短く申告するなど、適正な申告が行われていないケースもあります。「たった数分だから」などの考えから、申告しないケースもあるようです。

しかし、厳密にいえば所定労働時間を1分でも過ぎれば、それは時間外労働となります。残業代も1分単位で計算されるべきものなので、終業時間後に仕事をした場合は、正しく申告することが必要です。

また、テレワークや在宅勤務の場合は勤務時間とプライベートの切り替えが曖昧になってしまい、結果的に長時間労働となるケースがあります。会社による労務管理が難しい分、しっかり自己管理をすることが大切です。

就業時間外に社外で打ち合わせをする

就業時間外に社外での打ち合わせは、サービス残業に該当する可能性があるため、注意が必要です。取引先や営業先の事情により、就業時間外から打ち合わせが始まるケースは多いです。

場合によっては、就業時間外まで打ち合わせが長引くこともあります。打ち合わせまで時間が空くと、残業扱いが難しい場合もあります。

しかし、どのような状況であっても、就業時間外に行われる場合は残業として正しく申告することが必要です。また、取引先と食事をしながらの打ち合わせだとしても、サービス残業として見なされることを忘れないでください。

自主的なサービス残業が発生する理由

深夜残業

(出典) pixta.jp

サービス残業が発生する理由についても確認しておきましょう。主な理由を2つ挙げて解説します。

業務量の多さ

主な理由の1つに、業務量の多さが挙げられます。社員1人に与えられている業務量が過多になっている状況では、就業時間内に全ての仕事を終えることは困難です。

特に、その日のうちに終わらせないと翌日の業務に支障が出るような場合、必然的にサービス残業が発生する可能性も高くなります。

人手不足などの理由によって1人当たりの業務量が多くなっている場合は、組織全体で改善に向けた取り組みが必要になるでしょう。

先に帰りにくい職場の雰囲気

もう1つの理由は、職場の雰囲気や意識の問題です。職場内でサービス残業が常態化していると、仕事が終わっても定時で帰りにくい雰囲気が生まれてしまいます。

残業をしている同僚がいる中で先に帰ることへの抵抗感から、仕方なく会社に残るケースもあるでしょう。上司のワークライフバランスへの意識が低いと、定時で退社するより、長時間働いている部下の方が評価されるという風潮になりがちです。

このような場合は、まず職場全体の意識や雰囲気を改善していく必要があります。

自主的なサービス残業による会社のリスク

頭を抱える女性社員

(出典) pixta.jp

自主的なサービス残業は、会社にとってもデメリットとなります。会社が負う可能性のあるリスクについても見ていきましょう。

労働基準法違反で罰則を受ける可能性がある

労働基準法第37条では、時間外に労働した社員に対し、事業主は割増賃金を支払うことが定められています。

つまり、どのような理由であっても、割増賃金が支払われない残業は認められていないということです。仮に発覚すれば、たとえ労働者の自主的な行為だとしても、事業主が是正勧告を受けることになります。

是正勧告に従わない場合は、労働基準法第119条第1号に基づき、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則を受ける可能性もあるでしょう。労働基準監督署から是正勧告を受けたとなれば、企業イメージにも悪影響を及ぼします。

出典:労働基準法 第37条 | e-Gov法令検索

出典:労働基準法 第119条 第1号 | e-Gov法令検索

セキュリティー上の危険性が高い

仕事を持ち帰って行う場合は、セキュリティー面でのリスクが高まります。社外秘のデータを持ち出すことになり、紛失などによって情報漏えいが起こる危険性があるためです。

カフェや公共の場などで作業をする場合は、さらにその危険性が高くなります。漏えいした情報が顧客の個人情報などだった場合は、サービス残業をした本人や上司の責任を問われるだけでは収まりません。

会社そのもののセキュリティー意識の低さから、信用問題に発展する可能性もあります。

自主的なサービス残業による社員のリスク

頭を抱える男性

(出典) pixta.jp

自主的にサービス残業を行った場合、当事者や周囲の社員にも悪影響が及ぶ可能性があるため注意が必要です。主なリスクを2つ挙げて解説します。

健康を害する危険性がある

長時間労働が続くと、健康面に悪影響を及ぼす危険性が高まります。

厚生労働省の「過労死等を防止するための対策BOOK」によれば、時間外・休日労働時間が月100時間を超える、もしくは2~6カ月の平均が月80時間を超えると過労によって健康を害するといわれています。

つまり、長時間労働が続けば、心臓疾患などによる過労死のリスクが高くなるということです。また、自主的なサービス残業をせざるを得ない職場で働いている場合は、精神面にも影響を及ぼす可能性があるでしょう。

出典:厚生労働省 過労死等を防止するための対策BOOK PDF2枚目

正しい評価を受けられなくなる

本人だけでなく、周囲の社員も正しい評価を受けられなくなるというリスクもあります。申告している勤務時間と実際の労働時間が違っていれば、適切な評価ができないためです。

上司が部下の長時間労働を把握できていなければ、能力の過大評価によって、本人の限界を超えた業務を与えてしまうことになるでしょう。業務量が増えれば、さらにサービス残業せざるを得なくなるという悪循環にもつながります。

また、評価の基準が変わることで、残業をしていない社員に対しても正当な評価ができなくなります。

自主的なサービス残業をなくすには

書類をチェックする手元

(出典) pixta.jp

自主的なサービス残業は、会社や社員にさまざまな悪影響を及ぼすため、発生しないような対策を講じることが必要です。具体的な対策を2つ紹介します。

業務の効率化を図る

残業が発生しないよう、日々の業務の効率化を図ることが重要です。1日の業務内容を見直すことで、無駄な作業を削減できるかもしれません。

例えば、毎回作成する書類はフォーマット化する、メールはまとめてチェックするなど、効率化できることがないか確認してみましょう。業務の優先度を決めて進めることも効率化につながります。

そもそも与えられている業務量が適切ではないかもしれません。もし、能力以上の量を割り振られている場合は、上司に相談して担当する業務内容を見直してもらいましょう。

労働者側の意識改革も必要

労働者自身の意識改革も必要です。「サービス残業をしない」という意識を持つことが何より大切といえるでしょう。

加えて、サービス残業が常態化しているような職場の場合は、社内風土の見直しも求められます。しかし、労働者1人1人の意識改革が進まなければ、組織全体の風潮を変えることはできません。

まず、労働者側が、サービス残業は労働基準法に違反する行為で、会社や本人にとって大きなリスクをもたらす可能性があるという認識を持つことも重要です。

自主的なサービス残業をなくそう

退勤する女性

(出典) pixta.jp

自主的なサービス残業は、企業や労働者にさまざまな悪影響を及ぼすため、しない方が無難です。特に、自宅などに持ち帰って仕事をする場合は情報漏えいなどのリスクもあり、労働基準法違反だけでなく企業の信用問題に発展する恐れもあります。

サービス残業をなくすには、業務の効率化や労働者の意識改革などが必要です。サービス残業を良しとするような風潮がある職場は、社内風土から変えていく必要もあるでしょう。

どんなに努力してもサービス残業がなくならないという場合は、職場を変えることを検討してみるのも1つの手です。転職先を探す際は、全国の求人情報から一括検索できるスタンバイを活用してみてください。

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