転職先を業界や職種で考える人がいる一方で、外資系の企業を目指す人もいます。「外資系」を何となく海外の企業と考える人もいますが、実際には複数のタイプがあるので、きちんと理解しておきましょう。外資系企業のメリットやデメリットも解説します。
「外資系」とは?定義はある?
「外資系」とは、漠然と海外資本の企業と考えている人は少なくありません。法律などで明確に定義されているわけではありませんが、一般的には以下のタイプがあるので、初めに整理して理解しておきましょう。
海外・日系企業による共同出資タイプ
外資系企業の1つの形態として、海外の企業と日系企業が、共同出資して設立した企業がまず挙げられます。
日本の地でビジネスを展開したい海外企業や、日本の技術を活用したい企業などが、海外のブランド力や資本を目的とした日系企業と提携し、日本国内で法人を設立するパターンです。
出資比率は企業によって異なり、海外企業がどの程度出資しているかによって、経営方針も変わってきます。一般的に、海外企業の出資比率が多いほど、組織文化も海外寄りになる傾向にあります。
海外企業が100%出資しているタイプ
海外企業が日本に進出し、ビジネスを展開しているタイプの組織もあります。外資系企業といえば、このタイプをイメージする人は多いでしょう。親会社は海外にあり、日本国内で設立した企業は支店のような位置付けです。
経営方針や組織文化などは、原則として本社のものを輸入する形で展開しています。外国人が数多く働いている組織がほとんどで、日常的に英語でやりとりしているところも多くあります。GoogleやMicrosoftの日本法人などが代表例です。
日系企業が海外企業に買収されたタイプ
もともと日系企業だった会社を、海外企業がM&Aなどで買収したタイプの外資系企業もあります。
経営に関する決定権が買収した海外企業に移るため、事業方針・組織文化・運営体制などが急に変わってしまい、社内であつれきが発生するケースも珍しくありません。
日本の市場に素早く進出し、影響力を高めたい海外企業がM&Aを実行する場合が多く、いわゆる敵対的買収により、これまで外資系企業に買収されそうになった日本企業もあります。
M&Aによって外資系企業となった有名企業としては、シャープやラオックスなどが挙げられます。
外資系企業と日系企業の主な違い
外資系企業と日系企業の代表的な違いを、押さえておきましょう。働き方・給与・福利厚生の面でさまざまな違いがあり、退職の扱いも異なる場合が多くあります。
働き方の違い
日系企業の場合は社員の部署移動に伴い、職種も変わる場合がほとんどですが、外資系企業の場合は非常にまれです。いわゆるジョブ型雇用で人材を採用している企業が多く、その分野に精通した人材・専門家を雇う傾向があるためです。
また、上司の指示・マニュアルが存在するケースの多い日系企業に比べて、外資系企業は社員自らが判断し、成果を上げる働きが求められます。
上記のように、特定の分野の専門家として招かれる場合も多く、プロフェッショナルとして高いパフォーマンスを要求されるのが特徴です。
さらに昇進の基準も、いまだ年功序列が根強く残っている日系企業が多い一方で、外資系企業は実力第一の傾向にあります。仕事で十分な成果を残せれば、高い報酬を得られる可能性が高いでしょう。
給与・福利厚生の違い
月給制が基本となる日系企業と比較して、外資系企業は年俸制の組織が多い傾向にあります。実力主義が基本であるため、所属年数にかかわらず、個人のパフォーマンスによって年収が大きく異なる場合が珍しくありません。
ただし、結果を残せなければ、立場によらず解雇されてしまう可能性が高いのも、外資系企業の特徴です。
一方で、福利厚生に関しては、日系企業の方が外資系企業より手厚い傾向にあります。例えば、日系企業に多い通勤手当・住宅に関する手当などは、外資系企業では支給されないケースが珍しくありません。
退職についての違い
日系企業の場合、基本的によほどのことがない限り、企業側から一方的に解雇を言い渡すことはできません。
日本の労働契約法において、「解雇には客観的・合理的な理由が必要であり、社会通念上相当であると認められなければならない」と規定されているためです。
しかし、外資系企業の場合は、パフォーマンスが低い社員に対して、任意の退職を求めることもあります。日本で設立した企業である以上、労働契約法は守らなければいけませんが、特別退職金を提示して退職を促すことが珍しくありません。
外資系企業へ転職するメリット
外資系企業に転職するメリットとしては、以下のように自分の実力を試しやすい点や、グローバルに働ける点、プライベートを充実させやすい点などがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
自分の実力を試せる
実力主義が基本の外資系企業が多いため、自分の実力を試したい人にとっては、モチベーション高く働ける場です。年齢・性別などの基本的な属性はもちろん、これまでの経験も関係なく、就業後に活躍できるかを重視する企業が多くあります。
スタートがどのような立場でも、仕事のパフォーマンスが高ければ、公平に昇給・昇進の機会が得られるので、人によっては大きく収入アップを果たすチャンスがあるでしょう。
グローバルな働き方ができる
外資系企業の場合、上司・同僚が外国人になる可能性も高く、さまざまな国籍の人々と働けるのも、人によっては大きなメリットといえるでしょう。
自分にとって新しい価値観を持つ上司・同僚などと、出会える機会もあります。海外への出張・転勤の可能性もあるので、世界で活躍したい人にとっては、魅力的な環境です。
仕事できちんと成果を出せれば、日系企業以上に自分の意見・考えを聞いてもらえる可能性が高いでしょう。実力次第で、自分の理想とする環境をつくりやすいのも特徴です。
プライベートも充実させられる
仕事とプライベートをきっちり分けられるのも、外資系企業に勤めるメリットの1つです。
残業・時間外労働が少ない傾向にあり、業務時間内にきちんと成果を出せれば、業務終了後の時間や休日を充実させられるでしょう。日系企業にありがちな社内での飲み会なども、ほとんどありません。
また、長期休暇も取りやすい傾向にあり、十分なリフレッシュ期間を得られる企業が多いのも魅力です。人間関係がドライな面もありますが、仕事とプライベートの時間を明確に分けたい人にとっては、パフォーマンスを発揮できる環境といえるでしょう。
外資系企業へ転職するデメリット
外資系企業に転職すると、さまざまなメリットを得られますが、以下の点はデメリットともいえるので注意が必要です。競争が激しく、目まぐるしく変わる環境が苦手な人は、日系企業の方が向いている可能性があります。
社内での競争が激しい
実力主義が基本の外資系企業は、当然ながら社員間の競争が激しく、成果を出せれば昇給・昇進などが早い一方で、プレッシャーも大きい傾向にあります。
少ない役職の席を多くの社員が目指している環境にあり、成果を出せなければ昇給・昇進は難しく、退職を勧められる場合もあるでしょう。
多くの人と競争する環境が好きな人にとっては、実力を発揮しやすい半面、競争が苦手な人の場合は精神的な負担が大きくなる可能性があります。
事業展開のスピードが速い
外資系企業は経営判断がスピーディーなため、環境が目まぐるしく変わる場合も多く、変化が苦手な人にとっては戸惑う場面も増えるでしょう。
働き方やプロジェクトの進め方などが頻繁に変わるケースもあり、柔軟についていくことを求められるため、精神的にきついと感じる人もいます。
どのような企業で働くにせよ、ビジネス環境は変わり続けているため、ある程度は変化に適応できなくてはいけません。しかし、外資系企業は特にその傾向が強いため、変化する状況に臨機応変に対応できる人でなければ、成果を出すのが難しい面もあります。
外資系企業で活躍するために必要なスキルは?
外資系企業で活躍するためには、以下のスキルを積極的に磨くことが重要です。
英語によるコミュニケーションが取れる必要があるのに加えて、自分を効果的にアピールするスキルを磨いておけば、仕事で活躍できる場面が増えるでしょう。思考の柔軟さや心身のタフさも求められます。
英語によるコミュニケーション能力
外国人と一緒に働く可能性も高いので、英語によるコミュニケーション能力を高める必要があります。たとえ上司・同僚が日本人でも、海外の親会社やクライアントとやりとりする場面も出てくるため、一定の英語力が必要となるケースは多いでしょう。
日常会話に苦労しない程度の英語力は必要で、可能であれば入社時点で、ビジネス英語が問題なくできる程度のスキルが求められます。
あくまでも1つの目安ではありますが、国内の部署で働く場合には最低でもTOIECで600点程度、海外とのやりとりが発生する部署では730点程度の英語力は必要でしょう。
自分をアピールできる能力
実力主義の世界で生き残るためには、自分を効果的にアピールできる能力も求められます。自分の頑張りを見つけてもらうのを待つ姿勢では、なかなか評価されず、むしろマイナスの印象を与えてしまう可能性もあります。
自分の成果・スキルは積極的にアピールし、組織に貢献する姿勢を見せることが大切です。会議・ミーティングなどで、自分の意見・主張を明確に示せるように努力する必要があります。
相手を尊重しつつ、自分の意見をうまく伝えるアサーティブネスのスキルを磨きましょう。
思考の柔軟さと心身のタフさ
異なる文化・習慣を持つ上司・同僚と仕事をする機会が増えるのに加えて、外資系企業は環境の変化が激しい傾向にあります。うまく環境に適応するためには、思考の柔軟さや心身のタフさも必要でしょう。
単に任せられた仕事をこなすだけではなく、自分なりにゴールを見据えて、さまざまな工夫を凝らして成果を上げていく必要があります。
成果を出すために、どのようなスキルが必要かは個人によって異なりますが、自分に何が必要なのかを的確に把握し、計画的に自分を高められる人であれば、外資系企業でも長く働けるでしょう。
外資系企業が向いている人の特徴
外資系企業が向いている人の特徴としては、以下のように自分の意思をはっきりと口にできる人や、臨機応変な対応ができる人などが挙げられます。
論理的思考力に優れている人も、状況を的確に分析し、最適な行動を取れる傾向にあるため評価されやすいでしょう。
自分の意思をはっきり口にできる
外資系企業で活躍するには、自分をきちんとアピールすることが重要です。自分の主張や成果をしっかり口に出してアピールできる人ならば、うまく環境に適応しながら働けるでしょう。余計なストレスを抱えずに済みます。
日本人特有の遠慮・謙遜は役に立つ場面もありますが、逆に評価を下げてしまう可能性もあるので、注意しなければいけません。自分の意見をきちんと伝える方が、相手にとってもプラスになるケースが多い点は、理解しておく必要があります。
臨機応変な対応ができる
環境の変化が激しい外資系企業では、突然のチーム体制の変更やメンバーの入れ替わり、方針の変更などに柔軟に対応できる人が向いています。
経営者・管理者が頻繁に変わる企業も多いので、その都度、重視すべき価値観や業務フローの変更を求められるケースも珍しくありません。
従来のやり方に固執せず、新しいやり方にすぐ順応できる人ならば、環境が変わっても成果を上げられるでしょう。
論理的な思考が得意
外資系企業では、長々とした説明よりも、すぐに結論を求められるケースが多くあります。自分の考えを端的に分かりやすく伝えられる人は、周りから歓迎される傾向にあり、評価もされやすいでしょう。
異なる価値観・文化を持つ人々とうまく意思疎通を図り、自分の意見を聞き入れてもらうには、論理的思考力が欠かせません。
論理は文化の違いを超えて理解し合うのに最適な要素であるため、自分の主張を理解してもらうためにも、ロジカルに物事を考えられる人が向いています。
外資系企業へ転職する際のポイント
外資系企業に転職を目指すならば、以下のポイントを意識して、自分を磨いておきましょう。
最低限の英語力は必要となるのに加えて、転職先で役立つ専門スキルを高めておくことで、活躍できる可能性を高められます。当然、応募先の企業研究にも力を入れましょう。
英語力を磨いておく
社内での多国籍な上司・同僚とのコミュニケーションをはじめ、海外とのやりとりも日常的に発生する可能性があるため、しっかりと英語力を磨いておく必要があります。
転職の際には、選考の段階から英語力を判断されるケースが多いため、履歴書・職務経歴書の作成にも注意が必要です。企業によっては、英語で面接が実施される場合もあるので、準備を万全にしておきましょう。
ただし、外資系企業の全てで英語力が必須とされるわけではないため、英語力に自信がない人は、英語がほとんど必要ない企業への転職を目指すのもおすすめです。
専門スキルを高める
外資系企業では基本的に、ジェネラリスト以上にスペシャリストが求められる傾向にあります。
ジョブ型雇用を基本とする企業がほとんどで、特定分野のスペシャリストとして雇用される人が多くいます。その分野でさまざまな実績を残している人や、特別なスキルを有している人ならば、転職を成功させられるでしょう。
たとえ経験が少なくても、十分な能力を備えていることをアピールできれば、採用される可能性を高められます。自分のスキルにマッチした企業を選び、転職前にスキルレベルを高めておくことが重要です。
応募企業の企業研究も大切
一般的な転職活動と同様に、外資系企業に転職をする場合にも、後悔しないように十分な企業研究をしておきましょう。転職希望先の企業の理解を深めておくことで、面接対策もしやすくなります。
外資系企業の場合、働き方や社風が日系企業とは大きく異なることも多いため、事前にできるだけの情報を集めておきましょう。自分に合った環境で働けるかはもちろん、自分の特性・強みを十分に生かせるかも、確認する必要があります。
十分な情報収集と企業研究をした上で、万全な対策をして書類選考や面接に臨みましょう。
外資系企業で自分の実力を試してみよう
ひと言で「外資系」といっても、海外の企業と日系企業が共同出資して設立した会社や、海外企業が100%出資しているケース、日系企業が海外企業に買収された会社などがあります。
設立の経緯や企業文化はそれぞれ違いますが、純粋な日系企業とは毛色が異なる部分が多いので、特徴を理解しておきましょう。
また、外資系企業に転職を目指すならば、メリット・デメリットをよく理解し、本当に自分に合った環境か慎重に判断することが大切です。変化・競争が激しい環境で活躍できる人であれば、転職後も十分なパフォーマンスを発揮できる可能性があります。
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