転職したら、さまざまな手続きをしなければなりません。入社時に必ず提出が求められる書類もあるので、事前に把握しておくことが大切です。転職先に提出する書類の種類や必要な手続きのほか、すぐに入社しない場合の注意点などについて解説します。
転職したら必ず提出する書類
転職が決まると、入社時にさまざまな書類を提出する必要があります。必ず提出しなければならない書類について、確認しておきましょう。
源泉徴収票
新しい会社で年末調整をしてもらうには、前職の源泉徴収票が必要になります。前の会社での収入も含めて、その年の所得税を算出するためです。源泉徴収票は、退職時に発行してもらえるので、入社時までしっかり保管しておきましょう。
ただし、最後の給与まで含めて作成するため、退職後に発行されるケースもあります。所得税法226条では、退職者については退職日から1ヵ月以内に交付しなければならないとされていますので、いつ交付されるのか確認しておきましょう。
万が一、年末調整の手続きに間に合わなかったときは、翌年に自分で確定申告する必要があります。なお、年が明けてから入社する場合は、源泉徴収票を提出する必要はありません。
雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証とは、雇用保険への加入を証明する書類です。被保険者番号を確認するために、必ず提出が求められます。
手続きが済んだら被保険者に渡されるケースもありますが、紛失しないように会社で保管されることがほとんどです。退職時の返却書類の中に入っていないときは、会社で保管されていなかったか問い合わせてみましょう。
雇用保険被保険者証は、失業保険の給付を受ける際にも必要となります。なくしてしまった場合は、ハローワークに申請して再発行してもらいましょう。
年金手帳または基礎年金番号通知書
厚生年金への加入手続きをするためには、年金手帳もしくは基礎年金番号通知書の提出が必要です。基礎年金番号が分かるものであれば、どちらの書類でも構いません。
年金手帳も会社に預け、退職時に返却してもらうケースが一般的です。万が一、自宅で保管していてなくしてしまった場合は、最寄りの年金事務所に申請することで基礎年金番号通知書を再発行してもらえます。
ただし、2022年4月以降は年金手帳の発行が廃止されているため、代わりに基礎年金番号通知書が発行されます。発行され次第、転職先に提出しましょう。
転職したら記入する書類
入社手続きの際に記入し、提出する書類もあります。主な書類を3つ見ていきましょう。
扶養控除等(異動)申告書
扶養控除等(異動)申告書とは、所得税の扶養控除や配偶者控除などを受けるために必要な書類です。ただし、控除の対象となる扶養家族がいない人にも提出が求められます。
給与計算の際に、控除対象となる家族の有無を確認する必要があるからです。毎年、年末調整時に会社から配られて記入する書類ですが、転職して中途入社した人は最初の給料日の前日までに提出します。
扶養家族がいない人は、自分の氏名・住所を記載して提出しましょう。控除を受ける家族がいる人は、場合によって証明書などの添付が求められます。
健康保険被扶養者(異動)届
扶養家族がいる人は、健康保険被扶養者(異動)届も提出することが必要です。また、被扶養者が国民年金の第3号被保険者に該当するのであれば、「国民年金第3号被保険者関係届」の提出も必須です。日本年金機構では、「健康保険被扶養者(異動)届」と「国民年金第3号被保険者関係届」が1枚になった書類があります。提出しないと、被扶養者は転職先の健康保険組合などに加入できません。
手続きが必要かどうか、自分から知らせないと会社側は分からないため、入社時に伝えて書類をもらいましょう。
被扶養者として認められるのは、保険の加入者(被保険者)が収入の基準を満たし生計を維持している配偶者(事実婚も含む)・親・子ども・孫・兄弟姉妹です。別居していても、被保険者の生計によって暮らしている場合は被扶養者として認められます。
給与振込先届出書
給与の振込先となる銀行口座の届け出も、必要になります。統一された様式はないため、会社が独自に用意した書類に記入するのが一般的です。
会社によっては、振込先を会社指定の金融機関とするように協力を求められることもあります。指定された金融機関に口座がない場合は、開設の手続きも必要です。
銀行や支店の名称だけでなく、金融機関コードなどを記載することもあるので、事前に調べておきましょう。支店名・口座番号などを確認するために、通帳のコピーを提出するよう求められるケースもあります。
転職したら提出が求められる場合がある書類
ほかにも、会社によって提出が必要となる書類があります。どのような書類があるのか、確認しておきましょう。
健康診断書
入社時に健康診断を受け、その結果を提出するよう求められる場合もあります。雇用主は、常時使用する労働者を雇い入れるとき、「雇入時の健康診断」を受けさせることが、労働安全衛生規則第43条で義務付けられているためです。
3カ月以内に健康診断を受けている場合は、その診断書を提出すればよいケースもあります。会社によっては、指定の医療機関で受けなければならないこともあるので、事前に確認しておきましょう。
健康診断を受ける費用は会社負担となることがほとんどですが、精算方法などについて確認しておくと安心です。
身元保証書
身元保証書とは、保証人となる人物が、転職者の身元を保証する書類です。本人が申告している氏名や住所、職歴などに間違いがなく、雇用しても問題のない人物であることを証明するために提出します。
身元保証人となるには、「収入が安定している」「本人とは生計が別である」など、会社が指定した条件を満たしていることが必要です。
親や兄弟などの親族に頼むのが一般的ですが、いない場合は代行会社に依頼するという方法もあります。なお、身元保証書には、保証人本人の自署と押印が必要です。
入社承諾書・入社誓約書
会社によっては、入社承諾書・入社誓約書の提出を求められることもあります。入社承諾書とは、会社に入社することを承諾する書類です。
提出後に入社を取りやめることは可能ですが、トラブルを避けるためにも、労働条件などについてしっかり確認しておきましょう。一方、入社誓約書とは、会社の規則を守って働くことを約束する書類です。
従業員に順守してもらいたい内容が記載されており、違反した場合は就業規則などに従って処分される可能性もあります。入社誓約書に署名する際も、内容をしっかり確認しておくことが大切です。
転職したらやるべきその他の手続き
転職したら、会社での手続き以外にもやるべきことがあります。うっかり忘れてしまうことのないように、チェックしておきましょう。
銀行やクレジットカード会社に連絡する
転職したら、銀行やクレジットカード会社などの金融機関にも忘れずに連絡しましょう。勤務先を含め、個人情報に変更があった場合は、金融機関に対してできるだけ早く届け出ることが必要です。
届け出をしないと、ローンの審査や利用可能枠の増枠申請の際に、影響が及ぶ可能性もあります。住宅ローンの利用中も、契約時の届け出内容に変更があった場合、所定の手続きが必要です。
転職によって融資が見直されることはありませんが、収入が減少した場合、返済方法を変更するケースもあります。
確定拠出年金制度についても確認する
企業型の確定拠出年金に加入している人は、転職先に制度があるか確認しましょう。転職先にも確定拠出年金制度があれば、移換手続きをすることによって、積み立ての継続が可能です。手続き方法については、転職前に確認しておきましょう。
制度がない場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)に移換することで積み立てを続けられます。iDeCoに移換する場合は、取り扱いがある金融機関に新しく口座を開設することが必要です。
iDeCoへの移換手続きをせずに放置したままでいると、国民年金基金連合会に「自動移換」されます。自動移換されると資産を増やせなくなるだけでなく、受取時期が遅くなる可能性や、税制優遇が低くなるなどの影響があるので注意しましょう。
転職先に入社するまで期間が空く場合
転職先に入社するまで期間が空く場合、保険の切り替えや確定申告などの手続きが必要になることがあります。どのような手続きが必要になるか、具体的に見ていきましょう。
健康保険・年金の切り替えをする
転職するまで期間が空く場合は、健康保険・年金の切り替えを自分で手続きしなければなりません。健康保険の切り替えは、国民健康保険への加入のほか、引き続き職場の健康保険組合などの任意継続も可能です。
国民健康保険に加入する場合は、退職後14日以内に手続きしましょう。任意継続に切り替える場合は、退職した日の翌日から20日以内に申請書を提出します。
また、厚生年金から国民年金への切り替えも必要です。国民年金への加入手続きも、退職日翌日から14日以内に済ませましょう。
年内に入社しない場合は確定申告が必要
年内に退職し、年が明けてから入社する場合は、確定申告が必要です。翌年の2月16日〜3月15日までの間に、確定申告書を作成して最寄りの税務署に提出し、納税を済ませます。
税務署に直接行けない場合は、オンラインからの手続きや郵送による提出も可能です。確定申告をしないと「無申告」となり、無申告加算税として、納付すべき税額に応じた罰金が課せられます。
また、期限内に申告できなかった場合は「期限後申告」として扱われ、延滞税を納めなければなりません。期限内に納税が難しい場合は、延納制度の利用も可能ですが、延納した分の利子税がかかるので注意しましょう。
転職後の手続きについて知っておこう
転職すると、入社時にさまざまな書類の提出が必要になります。源泉徴収票・雇用保険被保険者証・年金手帳など、必ず提出しなければならない書類については、入社手続きまでにしっかりそろえておきましょう。
手続きに間に合いそうにないときは、事前に連絡しておくことが大切です。また、金融機関への届け出など、入社手続き以外にもやらなければならないことがあるので、忘れずに済ませるようにしましょう。
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