倉庫管理主任者は、倉庫業を営んでいる企業にとって欠かせない存在です。しかし、具体的な仕事内容やなるための条件などについて、詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。主な業務内容や、選任されるために必要な条件などについて解説します。
倉庫管理主任者とはどんな職種?
まずは、倉庫管理主任者とはどのような職種なのかを解説します。また、配置基準や例外規定についても、確認しておきましょう。
倉庫業法で定められた倉庫の管理者
倉庫管理主任者とは、倉庫を適正に管理するために置かれる存在を指します。倉庫業法第11条では、倉庫業を営んでいる事業主に対し、倉庫の数・規模に応じた人数の倉庫管理主任者を置くことを義務付けています。
国家資格ではないものの、倉庫管理主任者として仕事をするには、一定の条件を満たして会社から選任されなければなりません。
選任された人は、国土交通省が作成した管理マニュアルに従って、安全や適正な運営に配慮しながら倉庫を管理することが任されます。
倉庫管理主任者の配置基準や例外規定
倉庫業法第11条では、「倉庫ごと」に倉庫管理主任者を配置することが、義務付けられています。仮に3棟の倉庫を保有している場合は、原則として3人の倉庫管理主任者が必要です。
ただし、以下のように位置関係や有効面積によっては例外規定の適用が認められ、複数の倉庫でも1つとして見なされるケースがあります。
- 機能上一体と見なされる複数の倉庫:同じ敷地内に設置されているだけでなく、道路を隔てて設けられている倉庫でも、入出庫作業などの管理が一体的な場合
- 同じ都道府県の区域内に設置され、同一の営業所またはその他の事業所が直接管理・監督している複数の倉庫:有効面積の合計が1万m2以下の場合
倉庫管理主任者が担当する主な業務は?
倉庫管理主任者は、倉庫を管理するためのさまざまな業務を担います。具体的にどのようなことを行うのか、業務内容について確認しておきましょう。
倉庫の火災防止や施設の管理
倉庫内では多くの可燃性の物品も保管しているため、火災が起こると物的な損失だけでなく、人的な被害につながる可能性があります。倉庫管理主任者は、倉庫内の火災を防ぐために、さまざまな対策を講じなければなりません。
倉庫内での禁煙の徹底や、火花の出る工事作業を行う際の予防対策のほか、粉塵・漏電による火災が起こらないよう、清掃や定期的な設備点検といった管理も行います。
また、地震などの自然災害に備えることも必要です。定期的な防災訓練や設備の転倒防止処置、被災後の安全対策なども講じます。
倉庫管理業務の適正な運営
保管している物品の管理も、大切な業務の1つです。常に倉庫内の整理整頓に努め、適正な状態で物品を保管しなければなりません。
温度・湿度による物品の変質を防ぐために、換気の状況や空調機器の作動などを確認しながら、定温で保管するように管理します。さらには、盗難・ネズミ・虫などによる被害にも、注意することが必要です。
常に倉庫の内外を巡回し、必要な処置を講じた場合は、その状況を記録しておかなければなりません。また、倉庫内に荷主不明の物品が放置されたままにならないよう、入出庫伝票と現物を照合して在庫数を管理します。
労働災害の防止
倉庫内で働く従業員の安全に配慮し、労災が起こらないように管理することも重要です。倉庫内では、フォークリフト・コンベヤー・クレーンなどを使った作業も多く、事故防止のために安全対策を講じる必要があります。
事故につながる恐れのある操作を禁止するなど、作業時のルールを決めておくことが大切です。例えば、コンベヤー作業に従事する従業員に対しては、非常時に緊急対応できるように「非常停止装置」の場所や操作方法を確認させておく必要があるでしょう。
また、適切な服装で作業しているか、安全帽や安全靴は正しく着用できているかなど、従業員の服装の点検も行います。
現場の従業員の教育
倉庫管理主任者マニュアルに沿って、従業員に対する研修も実施します。安全かつ効率的に作業できるように、全ての従業員に対して教育・訓練を施すのも倉庫管理主任者の重要な仕事です。
従業員が顧客の大切な資材を預かり保管していることを理解し、丁寧に作業するよう指導しなければなりません。預かっている資材を適切に保管するための確認事項や、入出庫時のルールなどを周知徹底することが大切です。
特に火災や労災に関しては、十分に注意するよう教育する必要があります。
倉庫管理主任者に選任されるための条件
倉庫管理主任者に選任されるためには、「一定の実務経験がある」または「倉庫管理に関する講習を受講している」の、いずれかを満たしていることが必要です。
ただし、条件を満たしていても、選任が認められない場合もあります。選任の条件を、具体的に確認しましょう。
一定の実務経験があること
倉庫管理主任者に選任されるためには、倉庫管理業務に関する一定の実務経験が必要とされます。実務経験ありとして認められるのは、以下の2つのうちいずれかのケースです。
- 倉庫管理業務に関する指導監督的実務経験が2年以上ある
- 倉庫管理業務に関する実務経験が3年以上ある
「指導監督的実務経験」とは、現場を統括する管理責任者としての経験です。また、実務経験を積んだ倉庫は、国土交通大臣の登録を受けた営業倉庫のみに限られます。
倉庫管理に関する講習を受講していること
一定の実務経験がない人でも、倉庫管理に関する講習を受講すれば、選任されるための条件を満たしていると見なされます。講習会は一般社団法人日本倉庫協会が主催しており、全国どこでも受講が可能です。
また、倉庫管理主任者は資格ではないため、試験を受ける必要もありません。倉庫業界が未経験の人でも、講習さえしっかり受講して修了すれば、倉庫管理主任者になれるチャンスはあるでしょう。
なお、国土交通大臣によって、実務経験や講習受講と同等の能力・知識を有していると認められた人も、例外として選任の対象となります。
選任が認められない場合もあるので注意
一定の実務経験や、倉庫管理に関する講習の受講などの条件を満たしていても、選任が認められない場合もあるので、注意が必要です。倉庫業法施行規則第9条では、以下のいずれかに該当する人を選任してはならないと定めています。
- 1年以上の懲役または禁錮の刑に処せられ、執行の終わりまたは執行を受けることがなくなった日から2年が経過しない人
- 倉庫業法第21条の規定による登録の取消を受けており、取消の日から2年を経過しない人
倉庫管理主任者講習とは?
一般社団法人日本倉庫協会が主催する、倉庫管理主任者講習についても確認しておきましょう。受講するための要件や、講習の内容について紹介します。
受講要件
講習を受講する上で、実務経験の有無は問われません。年齢・学歴などの要件もないため、倉庫管理主任者を目指す人なら誰でも受講が可能です。ただし、倉庫業法施行規則第9条に該当する人は、講習の受講も認められていません。
講習は1年間を通して行われており、全国どこの地区でも受講可能です。講習は1日のみで、受講が全て終わると修了証が発行されます。受講料は、1万4,000円です(2024年7月時点)。
出典:倉庫管理主任者講習について|一般社団法人 日本倉庫協会
講習の内容
講習の内容は、以下の5つの項目に分けられており、約5時間かけて学びます。
- 倉庫業法の概要(1時間):倉庫業に従事するために必要な、倉庫業法について学ぶ
- 倉庫業における労働災害の防止(1時間):従業員を労災から守るために必要な管理業務について学ぶ
- 倉庫における火災防止(1時間):倉庫を火災から守るための防止策について学ぶ
- 倉庫管理実務(1時間):適正な倉庫管理のために必要な業務について学ぶ
- 自主監査体制の整備(45分):倉庫業のコンプライアンスなどについて学ぶ
倉庫管理主任者は倉庫業に不可欠な存在
ネット通販の普及に伴い、倉庫業の重要性は高まっています。倉庫を安全かつ効率的に運営するためには、倉庫管理主任者の存在が必須です。
実務経験がなくても、講習を受講することで選任対象になれるため、これから目指す人にとってもチャレンジしやすいといえるでしょう。
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