治験モニターは高額の報酬をもらえる案件が多く、人気のあるバイトです。しかし一方では、危険だと考える人も多くいます。治験の内容や流れ、参加時の注意点などをよく理解した上で参加することが大切です。
治験モニターとは
治験モニターとは、医薬品の臨床試験に参加する人のことです。さまざまな医薬品メーカーや医療機関が治験を実施しており、定期的に参加者を募っています。まずは、治験モニターの基本的なところを知っておきましょう。
医薬品の臨床試験に参加する人のこと
新しい薬や治療法の安全性、および有効性を確かめるための臨床試験が「治験」であり、それに参加する人を治験モニターといいます。医薬品メーカーが医療機関と協力しつつ、定期的にモニターを募集しており、バイトとは呼ばれていますが、厳密には有償ボランティアとして参加できます。
他のバイトと比べ、治験モニターは軒並み高報酬です。安全性を危惧する声はあるものの、学生を中心に人気のあるバイトとして知られています。
新薬が開発される流れ
新薬の開発には基礎研究の積み重ねの後、その研究をベースとしての非臨床試験が必要です。さらに臨床試験が行われ、商品申請・審査を受けて合格すれば、当該医薬品が使えるようになります。
臨床試験では、実際に人に対して医薬品の効果を検証し、安全性や有効性を証明しなければいけません。治験はそのために行われるものであり、新薬の開発や提供・販売に欠かせないプロセスです。
日本製薬工業協会の「製薬協ガイド2024」によると、日本では新薬が誕生するまでに9〜16年の期間を要するケースが多く、多額の投資を求められることがうかがえます。世界で第6位と新薬創出国である日本ですが、新薬開発の成功率は1/2万3,000程度です。
出典:製薬協ガイド2024 PDF5枚目 | 日本製薬工業協会
治験モニターに参加する条件
治験モニターに参加するには、主に以下の条件を満たしている必要があります。特定の疾患を治療する薬の場合、その疾患を持っている人が対象となりますが、健康な人を対象にした治験モニターの募集も少なくありません。
特定の疾患がある人
新薬の臨床試験の多くは、特定の疾患の薬を試すのが目的であるため、基本的にその疾患を持つ人を治験モニターとして募集します。ただし、募集対象の疾患のある人でも、体の状態によっては治験を受けられない場合があります。
また、健康な人をモニターとして募集している場合でも、事前検診に合格する必要があるので、全ての人が参加できるわけではありません。募集定員以上に応募者が集まった場合、事前検診の結果により、モニターとして参加できる人が決まります。
他の治験に参加中でない人
より正しい臨床研究の結果を得るためには、他の薬の影響を排除しなければいけません。そのため、他の治験に参加中でないことも、治験モニターに参加する条件の1つです。
また他の治験に参加していた人は、ある程度の期間を経なければ、別の治験モニターに参加できないので注意しましょう。期間の条件は治験によって異なるので、応募を検討している人は、事前によく確認しておく必要があります。
治験モニターに参加できない人の特徴
上記の条件に加え、子どもに影響が出る恐れがあることから、妊娠中・授乳中の女性は治験に参加できないケースがほとんどです。また、数日から数週間の入院・通院が必要な治験が多く、健康保険証を所持していない場合、参加できないことも少なくありません。
臨床試験中の食事内容や起床時間、禁酒・禁煙などのルールを守れない人も参加できないので、期間と試験中の生活について、きちんと確認した上で参加しましょう。
治験モニターに参加する流れ
治験モニターに参加する流れも押さえておきましょう。まずは治験モニターの説明会に参加し、条件や注意点などを確認する必要があります。
説明会に参加する
治験に参加するには、治験モニターに登録する必要があります。直接募集している医療機関もありますが、治験モニターのサイト経由で応募するのが一般的です。
サイトに登録した上で治験の説明会に参加した後、モニターに応募できるようになります。参加条件は案件によって異なり、一度申し込むと途中で離脱できない場合もあるので、事前に説明をきちんと聞いておきましょう。
事前検診を受ける
説明会の参加後、治験モニターの案件に応募すると、まず治験を実施する医療機関で事前検診を受けることになります。検診で健康状態がチェックされ、一定の基準に満たない場合は治験に参加できないので注意が必要です。
定員に対して多くの応募者が集まった場合、健康状態の良好な応募者から参加できるようになります。体に問題がなくても、他の応募者より健康状態を示す数値が悪いと参加できない場合もあるので、日頃から規則正しい生活を送るよう心掛けましょう。
事前検診が終了すると数日後に合否の通知があり、合格であれば治験への参加が可能です。
治験の開始
治験当日に再び医療機関で検診が行われ、健康状態に問題がなければ、本格的に治験が開始されます。
多くの場合、治験を実施する医療機関に一定期間入院しながら、医薬品の服用効果を調べられます。数日あるいは数週間・数カ月おきに通院し、薬の効果を調べる治験も少なくありません。
また、近年は在宅でも可能な治験が増えています。日常生活を送りつつ、睡眠時間をモニター自らが記録したり、体に異常があった場合にのみ医療機関に連絡したりする治験なので、入院・通院するものに比べて負担がかからないのが特徴です。
いずれの治験を受ける場合でも、期間中は決められたルールを守り、規則正しい生活を送る必要があります。
治験モニターに参加する際の注意点
治験モニターは、他のバイトに比べて高額の報酬をもらえる傾向にあるため、学生を中心に人気があります。
しかし、治験モニターは未知の医薬品を試すバイトであるため、危険だと考えている人も少なくありません。治験の危険性も含め、モニターとして参加する際の注意点を知っておきましょう。
長期間行動が制限される
医療機関に治験モニターとして入院する場合、生活が大きく制限されます。起床時間や就寝時間・検査を受ける時間など、1日のスケジュールが厳密に決まっており、その通りに行動しなければいけません。
入院期間は治験によって異なり、2~3日程度で終わるものもあれば、数週間にわたり入院が必要なものもあります。長期にわたる治験の場合、まとまった時間の取れる人でなければ参加は難しいでしょう。
治験の期間中は採血や血圧・心電図など、1日に何度も検査が必要です。数時間おきに採血が必要な治験も多いので、注射が苦手な人はストレスを感じる可能性があります。
予期せぬ副作用が生じることも
新薬の効果を確かめたり、体に異常が起きないかをチェックしたりするのが治験です。そのため、薬の投与によって軽い副作用が発生する場合もあります。
どのような副作用が起こる可能性があるかは、事前に医療機関から説明があるものの、予期せぬ副作用が起こるリスクもゼロではありません。
予期せぬ副作用を最小限に抑えるために、国と医療機関が連携して安全に対する取り組みを徹底していますが、絶対に安全でなければ許容できないという人は、治験モニターに参加しない方がよいでしょう。
なお、薬の副作用により治療が必要になった場合には、回復するまで無償で医療機関の治療を受けられます。
リスクを知った上で治験モニターの検討を
治験モニターは高額の報酬をもらえる案件が多く、まとまった時間の取りやすい学生を中心に人気のあるバイトです。参加を希望する人は、まず治験モニターのサイトに登録し、説明会に参加しましょう。医療機関が直接募集しているケースもあります。
いずれにしても、参加するには医療機関で事前検診を受ける必要があり、合格しなければいけません。健康な人を対象としている治験の場合、健康状態が芳しくなければ参加できないので注意しましょう。日頃から規則正しい生活を送り、体調を整えておくことが大切です。
また、治験は新しい薬の効果を確かめる臨床試験であるため、副作用が発生する可能性があります。重篤な副作用が出るリスクもゼロではないので、リスクを知った上で、モニターとして参加するか慎重に検討しましょう。