社会教育士の仕事とは?活躍の場と求められるスキルを解説

社会教育士は地域の学びや人々の交流を支える重要な役割を担う資格です。とはいえ、名前は聞いたことはあっても正確に仕事内容を把握している人はそう多くありません。本記事では資格の詳細や仕事内容や活躍の場、求められるスキルについて解説いたします。

そもそも社会教育士とは

コンシェルジュのイメージ

(出典) pixta.jp

社会教育士は、地域社会の課題解決に向けて住民を支える専門家です。その定義や主な業務、そして社会教育主事との違いについて詳しく見ていきましょう。

社会教育士の定義と主な業務

社会教育士は地域の「学びのコンシェルジュ」として、行政・NPO・企業・学校などさまざまな分野で活躍しています。

具体的には、地域福祉の支援や防災意識の向上や多様な分野との連携、住民自治の推進などに取り組みます。例えば、島根県浜田市では健康づくりを促進し、北海道恵庭市では防災に関する学びの場を提供しています。

岡山県浅口市では学校教育に社会教育の視点を導入し、大阪府貝塚市では公民館を拠点に多様な講座を企画・運営しています。社会教育士は、地域のニーズを把握し、課題解決のための「学び」をデザインすることで、より良い地域社会の実現に貢献しているのです。

出典:社会教育士について:文部科学省 -

社会教育主事との違い

社会教育士と社会教育主事は、異なる役割を持っています。社会教育主事は、教育委員会事務局に置かれることが法律で定められた専門的職員です。

一方、社会教育士は2020年度に新設された称号で、文部科学省から委嘱を受けた実施機関が行う社会教育主事講習を修了するか。養成課程を置く大学で必要単位を修得することで名乗ることができます。

社会教育士は、NPOや企業、学校など幅広い分野で活躍できる点が特徴です。例えば、企業のCSR活動や学校の地域連携活動などで、その知識とスキルを発揮できます。一方、社会教育主事は主に行政機関で働き、社会教育の中心的な役割を担います。

社会教育士の資格取得方法

セミナーを受ける

(出典) pixta.jp

社会教育士の資格を取得するには、大学・短大での履修と社会教育主事講習の2つの方法があります。それぞれの特徴や必要な条件、費用や期間が異なるため、自分に合った方法を選ぶことが大切です。

大学での取得方法

社会教育士の資格を大学で取得するには、特定の科目を履修し、必要な単位を修得する必要があります。必修科目には「生涯学習概論」「生涯学習支援論」「社会教育経営論」があり、各4単位ずつ履修します。

これらは社会教育士の基礎となる知識を学ぶ重要な科目です。さらに、実践力を磨くための「社会教育実習」(1単位)や「社会教育演習」「社会教育課題研究」(選択必修・3単位)も用意されています。

これらの科目を通じて、理論と実践をバランスよく学べるのが特徴です。「社会教育特講」(8単位)では、幅広い視野と専門知識を深められます。具体的にどの大学で取得できるかは、文部科学省のWebサイトで確認できます。

出典: 社会教育主事講習・社会教育主事養成課程について:文部科学省 - 

社会教育主事講習での取得方法

社会教育主事講習を通じて社会教育士の資格を取得する方法もあります。文部科学省から委嘱を受けた実施機関で開催される講習に参加し、必要な科目を修了することで資格が得られます。

受講の申し込みは、居住地の都道府県教育委員会を通じて行います。講習科目は全8単位で、「生涯学習概論」「生涯学習支援論」「社会教育経営論」「社会教育演習」の4科目を学びます。

これらの科目を通じて、社会教育士として必要な能力を身に付けます。講習の受講要件には、大学卒業者や教員免許保有者、社会教育関係の職に2年以上従事した経験がある方などが含まれます。詳細は「社会教育主事講習等規程」で確認できます。

出典:社会教育主事講習等規程|電子政府の総合窓口(e-Gov)

資格取得にかかる費用と期間

大学で資格を取得する場合、通常の学費に加えて特別な費用はかかりません。これは大学の卒業要件を満たし、指定された科目の単位を取得することで資格を得るためです。従って、資格取得には通常4年間の在学期間が必要です。

一方、社会教育主事講習を通じて資格を取得する方法もあります。この場合、講習の費用は実施機関によって異なりますが、おおよそ2万~5万円程度です。講習は通常、夏期と冬期に分けて実施され、各期が約2週間程度です。全科目の修了には最短で半年ほどかかることがありますが、これは実施機関や受講者の進捗によって異なる可能性があります。

社会教育士に求められるスキルと能力

商談の様子

(出典) pixta.jp

社会教育士には、人々の学びを支援し、地域社会の課題解決や活性化に貢献するための特別なスキルと能力が求められます。ここでは、社会教育士に不可欠な能力について詳しく解説します。

ファシリテーション能力

社会教育士に求められるファシリテーション能力は、人々の自発的な行動や意識の変化を促す「学び」を支援するための重要なスキルです。

例えば、地域の環境問題について話し合う会議で、社会教育士は参加者の意見を引き出し、建設的な議論を導く役割を果たします。具体的には、参加者のやる気を引き出し、問題を自分ごととして捉えてもらうプロセスを支援する知識と技能が必要です。

社会教育士は、地域活動や市民活動において、参加者が自発的に行動し、共に学び、成長できる環境をつくり出すことができます。この能力によって、地域社会の課題解決や活性化、人々の豊かな学びの実現に大きく貢献します。

コーディネート能力

社会教育士のコーディネート能力は、多様な背景を持つ人々や組織を「学び」を通してつなぐための重要なスキルです。

地域の防災活動では、行政・消防・学校・地域住民など、さまざまな立場の人々をつなぎ、共通の目標に向かって協働できる環境を整えます。また、多文化共生の取り組みでは、地域の魅力を発掘し、観光資源として活用することで、多様な文化背景を持つ人々の交流機会を創出します。

社会教育士は地域社会のさまざまな場面で、人と人、組織と組織をつなぐ架け橋としての役割を果たします。

社会教育士の活躍の場と具体的な仕事内容

業務窓口

(出典) pixta.jp

社会教育士は、行政機関、企業・NPO、学校教育現場など、多様な場面で活躍しています。ここでは、社会教育士の主な活躍の場と具体的な仕事内容について詳しく見ていきましょう。

行政機関での活躍

行政機関での社会教育士の活躍は、地域住民との協働を推進する上で重要な役割を果たします。例えば地域の防災力向上のため、社会教育士が中心となって防災活動や啓発活動を企画・運営し、住民の防災意識を高めることができます。

また、多文化共生社会の実現に向けて、異文化理解を深めるイベントやワークショップを開催し、地域の国際化を促進する役割も担います。

さらに、子どもの学習支援から高齢者の生きがいづくりまで、幅広い世代を対象とした生涯学習の機会を提供し、地域全体の学びを支援します。

企業・NPOでの活躍

企業やNPOでも、社会教育士の専門性が大いに生かされています。地域課題の解決に取り組むNPOでは、社会教育士が「学び」のスキルを活用し、行政や住民との連携をスムーズに進める役割を担います。

一方、企業では、CSR活動の推進に社会教育士の力が発揮されます。持続可能な発展を目指す企業にとって、地域との共生は欠かせません。社会教育士は、SDGsの推進や地域貢献活動の企画・運営をサポートし、企業と地域をつなぐ重要な存在となっています。

学校教育現場での活躍

学校教育現場でも、社会教育士の活躍が注目されています。子どもたちの学びには、社会との接点が不可欠です。社会教育士は、学校と地域をつなぐ架け橋として、子どもたちの学びを豊かにする役割を担います。

例えば、地域住民との交流イベントの企画や、地域資源を活用した体験学習プログラムの開発を通じて、子どもたちの社会性を育みます。また、総合的な学習の時間では、地域課題解決プロジェクトをサポートし、子どもたちが主体的に学ぶ機会を創出します。 このように、社会教育士は学校教育に新たな視点を取り入れ、子どもたちの未来を開く重要な存在となっています。

社会教育士は地域の学びと成長を支える存在

商談の様子

(出典) pixta.jp

社会教育士は、地域社会の教育活動を支援する専門家です。資格取得には講習や養成課程があり、ファシリテーション能力やコーディネート能力が求められます。行政、企業・NPO・学校など幅広い分野で活躍し、社会教育主事とは異なる役割を担います。

具体的な仕事内容や活動事例を通じて、社会教育士の重要性が理解できます。今後は、資格取得後のキャリアパスや具体的な年収情報、求人状況など、より実践的な情報提供が期待されます。社会教育士は、地域の学びと成長を支える重要な存在として注目されています。