タクシー運転手として働くなら、専用の免許を取得する必要があります。どのくらいの費用や期間で取得できるのか、難しくはないかなど、疑問を抱えている人もいるでしょう。タクシー免許について、条件や費用、取得後の働き方まで詳しく解説します。
タクシー運転手に必要な免許とは
一般的な運転免許だけでは、タクシー運転手として働けません。必要な免許の種類と取得条件、普通免許との違いを見ていきましょう。
タクシー運転手になるための条件
タクシー運転手になるためには、第二種運転免許を取得しなくてはなりません。二種免許には普通・中型・大型・大型特殊・けん引の5種類があり、タクシーの場合は「普通二種免許」が必要です。
免許の受験資格は、以下の通りです。
- 満21歳以上
- 視力や聴力などの身体基準を満たす
- 普通第一種運転免許などの取得から通算3年以上経過している
免許停止期間がある場合は、その期間を除いて3年以上経過している必要があります。
なお、2022年5月に受験資格が見直され、特別な教習を修了すれば、19歳以上かつ普通免許などの取得から通算1年以上経過した人も、二種免許の受験資格を得られることになりました。
出典:第二種免許等の受験資格の見直しについて(令和4年5月13日)|警察庁Webサイト
二種免許の概要と一種免許との違い
二種免許は、タクシーやバスなどの旅客自動車を運転するための資格です。一種免許との大きな違いは、客を乗せて運送することを目的としている点にあります。このため一種免許よりも高度な運転技術が求められるのはもちろん、身体的基準も厳しいのが特徴です。
例えば視力の基準は、一種免許の「片眼でそれぞれ0.3、両眼で0.7以上」に対し、二種免許は「片眼で0.5以上、両眼で0.8以上」です。「深視力(しんしりょく)」という、遠近感や立体感を把握する能力も検査されます。
教習でも、常に客を乗せた状況を想定した、安全で正確な運転技術の習得に重点が置かれています。
タクシー免許の取得方法と流れ
タクシー運転手に必要な普通二種免許の取得方法は、大きく分けて教習所(通学・合宿)卒業、と一発試験の2パターンがあります。各取得方法の詳細やメリット・デメリットを解説します。
教習所に通う
教習所を卒業する方法は、一発試験と比べて合格率が高いため、多くの人が選択しています。通学と合宿の2つの方法があり、通学は自分のペースで学べるメリットがあります。
休日や夜間の授業もあり、仕事や学業と両立させやすいでしょう。ただし二種免許の指導者が少ないため、予約が取りにくく、卒業までに時間がかかることもあります。
また二種免許を取得できる教習所は限定されており、住んでいる地域に通える教習所がない可能性もあります。
合宿免許
合宿免許は、二種免許取得の効率的な方法として注目されています。最大のメリットは、短期間で集中的に学べることです。食費や宿泊費が含まれているため、総合的に見ると費用を抑えられる可能性があります。
デメリットは、合宿期間中は会社や学校を休まなければならないことです。仕事や学業が忙しく、まとまった休みを取りにくい人には難しいかもしれません。休みを取れたとしても、学生の長期休暇に重なると混んでいて、希望の日程で予約できないケースもあります。
また合宿を実施している教習所のほとんどが地方にあるため、都市部の複雑な道路環境に慣れる機会が少ないことも課題です。
一発試験
一発試験とは、教習所に通わずに免許を取得する方法です。教習所の場合は卒業技能検定に合格してから運転免許センターで学科試験を受けますが、一発試験はどちらも運転免許センターで受けます。
学科試験、技能試験の順に受験し、後日教習所で所定の取得時講習(応急救護処置講習と旅客者講習)を受講します。その後、運転免許センターに出向き、免許が交付される流れです。
一発試験なら、教習所に比べて取得までの費用や時間を大幅に抑えられます。ただし合格率は10%未満と、非常に低いのが現状です。また試験は、平日しか実施していません。
合格までに何度も通うことになれば、予算をオーバーしたり、休暇を取るのに苦労したりする可能性があります。
タクシー免許取得にかかる費用と期間
普通二種免許取得には、具体的にどのくらいの費用や時間がかかるのでしょうか。通学・合宿・一発試験を比べながら、それぞれの目安を見ていきましょう。
取得方法別の費用比較
教習所・一発試験それぞれの費用目安は以下の通りです。
- 教習所:20万~30万円
- 一発試験:約4万円
教習所の費用は、地域やシーズンによって異なります。通学と合宿で費用の差はほとんどありませんが、都心の教習所に通うよりは、地方での合宿の方が安くなる可能性はあります。
一発試験でかかる費用は、受験料4,800円・試験車使用料2,850円・免許証交付料2,050円に、取得時講習受講手数料2万7,000円を加えた3万6,700円です。受験料と試験車使用料は、受験の度に支払う必要があります。
取得にかかる期間の目安
普通二種免許取得にかかる日数は、合宿で10日前後とされています。卒業までに早くても5~6日かかり、免許センターでの学科試験にも1日必要です。通学の場合は予約スケジュールによって、数週間から数カ月と幅が大きくなります。
一発免許は合格までにかかる日数に、取得時講習の受講期間が加わります。合格までの日数は実力次第ですので、一概にはいえません。1日で終わる人もいれば、3カ月以上かかる人もいます。
地域によっては取得時講習の予約が取れず、受講完了まで数週間かかるケースもあります。
二種免許試験合格のポイント
二種免許試験には、学科も技能も一種免許と異なる特徴があります。それぞれの内容と、合格のポイントを見ていきましょう。
学科試験の内容と対策
学科試験では、道路交通法や自動車の構造・整備に関する問題のほかに、バスやタクシーなどの車両知識や、乗客への安全配慮など「旅客輸送に関する問題」が出ます。大型二種やけん引二種など、普通二種には関係のない問題も、5問あります。
学科試験の合格基準は100点満点で90点以上と高いため、計画的な学習が欠かせません。効果的な対策として、問題集を繰り返し解くことが挙げられます。
スマホアプリを活用した学習もおすすめです。通勤や休憩の隙間時間を利用して、効率よく勉強できます。
技能試験のポイントと注意点
技能試験では、一種免許以上に安全かつスムーズな運転が求められます。一種免許は80点以上で合格ですが、二種免許は90点以上です。ウインカー出しや安全確認のタイミング、横断歩道や信号の停止位置など、細かな点に注意を払いましょう。
二種免許では、乗客を意識した乗り心地を実現できるかどうかが、重要なポイントとなります。運転テクニックに自信のある人が、普段の運転でついた癖が原因で不合格になるケースは珍しくありません。基本に戻り、練習を重ねることが大切です。
タクシー免許取得後の展望
免許を取得した後は、どのような働き方ができるのでしょうか。タクシー運転手の勤務体系や収入、キャリアアップの可能性について解説します。
タクシー運転手の勤務体系と収入
タクシー運転手の勤務体系には、主に日勤と隔日勤の2種類があります。隔日勤とは、1回の勤務で2日分の仕事をこなすスタイルで、出社日数は月に11〜13回です。多くのタクシー会社が隔日勤を採用していますが、好きなほうを選べる会社もあります。
近年、日本ではバスやタクシーの運転手が不足しています。このため就職先の選択肢が多く、安定した収入を得られる可能性が高いでしょう。 未経験者向けの給与補償制度を設けている会社もあり、初めての人でも安心して働けます。
キャリアアップの可能性
タクシー運転手として経験を積めば、さまざまな道が開けます。その1つに、スペシャリストとして活躍する道があります。英語をマスターすれば、バイリンガルタクシーとして営業できますし、特定の観光地に精通すれば、観光ガイドを兼任できるでしょう。
所属する会社で管理職に昇進する道や、人事・営業・経理といった運転手以外の職種に転換する道もあります。
独立して個人タクシーを開業したり、ハイヤーの運転手に転職したりすることも可能です。ハイヤー運転手になれば、国賓やVIPを送迎する場面に遭遇するかもしれません。大型二種免許を取得し、バスの運転手になるのも選択肢の1つです。
タクシー免許を取得して新たなキャリアへの一歩を踏み出そう
タクシー運転手になるには、普通二種免許が必要です。取得方法には教習所への通学や合宿、一発試験があり、費用や期間は選択する方法によって異なります。試験では、旅客を乗せるために必要な知識や技術が問われます。
免許取得後は、努力次第でタクシー会社での昇進や独立開業も可能です。タクシー運転手への挑戦を考えているなら、求人サイト「スタンバイ」を使ってみましょう。豊富な求人情報の中から、希望に合う職場を探せます。