挑戦の伴走者、NPO法人G-netから見る、岐阜の中小企業の魅力とキャリア形成

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岐阜にある中小企業を人材面から支えるNPO法人G-net。

2001年に創業し、「挑戦の伴走者に、熱意のつなぎ役に」を合言葉に、地域産業の経営革新と担い手となる若者の育成を通じた岐阜地域の活性化に取り組んでいます。

・大学生を対象とした実践型インターンシップ事業「ホンキ系インターン」

・地域の右腕人材に特化した就職・採用支援事業「ミギウデ」

・社会人を対象としたプロジェクト型兼業マッチング事業「ふるさと兼業」など

様々な事業を手がけ、挑戦する中小企業と挑戦する若者のコーディネートすることで新たなモデルを地域に生み出している団体です。

日頃から岐阜地域の中小企業の経営者と密なコミュニケーションを取り、企業の抱える課題やチャレンジを目の当たりにし、中小企業をとりまく採用市場を実感しておられる、G-netの代表と副代表に岐阜地域の中小企業の魅力やそこで働くということについて伺いました。

 

■プロフィール

・南田修司:1984年、奈良生まれ。奈良学園高等学校、三重大学大学院教育学研究科修了。2009年に新卒でNPO法人G-netに加入し、副代表、共同代表を経て2017年より代表理事に就任。中核事業である長期実践型「ホンキ系インターンシップ」は地方都市初の本格的事業化に成功し、政府による複数の表彰や全国で採用される高校「政治経済」教科書でも紹介されている。また、13年より行う、中小企業の右腕人材に特化した新卒採用支援事業も大きな注目を集めている。現在は、蓄積したインターンシップのコーディネートノウハウを活用し、大学教職員向けの研修や、カリキュラムの共同開発、社会人向けのプログラム開発にも従事し、地域と若者をつなぐ新たな仕組みづくりを進めている。

・田中勲:1984年5月4日生まれ。各務原高校理数科、岐阜大学工学部で理系学問を学ぶ。2009年-2011年JICAの青年海外協力隊としてボリビアへ。2012年11月よりG-net職員に。G-net入社後は、長期実践型インターンシップのコーディネーター業務を担当しつつ、採用・就職支援事業の開発に携わり、2014年9月に事業部長、2017年6月に副代表理事就任。若者向けにキャリアコーディネーターとして就活セミナーやキャリア面談を実施しつつ、地域の中小企業向けに社外人事部として採用戦略の設計や若者との接点づくり、イベントを通じた採用力アップなどで関わっている。G-net職員として勤務する傍ら青年海外協力隊OBとして協力隊ナビを実施したり、高校・中学への出前講座へ出向いたりしている。

 

「岐阜だからではなく、チャレンジし続ける企業だから」

――マッチングや組織開発のサポートを通じて感じる、働く場所としての岐阜の中小企業の魅力を教えてください。

南田:前提として中小企業だからいいよねとは思っていないんです。中小企業のイメージは一般的に言うと、大手企業やベンチャー企業と比較すると、給与は高くない、福利厚生は整ってないようにみえる、キャリアパスが見えづらい、経営者および社員の魅力が伝わりにくい、とあまり魅力的に捉えられていません。

一方で、社会的に働き手が企業に求める報酬や価値は変化し、多様になってきている。待遇面だけではなく、トータルとして何が得られるか、そういったことを考えて中小企業を選択する若い方も少なからずいます。

実際に待遇面では大手企業には及ばなくても、挑戦したいと若者が集まる中小企業も存在しています。経営者や仕事内容、地域への貢献など、魅力に感じる何かがあるんです。

そうした、私たちがご一緒させていただいている企業さんは、いずれも地域で、変化を恐れずにチャレンジをしている中小企業や経営者の方々です。

岐阜だから、中小企業だからというわけではなく、「チャレンジしている企業、チャレンジできる場所を創っている企業」だからこそ魅力があると思っています。

 

田中:南田が言うように、中小企業だから全部いいとは思っていませんし、学生にも「中小企業がいいよね」という伝え方はしていません。私たちが実際に経営者とお話させていただいて、本当は魅力があるのにうまく伝わっていないことを翻訳して伝える。そうすることで、中小企業だから、ではない魅力的な求人になってくると感じています。

もちろん各企業については経営者の想いも含めて、実際に訪問して徹底的に掘り下げているので、それは学生にもきちんと伝えています。ただ、単に企業の魅力を代弁することをメインにはしていないんです。何より大事なのは、「働く人自身が職業観をいかにつくるか」だと考えています。だから、学生達にも職業感の醸成や自分の軸を作るお手伝いをしています。

それができた上で、各企業の経営者や人事担当者にお会いすると、大手か中小かということではないマッチングに繋がるんです。例えば、若手のうちから様々な経験が積める環境が整っていたことが決め手となって中小企業に就職した学生などもいました。もちろん、結果として繋がる先が中小企業だけとは限りませんが、学生ひとりひとりがそれぞれの軸に沿った選択をしています。

 

1つの企業にいても、兼業していても、「職業、わたし」。キャリア自律の重要性。

――昨今の採用市場の変化と中小企業でのキャリア形成について、どのようにお考えですか。

南田:個人的な実感としては、東日本大震災や昨今の働き方に関する様々な事件等を機に、社会全体でキャリアの考え方がグッと変わったと感じています。これまで所属していた企業での仕事のスピード感・任される裁量・また自身の想いなどを鑑みて、これが本当に私のやりたい事なのか、と考える方は増えたのではないかと思います。

「“企業に所属する私”ではなく、私というやりたいことの中に“企業”がある」そんな感覚を持った方が増えたように思います。

ちょうど先日お会いした方も大企業で10年近く勤務していらっしゃったのですが、10年経って本当にこれでいいのかと疑問を持ち始めたというようなお話をしてくださいました。

 

田中:そうした社会的な背景の中で、常に学生に話しているのは、「キャリア自律が必要だ」ということです。自分自身がどこに行っても活躍できるどうか、そのためにどういった環境でキャリアを積むかを選択していくことが必要です。これは転職市場にもつながる部分があると思っています。先ほどの南田の話にあったような疑問を抱えている方は決して少なくないと思いますので、そうした方へのサポートも必要だと感じています。

 

南田:転職で言うと、もう一歩踏み込めない方々がいるのは、「自分が何を、誰と、何のために、できるのか」がわからないからだと思うんです。例えば地元に帰りたいと思っても、仕事があるかわからない、誰と働けるかわからない、見つけたとしてもそれが魅力的か、共感できるかもわからない。こういう悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか。

そうした、いきなり転職というハードルが高い人たちのために、G-netでは、「ふるさと兼業(※1)」という事業を進めています。兼業という形でワンクッション置いて、中小企業のプロジェクトに参画したり、企業の地域に貢献したり、ということができます。また、結婚や子育て、介護などで様々な働き方をチョイスしたい方も増えています。「ふるさと兼業」は、企業との関わり方にグラデーションが作ることができ、それをプロジェクトとして見える化することで、多様な立場の人が飛び込みやすくなる。こうしたことも多様な働き方の推進につながると思っているんです。

ただ、副業兼業でなくても、1つの企業にいて複数のプロジェクトを進めている方もいらっしゃいますので、やはり大事なのは自分が何をしたいか、できるかです。

「職業=わたし」という意識が重要だと思っています。

 

田中:少し話が変わりますが、「起業のリスクがない」ということも、中小企業への転職のメリットの一つだと思います。新たなチャレンジをしたい時に、ものすごいスキルがないといけないのではないかとか、一芸に秀でていないといけないのではないかと思われる方が多いと思います。でも必ずしもそうではない。そういったものがなくてもチャレンジできる場所があるということは知っていただきたいですね。

ちなみに先ほどの「ふるさと兼業」のキャッチコピーは「共感と熱意」なんです。スキルや一芸ではなく、共感や熱意からスタートすることがあっても良いと思っています。

一方で、中途入社において、企業側にも意識改革も重要です。ハイスペックな人材を求められることも多いですが、人材不足の昨今、100%の人材を見つけるのは簡単ではありません。ここのギャップをどう埋めるかも私たちの仕事だと思っているので、現実をお伝えし、欲しい人材の明確化、優先度つけなどを一緒に考えながらギャップを埋めるサポートをさせていただいています。

 

南田:もちろん会社自身が変化していくことも大切です。経営者の意識や姿勢が柔軟だったり、変化し続けている企業は採用においても、その後の人材育成や経営という面でも、結果を出されているように思います。

変えたくないと思っているところに変えたいという人はこないですからね。

求職者にとっては、キャリアの安心感があるかどうかは、気になるポイントですよね。でもそれは会社案内だけではわからないことも多いと思うんです。中小・大手・ベンチャーとひとくくりに見てしまうとなかなか見えない部分もある。

初めて見るデザートと一緒で、プロフィールだけを見て選ぶには限界があるんです。

食べて見て初めてわかることもあるので、経営者に実際に会ってみて、その魅力を感じてほしいなと思います。

 

 

社会のために自らアクションを起こせる環境で、「落ちているゴミをまたがない」

――お二人はなぜこの場所を選択しているのですか。

南田:岐阜だからということではなく、やりたいことができる環境がここにあったんです。私は奈良県出身です。きっと奈良でも同じような課題もあると思いますし、頑張っている方もいらっしゃると思います。ですが、縁あって岐阜に来て、そこで課題に対して諦めず、また、伝統にあぐらをかくことなく果敢にチャレンジをしている方々と出会いました。そして、自分たちがここでチャレンジする地域の方々をサポートすることができ、それが地域や社会にとって価値あるインパクトが出せると思っています。まだまだここでできることがあるので、貢献していきたいと思っています。

 

田中:私は、コントローラブルだということが大きいです。「自分でがんばれば変わる」と思ったからです。社内モットーの一つに「落ちているゴミをまたがない」というのがあります。これは感じた違和感や疑問をそのままにしないという意味ですが、まさにその通りで、目の前にある社会課題に対し、自分でアクションを起こせる環境があります。

 

南田:社会性ということでいうと、正直自分たちよりも地域の地場の企業の方がソーシャルだと思いますし、地域の企業が発展することこそ意味のあることです。私たちはそれをサポートしたい。

よりよい社会の実現に向けては、企業・NPO・教育機関・学生や求職者、様々な立場の人同士をつなぐコーディネートが必要です。それぞれの言語で語れることはG-netの強みだと思っています。

 

田中:そういう意味で、地域の中小企業に転職で入社する方々にも、入社する企業だけではなく、地域への想いをもって入っていっていただけるといいなと思います。

 

 

地域のため、社会のため、自らも挑戦を続けながら、企業と人の挑戦を伴走する。岐阜にはそうした挑戦者を応援する土壌がある。

「企業、人の挑戦や発展を応援したい」そう語るお二人の言葉は、山々に囲まれた岐阜で清らかな水が豊富に流るる長良川のごとく、淀みがありません。

人々の働き方が変化する昨今、働き手と企業のニーズを丁寧に汲み取り、その溝を丁寧に埋めて両者を近づけるコーディネーターの存在はかかせないが、決して容易ではないはずです。

飽くなき挑戦をつづける地域企業と、その変革の担い手となるべく集まる人材、双方をつなぎ、誰もが活躍できる地域、社会づくりに奔走するG-netは、まさに彼ら自身が挑戦者です。

歴史上の挑戦者の一人、織田信長が、新たなチャレンジとして楽市楽座を立ち上げたのもここ、岐阜です。岐阜にはそうした社会の変革に向けたチャレンジをそれぞれの立場で応援する、そんな土壌が脈々と受け継がれているのかもしれません。

G-netでは現在、地域の中小企業へ人材育成に関わる様々な事業の提案や実施のサポートを担当するコーディネーターを募集しています。

NPO法人G-netの求人はこちら

 

※1:ふるさと兼業 https://furusatokengyo.jp/

『ふるさと兼業』は、NPO法人G-netが展開する、「愛する地域や共感する事業にプロジェクト単位でコミットできる兼業プラットフォーム」。

プロボノや兼業、パラレルキャリアという言葉が当たり前に使われ始めるなか、多様な働き方の推進や、地方創生を加速させることを目的に、人材不足の課題を抱えながらも新規事業などに挑戦する地域企業と、本業をやめずに地元や興味のあるテーマに関わりたい都市部の人材をつなげる。

2018年9月13日(木)にはマッチングWebサイトがオープンし、都会で生活しながら地域に関わる、大手企業で活躍しながらNPOや中小企業、ベンチャー企業に関わる、そんな新たな選択肢を提案している。

執筆者

地方企業・地方自治体の採用を支援するビズリーチ地方創生支援室。魅力的な地方の情報をお届けします。