岡崎市の中小企業相談所「OKa-Biz」に 累計5,000件以上の相談が殺到する理由

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「願いが正しければ、時至れば必ず成就する」という言葉を残した徳川家康公の生地・岡崎城で知られる愛知県岡崎市。2016年で市制100周年を迎える歴史と伝統のある街だ。今、この街の中小企業が活気づいているのをご存じだろうか。富士市産業支援センター「f-Biz」をモデルにした中小企業相談所「OKa-Biz」を核にした取り組みが注目を集めている。岡崎市が取り組む「究極の地方創生」について、岡崎市経済振興部長の神尾氏と、OKa-Bizのセンター長を務める秋元氏が語る。

岡崎市と商工会議所が開設した中小企業相談所「OKa-Biz」とは

--中小企業相談所「OKa-Biz」は開設から3年を迎えます。まずは、開設に至った経緯についてお話しいただけますか?

――秋元: OKa-Bizができたのは2013年の10月なので設立から丸3年になります。これまで企業の経営支援は商工会議所が担ってきましたよね。

――神尾: 国の制度の活用支援や、補助金や助成金の活用サポートが中心でしたよね。

――秋元: でも地域の企業の声を聞くと、「それはそれでとても助かるんだけど、売り上げをあげたい。それを相談できる場所がない」というのが本当に多かった。そこで、静岡県の富士市にある富士市産業支援センター「f-Biz」をモデルに、売り上げアップの相談に特化したOKa-Bizの立ち上げに至ったんですよね。
開設当初は、時間もスタッフ数も限られた、本当に小さな相談所でした。だけど、1年目の相談件数は1,400件以上もあったんです。目標としていた年間600件の倍以上でした。

――神尾: ものすごい数の相談者がいらっしゃるから、ある時期はなんと相談まで1カ月半待ちでしたよね。

――秋元: そうなんです。自分だったら相談まで1カ月半なんて待っていられない。

――神尾: 私もよくお叱りを受けていました。もっと早く相談できないのかと。

――秋元: それでスタッフ数を増やし、体制を強化しました。今では2週間もお待ちいただければサポートさせていただいています。2016年の相談見込み数は2,400件近くだと思います。

――神尾: ただ、岡崎市にはおよそ1万5,000の事業者さんがいるので、まだまだ普及させないといけない。これが課題ですね。

――秋元: そうですね。これまで累計で5,000件以上の相談を受けていますが、実数でいうと約1,000事業者です。1万5,000事業者という全体から見れば1割にも届きませんから。

――神尾: これからですね。OKa-Bizで相談した後、みなさん笑顔になって帰っていただくという話を聞くと、秋元さんに任せてよかったと思います。OKa-Bizができてから、若い方や女性の活躍が増えましたよね。

――秋元: 創業の相談は全体の2割を超え、女性の相談も2016年に入っておよそ半年で4割を超えました。2015年には内閣府から「女性のチャレンジ支援賞」をいただいたほどです。一方で、60歳を超えた方が、「セカンドチャレンジをしたい」と相談に来ることも多くあります。いずれにしても、相談しに来た方が成果を出し始めているという手応えはありますね。

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岡崎ビジネスサポートセンター OKa-Biz センター長  秋元 祥治氏
中小企業支援をf-Biz・小出宗昭氏に師事し、OKa-Bizの立ち上げを担当。13年経産省「キャリ教育アワード」優秀賞、12年内閣府「ものづくり日本大賞」優秀賞、09年経産省「ソーシャルビジネス55選」選出など。中小企業庁よろず支援拠点事業全国本部アドバイザリーボードに就任したほか、公職も多数。滋賀大学客員准教授、NPO法人G-net代表理事。

 

--さまざまな業種や規模の事業者さんが相談にいらっしゃると思います。具体的に、どういった相談があるのでしょうか。

――秋元: 林業やメッキ屋、飲食店、仏壇屋など、相談にいらっしゃる方の幅は本当に広いです。でも、話を聞くなかで、ご本人があたり前のように取り組んでいるがゆえに気がついていない「真のセールスポイント」、魅力を探っていくので、実は業種は関係ないんです。

つい最近、オープンして間もない飲食店の料理長が「お客さんが来ない」と相談にいらっしゃいました。話を聞いて驚いたのが、その方は数十年にわたって有名な高級料理店で副料理長や料理長のキャリアを積んでいたんです。

「え! すごいじゃないですか、なんでそれを言わないんですか?」と聞いたら、「すごくないですよ、こんなの普通の話でしょ?」と言う。たしかに、料理長からすると、自分が歩んできた普通の道なんですよね。それを「すごい」とは思わない。他の人から見たときに、何が魅力なのかは自分ではなかなか気づけないんです。

――神尾: だけど、そもそもその事業に顧客がいるということは、支持されている理由がある。

――秋元: その通りです。どの事業者さんも、お客さんがいるなら「選ばれている理由」があって、それはじっくり話を聞けば必ず見つかるのだと我々は考えています。

選ばれるには、ワケがある

――秋元: 以前、金型を作っている会社の社長さんがOKa-Bizに相談にいらっしゃいました。その会社はリーマンショックのあおりを受けて、売り上げは10分の1に、50人いた従業員は2人になり、廃業を視野に入れた相談でした。でも話を聞いていると、この会社には他にない強みがあったんですよ。

金型の業界って、納品したらメンテナンスのフォローはしないらしいんです。でもその会社は、納品後の金型や他社製の金型でも「ちょっと欠けたから見てよ」などの声に応えていた。あまりにもサラッと話すから、「それって、他にやっている会社はある?」と聞いたら、「うーん、考えてみたらないかもしれない」と言うんです。まして、大型の金型や、外国製のモノでもメンテナンス対応しているということなんです。

――神尾: 「これだ!」と思ったんですね。

――秋元: その通りです。「金型のメンテナンスができる」という売りを明確にしたDMを作って、それを大手から中堅まで多くのメーカーに届けるという提案を実行してもらうと、複数のメーカーから反応がありました。しかも、大手メーカーとの直取引も決まり、一気に売り上げはV字回復しました。

中根金型・チラシデータ (1)

 

――神尾: 自分たちの真のセールスポイントに気づいていなかったということですね。お麩屋さんとも新商品を開発していますよね?

――秋元: 創業108年のお麩屋さんですね。この50年間で、お麩の会社は7〜8割が廃業しているといいます。このお麩屋さんは、「変えていくことが伝統だから、一緒に新商品開発をしたい」と相談にいらっしゃいました。

お麩屋さんで作っていたのは、笹の葉に巻かれた、生麩でこし餡を包んだ「麩饅頭」。笹の葉に巻かれたお饅頭を買うのは年配の方という印象がありますよね。だから見せ方を変えて、そのイメージを一新した新商品の提案をしました。販路とターゲットを変えたのです。

麩屋万・たまかざり③

商品化まで1年かかりましたが、カラフルで透き通った宝石のような麩饅頭は「たまかざり」という名前で、8月から大手百貨店での販売が始まります。

 

――神尾: 高級感のある商品で、手土産に良さそう。

――秋元: そうなんです。老舗が手掛ける新たな挑戦で、デパートで買う「夏の新しい手土産」です。そうそう神尾さん、いまOKa-Bizでサポートさせていただいている「和ろうそく」が売れているんですよ。

――神尾: それはすごい。家の中だと、仏壇や神棚以外で和ろうそくをどう使えばいいかわからないから、爆発的に売れるものではないですよね。

――秋元: そうなんです。これまでは、テレビや新聞、雑誌にいくら掲載されても和ろうそく屋さんの売り上げは変わらなかったそうです。「これは利用シーンを提案しないと新しい販路はできない」と思い、自分の夢や願いを書いた和紙を和ろうそくの芯にするという、オリジナルろうそくを作って販売する提案をしました。

神棚や神社仏閣という今までのターゲットから、願掛けや、スピリチュアルの領域へとマーケットを変えたのです。

まだ販売が始まったばかりですが、1本3,600円の和ろうそくが1カ月で40本も売れたみたいで。通常の和ろうそくは1本500円程度なのに、利用シーンとターゲットを変えるだけで、これだけ価値が変わるんです。

2岡崎市経済振興部長 神尾 典彦 氏
昭和56年岡崎市入庁。商工労政課、財政課、企画課、市民協働推進課などに在籍。平成20年にオープンした「岡崎市図書館交流プラザ・りぶら」の建設・運営に携わる。その後、企画財政部政策推進課主幹、文化芸術部文化活動推進課長に就任し、経済振興部商工労政課長、経済振興部次長などを歴任。平成28年4月から現職。

重要なのは「連携」。チーム岡崎の取り組み

--OKa-Bizができたことで岡崎市全体が盛り上がり始めていると思います。他機関との連携などはされているのでしょうか?

――神尾: OKa-Bizができたことで、商工会議所にも地元の金融機関にも相談が増えています。

――秋元: 商工会議所は、「売り上げアップの相談ならOKa-Bizに行くといいよ」と言ってくれるし、OKa-Bizも「補助金や帳簿のつけ方なら商工会議所がサポートしてくれるよ」と案内しています。他の機関との連携がスムーズにすすんでいます。

最近、売り上げアップや創業に関する相談に加えて、「人材をどう確保するか」という相談も増えています。2015年から提携している株式会社ビズリーチのサービス「スタンバイ」なら、アルバイトから正社員までお金を使わずに人材を採用できます。これを提案することで、売り上げや創業支援とともに、お金をかけない採用方法も相談できるOKa-Bizになりたいですね。

――神尾: 市の取り組みとして、「産業支援機能強化」を目指した、産業・金融・大学・士業・行政の連携が始まります。これにOKa-Bizも参加してもらって、岡崎市の中小企業を盛り上げていきたい。

――秋元: もちろんです。連携は本当に大切ですよね。今、OKa-Bizに新規で相談にいらっしゃる8割の方が口コミです。もちろん事業者同士の口コミが多いですが、金融機関や商工会議所からの紹介も多くあります。行政や企業、団体などとの連携は引き続き強めていきたいです。

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地域を活かすも殺すも「人」である

--最後に、全国の事業者さんや自治体の方へメッセージをお願いします。

――秋元: この仕事を始めて痛感しているのは、どの事業者さんも面白い取り組みや、その会社ならではの強みがあるということ。お話を聞いていると毎日驚くことばかりで、これは日本の中小企業すべてに言える話だと思います。

だから、話をちゃんと聞いて、強みに気づいて、活かす方法を考えて、成果につなげられる人がいれば、どの地域の中小企業も輝くはずなんです。企業が輝けば、その地域で仕事をする人も増えるでしょう。

――神尾: 少子高齢化で人口は減り、労働力人口も減るのだから、企業が輝いている地域は強いですよね。

――秋元: そう思います。今はインターネットがあるので、誰にでも訴求できるチャンスがあります。だから、どんなに小さな事業者でも、その魅力や真のセールスポイントをきちんと発信できれば、いい人を採用できて、売り上げを伸ばせる可能性は大いにあります。

――神尾: それぞれの地域や企業に必ずある「いいところ」を活かすのは人ですから、私たちがモデルにしたf-Bizの仕組みを作れば、地方創生、地域活性へとつながっていくでしょう。これこそ地方創生の究極のアプローチだと思っています。実際、最近はf-Biz、OKa-Bizのモデルを取り入れようとする地域が増えてきましたね。

――秋元: はい、2015年4月には熊本県天草市で、2016年7月には岐阜県関市でオープンしました。みなさんのお手本になれるようなOKa-Bizになることを目指したいと考えています。

――神尾: 何より挑戦することが大事ですね。地方も、地方の中小企業も変わっていくはずですから。岡崎市は事業者のチャレンジを支援する場ができたことで、イキイキとした企業が増えてきました。この流れを加速させることで、ますます働きがいのある市にしていきたいです。

 

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執筆者

みんなのスタンバイ編集部。「はたらきかたをかんがえる」をコンセプトに、はたらく好奇心を刺激する情報をすべてのはたらく世代へお届けします。