動物看護師になるには資格は不要?仕事内容とおすすめの民間資格!

動物看護師とは

猫にワクチンを打つ

(出典) photo-ac.com

動物看護師とは、主に動物病院内でペット・動物の診療や治療にあたる獣医師をサポートする職種です。動物が安心できる環境づくりに努め、保定による検査補助や入院施設の掃除・消毒など業務は多岐にわたります。日本ではペットを飼う人が増えているため需要は高く、新たな法律に基づいて国家資格もできます。

今後は「愛玩動物看護師」

2022年5月1日から「愛玩動物看護師法」が施行され、動物看護師は「愛玩動物看護師」という国家資格となります。国家資格を持たない人は「動物看護師」という名称の使用もできません。移行期間の猶予は2024年10月31日までで、これ以降「動物看護師」は国家資格独占の名称となります。

愛玩動物看護師は、これまで動物看護師が行えなかった投薬・採血などの医療行為も可能です。獣医師の指示があれば医療行為の一部に携わることもでき、従来の動物看護師以上に幅広い業務をカバーできるようになります。

動物看護に関わる仕事をしたい人は、国家資格の取得を目指しましょう。愛玩動物看護師の最初の予備試験は2022年11月に、最初の国家試験は20235年2月中旬に実施されています。

動物看護師の主な仕事内容

カルテを作成する

(出典) photo-ac.com

獣医師の獣医療サポート(診療補助行為)が中心の業務となります。動物病院内で必要な業務、たとえば受付事務や院内清掃、入院中の動物(患畜)の世話も業務範囲に含まれます。従来の動物看護師もできた仕事の種類を、具体的に見ていきましょう。

外来の受付、カルテの管理・ファイリング

受付対応、会計、獣医師へのカルテの受け渡しやその管理業務などを行います。また、ペットの飼い主からしつけなどについて質問されることもあります。

診療・検査の補助

消毒、保定(犬や猫などが暴れないようにうまく押さえること)、検温、体重測定、手術や検査の器具の準備などを行います。

入院動物の世話

餌やり、グルーミング(毛の手入れ)、トリミング(毛のカット)、爪の手入れ、耳の掃除など、動物が安心できるようにコミュニケーションを取りながら飼育全般を行います。

病院内の衛生管理、清掃

ふん尿の処理や消毒、院内清掃などを行います。

獣医師のサポートで求められること

猫を抱く獣医

(出典) photo-ac.com

獣医師の診療補助を行うため、次のようなことが求められます。

  • 検査・手術の手順がわかっている
  • 動物を怖がらず、扱いに慣れている

※これまですべての動物看護師は獣医師法にのっとり、補助業務しか行えませんでした。しかし、愛玩動物看護師は、獣医師しかできなかった「診療」に該当する行為(一部の投薬、採血など)も部分的に担えるようになります。

動物看護師のやりがい

看護師とウサギ

(出典) photo-ac.com

どのような仕事でも、モチベーションの源となる「やりがい」は必要です。動物看護師として働く人は、どのようなことにやりがいを感じているのでしょうか?代表的なやりがいを3つ見てみましょう。

動物と密接に関われる

動物看護師になれば、毎日多くの動物と出会えます。動物好きな人なら、「動物に触れること」「お世話すること」そのものが仕事のやりがいとなるでしょう。

また動物看護師が接するのは、基本的に何らかの不調がある動物です。看護師として治療の補助を行うことは、動物たちの命を救うことにもつながります。元気のなかった動物が自分のお世話を受けて元気になっていく様子を間近で見れば、「動物看護師になってよかった」と実感できるでしょう。

動物の専門家としてスキルアップできる

動物看護師の仕事は幅広く多岐にわたります。動物の治療補助からお世話まで、動物のケアに関するあらゆることの知識・経験を得られるでしょう。

動物看護師になる人のほとんどは、学校で必要な知識を身に付けます。ただし、講義で得られる情報は基本的なものであり、実際の現場では状況に応じて異なる場合もあります。

動物看護師として実際に動物たちと触れあえば、現場でしか得られない経験・スキルを身に付けられます。動物看護の専門家として着実にスキルアップでき、仕事に自信ややりがいを感じられるようになるでしょう。

飼い主・獣医師と信頼関係を築ける

動物病院で働く場合、治療以外の動物のお世話は動物看護師が行うのが一般的です。飼い主から頼られたりお礼を言われたりすることも多く、動物看護師としての喜びやうれしさを感じられるでしょう。

また接する機会が多いからこそ、飼い主にとって 動物看護師は相談しやすい存在です。獣医師に言いにくいことも打ち明けてもらいやすく、飼い主と強固な信頼関係が構築されるケースも少なくありません。

獣医師が動物の治療の方向性を決める際、飼い主と親しいからこそ聞き出せる有益な情報を提供できることもあるでしょう。「自分の存在が獣医師の役に立っている」と思えるシーンが多ければ、毎日の仕事が充実します。

動物看護師の勤務先

イヌの面倒を見る獣医の女性

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動物看護師になった場合、どのような場所で活躍のチャンスがあるのでしょうか?具体的な勤務先を3つ紹介します。

動物病院

動物看護師の勤務先として、最も一般的なのは動物病院です。求人を出している病院も多く、学んだ知識を生かして働けます。

ただし一口に動物病院といっても、規模・専門・勤務形態はさまざまです。複数の獣医師・専門部門を抱える大病院もあれば、個人経営の小規模病院もあります。動物病院によっては「爬虫類」「うさぎ」「鳥」などを専門とするところもあり、どの動物病院を選ぶかで働き方は大きく異なってくるでしょう。

一概にはいえませんが、小規模の動物病院ほど動物看護師がカバーする範囲が多くなる傾向があります。

勤務時間・休日・給与などの諸条件をしっかりチェックして、労働と待遇のバランスに納得できる病院を選ぶのがおすすめです。

動物保護施設・動物園

動物看護師には、動物保護施設や動物園で動物のケアに従事する働き方もあります。

業務内容は獣医師の補助や動物のケアで、動物病院のそれとさほど変わりません。ただし、看護対象となる動物が野生動物だったり飼い主不定だったりと対応が難しいケースも見られます。一般的な動物病院で働くよりも、より広範囲かつ専門的な看護知識が求められるでしょう。

また国や地方公共団体が運営している動物園や施設で働きたい場合は、「公務員」として採用されることが必要です。タイミングによっては応募者が多く、必ずしも希望通り採用されるとは限りません。

ペットホテル・ペットショップ

動物看護師の資格(今後は愛玩動物看護師の国家資格も)があれば、ペットショップ・ペットホテルへの就職も有利になるケースがあります。

ペットを購入したり預けたりする顧客は、多かれ少なかれ「本当にこのショップで大丈夫だろうか」という不安を持っているものです。動物看護のプロである動物看護士が在籍していることが、顧客の安心感につながります。

ペットショップ・ペットホテルでの仕事は、いずれも動物のお世話がメインです。顧客と関わる場面が多く、接客のスキルも必要となります。

民間資格を取る必要はあるのか

猫に聴診器を当てる

(出典) photo-ac.com

今後、愛玩動物看護師の資格がない人は「動物看護師」を名乗れません。とはいえ、国家試験を受けるには実務経験や大学・養成校での履修など、さまざまな要件を満たす必要があります。国家試験はハードルが高いと感じるなら、従来動物看護師のスキルを証明していた資格を取るのもひとつの手です。

認定団体である一般財団法人動物看護師統一認定機構の認定動物看護師として認定を受けると、一定の技能を有しているものとして見なされるため、求人に応募する際に無資格よりも有利でしょう。

他の団体でも、民間資格を発行しているところがあります。一般的に資格の取得には受験料を払い、試験で一定の合格ラインを超えると認定されます。特定の学科修了など受験資格に一定の条件を設けているところもあります。

これらの資格を有していれば、ペットショップや動物園のスタッフ、またはブリーダーなど動物に関わる仕事の選択肢が広がるでしょう。

専門学校や通信講座で学べることとかかる費用

エリザベスカーラーをつけた猫

(出典) photo-ac.com

通信講座の場合

特定の民間資格の取得を目指す内容の講座が多く、10万円未満の費用で取得できる通信講座もあります。

学校に通う場合

選択肢としては専門学校が中心になると考えていいでしょう。専門学校の中には、民間の動物看護師認定を受けられる学校もあります。

一方、短期大学や4年制大学の中にも、動物看護師の学科が設けられている場合が少なくありません。割合としては2年制を設けているところがほとんどで、4年制の場合はより高度でアカデミックな内容の学習も含まれます。

今後は、愛玩動物看護師を目指して大学や専門学校で学ぶ道が主流になるでしょう。

動物看護師の求人傾向

猫に注射を打つ

(出典) photo-ac.com

愛玩動物看護師の国家資格を持っている人は、動物看護のプロとして需要が高まると予想されます。また、国家資格を持っていなくても、専門学校などの学校で学んだ経験があると「犬猫などの動物の扱いに慣れている」と獣医師から見なされて、採用が有利に働くこともあります。

動物病院によっては、「うさぎの診療が多い」ことを特徴とするなど、特定の動物に専門特化しているところも少なくありません。勤務時間については、シフト制を組んでいる場合が多いようです。数は多くありませんが、中には24時間開院している病院もあります。

応募条件は現状、民間の資格保有者や動物看護に関連する学校を卒業していること、実務経験があることを条件にしているところが多いようです。また、接客経験やパソコン操作に関しては、多くの仕事と同じく最低限のスキルが求められます。外国人の居住が多い地域であれば、簡単な英会話もできるとよいでしょう。

動物看護師を目指すにあたって、動物が好きであることは第一条件となります。求人へ応募する際には、加えて「なぜ動物看護師になりたいのか」、採用側の心に響く本質的な動機を説明できるのがベストです。

法律の整備により国家資格も作られた現在、動物看護師は人間の看護師と同様、専門性が問われる職種となりました。しっかりとした知識と情熱を持って、動物看護師を目指しましょう。

出典:
日本動物看護学会
一般財団法人 動物看護師統一認定機構
農林水産省「愛玩動物看護師国家試験の受験資格について」

木山美佳
【監修者】キャリアコンサルタント・人材育成コンサルタント木山美佳

株式会社キャリ・ソフィア代表取締役一般社団法人ダイバーシティ人材育成協会代表理事大手総合人材サービス会社、JAL系研修会社を経て2011年に株式会社キャリ・ソフィアを設立。人材育成事業を通して5万人以上のキャリア形成に携わってきた。Career Elements CardⓇなどのキャリア教材考案者。大阪府立大学大学院人間科学修士(博士後期課程単位取得退学)。国家資格キャリアコンサルタント。

著書:
自分から動く部下が育つ8つのパワーフレーズ(同文舘出版)