消防士になるには・受験資格と仕事内容・全国の求人

消防士になるには

消防士のイメージ

消防士は、消防本部(市町村が単独、または広域で連合して設置する組織)に勤務する地方公務員です。したがって、まずは各消防本部が行う採用試験に合格する必要があります。試験に合格して採用されると「消防士」に任命され、その後、消防学校で研修を終えると晴れて消防活動に従事することができます。

ちなみに、正式には「消防士」は階級の名称です。職名としては消防職員といい、事務以外の消火・救命を担当する消防職員を消防吏員(しょうぼうりいん)といいます。つまり、消防本部に勤める消防職員のなかの消防吏員の階級のなかに「消防士」があるのです。

採用試験

消防士になるための採用試験は、消防本部ごとに独自に実施されています。

名称

採用試験の名称は、消防本部によって違います。単独で消防本部を設置している場合は「XX市消防吏員採用試験」だったり、広域で連合を組んで設置している地域では「XX広域消防本部消防職員採用試験」だったりといった具合です。もし、どれが該当の試験なのか不明であれば、勤務を希望する地域の市町村に問い合わせると確実でしょう。

試験区分と受験資格

試験の区分と受験資格は消防本部ごとに異なりますが、学歴や年齢別に分けられていることがほとんどのようです。

たとえば、東京消防庁(稲城市と島しょ部を除く東京を担当する消防本部。総務省外局の消防庁とは異なる)では、I種・II種・III種・専門という4種の試験に分かれています。 専門は、法律・建築・電気・化学などの専門知識を生かして消防行政の中枢を担う職員を採用するもの、I類・II類・III類は、消防業務を担う職員を採用するものと規定されています。このうち、専門とI類は、受験資格として試験日翌年の4月1日時点で29歳以下であること及び大学の卒業見込みあるいは同等の資格が必要です。II類とIII類については、受験資格に学歴要件は含まれず年齢制限のみです。II類は試験日翌年の4月1日時点で29歳以下であること、III類は同21歳以下であることが必要になります。受験資格さえ満たせば、複数の試験を受験することができるので、専門やI類の受験資格がある人はII類の受験も可能です。

その他の消防本部でもいくつかの試験区分に分かれているのが普通です。消防士試験Aの区分は大卒程度、消防士Bの区分は短大・高卒程度といったケースです。受験資格の学歴要件をさらに厳格に設定したり、受験できる上限の年齢を26歳程度に設定している消防本部もあるようです。

試験内容

消防本部ごとに異なりますが、東京消防庁を例に取って説明します。

I・II・III類・専門ともに、1次試験と2次試験があります。 1次試験は筆記で、教養・論文・適性・専門科目が出題されます。教養は、I類と専門は大卒程度、II類は短大卒程度、III類は高卒程度の出題内容です。専門試験は、専門試験区分にのみ実施され、受験者の専攻などに合った専門的内容を選択して解答します。

2次試験は身体・体力検査と口述(面接)です。試験案内には男子と女子に分けて体格・体力の基準が明示されていますが、同庁によると「おおむねの判断基準」ということで、体格・体力が若干基準に届かなくとも、1次の試験結果と合わせて合否は総合的に判断されるということです。

合格率など

東京消防庁の平成28年度の試験結果を見てみましょう。 専門区分は受験者82人に対して合格者11人で倍率7.5、I類(1次日程)の受験者4,837人に対して合格者365人で倍率13.3、I類(2次日程)の受験者2,691人に対して合格者107人で倍率25.1、II類は受験者3,860人に対して合格者99人で倍率39.0、III類は受験者6,829人に対して合格者370人で倍率18.5という結果になりました。

東京消防庁はとりわけ高倍率ではあるのですが、消防士はどの消防本部でも人気です。高倍率になることを覚悟する必要がありそうです。

学校や専攻で有利・不利はあるか

東京消防庁のI~III類については、学校の専攻で有利・不利はないものと考えられます。というのも、学校の専攻にもとづく知識が出題される試験がないからです。ただし、教養試験は、他の公務員試験でいうところの数的判断などに近い内容なので、公務員対策講座などを受講できる学校では有利になることがあるかもしれません。

東京消防庁の専門区分については、法律・化学・土木などの専門分野が出題されるため、もちろん大学時代の専攻が有利に働くことになるでしょう。

勤務希望地の消防本部の発行する試験案内を確認して、専門分野が出題されるかどうかをチェックしておくことをお勧めします。

消防学校

採用試験にめでたく合格し、採用されると「消防士」に任官されます。 新人消防士は、消防の基礎を学ぶために消防学校で初任教育を受けなければなりません。初任教育の期間は学歴などによっても異なりますが6ヶ月ほど。すでに消防士として採用されている地方公務員なので初任教育期間中も給与が出るのは嬉しいポイントです。

消防学校は各都道府県と各政令指定都市に設置されており、近隣の消防本部から人を受け入れています。各校が各自治体の一組織であり、それぞれ独自のカリキュラムや制度を持っているため、「消防学校」での教育や日常生活について一概に解説することは難しいのですが、以下では一般的な傾向をご紹介します。

消防学校では寮生活をしながら初任教育を受けます。授業は座学と実習があり、座学では公務員に必要な法律知識や火災のメカニズムについて学び、実習では心肺蘇生や消火訓練・消火機器の取扱訓練などを行います。土日祝日と金曜の終業後は帰宅できます。

一日の流れ

6:40 起床

6:50 点呼・トレーニング(校庭での運動など)

7:15 宿舎清掃・朝食

8:30 朝礼・訓練礼式

9:00 授業開始(座学)

11:50 授業終了

12:00 昼食

13:00 授業開始(実習)

16:50 授業終了

17:15 自由時間(夕食と入浴なども)

21:50 門限(特定の曜日のみ終業後の外出が認められている学校もある)

22:00 点呼・就寝

このほか、シフトを組んで寮の当直を終夜行います。これは、消防士としての勤務にも泊まりの夜間当直があるためです。

消防士の仕事

消防本部に勤める消防職員のなかでも「消防士」の属する消防吏員の仕事には、「災害対応業務」「予防業務」「防災安全業務」があります。消防吏員は災害対応業務をメインに、予防業務・安全業務のいずれかの担当が割り振られることもあるため、あわせてご紹介します。

災害対応業務

消防士の職務と聞いて、消火や救急対応・人命救助などをイメージする人もいると思いますが、まさにそれが災害対応業務です。

東京をはじめとする都市では、暮らしの多様化などにより災害も多様化しています。災害対応業務では、日本独自の情報技術や消火技術を生かしてさまざまな種類の災害に迅速に対応し、消火や人命救助にあたっています。

火災が起きて出動命令が下ると、まずはポンプ隊が現場で危険排除や消火を始めます。その後、大規模火災になりそうで各種消火部隊との連携が必要になりそうといった状況であれば、被害状況を把握しながら各部隊を指揮する指揮隊が出動し、その指揮下でポンプ隊・はしご隊・特別消火中隊などが連携して消火作業を行います。はしご隊は地上40メートルの高さからの消火活動や人命救助が可能です。特別消火中隊は、特に消火活動能力が高い隊員を選抜して組織された部隊で、東日本大震災などでも活躍しました。

消火活動では、風向きや水圧などを勘案しながら鎮火と延焼防止が両立可能な放水を実施すると同時に、住民の避難経路も確保するなど、複数の要素を現場で素早く判断しなければなりません。指揮隊の的確な判断と、各部隊の持つ消火技術が連携することが消火活動にとって極めて重要なのです。

救助が必要な場面では救急隊や特別救助隊、山岳救助隊などが活躍します。東日本大震災などで有名になった通称・ハイパーレスキュー(消防救助機動部隊)は、消火も救助も同時にできる部隊として創設されました。自然災害の多い日本ならではの救助技術を生かして、世界各地の災害に派遣されることもあります。

災害予防業務

ビルや住宅がひしめく都市部では、火災などの災害が一度起これば大規模化しやすくなります。そこで、災害の発生を未然に防ぐ災害予防業務も大事な仕事です。

建物設計段階では、消防同意制度などを活用し、防火に関する指示や助言などを行います。工事完了後の消防検査では、建築・機械・電気などの知見を持つ消防職員が防火設備の点検を実施します。また、すでに稼働している施設についても防火の観点から火災予防査察という立ち入り検査を行い、法令違反を発見した場合などは警告や改善命令などで改善をうながすこともあります。ガソリンスタンドなどの危険物を保管する施設の新設・改修にあたり書類審査や検査を行うのも予防業務の一環です。

さらに火災の原因調査も、予防業務に位置づけられています。電気・化学などの専門知識を持つ消防職員が火災の原因究明にあたり、事故の続発を防ぎます。

防災安全業務

市民の防災意識を高める指導や、防災機器の普及に努める業務です。高齢者や障害者などの安全を確保するための防災福祉対策も担当します。消防団の訓練指導や広報業務も、地域から防災意識を広めていくうえで重要度の高い仕事です。

国民保護法にもとづく業務

国外から武力攻撃を受けた場合には、国民保護法97条にもとづいて、消火活動や住民の避難誘導などを担うことも消防士に期待される業務です。ただし、消防士に対する安全確保配慮義務を負う(同法120条)主体のひとつである総務省外局消防庁では、同義務を根拠に、消防士が直接攻撃される危険性がある場合には出動しなくてもよいと解釈しているようです。

公務による死傷

消防士の仕事は危険と隣り合わせです。

消火活動にあたっては、消防隊が燃えさかる建物の内部に入り込み、内部から放水することや、場合によっては逃げ遅れた人の救助に向かうこともあります。また、津波や土砂崩れといった災害の救助活動中、あるいは避難誘導中などに自らも災害に巻き込まれてしまうケースも発生しています。日々の訓練や演習もハードであるがゆえにリスクがあります。

平成27年の消防職員の公務中の死傷件数は死者5人、負傷者1,197人にのぼりました。

死傷事故については金銭的補償のほか、殉職であれば特進などの措置もありますが、消防士は危険と隣り合わせの職業であることを知ったうえで、それでも人の役に立ちたいといった志をもって進路を選ぶほうがよいのではないでしょうか。

交代勤務

いつでも出動できるよう、消防署は24時間体制です。 そのため、消防士も交代勤務制をとっています。交代制は各消防本部により、2交代、3交代などと異なります。

たとえば、東京消防庁では3週間を1サイクルとして、3交代制を敷いています。

「当番日」は途中仮眠を取りながら朝8:30から翌日8:30まで勤務。勤務中は出動などのほか、トレーニングや予防業務・安全業務に関する事務処理なども行います。

当番日明けは「非番」となり、原則として出勤する必要はないのですが、緊急事態が起これば招集がかかり出動しなければなりません。

また、3週間のうち6日ほどは「週休日」となり、完全休で出勤も出動もありません。ただし、本当に人手不足に陥るような大災害などでは招集がかかることもあるようです。

ちなみに、消防吏員ではない事務メインの消防職員は、「毎日勤務」という一般的な会社員のような勤務形態です。

消防士の休日

消防士は災害から市民の安全を守るという職務上、休日の行動にも制限があります。

勤務先の消防本部の方針により若干異なりますが、非番日はもちろん、原則招集のない週休日でも本部の管轄外に出るときには届出が必要になります。また、海外に出る場合は別の届出が必要なうえ、旅程や立ち寄り先まで細かく報告することを義務付けているところもあるとのことです。

さらに、台風などあらかじめ災害が予期できそうな場合は、飲酒は控えるよう指示が出るケースもあります。

また、消防士の髪型は短髪が推奨されています。これは、消火時に髪に引火したり、ヘルメットやマスクの装着時のズレを防ぐためです。この髪型の制限は制度化されているものではありませんが、自分自身と市民の安全を守るため、消防士自身が率先して行っているようです。

消防士の求人傾向

消防士は基本的に地方公務員ですから、採用試験の受験資格と時期が重要です。

採用試験は消防本部ごとに行われるため、試験区分や受験資格は本部により異なります。どの本部の採用試験でも、既卒者も受験資格はありますが、年齢制限があるので注意しましょう。

詳しくは各自治体の消防本部に問い合わせるのが確実です。

出典:
東京消防庁<採用案内><試験(選考)結果>
武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律
武力攻撃事態等における消防の役割

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