転職や就職を考えているなら、闇雲に転職先を探すよりも、まずはしっかりと業界研究を行いましょう。ここでは、業界研究の重要性や就職活動にどのように役立つのかについて説明していきます。業界研究をすることで、就職活動に自信が持てるかもしれません。
業界研究とは?
業界研究とは、転職活動を始める際に行う作業です。具体的にどのような作業が必要になるのか、詳しく見てみましょう。
あらゆる業界の情報を集める作業
業界研究はあらゆる業界の情報を集め、特徴や将来性などを理解するために行います。よく知らない業界へ抱くイメージは、漠然としていることも少なくないでしょう。
いざ就職してみると、思っていた仕事とは違っていたということも起こりかねません。転職先の方向性をある程度絞るためにも、業界研究は大切な作業となります。
また、世の中にある業界を幅広く知ることで、自分がやりたい業界を見つけやすくなることもポイントです。
どんな仕事をしたいのか、どんな仕事ならやりがいを感じられるのか、明確に答えられない人ほど業界研究の重要性は高くなるでしょう。業界研究は、自己分析や企業研究と同じくらい大切です。
業界研究を行う目的やメリット
業界研究をすることには、どのような目的やメリットがあるのでしょうか?業界研究の重要性を知るためにも、それぞれしっかり確認しましょう。
働きたい業界・企業を絞れる
業界研究を行うことで、たくさんある業界の中から「働きたい」と思える業界・企業を絞れるようになります。ある業界のことを把握していたつもりでも、業界研究を行ってみるとイメージと全く異なっていたというケースは少なくありません。
そのまま転職してしまえば、自分に合っていないと感じてしまい、すぐに離職してしまう可能性もあるでしょう。事前に業界研究を行い、その業界のことを正しく認識することで、想像と現実のギャップが生まれにくくなります。
興味のある業界を見つけたら、転職先を見つけるためにも、各企業について詳しく調べてみましょう。
説得力のある自己PRを作成できる
業界研究で集めた情報は、企業応募時に必要な自己PRを作成する際にも役立ちます。業界研究を進めるうちに仕事内容やビジネスモデルを把握できるので、企業が求めるスキルや人物像が見えてくるものです。
『なぜこの業界・企業に興味を持ったのか』『自分のどのスキルが役立つと思ったのか』『目標は何か』などが見えれば、説得力のある自己PRを作成できます。
志望動機にも深みが増すので、面接官に対して効果的にアピールできるでしょう。
まずは流れをつかもう!業界研究のやり方
業界研究を実践する前に、効果的な業界研究のやり方のコツを知っておきましょう。業界研究を行う際の、大まかな流れについて解説します。
興味を引く業界をピックアップする
まずは、視野を広げてさまざまな業界に目を向けてみましょう。その中から、興味を引く業界をピックアップします。
このときポイントになるのが、業界を1つに絞り込むのではなく、少しでも興味があるのなら上限なくピックアップすることです。多くの業界に触れることで、働きたいと思える業界・企業に出合いやすくなります。
また、仮に選考中に採用枠がなくなってしまったとしても、一から業界研究をやり直す手間も省けるので効率的です。持ち駒をなくさない意味でも、ピックアップする業界は複数の方がよいでしょう。
軸となる業界の情報を丁寧に集める
いくつかの業界をピックアップした後は、その中でも特に働きたいと思える業界を軸にして業界研究を進めます。
もし、気になる企業がある場合は、その企業が属する業界を軸にするとよいでしょう。業界研究によって本当に働きたいと思える業界かどうか、再確認できます。
軸となる業界を見つけたら、合同企業説明会に参加してみるのがおすすめです。合同企業説明会には、同じ業界の企業が複数社集まるので、さまざまな情報を得やすいというメリットがあります。
採用担当者から直接話を聞けるので、業界地図や新聞などでは得られない話も聞けるかもしれません。
また、合同企業説明会をきっかけに、「別の業界の方が気になる」ということも起こり得ます。なるべく視野を広げて、軸となる業界以外にも目を向けることも大切です。
やりたいことを整理して志望動機を作る
業界研究で調べた内容を参考にしながら、志望動機を作りましょう。ポイントは、その業界でやりたいことは何かを整理することです。
『何をしている業界なのか』『自分はその業界で何をやりたいのか』『なぜやりたいと思ったのか』の3つを整理してみると、深みのある志望動機を作成できます。業界研究を行わずに作成した志望動機よりも、説得力のある内容になるはずです。
また、志望動機は業界ごとに作成しましょう。志望動機を作成してみて、その業界のよさに気付くこともあります。業界選びで後悔しないためにも、志望動機は業界ごとに作成するのがポイントです。
業界研究を行うときのポイント
業界研究を行うときは、2つのポイントを押さえて進めましょう。それぞれのポイントについて解説します。
業界全体を幅広く知る
まずは、業界の全体像をつかみましょう。構造や動向を大まかに把握することで、各業界が置かれている状況を把握しやすくなります。この時点では深掘りせずに、浅く広く知ることがポイントです。
各業界のマーケットの規模や推移、その業界を代表する企業などをざっくりまとめた後は、興味のある業界をピックアップしましょう。興味の度合いは業界によって異なるものですが、少しでも興味があるのなら候補に入れておいて損はありません。
興味のある業界は深掘りする
興味のある業界が出そろったら、深掘りしてみましょう。調べる内容は、主に『その業界の特徴や現状』『課題』『今後の可能性』です。
例えば、ビジネスモデルがBtoBなのかBtoCなのかによって、働き方は異なります。特徴を知ることで、自分に合っているかどうか判断しやすくなるでしょう。
また、動向については、業界の市場規模や成長率が分かるデータを参照するのがおすすめです。政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Society)・技術(Technology)の4つの観点から分析する『PEST分析』という手法を使えば、業界の動向を多角的に捉えられるので、より効果的に分析できます。
深掘りした内容をもとに、志望する業界、さらに企業へと絞り込んでいきましょう。
【実践編】業界研究ノートの作り方
業界研究をする際は、集めた情報をノートにとっておくことをおすすめします。業界研究ノートを作る上で必要なものや記載すべき項目、あると便利な項目などをチェックしていきましょう。
必要なもの
業界研究ノートは、ノートとペンさえあれば作れます。自分が使いやすいものを選ぶようにしましょう。
最近では、タブレットやPCでドキュメントの追加編集も簡単にできます。自分が持ち運びしやすいツールを使い、新しく聞いたり調べることができた情報を更新していきましょう。
業界研究ノートに記載する5つの必須項目
業界研究ノートには、必ず記載すべき5つの項目があります。業界研究を効果的なものにするために必要な項目なので、しっかり押さえておきましょう。
- 業界の基本情報:市場規模、業務内容、前年比など
- 業界の特徴:業界の概要を理解した上での自分の所感
- 業界の課題:業界が抱えている課題や将来性など
- 主な企業名:各業界を代表する企業トップ10
- 関連業界:関連する業界(出版業界なら印刷業界や製紙業界など)
時間に余裕がない人も、まずは上記5つの必須項目だけでもまとめるのがおすすめです。
記載しておくと便利な2つの項目
必須項目とは別に、記載しておくと便利な項目が2つあります。読み返したときに参考になりやすいので、チェックしておきましょう。
- 平均年齢・年収
- 気付いたこと
社員の平均年齢・年収は『就職四季報』で確認できます。実際に自分が就職した際の職場の環境や、将来像などを予測する際にも役立つので、記載しておきたい項目です。
気付いたことには、業界研究を行う前と後に感じたギャップ、実際に説明会やイベントに参加して思ったことなどを記載しておきます。また、社員や採用担当者の印象も書き出しておくと、採用に進んだ際の対策の1つになるかもしれません。
業界研究で役立つ情報源
業界研究で情報を収集するときは、新聞やニュースを活用するのが一般的です。これから紹介する2つの情報源も業界研究に役立つので、チェックしておきましょう。
業界地図
業界地図とは、日本経済新聞社や東洋経済新報社など複数の新聞社・出版社が、年に1度発行する書籍です。東洋経済新報社の2022年版『会社四季報 業界地図』には174業界、約4000社の情報が掲載されています。
注目の業界や動向、さらには各業界内における各社の業績や平均年齢・年収など幅広く知ることができる情報源です。
また、企業間の関係性が一目で分かるよう掲載されているところもポイントで、提携関係や今後の勢力変化による影響も把握しやすくなっています。
どんな業界があるのか知りたい人や、各業界について詳しく知りたい人におすすめです。
就職情報サイト
就職情報サイトでは、企業の採用情報だけでなく、業界の動向・詳細や、セミナー・説明会などのイベント情報がたくさん掲載されています。
就職活動に役立つ情報が随時更新されているので、新しい情報を得やすいところもポイントです。業界の全体像を把握できるので、業界研究を行う最初の段階で参考にすると、スムーズなスタートを切れるでしょう。
就職情報サイトによっては、業界研究のオンラインイベントを開催しているところもあるので、有益な情報を得やすいでしょう。まめにチェックするのをおすすめします。
業界研究で転職活動を効果的に進めよう
今よりも自分に合っている仕事を見つけたい人や、世の中のあらゆる業界を知った上で仕事探しをしたい人は、業界研究を行ってみましょう。抱いているイメージと異なる業界は多いはずです。
業界研究を行うことで、働きたい業界が明確になり、志望企業を絞り込みやすくなります。また『なぜ志望したのか』『目標とするものは何か』などを論理的に説明できるようになるので、説得力のある志望動機や自己PRの作成が可能になります。
効果的な業界研究を行い、転職活動への自信へとつなげましょう。
採用コンサルタントおよび現役人事。慶応大学卒業後、東証一部上場企業2社で人事を担当。20代で独立し企業の採用コンサルティングを行う傍ら、個人の面接指導やキャリアコンサルティングに従事。書籍、雑誌、テレビなどメディアに出演。現在はキャリアコンサルタントおよび企業の人事責任者として、個人側・企業側双方の立場から、心も経済的にも豊かなキャリアを描くための支援を行う。
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