台風で仕事が休みになったら?休業手当の条件や計算方法をケース別に解説

近年、台風や大雪などの自然災害が増えています。仕事が急に休みになり、「給料は出るの?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。

「災害だから給料が出なくても仕方ない」と思うのは早いかもしれません。日本の法律では、そんな時のための制度が用意されています。

この記事のポイント

自然災害による休業でも、給料がもらえる場合がある!
会社の指示で休業した場合、「休業手当」が支払われる可能性があります。不可抗力かどうかが判断の分かれ目です。
休業手当の金額は平均賃金の60%以上が基本
直近3ヶ月の賃金をもとに計算され、パートやアルバイトにも適用されます。「最低保障額」のルールも要チェック。
雇用形態に関係なく誰でも対象になりうる
休業手当は正社員だけでなく、パートやアルバイトも対象。シフトが入っていた日が休業になった場合も、条件を満たせば受け取れます。

会社の指示なら「休業手当」がもらえる可能性

台風や大雪といった自然災害が原因であっても、会社の経営判断によって休みと指示された場合は、原則として会社は従業員に対して「休業手当」を支払う義務があります。

ただし、その休業が誰にもどうしようもない「不可抗力」であったと客観的に認められる場合には、会社の支払い義務は免除されます。

この記事の最大のポイントは、あなたのケースが、休業手当の対象となる「会社の都合・判断」による休業なのか、それとも対象外となる「不可抗力」による休業なのか、その境界線を見極めることです。

まずは「会社の指示で休んだなら、手当がもらえる可能性がある」という大原則を覚えておいてください。

「休業手当」とは?「休業補償給付」との違い

「休業した時のお金」と聞くと、「休業補償(休業補償給付)」という言葉を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、この2つは全くの別物です。
両者の違いを以下の表にまとめました。

 

休業手当

休業補償(休業補償給付)

原因

会社都合による休業(経営難、機械の故障、原材料不足、台風・自然災害など)

業務中や通勤中の病気やケガによる療養のための休業(労災)

法律

労働基準法 第26条

労働者災害補償保険法(労災保険法)

支払われる金額

平均賃金の60%以上

合計で給付基礎日額の実質80%(休業給付60%+特別支給金20%)

支払い元

会社(使用者)

国(労働基準監督署)

制度の目的

労働者の生活保障と、使用者の安易な休業の防止

被災した労働者と、その家族の生活の保護

休業手当とは 

「休業手当」は、会社の都合によって労働者が働けなくなった場合に、その生活を保障するために会社が支払うべき手当のことです。ポイントは、その原因が設備トラブルや自然災害への対応など、「会社の経営判断」である点です。

参考:休業手当について

休業補償給付とは 

「休業補償給付」は、労働者が仕事中や通勤中にケガをしたり、病気になり、働くことができなくなった場合に、国(労災保険制度)から支給される給付金です。これは、労働者自身の身体が療養のために働けない状態にあることが原因であり、会社の経営判断とは直接関係ありません。

参考:休業補償給付について

休業手当がもらえる3つの条件(支給要件)

具体的にどのような条件を満たせば、休業手当を受け取ることができるのでしょうか。労働基準法とその解釈に基づき、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。

雇用契約がある労働者であること

まず大前提として、休業手当は会社の指揮命令下で働く「労働者」を保護するための制度です。したがって、会社と雇用契約を結んでいる必要があります。

正社員だけでなく、契約社員、派遣社員、パートタイム、アルバイトなど、あらゆる雇用形態の労働者が含まれます。

個人事業主として業務委託契約を結んでいる場合は、原則として対象外となります。

「使用者の責に帰すべき事由」による休業であること

「使用者の責に帰すべき事由」とは、一般的に言われる「会社のせい(過失)」だけではなく、機械の故障や、親会社の経営難による資材不足なども含まれます。 

また、自然災害など、天災が発生したこと自体は不可抗力でも、それを受けて「会社として休業の判断を下す」ことについては、経営判断の側面が強いと見なされる可能性があります。

休業した日について賃金が支払われていないこと

休業が発生した日に対して、会社から通常の給料(100%)が支払われているのであれば、休業手当を請求する必要はありません。

また、労働者自身の希望で年次有給休暇を取得した場合も、賃金(またはそれに準ずる手当)が支払われるため、休業手当の対象にはなりません。

あくまで、休業によって賃金が支払われず、労働者が経済的に不利益を被っている状況が対象となります。

参考:休業手当とは?休業補償との違いや担当者が押さえておきたい基礎知識

「会社責任」か「不可抗力」か

休業手当が支払われるかどうかの最大の分かれ道は、その休業が「使用者の責に帰すべき事由」にあたるのか、それとも免責される「不可抗力」にあたるのか、という点です。

以下に、具体的なケースを挙げて解説します。

休業手当が【もらえる】可能性が高いケース

「計画運休」が事前に告知されていた場合 

鉄道会社などが前日から「明日は計画運休します」と広く告知している場合、会社側には「従業員をどう出社させるか」「テレワークに切り替えるか」「事業を一時的に縮小するか」などを検討する時間的な余裕があります。この状況で、特段の物理的な支障がないにもかかわらず、会社が「一律で休業」という判断を下したのであれば、それは経営判断であり、休業手当の対象となる可能性が非常に高いです。

参考:計画運休時の出退勤ガイドライン

「客足が見込めない」という経営判断での休業 

スーパーや飲食店などで、交通機関は動いており従業員も出社できる状態にもかかわらず、「台風だから客足が見込めず、赤字になる」という理由で会社が自主的に臨時休業を決定した場合。これは売上減少を避けるための純粋な経営判断であり、「使用者の責に帰すべき事由」に該当します。

参考:台風による不可抗力がない場合 | 労働問題.com

親会社や一部の取引先の都合による休業 

工場のライン作業などで、自社は被災していないものの、部品を供給してくれる親会社や取引先が被災し、納品がストップしたために休業せざるを得なくなった場合。これは一見、仕方ないように思えます。しかし、法律上は、特定の取引先に依存するリスク管理も含めて経営者の責任範囲と見なされることが多く、原則として休業手当の支払い義務があると解釈されています。

参考:令和元年台風15号発生時の事例(計画運休時の出勤ガイドライン P5)

行政からの「要請」レベルでの休業 

行政からの休業『要請』や『勧告』は、法的な『命令』ではありません。これに従うという会社の決定は、それ自体が経営判断と見なされます。したがって、その結果生じた休業は会社都合となり、休業手当の支払い対象です。

参考:労働基準法第26条とは?休業手当についてわかりやすく解説! | 

休業手当が【もらえない】可能性が高いケース

事業場(会社そのもの)が直接的な被害を受けた場合 

暴風雨で会社の建物が損壊した、河川の氾濫で事業所が浸水したなど、物理的に事業を行うことが不可能な状態である場合は、不可抗力と認められます。

参考:台風による不可抗力で休業とする場合 | 労働問題.com

交通機関が広範囲かつ完全に途絶した場合 

「計画運休」のような予告があったわけではなく、突発的な災害で従業員の大多数が利用する公共交通機関が全面的にストップし、従業員の出社が社会通念上、不可能だと判断できる場合は、「防止不能」と見なされる可能性があります。

参考: 交通機関が麻痺して出社不能な場合 | 労働問題.com

行政から強制力のある「避難指示」や「退去命令」が出た場合 

会社の所在地が災害警戒区域に指定され、自治体から強制力のある「避難指示(緊急)」や「退去命令」が発令された場合。この命令に従って従業員を退避させ、事業を停止するのは法令遵守の観点から当然の措置であり、不可抗力と判断されます。

参考:緊急事態宣言による休業要請に応じた場合、休業手当はどこまで払えばいいのか? – 労働トラブル「事例と対策」

 

このように自然災害等が理由の場合でも、状況によって休業手当の支払義務は異なります。その実態を丁寧に見極めることが重要です。

休業手当はいくらもらえる?計算方法を解説

休業手当の対象となった場合、具体的にいくらもらえるのでしょうか?

法律では、休業手当の金額は「平均賃金の60%以上」を支払うよう定められています。
会社によっては、「70%」や「80%」を支払うと定めている場合もありますので、一度、就業規則を確認してみることをお勧めします。

ここでは、法律で定められた最低基準である60%で計算方法を解説します。

「平均賃金」の計算方法

平均賃金とは、原則として「事由の発生した日(休業日)以前3ヶ月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で割った金額」です。

  • 賃金の総額に含めるもの: 基本給、残業代、各種手当(通勤手当、役職手当など)
  • 賃金の総額に含めないもの: 賞与(ボーナス)、結婚祝い金など臨時的に支払われるもの
  • 期間の総日数: 会社の休日なども含めた、カレンダー上のすべての日数
【計算例:月給制のAさんの場合】 

・休業日:6月10日
・直近3ヶ月各月の給与(総支給額): 93万円
・3ヶ月の総日数:= 92日

まず、休業手当の基準となる「平均賃金」を計算します。

  • 平均賃金 = 930,000円 ÷ 92日 = 10,108円 (銭未満は切り捨て)

平均賃金を元に、手当基準の「60%」を算出

  • 休業手当額(1日あたり)= 10,108円 × 60% = 6,065円 (銭未満は切り捨て)

この場合、Aさんは1日休業するごとに、会社から最低でも6,065円の休業手当を受け取ることができます。

参考:労働基準法第26条で定められた休業手当の計算について

パート・アルバイトの「最低保障額」という重要ルール

時給制や日給制で働くパート・アルバイトの方は、シフトの日数が少ない月があると、上記の方法で計算した際に平均賃金が非常に低くなってしまうことがあります。

それでは生活保障という制度の趣旨が損なわれるため、労働基準法ではセーフティネットとして「最低保障額」というルールを設けています。

最低保障額の計算方法は以下の通りです。

 「(直近3ヶ月の賃金総額 ÷ その期間の労働日数)× 60%」

上記の「通常の計算方法で算出した平均賃金」と、この「最低保障額の計算方法で算出した金額」を比較し、どちらか高い方を平均賃金として採用しなければなりません。

これは、シフトが少ない方などを不当に低い手当から守るための非常に重要なルールです。

時給制や日給制で働く方は、ご自身のケースがこの最低保障の対象にならないか、ぜひ一度確認してみてください。

参考:平均賃金の算定方法(2)最低保証

会社側の事情と活用できる国の制度

ここまで労働者の権利について解説してきましたが、視点を変えて、会社側の事情についても少し考えてみましょう。

中小企業の場合、予期せぬ災害で売上が立たない中で、全従業員に休業手当を支払うことは、経営的に非常に大きな負担となるのも事実です。

このような状況で、会社の負担を軽減しつつ、労働者への休業手当の支払いを後押しするための公的な制度が存在します。

会社も助かる「雇用調整助成金」とは?

これは、景気の変動や産業構造の変化、そして自然災害などの経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員を解雇(リストラ)するのではなく、一時的な休業や教育訓練、他社への出向などによって雇用を維持した場合に、国が休業手当などの費用の一部を助成する制度です。

台風や地震などの自然災害による休業も、この助成金の対象となる場合があります。

この情報を知っておくメリット

この制度の存在を知っておくことは、労働者にとっても大きな意味を持ちます。

円満な交渉の材料になる

 会社に休業手当の支払いを求める際に、雇用調整助成金という国の制度の活用を「提案」することで、「対立」ではない形でコミュニケーションを取ることができます。

会社の事情への理解が深まる

会社側も、このような制度を知らない場合があります。あなたが情報提供することで、会社が制度利用に動き出し、結果的に休業手当がスムーズに支払われるきっかけになるかもしれません。

上位の記事の多くは「労働者の権利」という一方向からの解説に留まりがちです。しかし、このように会社側の事情や、それを支える制度についても理解を深めることで、より建設的で円満な問題解決に繋がるはずです。

参考:雇用調整助成金 |厚生労働省

休業手当に関するQ&A

ここでは、自然災害時の休業手当に関して、多くの方が抱く具体的な疑問についてQ&A形式でお答えします。

Q. パートやアルバイトですが、シフトが入っていた日が休みになりました。対象ですか?

A. はい、対象になります。

休業手当は、正社員やパート・アルバイトといった雇用形態に関係なく、すべての労働者が対象です。その日にシフトが入っており、働く予定だったにもかかわらず、会社の指示で休みになったのであれば、休業手当の請求権があります。

Q. 自分の判断で、安全のために仕事を休みました。手当は出ますか?

A. 原則として、対象外です。

休業手当は、あくまで「会社の指示」による休業が対象です。会社からは出勤指示が出ていたにもかかわらず、ご自身の判断で「危ないから休む」と決めた場合は、自己都合による欠勤扱いとなります。この場合、休業手当は発生しません。

Q. 代わりに有給休暇を使うことはできますか?

A. できますが、よく考える必要があります。

休業した日を年次有給休暇として処理することは可能です。
ただし、休業手当がもらえるはずの日に、貴重な有給休暇を消化してしまうのが得策かどうかは慎重に判断すべきです。なお、会社が一方的に有給処理することはできません。

Q. 会社が「不可抗力だから払えない」の一点張りです。どうすればいいですか?

A. まずは冷静に話し合い、解決しなければ労働基準監督署に相談しましょう。

「不可抗力」の判断は、会社が一方的に決められるものではなく、客観的な事実に基づいて判断されます。「もらえる可能性が高いケース」に該当すると思われる場合は、その点を会社に伝えてみましょう。それでも会社が応じない場合は、最終的な相談先として労働基準監督署があります。

まとめ:会社の制度だけに頼らない!個人でできる災害時の備え

自然災害は、誰の身にも起こりうる出来事です。しかし、その後の対応を知っているかどうかで、あなたの生活は大きく変わる可能性があります。

会社の制度である「休業手当」は、あなたの生活を守るための重要な制度ではありますが、いざという時に自分自身でできる備えを考えておくことも重要です。

そして何よりも、災害時にはご自身の安全を第一に行動することを忘れないでください。