内々定は内定と違う?入社したい場合・辞退したい場合の対応

内々定をもらっても、意味をよく知らない・どう対応すればよいのか分からない人もいるでしょう。内々定の意味や企業が内々定を出す目的から、内定との違い、内々定をもらったときのケース別の対応まで詳しく解説します。

この記事のポイント

内々定とは?
内々定は、企業が内定を出す前に応募者を採用する意向を通知するものです。内定には政府が定めた目安となる時期がありますが、その前に優秀な人材を確保する目的で実施されます。
内々定をもらったら?
承諾する・辞退する、どちらのケースでも早めに電話で連絡を入れましょう。迷っているなら先延ばしにせず、保留してもらうことも1つの選択肢です。
転職で内々定をもらったら?
内々定の時点では労働契約がまだ成立していないので、内定が出るまで退職の申告は避けましょう。

内々定とは

面接

(出典) pixta.jp

初めて企業から内々定を受け取ったものの、内々定がどのようなものか分からない人もいるのではないでしょうか。内々定の意味や企業が内々定を出す目的を解説します。

内定前に企業が採用の意思を応募者に通知すること

内々定には「内々に内定が決まっている」という意味があります。採用選考後は、応募者に対する採用承諾として企業は内定を出しますが、その前に採用する意思があることを応募者に伝えるのが内々定です。

内々定をもらったら、まだ正式な内定は出ていなくても、その企業にはあなたを採用する意思があるということです。

人材確保の目的で10月以前に行う企業が多い

新卒の就活の場合、政府が正式な内定を10月1日以降とするよう要請しています。採用活動の早期化により、大学生に必要な学習時間を確保できない事態を避けるためです。

日本では長らく、日本経済団体連合会(以下「経団連」)が採用活動の日程を定めた就活ルールを主導していましたが、経団連に加入していない外資系企業の影響などもあり形骸化していました。

そこで経団連は2018年に就活ルールの撤廃を発表し、2021年からは政府が選考活動に関するルール策定を主導しています。ただし政府は経団連の慣習を引き継ぎ、2025年度卒の就活生について、内定時期を従来通り「卒業修了年度の10月1日以降」と要請している状況です。

2026年度以降も急な変更はないでしょう。とはいえ各企業は、優秀な人材を早く確保したいと考えています。正式な内定通知は10月1日まで出せなくても、その前に内々定を出して有望な採用候補者を確保しようとする企業は少なくありません。

出典:就職・採用活動に関する要請|内閣官房ホームページ

内々定と内定の違い

スマホを操作する男性の手元

(出典) pixta.jp

元々経団連に加入していなかった外資系企業をはじめ、中には内々定・内定を分けていない企業もあります。では内々定と内定を別に出している場合、どのような違いがあるのでしょうか。

労働契約が成立しているかどうか

内定は、受け取った応募者が内定を承諾した時点、あるいは企業が内定を通知した時点で、解約権を留保した労働契約(始期付解約権留保付労働契約)が成立すると解釈されています。

労働契約が成立すると関連法令の適用を受けるため、内定後の辞退や取り消しは入社後の退職・解雇と同じ扱いです。とはいえ応募者からの内定辞退に対する制約はほぼなく、民法の規定により、入社日の2週間前までに申し出れば辞退できます。

一方、内々定の時点では、応募者が承諾しても労働契約は成立しておらず、法律上の定めは特にありません。あくまで「採用する意思がある」という口約束のようなものと考えましょう。

出典:労働基準判例検索-ID番号00173「大日本印刷事件」
出典:e-Gov 法令検索|民法 第627条1項

企業側の取り消しの要件

内定の場合、取り消しは成立している労働契約の解除(解雇)に当たるため、以下の要件を満たさなければ企業は内定を取り消せないと過去の裁判で判決が出ています。

採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる

つまり書類選考や面接では分からなかった、相当に重大な理由でなければ取り消しができないということです。健康上の不安がある、経歴詐称などの問題があっても、それだけで内定取り消しはできない可能性が高いでしょう。

内々定の時点では労働契約の成立すらしていないため、企業側による取り消しも内定よりは簡単にできてしまいます。

損害賠償や企業イメージの低下といったリスクがあるため、不当な内々定取り消しはほぼないと思われますが、応募者側も慎重に行動する必要があります。

素行に気を付ける他、別の候補企業の確保など、万が一内々定を取り消された場合にカバーできる安全策も取っておくと安心です。

出典:労働基準判例検索-ID番号00173「大日本印刷事件」

内々定をもらったらどう行動する?

窓際で電話をする男性

(出典) pixta.jp

内々定をもらった企業に入社したい・辞退したい・承諾するか迷っているなど、さまざまな状況の人がいるでしょう。ケース別に取るべき行動を紹介します。

入社したい場合

内々定を出した企業への志望度が高く入社したい場合、期限内に返事をすればよいとは考えず、できるだけ早めにその旨を伝えましょう。

内々定の場合は内定と比べて取り消される可能性もあり、早めに連絡した方が印象が良くなります。

電話の後にはメールも残しておくと丁寧な印象です。さらに内々定を承諾したという証拠が残るため、万が一トラブルになったときに備えられます。

辞退したい場合

内々定をもらった企業に入社する意思がないなら、承諾するケースとは違って、直近では関わらない企業となります。承諾するときほど急いで連絡する必要はありません。

ただし、内々定のときに承諾するかどうかの返事に期日が設けられているのであれば、その日までには辞退の旨を伝えましょう。

期限を知らされていなかった場合は、辞退することが決まった時点ですぐ連絡するのが無難です。

承諾を迷っている場合

内々定をもらった企業より志望度の高い企業がある、入社の意思が固まらないなどの理由で承諾すべきか迷ったときは、どうすればよいのでしょうか。

志望度の高い企業の選考結果が分からない場合、内々定はまだ内定前の段階なので「とりあえず」で承諾しても問題ありません。

内々定をくれた企業に連絡して、承諾を保留してもらうのも1つの選択肢です。保留をお願いする際は、いつまで待ってほしいのかとともに、理由も簡潔に伝えましょう。

転職の場合

転職活動で内々定をもらったケースでは、現職を辞めるタイミングについても考えなければなりません。現職場に退職を伝えるのは、正式に内定が出て労働契約が成立してからがベストです。

内々定が出たからとすぐに退職を申告してしまうと、万が一取り消された場合に無職になってしまいます。すぐに別の会社に採用されるとは限らず、無職の期間が長引いてしまうリスクが生じるでしょう。

内々定を辞退する際の注意点

スマホで電話をする女性

(出典) pixta.jp

内々定はあなたの状況に合わせて、自由に辞退できます。ただし、マナーや誠意が感じられない対応だと、印象が悪くなり将来的な転職活動に影響する可能性があります。

内々定を辞退するときの注意点も押さえておきましょう

できるだけ早めに連絡する

採用活動を続けている企業に迷惑をかけないためにも、内々定辞退の連絡は可能であれば早めにしましょう。

辞退の連絡を先延ばしにして正式な内定の直前になってから連絡すると、企業側は新たな人材を採用しなければならず、大きな迷惑がかかります。

内々定の時点で辞退者が出ることは、企業も織り込み済みです。早めに連絡すれば、企業としても余裕を持って採用活動の準備ができるでしょう。

メールではなく電話で連絡する

内々定辞退の連絡は、メールではなく電話でしましょう。マナーとして電話が良いとされているだけでなく、電話の方が確実に辞退したい旨が伝わります。

メールはあくまでも電話の後の補足連絡か、どうしても電話が難しい事情がある場合の手段と考えましょう。

内々定をもらったら状況に応じた対応を取ろう

スマホを見る女性

(出典) pixta.jp

内々定は、内定前に企業が応募者に採用する意思を告げるものです。とはいえ内定とは違って、承諾しても労働契約は成立しておらず、法律の適用もありません。

内々定は内定に比べて取り消しのリスクが高いため、入社の意思があるなら対応や素行に注意しましょう。内々定を承諾するケースでは、できるだけ早めの連絡がおすすめです。

辞退する場合も、設けられた期日までに、可能な限り早めに辞退を申し出ましょう。事情があって待ってほしいなら、連絡を先延ばしにせず、保留をお願いするのが賢明です。

内々定をもらったときは、自分の状況に応じてベストな対応を取りましょう。