非正規雇用が増大する今、漂流しないキャリアを考える

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ここ30年ほどのあいだに、企業が求める人材の姿はかなり変化した。

もちろん時代を超えて「仕事ができる人」が求められているのは共通なのだが企業が求める人材のイメージはかなり変わってきていると言える。

忠誠を求める企業は少数派に

一昔前は会社への忠誠度が高い、協調性の高い人物を欲しがる会社が多かった。要は「公私ともに会社に守ってもらう。その代わり忠誠は尽くす」という人物だ。

そういった状況における「仕事ができる人」は、なによりも企業が掲げた目標・やり方を忠実に実行する人であり、マニュアル通りのオペレーションをミスなく完全に遂行できる人であった。

それ故に企業は、その働きに報いる方法として年功序列や終身雇用制度を採用してきた。
また、労働者もそのような職場を望んだ。お互いWin-Winの関係を築けてきたと言える。

だが現在では、そのような人物を求める会社は少数派となった。企業は「独立心の旺盛なスキルの高い個人」を求めるようになっている。求職者は一昔前と変わらず安定した会社に入りたいと望むが、企業は安定を望む人材を欲しがっていない。

「成果が出せなければ、去ってほしい」
「今の事業にマッチしたスキルの人がほしい。古いスキルの人は要らない。」と考える企業が多数派である。

(参考:労働政策研究・研修機構 「構造変化の中での企業経営と人材のあり方に関する調査」

姿を消す正規雇用と、主流になるフリーランス

消費者が賢くなり、モノが世の中にあふれた影響で、事業や商品の寿命が短期化している。中小企業庁の調べによれば、1980年代には5年以上の寿命を持つ商品の割合が半数近くあったが、2000年代はその割合は5%程度となっている。中小企業白書2005

安定事業の確保が難しくなった企業は、従業員を守れる存在ではなくなった。結果として企業は成果主義を採用し、正規雇用を減らし、非正規雇用や社外のコンサルタントといった専門家を数多く使うようになった。

米国の作家であり、副大統領のスピーチライターを務めたダニエル・ピンク氏はその著書「フリーエージェント社会の到来」の中で、すでにアメリカでは全人口の4分の1はフリーランスで働いていると述べる。

いずれ「正規雇用」はほとんど姿を消し、すべての人がプロジェクトに参加し、集合離散を繰り返すフリーランスのような働き方になるかもしれない。アメリカとの文化のちがいはあれ、現在の日本企業の状況を見ると遅かれ早かれ、日本もそのようになる蓋然性は高い。

漂流しないキャリアを考える

では、そのような時代を迎えるにあたって我々はどうすべきなのだろうか。

1つは、自分自身で仕事の目標を立てることである。「会社から言われたことをやり遂げる」のはもちろん重要だが、「あなたが個人として今目指すことは何か」を問われるシーンは増えている。

次に何を目指すか、今は何を学習しているのか。そういったものを持たなければ漫然と会社の言うままに漂流することになり、キャリア形成はおぼつかない。

古代中国の思想家・孔子は「40にして惑わず」と言ったが、それを実行するためには20代、30代のうちに自分のキャリアを真剣に考える必要がある。会社はもはや、あなたのキャリアを考えてくれる存在ではない。

もう1つは、転職を恐れないことである。現在すでに3、4回程度の転職は当たり前になりつつあり、むしろ「転職を1回もしたことのない人」はあまり魅力的ではないと考える企業は確実に増えている。

「世の中を知らないのではないか」
「所属している組織でしか通用しない人材なのではないか」と見られる。

アメリカ広告連盟の殿堂入りを果たした人物であり、「アイデアの作り方」という不朽の名著を著した人物であるJ・W・ヤングは「アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ」と言った。

革新的なアイデアを求める企業にとっては、さまざまなバックグラウンドと経験を持つ人のほうが創造性に優れるとみなされるだろう。完全なフリーエージェントとまではならずとも、フリーエージェントに近い働き方ができる人は今後より有利な立場になる。

「働けば安泰」時代は終わった

「作れば売れる」時代は平等な成果を皆にもたらした。しかし現在では「本当に優れたもの」しか売れない時代になった。

必然的に労働者も「働けば安泰」という考え方を捨て「真に成果を出せる人」を目指さなくてはこれからの時代で生き残れない。

それは働く人々にとって、極めて厳しい競争の時代の幕開けである。

執筆者

経営・人事・ITコンサルタント。ティネクト株式会社代表取締役。
世界4大会計事務所の1つである、Deloitteに入社し、12年間経営コンサルティングに従事。1000社以上の大企業、中小企業にIT・人事のアドバイザリーサービスを提供し、8000人以上のビジネスパーソンに会う。
自身の運営するブログBooks&Appsは月間PV数150万以上。
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