福島の未来を切り拓くために。 「雇用型訓練」制度で、ロボット産業に携わる若者を応援!

Pocket
LINEで送る

東日本大震災以降、製造業の人手不足が続く福島県。県は地元企業とタッグを組んで、働きながら、ものづくり産業・ロボット産業に必要なスキルを磨くことができる「雇用型訓練」制度をスタートしました。運営の中心メンバーである福島県商工労働部産業人材育成課の二階堂陽介さんと、実際にこの制度を利用している和田装備株式会社の佐藤雄弥さんに、その魅力についてうかがいました。

福島県商工労働部産業人材育成課の二階堂陽介さん

■地元の企業に勤めながら、週末に実践的なスキルを学ぶ

――「雇用型訓練」とは、どんな制度ですか?

二階堂 県内の製造業に就職した人たちを対象とした集合訓練制度で、2017年の秋からスタートしました。「郡山ものづくり」「郡山ロボット」「南相馬」の3コースに分かれ、約6ヶ月間、全16回の研修を行い、製造業に求められるさまざまな技術や知識を学びます。

研修が行われるのはおもに土曜日の9時から16時。平日は会社で働いて経験を積み、週末はOFF-JTでスキルアップをめざすという仕組みです。訓練生の負担を軽減するため、企業には、研修に参加した日数分の休日振替を訓練生に与えることをお願いしています。

研修が行われるのは、県が設置している公共の職業能力開発施設(テクノアカデミー)で、講義形式のときもあれば、実際に機械を操作する実践形式のときもあります。講師は、実際に職業訓練校で教鞭をとっている方や大学教授、企業の現場で活躍されている方など、各分野の第一人者ばかりですね。

福島県郡山にある職業能力開発施設(テクノアカデミー)

 

教鞭をとる講師の方

――そもそもなぜ、この制度を始めることにしたのですか?

二階堂 県が成長産業を担う人材を育成して、企業に供給する目的でスタートしました。

じつは東日本大震災の発生前は、福島県の製造業の出荷額は東北ナンバーワンでした。しかし、震災後は多くの企業が人手不足におちいり、売り上げも減少……。こままでは、県内産業は頭打ちになると危惧されたため、県は新たな事業分野を拡大するために、「医療」「再生エネルギー」「ロボット」「航空・宇宙」の4つの産業に力を入れていくことにしたのです。とくにロボット産業に関しては期待が大きく、産業用ロボット市場は飛躍的に拡大しているうえ、廃炉関連や災害対応、ドローンなど、ロボット技術が求められる市場にも大きな伸びしろがあると見込んでいます。

ただ、県内で成長産業を根付かせようという取り組みは、地元の企業の立場になってみれば、ビジネスチャンスでもありながら、先の見えない海にこぎ出すような不安も感じます。その不安を解消するためにも、人材の育成、企業の誘致、研究開発の補助などを、県が積極的に行っていきたいですね。

■会社で中心的な役割を担う人材になってほしい

――カリキュラムはどのように決めているのですか?

二階堂 2017年度のカリキュラムは、県内の大学教授や職業訓練施設の先生、企業の方などを交えた策定委員会が、6月から8月にかけて集中的に議論してつくりました。

3コースとも前半のカリキュラムは共通で、ビジネスマナーや業界の常識など、ごく初歩的なことを学びます。回を重ねるにつれて内容はだんだん高度になり、材料工学、CADの製作、プログラミングなど、専門的なことも学びます。

2017年度、実践してみたことでいくつか課題も見つかりました。なるべくあらゆる業種に対応することを考えてカリキュラムを策定したのですが、やはりすべての訓練生が、会社で担当している業務と直結するわけではありませんでした。個々のニーズに完全に対応するのは難しいと感じましたね。

また、受講者にアンケートをとったところ、「やはり土日が潰れるのはつらい」「6ヶ月のロングスパンではなく、短期に集中してもっと期間を短くしてほしい」という声も聞こえてきました。そういった意見を踏まえ、策定委員会のメンバーと相談しながら、次年度のカリキュラムを決めていきたいと思います。

 

――まだ始まったばかりですが、この事業の今後が楽しみですね。

二階堂 この研修を受けた人たちが、企業の中心的な存在として活躍してくれるとうれしいですね。同僚や上司から、「やっぱり、県の研修で基礎的な知識、技術をしっかり学んできた人は信頼できるね」というような制度に育てていきたい。

この研修を受けた方たちには、「こういうものをつくったらいいんじゃないか」「こうしたらいいんじゃないか」「そういう設計開発もできる」と、会社の先頭に立ち、引っ張っていく人材をめざしてもらえると、私たちもいっそうやりがいを感じます。

 

――最後に、訓練生に対して一言メッセージをお願いします。

二階堂 いまやっている業務と直結しないと、正直、つまらないし、「なんの意味があるんだ!」となるかもしれませんが、働いていくなかで、ここで学んだ知識が役に立ち、プラスになることが必ずあると思います。だから目の前のことだけではなく、少し長い先を見据えながら学んでいただけるとうれしいですね。

 

■技術が身につくのはもちろん、人とつながれることも大きな魅力

制度利用中の和田装備株式会社の佐藤雄弥さん

――どうして雇用型訓練に参加しようと思ったんですか?

佐藤 昔からものづくりが好きで、やはりどうしても製造業に携わりたいと思ったので、この制度を利用できる会社に再就職しました。

じつは僕は一度、ものづくりの道をあきらめているんですよ。生まれも育ちも郡山で、高校の普通科を卒業したあと、テクノアカデミー郡山の機械制御システム科に入学しました。卒業後は地元の工場に勤めたのですが、1年経ったころ、祖父が体調を崩したことがきっかけで、介護に携わりたいという気持ちが芽生えてきたんです。

それで工場を辞めて、介護の仕事に就きました。4年間働いて資格も取得したのですが、そのころ祖父が亡くなり、心にぽっかり穴が空いてしまったというか……。結局、介護の仕事も辞めて、しばらく家電量販店などでアルバイトをして生活していたのですが、この制度があることを知って、もう一度、ものづくりに携わりたいという気持ちが湧いてきたんです。この制度を受けることを前提に、いまの会社に応募して採用されました。

――実際に参加してみて、いちばん良かったことは何ですか?

佐藤 自分と同じように、ものづくりに携わる人たちと知り合えることですね。たとえば、講義で難しい内容が出てきたら、参加者同士で教え合ったり、それをきっかけに世間話をしたり、多くの仲間とつながることができることが、うれしい。講義も、和気あいあいとした和やかな雰囲気のなかで行われています。

もちろん、製造業の基礎的な技術を幅広く学べることも魅力です。僕の勤めている和田装備は、建築金物や鍛造金物を中心にさまざまなものを製造していますが、どちらかというと溶接が中心で、ここで使い方を学ぶMC(マシニングセンター)はあまり使用しません。でも、現在の仕事に直接関係ない技術だとしても、将来は役立つ可能性はあるし、ものづくりに携わるうえでけっして無駄にはならない技術なので、興味をもって講義を受けています。

 

――では反対に、改善したほうがよいと思った点はありますか?

佐藤 途中からこの制度に参加してきた人が多かったことが少し残念でした(笑)。みなさん就職のタイミングがバラバラなので、仕方ないことだとは思うんですけど、スタートから参加者が全員揃っていれば、もっとみんなと仲良くなれたかと。どうしても、あとから参加してきた方には、ちょっと遠慮して話しかけづらくなってしまいましたね。来年度は、最初から参加者全員が揃った状態でコースがスタートする仕組みにしたほうがよいかと思います。

 

――最後に、これから雇用型訓練を受けようと思っている方へのアドバイスをお願いします。

佐藤 僕は専門学校を出ていたので、もともとものづくりの知識は多少ありました。その視点から見ても、ポイントを押さえた初心者向けに組んであるカリキュラムだと思いますので、これからものづくりに挑戦してみたいという方は、入社する会社に相談して、積極的に参加してみてほしいですね。

執筆者

地方企業・地方自治体の採用を支援するビズリーチ地方創生支援室。魅力的な地方の情報をお届けします。