仕事の不満を解消するには、新しい考え方のボスが必要―女性のキャリアを考える―【前編】

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女性活躍推進、労働力人口の減少、終身雇用の崩壊、シニア活用など、雇用に関するワードを目にしない日はありません。猛スピードで変化していく社会に対応しながら、働き続けていくにはどうしたらよいのか。菊池桃子さんが理事を務めるNPO法人キャリア権推進ネットワークの早川由美事務局長にお話をおうかがいしました。

菊池桃子理事は15歳で芸能界デビューし、結婚や出産・子育てを経て、現在では大学で客員教授を務めています。また、早川由美事務局長も、結婚・出産・子育てをしながら、パート・派遣・正社員を経験し、現在は大学の教壇に立っています。コンプレックスをうまく活用してキャリアをチェンジし、幸せに働くためのヒントをご紹介いただきました。

前編 目次

■「キャリア権」とは、職業生活を通じて幸福を追求する権利のこと
■女性が離職する理由は、「仕事への不満」や「キャリアの行き詰まり」
■これまでのボスとは異なる、柔軟なボスが必要とされている
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「キャリア権」とは、職業生活を通じて幸福を追求する権利のこと

 ――まずは、NPO法人の名称にもある「キャリア権」について教えてください。

「キャリア権」とは、働く人々が意欲と能力に応じて希望する仕事を選択し、職業生活を通じて幸福を追求する権利のことです。これを立法の観点から検討・研究しているのがNPO法人キャリア権推進ネットワークです。

憲法では、社会の中で、人間が人間らしく生きていくための権利である基本的人権が認められています。人間が人間らしく生きるためには、職業キャリアをどう過ごすかも重要です。職業キャリアは、人生で大きな位置を占めます。それだけ大切なことですし、社会にも影響を与えることですから、昨今のテレビや新聞でも、職業キャリアや雇用の話題について多く伝えられているのですね。

――なぜ、これほどまでに職業キャリアや雇用について注目されているのでしょうか。

きっかけは安倍首相が「働き方改革」を示したことにあります。現在、グローバル競争や技術革新のスピード化が進み、働く環境が変化しています。会社そのものが長期間存続できるかもわからず、終身雇用は崩壊しつつあります。逆に、シニアになっても働くことが求められてきているなかで、働くことで自己実現し、幸せになるという権利を主張することが大切になってきます。自分自身でキャリアを考えていなければ、いざというときに対応できません。会社にキャリアを預けっぱなしでは、柔軟性のない人材になってしまいます。

たとえば、会社から命令されて異動があったとしても、受け身ではなく、主体的に自分自身の仕事を今後どうやって生かしていくかを考えてほしいのです。不向きな仕事にも、立ち向かっていかなければいけないわけですが、自分はどうしたら幸せなのかを考えながら働くことが大事になります。このようなことをNPOで啓蒙(けいもう)しています。

――具体的にはどのような活動をされているのでしょうか?

女性活躍に力を入れている企業にお話しいただくイベントを開催したり、大学の先生に参加していただいてシンポジウムを開催したり、また大学や専門学校で学生たちに対して「出前授業」としてワークショップを行なったりしています。キャリア権というのは、もともと、どうやってキャリアを選択・意思決定していくかというところからスタートしたので、受け身ではなく主体的に考えることを広める活動をしています。

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女性が離職する理由は、「仕事への不満」や「キャリアの行き詰まり」

――社会では、女性の活躍、就業について議論されています。今後ますます強くなっていくものでしょうか?

1986年の男女雇用機会均等法の施行から、今年でちょうど30年です。平成27年の女性の労働力人口は2,842万人となり、年々増加しています。女性の年齢階級別労働力率におけるM字カーブの底も浅くなってきている現状を見ると、女性が働くというのは普通になってきているのだろうと思います。

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でも、多くの女性は仕事を辞めています。なぜ女性がM字で辞めると思いますか?

――結婚や出産・子育てのためでしょうか?

そう考えますよね。日本女子大学の大沢先生が書かれた本を見てみると、大卒女性が育児を理由に辞めるのは、日本の場合は32%です。一方「仕事への不満」で辞めるのは、63%、「行き詰まり感」で辞めるのは49%だそうです。これはアメリカだと逆転していて、育児で辞めるのは74%、仕事の行き詰まりで辞めるのは26%だそうです。

これらを踏まえて考えてみると、女性が辞めるのは、大義名分では結婚や出産で辞めるけれど、実は、「仕事への不満」や「キャリアの行き詰まり」が原因だとわかります。でも、社会や企業が施策を講じれば、改善できるのではないかと思うのです。出産や子育てから女性が帰ってきたときのキャリアについて、まだまだ、日本は整備がされていないということですね。

――まだまだ男女差が大きいということですね。

実際に、出産したらどうしたって3週間くらいは働くことはできませんし、その後のことも心配という声はよく聞きますね。大きい企業は復職のプログラムを作っていますが、日本の99.7%は中小企業ですから、そう考えるとなかなか女性が戻ってくるプログラムが整っていないのかなと思います。

――賃金を見ても、女性と男性では全く違いますよね。

生涯賃金で見ると、男女では約1.5倍の差があるようです。そうすると、キャリアに行き詰まったり、仕事に行き詰まったり、モチベーションが上がらなかったりするというのは、わからなくもないですよね。

日本は単線のキャリア、いわゆる学校を卒業してから会社に入社して、定年まで働いた人たちが評価をされていて、そうではなく複線のキャリア、転職や休職をした人たちは、評価がされにくいようです。特に女性たちは、出産や育児で仕事から離れ、複線のキャリアを歩む人が多いのですが、そこで格差が生まれてきます。

これまでのボスとは異なる、柔軟なボスが必要とされている

――女性が安心して働けるようになるには、どうしたらよいのでしょうか?

ボスの意識がやはり大事かなと思いますね。政府が掲げている、女性の登用「2030」という、2020年までに指導的地位の立場の女性を30%にしようという目標があります。女性がボスになるというのは、利点はあると思います。

ただ現在、ボスになっている女性たちは、結婚や出産を経験されていなくて、男性と同等もしくはそれ以上に頑張ってきた方たちが多いようです。そうだとすると、日本の男性社会や企業文化は変わらないかもしれません。出産・育児で困っている女性への理解が本当にされるのか疑問です。結婚や出産を経験し、柔軟なキャリアを積んできた人たちがボスになっていかなければ、見えてこないものもあるかもしれません。変えていくには、そこからかなと思います。

▼続きはコチラ▼
普通の専業主婦が大学講師に転身!―女性のキャリアを考える―【後編】

 

【早川由美 プロフィール】
オフィスLibra代表
2級キャリアコンサルティング技能士(国家資格)
ビジネスマナーインストラクター
法政大学大学院政策創造研究科修了(政策学修士、専門は雇用政策・キャリア政策)

流通企業海運事業部にて約12年間、輸出入管理、役員秘書、新人教育等に携わる。その後、東京都産業労働局雇用就業部にて就職支援事業の立ち上げから収束まで専門指導員として関与した。2011年6月オフィスLibraを開業。2008年よりビジネスマナー・若手社員向けの研修実績あり。現在、NPO法人キャリア権推進ネットワーク事務局長を兼任。

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執筆者

みんなのスタンバイ編集部。「はたらきかたをかんがえる」をコンセプトに、はたらく好奇心を刺激する情報をすべてのはたらく世代へお届けします。