普通の専業主婦が大学講師に転身!―女性のキャリアを考える―【後編】

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女性活躍推進、労働力人口の減少、終身雇用の崩壊、シニア活用など、雇用に関するワードを目にしない日はありません。猛スピードで変化していく社会に対応しながら、働き続けていくにはどうしたらよいのか。菊池桃子さんが理事を務めるNPO法人キャリア権推進ネットワークの早川由美事務局長にお話をおうかがいしました。

菊池桃子理事は15歳で芸能界デビューし、結婚や出産・子育てを経て、現在では大学で客員教授を務めています。また、早川由美事務局長も、結婚・出産・子育てをしながら、パート・派遣・正社員を経験し、現在は大学の教壇に立っています。コンプレックスをうまく活用してキャリアをチェンジし、幸せに働くためのヒントをご紹介いただきました。

▼前編はコチラ▼
仕事の不満を解消するには、新しい考え方のボスが必要―女性のキャリアを考える―【前編】

後編 目次

■コンプレックスが社会人大学に通う原動力
■恵まれた仲間との出会い
■捉え方によって、自信が持てなかった過去が変わる
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コンプレックスが社会人大学に通う原動力

――いろいろな経験をされているようですが、これまでのキャリアを教えてください。

短大を出て、情報処理サービスの会社に就職をしました。当時は、「一般事務の女の子」として採用され、受付業務をしていました。その後2年で結婚して、出産をして、8年ほど専業主婦として過ごしました。子供がお腹にいるときに会社を辞めたのですが、会社からは「いつ辞めるの」なんて言われていましたね。当時は、そういう時代でした。

子供が小学校2年生になったころに、パートタイムで週3~4日、カルチャーセンターの受付の仕事を始めました。5~6年続けたところで、もっと働きたいと思い、派遣に登録したところ、物流会社での「クラーク(事務)」の仕事が見つかりました。2年ほどしたときに、その会社の子会社の方が「正社員として働かないか」と誘ってくれ、10年弱、事務と役員秘書のような仕事を行いました。その会社で働いているときに、キャリアコンサルタントの資格を取得し、2006年から法政大学のキャリアデザイン学部に通い始めました。

――なぜキャリアコンサルタントの資格を取ろうと思ったのですか?

40歳を過ぎて、このままその会社で働くことを考えたら、とても不安になってしまったのです。10年近く働いていて何のトラブルもなく、とても居心地は良かったのですが、あと20年変わらないのかと考えたら、「このままでいいのかな?」と不安になってしまって。そんなとき、新聞を眺めていたら、「キャリアコンサルタント講座」という文字が飛び込んできました。まだ「キャリアコンサルタント」が世の中に出始めたばかりのころだったので、「何だろう?」と思うと同時に、「勉強してみようかな」と、気持ちが動いたのです。

――その後、大学にも通われたのですね。

ずっと仕事や学歴にコンプレックスがありました。志望大学には合格できず、しかたなく短大に通ったことで、特に学歴にはコンプレックスを持っていました。短大卒だったからといって、困ったことは1つもなかったのですけどね。でも、自分のなかでは、ずっと引っかかっていて。

仕事では、自分でこう働きたい、こういう職業に就きたいなど、全く考えることなく、受け身で流されるままに働いていたなあという感じです。でも、ふと「キャリア」というものを知ったとき、「自分で考えなければいけない」と気づきました。なんとかしなければならないと。それで、法政大学のキャリアデザイン学部で勉強しようと決意しました。コンプレックスって、行動につながるのですね。他のみなさんも、なにかしらのコンプレックスを持って来ているのだなと思いました。

恵まれた仲間との出会い

――大学・大学院に通っている期間は、随分お忙しかったのではないでしょうか。

キャリアデザイン学部の2年のときに、会社を円満退職して、東京都産業労働局での低所得者就労支援のプロジェクトにキャリアコンサルタントとして3年間携わりました。そこでは非常勤なので17時45分に仕事が終わり、夜は大学・大学院に通っていました。

仕事して、家事をして、勉強をして寝るのは夜中の2時なんてこともありましたけれど、そのときは、取りつかれたように勉強をしていて、全然大変だと思わなかったです。苦しかったけれども、ものすごく楽しかった。研究室の人たちも、それまでの生活では出会えなかったような人たちで、そういう人たちと同じテーブルにつかせてもらえるというのが、とてもうれしくて。

――研究室は何人いらっしゃったのですか?

私たちの代は、修士が3人、ドクターが3人でした。修士3人でああでもない、こうでもないと話し合っていました。みんなバラバラのキャリアを経験しており、一人は、大手通信会社の課長職の方です。新卒で入社してその会社でずっと働いていました。そして、もう一人が、当NPOの菊池桃子理事です。入学式で会ったときには、驚きました。

――菊池桃子さんと同期とは、驚きますね。

実は、大学を3年で卒業しようと計画して、3年のときに大学院の試験を受けたという経緯があり、そのときに大学院の試験を受けなければ、このような出会いはありませんでした。担当教授の諏訪康雄先生との出会いも然りです。振り返ると、大学院に限らず、人との出会いは非常に恵まれていたと思います。

大学院で勉強したあとは、担当教授の諏訪先生から、独立することを勧められて、オフィスを立ち上げました。はじめはセミナーで研修講師などをしていたのですが、大学の教壇に立つことになりました。キャリアデザイン学部に在籍していたときから、ことあるごとに「大学の教壇に立ちたい」ということを宣言していて、先生方や仲間の助けもあり、法政大学、東洋大学、尚美学園大学で教えることになりました。仲間との出会いやタイミングが良かったのでしょうね。kikuchicareer
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捉え方によって、自信が持てなかった過去が変わる

――企業の受付から大学講師へのキャリアチェンジはすごいですね。

最初は何も考えないまま仕事をしていましたが、今こうして「キャリアを語る」というような仕事に就いて、キャリアについて考えるようになりました。専業主婦・パート・派遣・正社員と雇用形態全てを経験していて、そして産官学全てに関わっています。コンプレックスを持っていたキャリアなのに、今では一つの会社にずっといた人とは違う強みを持っていると考えられるようになりました。それまでは、フラフラしてきた自分を語るのが怖かったし、そうそうたる研究者たちのなかに入って卑屈になることもあったのですが、だんだんと見方を変えられるようになりました。あるとき、政策を考えるうえで、専業主婦からの視点として意見を言えたことも自信につながりました。

――自信を持てない女性も多いかと思いますが、どうしたらよいでしょうか?

なぜ自信を持てないのか、考えてみるといいですね。もし自分で考えられないのならば、第三者に話を聞いてもらって、一緒に考えてみるといいですよ。キャリアコンサルタントでも、友達でも構いません。「何もしてきませんでした」「当たり前のことしかしていません」と言う人でも、他者からすると自信を持ってアピールできることを身につけていたりします。

――家事が忙しすぎて、自分のキャリアを見つめ直す時間がないという主婦もいるかと思いますが、良い方法はありますか?

社会と細く長くつながってほしいですね。子育てをしていると、どうしても社会や組織と遮断されてしまいます。でも、それは女性たちの精神をむしばみますよね。会話もままならない子供と二人だけで、家のなかでじっとしているのはつらいものです。今の時代は、インターネットを通じて地域と関わるとか、情報を得るとか、社会とつながれる方法はありそうですよね。

そして、このままではダメだと感じたときに、「何かしよう」「何ができるのか」と考えられるといいですよね。そこから、可能性が広がっていくかもしれません。自分を責めるのではなく、新たな選択肢を考えてみてはいかがでしょうか。

――最後に、これからの女性のキャリアについてのお考えをお願いします。

現在日本は雇用社会ですが、これからは、働くことについて定義し直すことが必要になってきます。誰かに雇われて働いている人が、労働力人口の88%と言われていますが、これからはキャリア社会になっていくだろうと考えられ、研究も進んできています。つまり、キャリアを財産にして、それを活用・運用していく時代になっていくだろうと。自分が雇用されることに対して、今までとは違う働き方や生き方を考えないといけません。会社は最後まで面倒をみてくれないし、一方でシニア活用として定年を70歳、75歳までにしようなどと言っています。会社も個人も自分のキャリアを財産にするためには、どう運用していくかを考えなければいけないのです。

主婦をしてきた期間を評価してくれる企業が増えるといいですね。家事や育児は、企業の仕事とは違うから、企業としては全く評価しないというのではなく、家事のなかでも効率を考えて工夫していたり、近所の人とのコミュニケーションをとったりしていると思うのです。そこを評価する仕組みができたら、女性も「働こう」という気持ちが湧いてくるかもしれませんよね。

あとは、私の心の支えにしているのは、過去の客観的事実は変えられないけれど、捉えようで変えられるということです。キャリアを財産としていくためには、柔軟な見方が大切になると思います。

――すてきなお話、ありがとうございました!

 

【早川由美 プロフィール】
オフィスLibra代表
2級キャリアコンサルティング技能士(国家資格)
ビジネスマナーインストラクター
法政大学大学院政策創造研究科修了(政策学修士、専門は雇用政策・キャリア政策)

流通企業海運事業部にて約12年間、輸出入管理、役員秘書、新人教育等に携わる。その後、東京都産業労働局雇用就業部にて就職支援事業の立ち上げから収束まで専門指導員として関与した。2011年6月オフィスLibraを開業。2008年よりビジネスマナー・若手社員向けの研修実績あり。現在、NPO法人キャリア権推進ネットワーク事務局長を兼任。

hayakawa

 

執筆者

みんなのスタンバイ編集部。「はたらきかたをかんがえる」をコンセプトに、はたらく好奇心を刺激する情報をすべてのはたらく世代へお届けします。