「渋谷はホリエモンが好きで、丸の内は新浪剛史が好き」NewsPicks編集長・佐々木紀彦が語った。2016年メディアはバイカルチャーになるべきだ

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働きかたをかんがえるメディア「みんなのスタンバイ」編集長のおだんです。仕事柄、毎日インターネットを見ているのですが日々大量に消費されていくコンテンツを見ていると「盛者必衰の理をあらわす」と平家物語の冒頭文が頭に浮かんできます。これからのメディアはただの情報消耗品になってしまうのでしょうか?

そんな私の心情を察したかのようにタイムラインへ流れてきた「2016年、ブランド広告はどう変わるのか」をテーマにしたイベントNewsPicksブランドデザイン・ナイトが11月12日(木)に開催されました。

メディアが変わっていくと、その情報によってビジネスパーソンのマインドが変わって、構造が変わって、さらには働きかたも変わってくる」と話したNewsPicks編集長・佐々木紀彦氏。0.1秒単位で消費されていくインターネットの世界で生き残っていく働きかたのヒントを探してきました。

「PV至上主義は終わった」2015年のメディアトレンドを振りかえる

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佐々木編集長の講演は、今年のメディアトレンドの振り返りから始まりました。年明け1月に「2015年のメディアではこれが流行る」と発表した5つの予測を自己採点していきます。

1. PVに代わる新王者の戦いが過熱する
2. コンテンツの量より質に投資する
3. 広告とジャーナリズムの議論が活発になる
4. バズフィードの日本上陸
5. 編集者の人材移動が加速する

「まずは1つ目。PV至上主義が終わり新王者をめぐる戦いが過熱すると。PVを売ってもあまり有効じゃないよねとの声は多く聞くようになってきましたので、このトレンドはかなり浸透したんじゃないかなと思っています。

2つ目がコンテンツの質への投資。今までは、ファストコンテンツとでも言うべき、コピペでつくられたような軽いコンテンツが出回っていましたが、やはりクオリティの高いコンテンツのほうが良いとする流れが生まれました。

3つ目は、ジャーナリズムをめぐる本質論の盛り上がりですね。Webメディアにおける広告とジャーナリズムのバランスといいますか、あまり重要視されてこなかったルールをしっかり引いていく。この議論が高まってきているのは、業界全体の信頼向上に繋がっていきますから非常にいい状況だと思っています。

4つ目。バズフィードの日本上陸とネイティブ広告の進化。今年の冬にバズフィードはヤフージャパンとのタッグでスタートすることが決まっています。

そして最後5つ目は人材移動の加速。まさしくバズフィードジャパンの編集長に就任したのが、朝日新聞の古田大輔記者です。メディア業界のすごい人たちが、ネット業界や他の業種に転職する例が今年はかなり増えた印象を持っています。」

「全部無料で見せるスタイルは陳腐化していく」2016年のトレンド予測発表

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続いて、来年2016年のトレンド予測が発表されました。2016年に勝利するメディアはどこなのか。Instagram や LINEニュースマガジンなど他社分析を交えながら、成功するメディアの5つの戦略を予測します。

1. モバイル広告をブランディングに使う
2. スマホに最適化したコンテンツづくり
3. 読者 / ユーザーのコミュニティ化
4. いつでも・どこでも接点をもつオムニチャネル
5. 有料課金モデルのトライ&エラー

「2016年のメディアはどうなるか、お話しさせていただきます。まず1つ目はモバイルブランディング元年。Instagramが1つの大きい事例です。今年後半から増えてきているブランディングにも使えるようなモバイル広告ですが、この流れは来年さらに加速してモバイルは獲得だけではなく、ブランディングにも使えるとの認識が浸透していくのではないのかと思います。

2つ目のトレンドがスマホネイティブコンテンツの百花繚乱です。スマホに最適化したコンテンツのつくり方がより加速します。特に私がすごいと思うのはLINEニュースマガジンです。スマホに適応したレイアウトやタイトルづけのイノベーションが一番進んでいるメディアではないかなと感じています。

次の3つ目はコミュニティのクローズ化。今までのウェブメディアはオープンすぎました。無料一辺倒だったものが、ユーザーを自分たちのメディアに紐づくコミュニティにするために専門化したりクローズ化したりする流れが強まっていくのではないでしょうか。

トレンド4つ目がメディアのオムニ化で、例えばウェブネイティブなメディアが紙媒体をもったり、テレビをやったりとか。オムニチャネルというからには、どこのタッチポイントでそのブランドに出会っても、同じような認識を与えられる戦略が大事になってくると思います。

最後に5つ目、有料課金2.0ですれども無料で全部を見せるスタイルはかなり陳腐化していくんじゃないかなというのが私の予測です。例えばフィナンシャルタイムズがやっているトライアル制は、1ポンド払えば1ヶ月間は記事が読み放題になります。しかし2ヶ月目からは値段がぐっとアップするわけですね。

最初は敷居を下げることで、有料課金につながる会員を増やしていくのが戦略です。このように有料課金のアイデアを試すトライ&エラーの動きが強まるんじゃないかなと思います。」

渋谷はホリエモンが好きで、丸の内は新浪剛史が好き「西海岸と東海岸が分断している限り日本のビジネス界は面白くならない」

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佐々木編集長は「メディアが変わっていくと、その情報によってビジネスパーソンのマインドや働き方も変わってくる」と経済メディアの役割を示しました。2016年、NewsPicksはどんな仕掛けで日本の経済界にイノベーションを起こしていこうとしているのでしょうか。

東京には西海岸と東海岸、2つのカルチャーがある

「メディアが変わっていくと、その情報によってビジネスパーソンのマインドが変わって、構造が変わって、さらには働きかたも変わってくると思うんです。NewsPicksは、メディアにおけるイノベーションを起こすことで日本のビジネス界を少しでも面白くできるように頑張っていきたいと思っています。

そのうえで来年、力を入れてやっていきたいのが東海岸への進出です。東海岸とは、東京における文化を意味しています。これは私のアイデアではなく『ハーバード・ビジネス・レビュー』編集長の岩佐文夫さんのアイデアですが、最近は特に東京には2つのカルチャーがあるなと強く感じているのです。

千代田区あたりが境目じゃないかなと思っていまして、西海岸は渋谷や六本木といった、IT・スタートアップが強いエリアです。一方の東海岸は、丸の内や霞が関のエスタブリッシュメントな人たちがいるエリアです。この2つの文化が予想以上に違っているのを、東海岸のメッカみたいな東洋経済からに西海岸へ移ってきて痛感しました。」

東海岸はスーツとWindows、西海岸はTシャツとMac

「2つの文化がどんなふうに違うのか、典型例を挙げてみましょう。」

東海岸
・新浪剛史が好き
・仕事着はスーツ
・大企業で出世に関心がある
・PCはWindows

西海岸
・ホリエモンが好き
・仕事着はTシャツ
・起業に関心がある
・PCはMac

「東京が西海岸と東海岸で分断している限り、日本のビジネス界は面白くならないなと強く感じるわけです。私たちはいま西に強くて東に弱いんですが、東に進出することによって二者間のバイカルチャーになっていく。特にフォワードといいますか、各エリアで攻めている人たちをどんどん繋げていきたいと思っています。」

NewsPicksの役割はイノベーションの触媒になること

「攻めの人たちを繋げることで、それぞれのイノベーションが東にも西にも還流して大きくなる。そういった触媒になることが、NewsPicksのメディアとしての役割なんじゃないかと思っています。

そういう意味でも、来年NewsPicksでは東海岸の方にも読んでいただけるようなコンテンツを増やしていきますし、マーケティング戦略においても東海岸の方々にどうリーチできるかを注力していきたいです。」

株式会社ニューズピックス 取締役 / NewsPicks編集長
佐々木紀彦 氏


1979年福岡県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業、スタンフォード大学大学院で修士号取得(国際政治経済専攻)。東洋経済新報社で自動車、IT業界などを担当。2012年11月、「東洋経済オンライン」編集長に就任。リニューアルから4カ月で5301万ページビューを記録し、同サイトをビジネス誌系サイトNo.1に導く。著書に『米国製エリートは本当にすごいのか?』『5年後、メディアは稼げるか』がある。

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執筆者

みんなのスタンバイ編集長。「エンジニアに萌えるお姉さん」として年間3,000人が訪れるテック系イベントスペースを運営し、企業のファンづくりを務めた。2015年からフリーランス編集者。IT・Web系企業のPR・採用事情を取材している。