福祉分野から観光分野へ転身した、全ての人を受け入れるまちを目指す陸前高田の立役者

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震災から6年が経過し、復興を通じて新しい地域づくりに取り組む人たちがいます。陸前高田市では、震災から立ち上がりチャレンジする地域の人々の姿を、全国・世界に発信し、相互の交流を促す役割を、一般社団法人 マルゴト陸前高田が担っています。
今回、一般社団法人マルゴト陸前高田の理事である伊藤雅人氏に、今、被災地で観光を通じた地域づくりに関わる意味と、マルゴト陸前高田のこれからの展望についてお話を伺いました。

 

--震災後、伊藤さんが現職に至るまでと、マルゴト陸前高田設立のきっかけを、教えてください。

私は陸前高田市出身です。元々、陸前高田市内の福祉施設にて勤務していました。2011年3月1日に気仙沼の別の福祉施設の内定をもらったところだったのですが、3月11日の震災で内定が取り消しになりました。
丘の上にある自宅は津波を免れたのですが、震災直後の2週間は行方不明者探しやがれき撤去に明け暮れました。その後、地域外からのボランティアの受け入れにあたり、地元の人間が地域に必要なサービスを見極めていく必要があると感じ、ボランティアセンターのスタッフとして関わり始めました。独居高齢者の支援、子どもへの希望をつくるためのNPO設立、簡易宿泊所運営など様々な活動に取り組むこととなりました。
そのような活動をしている中で、2013年に陸前高田市の戸羽市長から、まちの将来を見据えて災害ボランティア支援から震災学習の受け皿づくりに活動の軸足を移していく提案があり、企業研修の受け入れ活動を開始しました。これがマルゴト陸前高田の現在の活動のきっかけとなっています。

--マルゴト陸前高田は地域の中でどんな役割を担っているのでしょうか。

「マルゴト」とは、商業・漁業・林業など地域の資源を「マルゴト」連携させて、交流人口を拡大しようという意図で付けられた名前です。まずは交流人口を拡大させ、その交流をきっかけに地域の人と地域外の人がつながり、次のビジネスや生きがいとなり、地域のまちづくりに発展させたいと考えています。
震災直後は、事業再開に向けて一人で頑張る人が多く見られましたが、一人では限界があり事業再開をあきらめてしまった人もいました。30人いた漁師が10人になってしまった地区もあります。

そのような中、牡蠣養殖をやめるつもりだった漁師からこんな話を聞きました。地域から来たボランティアに唯一残った牡蠣を振る舞ったところ、「美味しい」と大喜びする姿を見て、漁業を続けることにしたというのです。この漁師は、これまでは市場に牡蠣を卸していただけで、自分が生産した牡蠣を食べた人の表情を見たことがなかったそうです。
このように、地域外の人と地域の人の交流は、地域の人が自らの仕事の価値に気付き、誇りをもつことにつなげられると考えています。私たちは、地域外の人と地域の人をつなげるのような役割です。学びを提供しているのは地域の人々であり、地元の価値を来訪してくれた方々に認めてもらえた時、やりがいを感じます。

--陸前高田で「観光」を通じて目指しているまちの姿を教えて下さい。

陸前高田は津波で多くのものを失いゼロ以下になった場所です。そのような悲劇を二度と起こさないという固い決意のもと、大規模な造成工事を行い、再生を目指していますが、このようなところは他にはありません。まちづくりが現在も進行中で、地域外から来た人も「まちづくり」に関わることができる場所とも言えます。
今、陸前高田市は戸羽市長が旗振り役となり、障害のある人とない人が平等に生活する社会を実現させる「ノーマライゼーション」という考え方に基づくまちづくりを推進しています。マルゴト陸前高田がコーディネートする民泊事業では、ろう学校や特別支援学校の宿泊も受け入れています。実際に民泊を受け入れたホストの中には、1泊2日の民泊実施の後「自分の方が教えられた。受け入れ前は不安だと思っていたが、自分自身が障害という概念をつくっていた」と涙を流す人もいました。障害者はコミュニケーションが取りにくく離職率が高いことが課題となっていますが、そのような人々の働き場所が創出され、チャレンジできるまちになればいいと思っています。
まちの人も全てを失った経験をしたからこそ、地域外から来た人を受け入れる風土が生まれてきたように感じています。地域外から来た人と地域の人がともに防災について学び、交流する場を提供し、陸前高田に地域外から来た人を受け入れる文化と歴史をつくり、子どもたちに残していきたいと思っています。

 

--求職者に向けてメッセージをお願いします。

東日本大震災では、一人からの相談がきっかけとなり、地域の人、ボランティアなど、人と人がつながっていきました。そういう意味で、マルゴト陸前高田が取り組む交流の機会は、一つの縁が友達100人の縁に広がっていく可能性があり、その場限りで終わらない「一期百会」とも言えるような価値があると感じています。
「被災地だし、行ってもよいのだろうか?」と悩んでいる人もいると思いますが、「被災地だからこそチャンスやチャレンジがある場」と前向きに捉えてほしいと思います。
陸前高田で、一緒に、後世に残せる文化・歴史をつくって行きましょう!

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執筆者

地方企業・地方自治体の採用を支援するビズリーチ地方創生支援室。魅力的な地方の情報をお届けします。