「スタートアップカフェ大阪」仕掛けたのは関西大学×TSUTAYAーー産学連携で目指すスタートアップ支援とそのゴールとは?

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2016年10月、関西大学梅田キャンパス「KANDAI Me RISE(カンダイミライズ)」の2階、“TSUTAYA BOOK STORE”内に「スタートアップカフェ大阪」がオープンしました。同施設は、関西大学に所属する学生だけでなく誰でも自由に利用することができ、常駐するコーディネーターに、気軽に起業について相談することが可能です。学校法人関西大学と株式会社TSUTAYAが取り組む「起業家育成・支援」。教育機関ならではのスタートアップ支援とその価値について、スタートアップカフェ大阪 コーディネーターの財前英司氏と株式会社TSUTAYA スタートアップカフェ大阪 マネージャーの林香荘氏にお話を伺いました。

多様化する「働き方」と大学のキャリア教育を再考することで導く「手段」

――スタートアップカフェ大阪を「KANDAI Me RISE」内にオープンした経緯について教えてください。

財前:全国的にどこの大学もキャリア教育に力を入れていますが、基本的には就社させることが目的です。有名企業に就職をして、その就職率が大学の評判に繋がる。一方で、多様化する「働き方」と呼応するように、在学中から起業を選ぶ学生も一定数いるんです。

2020年度には現行のセンター試験が廃止になり、入試制度が大きく変わります。中学・高校では、問題の解決策やプロセスの考え方の教育が始まっており、将来のキャリアについて自分で考える学生が増えてくる中、大学側が従来のキャリア教育を進めていても多様化する学生の要望に対応できなくなります。そこで、“起業”を切り口にキャリアをもっと広く捉えて、自分の生き方を選択できるような場をつくりたいと考えました。また、大学単体でキャリア支援体制を構築するのではなく、もっとオープンに外部と連携して学生を支援していくため、TSUTAYAさんにご相談しました。

林:シリコンバレーなど、海外では優秀な学生がベンチャー企業に就職することは当たり前です。財前さんのお話を聞いて、僕らとしても大学としても、一般企業への就職以外にも生き方の選択肢があることをしっかりと発信していく必要があると感じました。スタートアップというとどうしても東京や福岡がピックアップされてしまい、大阪は素通りされてしまう。「福岡市スタートアップカフェ」の実績もあったので、関西大学との強い連携のもと、スタートアップに関する情報をここから発信していこうと考えました。

潜在的起業希望者層からプレーヤーを見つけ出すアプローチ


――どういった層の人々にアプローチしていく予定ですか?

林:学生はもちろんのこと、潜在的起業希望者層にもアプローチしていきたい です。スタートアップ関連の支援団体や施設は多く存在するのですが、敷居

が高く利用しづらいという方も多い。スタートアップカフェ大阪の場合は、潜在的起業希望者層に特化して、ふらっと気軽に立ち寄れるように本とカフェを空間演出の材料として用意しています。

財前:「絶対に起業したい」とは思っていなくても、潜在能力の高い方っているんですよね。例えば、アメフトって大学から始める学生が多いスポーツで、活躍している選手は、実は元野球、元サッカー、元バスケをやっていた学生だったりするんですよ。目的を与えて、そういう世界もあることに気付かせてあげると、活躍できるプレーヤーになれる。起業に関しても同じイメージで、起業への意欲があるからといって能力が伴うとは限りません。潜在的な意識や能力を持った方々がスタートアップカフェ大阪をきっかけに、目的に気付き、フォーカスするものを見つけることで、プレーヤーを増やしていきたいです。

教育機関ならではのキャリア教育。ポイントは長期的な取り組みで生み出す成果

――行政ではなく、教育機関が運営することの強みはどういった点でしょうか?

財前:行政や企業の場合、あるプロジェクトを実行するにあたり短期的にKPIを求めるのが通例だと思います。単年度でどれだけの成果を残すか。私たち教育機関の場合は少し違っています。本来、教育の成果は長期的な取り組みで得ることができるもの。長期的に自分のキャリアと向き合い、自分の人生をどう送っていきたいか、ということを支援するには教育機関が一番馴染むと思うんです。

単に起業家数を増やすのではなく、結果的に起業家数が増えればいい。「あの時、たまたま聞いた先生の話が今の自分を支えてくれた」という風に、知らず知らず影響を受けていることってありませんか? 生き方や働き方の選択肢のひとつとして、スタートアップやベンチャーへの就職や起業といった選択肢もあるということを当たり前に考えられるよう、発信・支援できることが私たち教育機関の強みだと思います。

ここを利用したからといってすぐに起業する必要はないと考えています。本当に大事なことは、起業した後の支援。長期的に捉えているからこそ、起業後のフォローに力を入れていきたいです。

――スタートアップカフェ大阪では、具体的にどういった支援を受けることができるのでしょうか?

林:起業に関していえば、事業計画の作り方から一緒に考えていきます。今までの学習教育の中では、ビジネススキームについて学ぶ機会があまりないので。評価はせずに課題点を引き出していき、今後その方々が融資を取り付ける上で必要な素材を一緒に考えて、次のフェーズに繋いでいきます。第2・第4木曜日と毎週土曜日には、各士業の方に常駐でお越しいただき、専門の分野に応じて相談をすることが可能です。

現在は、専門性を持った関連企業小回りをきかせながらスピード感のある連携と情報交換を心がけています。学生向けのサービスでいうと、国立と連携をして、インターンシップサービスを一緒に実施していく予定です。

産学連携事業だからこそ実現可能なキャリア支援と場づくりを

――立ち上げ当初、最も議論した点はどういった点でしたか?

財前:TSUTAYAさんには、福岡市スタートアップカフェの実績があるので、そのビジネススキームをベースに構築するのがセオリーだと思います。ですが、当初からお伝えしていたのは、大阪は大阪だと。起業家数を増やすことよりも、キャリアを考える上での選択肢を増やしてもらうための企画をしてほしいと鬱陶しいくらいに言い続けました(笑)。

林:当初は、起業前と起業後のサービスに焦点を当てる方がいいのでは、という考えもありましたが、私たちは企画力には自信があったので。もっと広い視野を持って、さまざまな企業と提携して企画を実行していくことで、人材支援や資金面での支援にも繋がるはずだという考えに辿りついたんです。

――最後に、お二人が考える展望について教えてください。

林:これから何か新しいものを作っていくためには、既存の概念を覆すようなサービスを作らなければなりません。キーワードは「オープンイノベーション」。異なる業界の企業や団体と有機的に繋がり、新しい企画を生み出していくことが必要です。連携先の企業とも1社1社と密にコミュニケーションをとり、私たちの強みでもある企画力と合わせて、スタートアップカフェ大阪だからこそ提供できるサービスの内容をより充実させていきたいと考えています。

財前:学生には、スタートアップやベンチャー企業、そして最前線で活躍するプレーヤーを知ってもらうことで、今後のキャリアや生き方を考えるきっかけにしてほしいと考えています。一度就職をした方でも、働き方や生き方についてもう一度考えてみたいと思った時に、気軽にここに立ち寄ってもらえるような場づくりと支援体制を整えていきたいです。

執筆者

地方企業・地方自治体の採用を支援するビズリーチ地方創生支援室。魅力的な地方の情報をお届けします。