京都南部・宇治市で可能性を開花させる

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京都府南部、京都駅から電車で約17分の距離に位置する風光明媚な都市、宇治市。ユネスコ世界遺産に登録された平等院をはじめ名所が数多く点在し、『源氏物語』ゆかりの地としても知られた歴史と文化が香る地域だ。特産品の宇治茶が有名で、市内の店舗も連日観光客で賑わっており、なかでも昔ながらの製法と時代のニーズに合った商品展開で勢いづくのが、京の飴工房「岩井製菓」。まちの魅力や京飴づくりの醍醐味について、同社の副工場長兼総務担当の中橋甲介氏に話を聞いた。

ハイセンスな店舗と伝統の技で“魅せる”京飴

宇治市は京都府南部、京都市と大津市に隣接した京都盆地の東南に位置します。人口は約18万6000人(令和元年(2019年)10月1日現在)で、京都府の中では京都市に次ぐ多さです。古くは日本書紀や万葉集に記され、源氏物語の宇治十帖の舞台になったことから、今も市内には平安時代の歴史的建造物をいくつも目にすることができます。

そんな宇治の地に、岩井製菓は1964年に創業しました。問屋に卸す京飴づくりからスタート。OEM(相手先ブランドによる生産)で事業を広げてきました。2代目の現代表取締役社長、岩井正和氏が2005年に就任してからは、千歳飴やひやし飴などOEMの飴づくりだけではなく、自社ブランドの開発に力を入れ、ネット販売や店舗展開も精力的に進めています。

直営店は、はんなりカフェ・京の飴工房「憩和井(iwai)」と「とにまる」の2ブランド展開で、地元宇治をはじめ京都市内や奈良県にも出店し、計6店舗があります。憩和井は和モダンな雰囲気、とにまるは日本の伝統色をポップに見せるカジュアルな内装で、それぞれ品揃えを若干変えて幅広い客層を取り込めるように工夫しています。

店舗もパッケージデザインも今の時代にフィットしたクオリティを意識していますが、飴づくりに関しては昔ながらの製法で、少量ずつ時間をかけて丁寧に作るのが岩井製菓の飴づくりです。

なかでも、これを使わないと京飴ではないといわしめる「地釜」は創業当初から大事に使い続けています。市場に出回っている大手メーカーの飴は、低温で大量生産に適した真空釜でつくられるのが一般的ですが、地釜は直火でコトコトとじっくり時間をかけて焚き上げるのが特徴です。1回15kg、千歳飴換算で400本作るのがやっと。飴も160℃と高温になり、扱いには熟練の技と細心の注意、速さが求められます。

でも、だからこそ「口溶けがやさしい」「風味が香ばしい」とご好評いただいております。

“3足のワラジ”で飴づくりを支える

岩井製菓に私が入社したのは2010年、はんなりかふぇ・京の飴工房 憩和井の平等院店のオープンに向けた販売員募集に応募したのが始まりです。

私の面接を担当したのが社長で、販売員の募集なのに「製造、いけるんとちゃうか」と聞かれ、「はい」と二つ返事で答えました。京飴を作る地釜は相当重く体力を要します。私の体格を見ての判断だったのでしょうが、私も「社長がいらんと言うまでやめません」と宣言し、自分自身にも活を入れての入社でした。

「美味しい」と喜んでもらえる飴づくりにやりがいを感じ、社長には拾ってもらったという恩を感じています。社長は「人は宝」という信念を貫くように、9年前の本社工場移転の際も、郊外に行けば広くて安い土地がありましたが、今まで働いていた従業員で通勤できない人が出てくると言って、宇治で土地を探して今の場所に落ち着きました。休みなく働くバイタリティ、個々の個性を見抜く洞察力も全幅の信頼を寄せています。

そんな社長から5年前のある日、総務も兼任するように言われました。今では製造5:販売4:総務1の割合で3足のワラジを履いています。元来1つの仕事に固執せず、いろんなことをやる社風で、製造スタッフは私を含めて全員、販売員として店先に立ちます。これに総務の業務が加わって人事として人を見る目、社外への発信力を磨いているところです。

宇治の魅力は豊かな自然と利便性の両立

私自身、宇治から出て暮らしたことがないので、他のまちと比較することはできませんが、本当に自慢のまちです。まちの中心を南北に流れる宇治川では、毎年8月には夏の風物詩「宇治の鵜飼」が、10月には宇治橋周辺で「茶祭り」が開かれ、川沿いには全国的にも珍しい市営の茶室「対鳳庵」があるなど、宇治の伝統文化が息づいています。

まちの東にはハイキングコースのある大吉山(仏徳山)などの山々がそびえ、宇治上神社や平等院などの世界遺産があり、会社の近くには「あじさい寺」として有名な三室戸寺もあります。近年オープンした「宇治市源氏物語ミュージアム」も盛況で、まちは新旧の観光スポットで賑わっています。

日常風景の中に、四季を彩る豊かな自然風景が広がり、歴史、文化を感じる場所があり、それでいて電車や車などの交通の便が良く、スーパーやコンビニなどの日々の買い物にも困らず、都市機能も十分備わっています。住み心地があまりに良いので、どこか他で暮らそうという気持ちになったことが一度もありません。

他の観光地では、よく観光客が多すぎて暮らしにくいといった話を耳にしますが、宇治は観光スポットを散歩している地元の人をよく見かけます。私も家族で観光客の賑わう人気店に食事に行くことがありますし、観光客と地元の人が仲良く話している光景を目にするのが日常です。

同じ京都でも京都市内の観光から宇治に来た人は、雰囲気があまりにも違うことに驚かれる方が多いです。車も人もごった返しておらず、のんびりとしたまち並みで、観光客と地元民が一緒に宇治のまちを楽しんでいるような雰囲気があります。 暮らしても遊びに来ても、利便性と自然の豊かさをバランスよく享受できる。穏やかな時間が流れている。それが宇治の最大の魅力かもしれません。

自分自身の秘めた才能が見つかるチャンス

そして、そんな宇治のまちに日本一の京飴ありといわれるようになるのが岩井製菓の目標です。まちの風景や歴史、文化を大事に守り続けてきた宇治の風土同様に、機械も必要最小限で、合成着色料や添加物もできる限り使わず、素材を最大限生かした岩井製菓の飴には、伝統の技、製法を守ってこそ引き出せる風味、色味や形があります。

初代(現会長)は飴づくりに半世紀以上を捧げ、2011年に「京都府の現代の名工」に選出された京飴職人です。岩井製菓の代表商品でもあります「ひやしあめの素」に至っては、素材も水飴より5、6倍もコストの高い米飴を「こっちの方がおいしいから」という一途な理由で使い続ける職人気質は、代替わりしても受け継がれています。

その製法が支持され、千歳飴一つとっても、少子化が進むなかでも年々売上が伸びています。小ロットの飴づくりは、地域限定や企業の記念品などのオリジナルの飴にも最適で、多種多様なオーダーが全国各地から入るようになってきました。

飴づくりから店舗展開、そして2018年には京都の清水寺に一番近い宿として「とにまるホテル」を開設。清水寺から徒歩1分、とにまるの店舗の3階に1日1組限定で宿泊できるホテルです。これが軌道にのればホテル事業も展開できるかもしれません。

チャレンジ精神のある人には最適な職場で、新卒採用ではできる、できないではなく、「やってみたい」というやる気を重視しつつ、個々の長所や個性を生かして配属先を決めています。

暮らしやすい環境で、口にした人を笑顔にさせる京飴を作り、広める。一企業の枠を超えて一緒にまち全体に新しい風を巻き起こせる、そんな人材が現れるのを期待して止みません。

執筆者

地方企業・地方自治体の採用を支援するビズリーチ地域活性推進事業部。魅力的な地方の情報をお届けします。