子の看護等休暇は、育児・介護休業法により、事業者に設置が義務付けられている制度です。内容をよく知らない人向けに新制度の内容や取得に関する注意点などについて解説します。
この記事のポイント
- 看護等休暇とは?
- 看護等休暇とは、労働者が、病気やけがをした子どもの看護等のために休暇を取得できる制度です。2025年4月から対象範囲が拡大され、小学校第3学年修了までの子どもがいる、ほぼ全ての労働者が対象となりました。正規雇用だけでなく、パートやアルバイトなどの非正規雇用の労働者も含まれます。
- 看護等休暇の取得要件
- 年間で子ども1人あたり5日取得できます(最大10日)。休暇を取得する目的には、子どもの病気・けがなどの看護のほか、予防接種や健康診断への付き添いも含まれます。新制度では感染症に伴う学級閉鎖や、入園(入学)式、卒園式が追加され、子の行事への参加でも取得ができるようになりました。
- 看護等休暇を取得する際の注意点
- 休暇中の給与の支給に関しては、育児・介護休業法で定められていません。企業によって無給になる可能性もあります。また、独自の制度を儲けている企業もあるため、会社の就業規則などで確認しておきましょう。
子の看護等休暇とはどんな制度?
仕事と育児を両立させるために、さまざまな支援制度が存在しており、「子の看護等休暇」もその1つです。どのような制度なのか、具体的に見ていきましょう。
子どもの看護のために休暇を取得できる制度
子の看護等休暇とは、子どもが病気やけがをしたときに、その子どもの看護をするために養育者である労働者が休暇を取得できる制度です。労働者から申請があった場合、事業主は必ず許可しなければなりません。
仕事と育児の両立に対するニーズの高まりから、2025年4月より、小学校第3学年修了までに拡大されています。
また、取得目的も拡大され「子の看護等休暇」に制度の名称が変更されました。
出典:育児・介護休業法のあらまし|厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)PDF76枚目
介護休暇とはどう違う?
介護休暇は、家族の介護や看護をするために休暇を取得できる制度のことをいいます。子の看護等休暇が、小学校第3学年修了までの子どもを養育している労働者を対象とするのに対し、介護休暇は要介護状態にいる家族を持つ労働者が対象です。
要介護状態とは、2週間以上連続して、常時介護が必要な状態のことを指します。要介護状態の家族には、祖父母・親・配偶者(事実婚を含む)・兄弟姉妹のほか子や孫も含まれており、年齢による制限はありません。
なお、介護休暇で取得できるのは、対象の家族1人に対して年間5日まで(2人以上いる場合は10日まで)とされています。
子の看護等休暇の取得要件
制度を利用するには、取得するための要件を知っておくことが必要です。取得要件について解説します。
ほぼ全ての労働者が対象
2025年4月1日の改正で、雇用されてから6カ月未満の労働者も対象となり、小学校第3学年修了前の子どもがいる、ほぼ全ての労働者が対象となりました。正規雇用だけでなく、パートやアルバイトなどの非正規雇用の労働者も含まれます。
ただし、日々雇い入れられる労働者は対象外です。また、以下の労働者で、子の看護等休暇を取得できないという労使協定を結んでいる場合も対象外となります。
- 1週間に2日以下しか労働していない
- 時間単位で休暇を取得するのが困難な業務をしている(1日単位での取得なら可能)
出典:育児・介護休業法のあらまし|厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)PDF76枚目
子どもが1人の場合は年度内に5日まで
子どもが1人の場合は、労働者1人につき年度内に5日までの取得が可能です。2人以上の子どもがいる場合は、年度内に10日まで取得できます。
ただし、子ども1人について日数が定められているものではないため、子どもが2人以上いれば、1人の子どもの看護に10日間取得することも可能です。
また、労働者1人に対して与えられている権利なので、夫婦が同じ職場で共働きしている場合は夫婦それぞれが取得できます。例えば、子どもが1人の場合は、夫婦で5日間ずつ取得して、合計10日間取得できるということです。
なお、取得できる日数は育児・介護休業法で定める最低限の条件なので、企業で独自に法定日数以上の取得を可能としても問題はありません。
出典:育児・介護休業法のあらまし|厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)PDF76枚目
取得目的には予防接種や健康診断も含まれる
休暇を取得する目的には、子どもの病気・けがなどの看護のほか、予防接種や健康診断への付き添いも含まれます。インフルエンザのような任意の予防接種も対象です。
改正後、入学式や卒業式などの子の行事への参加でも取得ができるようになりましたが、保護者参観や入園説明会などは対象外となるので注意しましょう。なお、企業によっては、独自の休暇制度などを設定している場合もあります。
子の看護等休暇の取得方法
休暇の取得方法についても確認しておきましょう。主なポイントについて解説します。
申請は当日や事後でもOK
休暇を取得するには、会社に申し出ることが必要です。子どもの病気やけがは、予期できるものではないため、当日や事後の申請になっても問題ありません。
また、企業には柔軟に対応することが求められているため、書面ではなく、電話やメールなどによる申し出も可能です。会社に申請する際は、本人および子どもの氏名・生年月日・取得年月日や時間などを伝えます。
病気やけがを証明する書類を求められることもありますが、後日の提出も可能です。なお、仮に証明書を提出しなくても、取得する権利がなくなることはありません。
出典:育児・介護休業法のあらまし|厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)PDF77枚目
時間単位での取得も可能
子の看護等休暇は時間単位での取得が可能です。年度内に取得できる日数は、1時間単位で分割して取得することも可能です。時間単位で取得する場合は、1日の所定労働時間数未満で取得する必要があります。
例えば、1日の所定労働時間数が8時間なら、7時間までの取得が可能です。所定労働時間数と同じ時間数を取得した場合は、1日単位の取得として扱われます。
時間単位で取得する場合、分割する日数に制限はありませんが、取得は1日の所定労働時間数以内に収める必要があります。所定労働時間数が日によって異なる労働者の場合、1年間における1日当たりの平均所定労働時間数が基準とされます。
出典:育児・介護休業法のあらまし|厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)PDF76・77枚目
他の休暇と併せた取得も可能
子どもの病気やけがの看護が長引き、上限の日数で足りなくなった場合は、年次有給休暇など他の休暇制度との併用も可能です。年次有給休暇は、一定期間勤務している労働者に対して与えられる休暇で、取得するために特別な理由は定められていません。
子どもの看護や世話のためにも使えるため、例えば午前中は看護休暇、午後は有給休暇で半休を取るなどの方法もあります。また、要件を満たしていれば、介護休暇と併せた取得も可能です。
子の看護等休暇を取得する際の注意点
子の看護等休暇の取得に関する注意点についても知っておきましょう。主な注意点を2つ挙げて解説します。
法令上は中抜けできない
育児・介護休業法施行規則の第34条では、時間単位での取得を、始業時刻からまたは終業時刻までの連続する時間と定めています。そのため、就業時間内に数時間だけ抜けて再び仕事に戻る、いわゆる「中抜け」は法令上認められていません。
ただし、会社独自で法令を上回る柔軟な対応をする分には問題ないため、中抜けが認められているか社内の規定を確認してみるとよいでしょう。
会社が中抜けを認めている場合は、いったん出勤して午前中だけ子どもの健康診断などに付き添い、午後に戻ってくるといったことも可能です。
出典:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則 第34条 | e-Gov法令検索
休暇中の給与の有無は会社によって異なる
休暇中の給与の支給に関しては、育児・介護休業法で定められていません。企業の判断によるため、休暇中は無給になる可能性もあります。
無給となって収入が減るのを避けたい場合は、子の看護等休暇の代わりに有給休暇を使うのも1つの方法です。1日取得するなら有給休暇、数時間だけなら看護等休暇といったように、状況に応じて使い分けるのもよいでしょう。
同じ無給扱いでも、欠勤してしまうと評価や査定に影響する可能性があるので注意が必要です。なお、公務員に関しては有給扱いになります。
子の看護等休暇制度について知っておこう
子の看護等休暇は、病気やけがをした子どもを看護するためや、子の行事に参加するために休暇を取得できる制度です。取得するには、育児・介護休業法で定められた要件を満たすことが必要ですが、企業が独自で法令を上回る対応をしても問題はありません。
休暇中の給与に関しては、企業の判断に任されるため、会社の就業規則などで確認しておきましょう。また、企業によっては、独自の休暇制度などを設けているケースもあります。
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