MRは、医療機関を回って営業活動をします。医療関係者以外はあまり接する機会がないため、どのような職業なのかよく分からない人もいるでしょう。転職を考えている人に向け、詳しい仕事内容や、求められるスキル・能力などを解説します。
この記事のポイント
- MRの特徴
- MRとは、製薬会社や医薬品販売業務受託機関（CSO「Contract Sales Organization」の頭文字を取った略語）などに所属し、医療用医薬品の情報を伝える職種を指します。
- MRに必要なスキル
- スムーズに仕事をするには、論理的に話を伝える力やコミュニケーションスキルなどが必要です。
- MRに必要な資格
- 働く上で必要な学歴や資格はありませんが、MR認定資格を持っていると有利になります。
MRとは？仕事内容を解説
MRとは何かを理解するには、仕事内容を知ることがおすすめです。どこで、どのような仕事をするのか見ていきましょう。
製薬会社などに所属する営業担当者のこと
MRとは、医療機関に対して医療用医薬品の営業をする人を指します。「Medical Representatives」の頭文字を取った略語で、日本語では医療情報担当者といいます。
主な勤務先は、製薬会社や医薬品販売業務受託機関（CSO）などです。MSと呼ばれる医薬品卸会社の営業職と連携し、仕事をする場合もあります。
CSOに所属した場合、製薬会社の営業部門に派遣され、その企業のMRと同様に仕事をします。製薬会社に所属する場合とは異なり、配置換えがないので営業に特化した仕事ができるでしょう。
医療品などの情報提供をする
MRの主な仕事は、医療機関に自社の製品の有効性や適切な使用法といった情報を伝え、売り込むことです。
製品の良い部分だけを伝えるのではなく、安全性や副作用などについても適切に説明しなければなりません。
主な営業先は、地域の一般病院・大学病院・クリニックなどで、担当制になっていることが一般的です。仕事をスムーズに進めるには、医師や薬剤師などの医療スタッフと人間関係を構築する必要があります。
さまざまな医薬品を扱うMRもいれば、がんなどの特定の疾病に特化した医薬品を売り込む「領域専門MR」もいます。何を担当するかによって、求められる知識も変わってくるでしょう。
医療現場からのフィードバックを報告
自社の製品に対するフィードバックを現場に伝えるのも、MRの大切な仕事の1つです。医療品の効果や副作用について、医師や薬剤師などからヒアリングをします。
もし、自社製品の副作用についての情報が手に入れば、安全性に問題のある製品が流通するのを防げます。より安全で、効果の高いものを開発する手助けになるでしょう。
医療現場でどのような医薬品が求められているかといった知見を得られる場合もあり、持ち帰った情報は自社製品の開発に生かされます。
安全性が高い医薬品を開発することは、多くの患者にとってメリットがあることです。広い視野で見れば、MRは社会貢献につながる仕事だといえるでしょう。
MRの年収は？待遇面を確認
MRの仕事は医療上、なくてはならない存在であり、給与面は充実している傾向です。ここでは、年収や労働時間などの待遇面を見ていきましょう。
年収の全国平均は579万5,000円
厚生労働省が公表しているMRの年収の全国平均は、579万5,000円です。年齢別の推移を見ると、最も年収が高くなる年齢は55〜59歳で、745万400円となっています。
20〜24歳では355万200円、25〜29歳では470万5,500円が平均年収です。国税庁が公表している「民間給与実態統計調査（令和5年分）」によると、給与所得者の平均給与は460万円です。
30歳未満の時点で、一般的な水準を超える年収を稼ぐことも十分に可能な職業だといえます。
出典：医薬情報担当者（MR）｜job tag（職業情報提供サイト（日本版O-NET））
休日数や残業時間
MRの年間休日は120日以上、残業時間は20時間程度とされます。月間の労働時間の全国平均は、170時間です。
製薬会社に所属しているMRは基本的に土日が休日になりますが、担当する病院・クリニックが土日診療をしている場合は、この限りではありません。
自主的にスケジュールを決め、自身の裁量で労働時間を管理する働き方が一般的です。近年は、製薬会社のコンプライアンス強化や政府による働き方改革などにより、過剰な接待が自主規制されるようになったため、MRの負担は減少傾向です。
しかし、期待されているような成果が出ない場合は、資料作成や勉強などに多くの時間を費やすことになるでしょう。
出典：医薬情報担当者（MR）｜job tag（職業情報提供サイト（日本版O-NET））
MRに必要な能力・スキルは？
MRは医薬品を扱うため、一般的な営業職では求められない知識も必要です。それでは、どのような能力・スキルが求められるのでしょうか？ここでは、代表的なものを紹介します。
医薬品に関する幅広い知識
MRは仕事の特性上、医薬品に関する知識を持っていなければなりません。医薬品の専門的な知識を深めるには、自主的な情報収集が求められます。
自社の製品に関する知識を得るだけでなく、医療に関する論文などを読んで学ぶ努力も必要です。
勉強が足りないと、医師や薬剤師からの質問に的確に答えられず、信頼関係を築くのが難しくなるでしょう。継続的に学習し続ける力がある人は、MRに向いているといえます。
論理的な話し方やコミュニケーションスキル
MRには、自社製品の特徴や有効性・安全性、使用法などを論理的に伝える力が必要です。どのような伝え方をすれば正確に情報を伝えられるか、工夫して話さなければなりません。
自社製品を採用してもらうには、なぜその製品が優れているのかを客観的に説明し、納得してもらう必要があります。例えば、新薬の有効性を伝えるためには、従来の医薬品との違いや、他社製品との比較なども伝えた方がよいでしょう。
また、医療従事者のニーズを満たすためには、コミュニケーションスキルも欠かせません。通常の営業職と同様に、何を求められているのかを判断し、対応する能力も必要となります。
戦略的な行動と忍耐力
MRは、1日に何件もの医療機関を訪れ、忙しい医師のスケジュールに合わせて面会しなければなりません。時には、臨機応変な対応をしなければならないこともあり、戦略的な行動と忍耐力が求められます。
医療機関を回るだけでなく、オフィスで内勤をする時間も必要です。また、医療用医薬品の情報収集や共有、伝達といった業務以外に、学会の手伝いや講演会の企画・開催などが必要になることもあります。
体力的にハードさを感じる場面が多いため、メリハリをつけて仕事をするなどして、体調管理を万全にしておかなければならないでしょう。
MRは未経験でもなれる？必要な資格も
転職の際は、経歴に合った仕事を探した方が採用される可能性が高まります。MRはどのような職種の経験を生かせるのか、必要な資格はあるのかなどを見ていきましょう。
営業や医療専門職の経験が生かせる
MRは、一般企業での営業職や、医療知識を持った専門職の経験を生かせる仕事です。ただし、必ずしもそれらの経験が求められるわけではありません。
国家資格が必要な医師や薬剤師とは違い、MRになるために必要な資格・学歴などが決まっているわけではなく、文系の学部を卒業してMRになる人もいます。
大卒以上の学歴が求められることが一般的ですが、希望する製薬会社やCSOによって募集要項の内容は違います。未経験から応募する場合、特にしっかりと条件をチェックしましょう。
「MR認定資格」があると有利
無資格で応募できる場合もありますが、MR認定試験に合格していると有利になります。資格を持っていない場合、入社後に取得するように決められている企業がほとんどです。
MR認定資格試験は、毎年12月に開催されています。2024年に開催された試験の合格率は81.1%で、直近の5年間で行われた試験の平均合格率は79.8%です。
勉強時間を十分に確保できれば、合格するのはそれほど難しくないと考えられます。また、車を使用して営業活動するため、普通自動車運転免許も必要です。
入社してから教習所に通うのを避けたい場合、転職する前に取っておくとよいでしょう。
MRは年収が高くやりがいもある仕事
MRは、医療機関と製薬会社をつなぐ重要な役割があり、社会的な必要性が高い職種だといえます。
医療従事者と信頼関係を築き、常に医療に関する知識を収集するなど、大変な部分もありますが、医療の分野に貢献でき人々の健康を守れるやりがいのある仕事です。
また、給与所得者の平均年収よりも高い給与をもらえる可能性が高い点も魅力だといえます。転職を成功させるには、MRに必要な能力やスキルなども押さえた上で、採用担当者にアピールしましょう。
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