薬剤師を目指す学生の中には、薬剤師の初任給について知りたい方も多いでしょう。初任給の金額は新生活を送る上で重要な要素であり、ライフプランを立てるために知っておきたい重要な情報です。(この記事は2023年の情報を元に作成しています。)
薬剤師の初任給の平均は27万8,400円です。全業種を含めた大卒の初任給は23万7,300円のため、薬剤師の初任給は比較的高い部類に入ります。しかし、病院や企業によっては初任給が異なる他、業務内容にも差があります。
この記事のポイント
- 薬剤師の初任給は約27万8,400円
- 厚生労働省の統計によると、薬剤師の初任給は平均27万8,400円。大卒の平均初任給と比べても高めの水準です。
- 事業所の規模によって初任給が異なる
- 小規模事業所(10人~99人)は初任給が高く、平均31万3,300円です。大規模病院などは応募者が多く、比較的低めになる傾向があります。
- 薬剤師の手取りは約26万円
- 初任給から税金や社会保険料を差し引くと、手取り額は約26万円です。新卒2年目から住民税の支払いが始まることで、少し減る場合もあります。
薬剤師の初任給はどれくらい?
薬剤師の初任給は、厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」に公表されています。まずは、薬剤師の初任給とともに、その他の医療従事者との違いについてチェックしていきましょう。
※一般的に給料は基本給を指し、諸手当を含めませんが、本記事では諸手当を含めた給与を給料としています。
薬剤師の初任給は「27万8,400円」
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」の「20歳~24歳」「経験年数0年」を初任給と定義すると、薬剤師の初任給は平均で27万8,400円です。これは、同じく厚生労働省の資料による、新規学卒者(大卒)の初任給23万7,300円と比較しても高い水準になります。
出典:「令和5年賃金構造基本統計調査/職種/表番号10」| 政府統計の総合窓口
出典:「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況:新規学卒者」| 厚生労働省
その他の医療従事者との初任給の違い
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」を参考に、医療従事者の初任給を以下にまとめました。薬剤師よりも初任給が高い医療従事者は、医師と獣医師だけです。
最も高額なのが医師の初任給が37万9,500円、次に獣医師の初任給が28万1,600円となっています。薬剤師は医師と獣医師に次いで初任給が高く、医療従事者の中でも比較的高いといえるでしょう。
- 薬剤師 27万8,400円
- 医師 37万9,500円
- 歯科医師 15万7,500円
- 獣医師 28万1,600円
- 保健師 25万3,000円
- 助産師 26万2,800円
- 看護師 25万2,200円
- 准看護師 19万8,000円
- 診療放射線技師 22万6,500円
- 臨床検査技師 21万8,300円
- 理学療法士 24万3,300円
- 作業療法士 24万3,300円
- 言語聴覚士 24万3,300円
- 視能訓練士 24万3,300円
- 歯科衛生士 22万6,900円
- 歯科技工士 20万2,900円
- 栄養士 20万4,000円
出典:「令和5年賃金構造基本統計調査/職種/表番号10」| 政府統計の総合窓口
「事業所の規模別」初任給の違い
厚生労働省が公開した「令和5年賃金構造基本統計調査」の「20歳~24歳」「経験年数0年」を薬剤師の初任給と定義し、以下にまとめました。
- 大規模(1,000人以上)事業所:27万9,500円
- 中規模(100~999人)事業所:26万4,400円
- 小規模(10~99人)事業所:31万3,300円
事業所の規模別に見ると、小規模(10人~99人)の初任給は高い傾向があり、次いで大規模(1,000人以上)・中規模(100~999人)と続きます。
大きな病院は保養所を持っていたり研修プログラムが充実していたりするため、給与が比較的低い水準にあっても多くの応募者が集まります。一方で小さな診療所は人が集まりにくく、薬剤師の確保のために給与が高くなる傾向にあるようです。
出典:「令和5年賃金構造基本統計調査/職種/表番号10」| 政府統計の総合窓口
薬剤師の手取り額はどれくらい?
手取り額とは、月収(きまって支給する現金給与額)から税金・社会保険などを差し引いた給与額で、実際に労働者に渡されるお金です。ここでは、手取り額の計算方法と、実際に薬剤師の初任給に当てはめた場合の具体的な数字を紹介します。
手取り額の計算方法
手取り額の計算方法は、以下の通りです。
【(月収)-(税金や社会保険料)=(手取り額)】
例えば、月収が27万8,400円、税金や社会保険料5万円の合算が5万円だと仮定すると、手取り額は22万8,400円になります。
【27万8,400円(月収)-5万円(税金や社会保険料)=22万8,400円(手取り額)】
月収は、基本給と諸手当で構成されており、諸手当は企業によって異なります。諸手当の代表例は以下の通りです。
- 資格手当
- 住宅手当
- 通勤手当
- 残業手当
- 役職手当
- 認定薬剤師手当
- 地域手当
月収には、手当が含まれます。以上の各種諸手当を含めた月収から、所得税・復興特別所得税・雇用保険料・健康保険料・厚生年金保険料・住民税を差し引いた額が手取りです。
新卒2年目からは住民税が引かれるため、1年目より2年目の方が手取りは減る傾向にあります。なお、おおよその手取り額は、月収×0.8で算出可能です。
薬剤師の初任給は手取りだと「約26万円」
では、実際に薬剤師の初任給から手取りを計算します。
初任給を27万8,400円と仮定すると、所得税は給与の5%、復興特別所得税は所得税額の2.1%、雇用保険料は給与の0.6%です。
- 所得税:27万8,400円(初任給)×0.05(所得税率)=1万3,920円
- 復興特別所得税:1万3,920円(所得税)×0.021=292円
- 雇用保険料:27万8,400円(初任給)×0.006=1,670円
- 27万8,400円-(1万3,920円+292円+1,670円)=26万2,518円(初任給の手取り)
つまり、薬剤師の初任給の手取りは26万2,518円で、約26万円です。
出典:所得税の税率|国税庁
薬剤師の平均年収をカテゴリ別でチェック!
ここまでは初任給について触れましたが、ここからは平均年収について紹介します。
なお、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」を参考に、「きまって支給する現金給与額」の12カ月分と「年間賞与その他特別給与額」を合計した金額を、平均年収(年間の給料)と定義しています。
「事業所の規模別」薬剤師の平均年収
事業所の規模によって、平均年収にも違いが出ます。厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」を参考に、以下にまとめました。
小規模を除いて薬剤師の平均年収578万円を下回っていますが、役職者を除いたデータなので、昇進すれば年収アップにつながります。
- 小規模(10人~99人)事業所:617万6,100円
- 中規模(100人~999人)事業所:526万8,300円
- 大規模(1,000人以上)事業所:517万8,800円
出典:「令和5年賃金構造基本統計調査/都道府県別/一般_職種(小分類)/表番号3」| 政府統計の総合窓口
「都道府県別」薬剤師の平均年収ランキング
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」を参考に、「きまって支給する現金給与額」×12+「年間賞与その他特別給与額」によって平均年収を算出しました。
都市部より地方の方が、薬剤師の平均年収は高い傾向にあります。
- 1位 広島県 705万9,500円
- 2位 秋田県 680万4,500円
- 3位 宮城県 672万6,000円
- 4位 鹿児島県 644万4,800円
- 5位 鳥取県 630万2,700円
- 23位 東京都 588万7,800円
※参考 全国 577万8,700円
出典:「令和5年賃金構造基本統計調査/都道府県別/職種(特掲)」| 政府統計の総合窓口
「職場の種類別」薬剤師の平均年収
厚生労働省が公開した資料によると、薬剤師の代表的な職場の平均年収は以下の通りです。
- 一般病院(568万8,000円)
- 一般診療所(729万円)
- 保険薬局(管理薬剤師)(734万9,000円)
- 保険薬局(一般薬剤師)(486万4,000円)
- 製薬会社(564万3,000円)
- ドラッグストア(約450万~500万円)
上記の平均年収を算出する上で、職場別に参考にした厚生労働省の資料は異なるため、あくまで目安として参考にしてください。
一般病院の場合
一般病院で働く薬剤師の主な業務は、調剤業務や服薬指導、薬歴管理などです。入院患者の状態に応じた薬の提案や継続可否、薬効や副作用の確認も行います。
厚生労働省「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」によると、平均年収は568万8,000円で、月収に換算すると約47万円です。
一般的な薬剤師の平均年収が578万円なので、平均年収は少し下回りますが誤差の範囲内でもあり、薬剤師全体で考えると平均的といえるでしょう。
出典:「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告/スライドNo.301(p.297「法人その他全体」カテゴリ)」| 厚生労働省
出典:「令和5年賃金構造基本統計調査/都道府県別/一般_職種(小分類)/表番号3」| 政府統計の総合窓口
一般診療所の場合
一般診療所で働く薬剤師の業務は、調剤業務や服薬指導、薬歴管理になります。一般病院での業務とほとんど同じですが、一般診療所の場合は外来患者の割合が多くなります。
厚生労働省「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査)」によると、一般診療所の平均年収は729万円であり、月収に換算すると約61万円です。
薬剤師の平均年収578万円と比較して150万円以上も高く、薬剤師全体で考えても年収は高い部類に入ります。
需要と供給のバランスが背景にあり、病院の経営に薬剤師が不可欠である上、薬剤師が不足している地域であれば、高い給与を提示されることもあるためでしょう。
一般病院と違って一般診療所の場合は、近所から訪れる顔見知りの患者も多く、人と接するのが好きな人に向いています。
出典:「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告/スライドNo.310(p.306「全体」カテゴリ)」 | 厚生労働省
保険薬局(管理薬剤師)の場合
医師からの処方箋に基づいた調剤業務や服薬指導が主な業務です。管理薬剤師の場合は薬剤師の業務に加えて薬剤師の育成や指導の他、マネジメント業務も行います。
厚生労働省「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査)」によると、保険薬局(管理薬剤師)の平均年収は734万9,000円であり、月収に換算すると約61万円です。
また、保険薬局の店舗数によって管理薬剤師の平均年収は異なり、以下のようになっています。
- 1店舗 933万1,000円
- 2~5店舗 805万2,000円
- 6~19店舗 688万円
- 20~49店舗 669万6,000円
- 50~99店舗 651万7,000円
- 100~199店舗 714万9,000円
- 200~299店舗 673万円
- 300店舗以上 695万2,000円
出典:「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告/スライドNo.312(p.308「全体」カテゴリ)」 | 厚生労働省
出典:「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告/スライドNo.313(p.309「保険薬局 店舗数別」集計2)」 | 厚生労働省
保険薬局(一般薬剤師)の場合
医師からの処方箋に基づいた調剤業務や服薬指導が主な業務になります。厚生労働省「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」によると、保険薬局(一般薬剤師)の平均年収は486万4,000円であり、月収に換算すると約41万円です。
保険薬局の店舗数によって薬剤師の平均年収は異なり、以下のようになっています。
- 1店舗 587万7,000円
- 2~5店舗 448万2,000円
- 6~19店舗 488万8,000円
- 20~49店舗 498万5,000円
- 50~99店舗 461万4,000円
- 100~199店舗 506万7,000円
- 200~299店舗 486万4,000円
- 300店舗以上 495万1,000円
出典:「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告/スライドNo.312(p.308「全体」カテゴリ)」| 厚生労働省
製薬会社の場合
製薬会社で働く薬剤師の職種は多岐にわたり、医薬品情報担当者(MR)や治験コーディネーター(CRC)、臨床開発モニター、薬学研究者などがあります。
職種ごとの平均年収や業務内容は、以下の通りです。
医薬品情報担当者(MR)年収579万5,000円
- 自社が扱う薬の情報提供や情報収集、分析・評価を行う
治験コーディネーター(CRC)年収459万3,000円
- 医療機関側の立場から治験の準備や調整といった、治験をサポートする業務
臨床開発モニター 年収478万3,000円
- 製薬会社側の立場から治験の実施を進捗管理する業務
薬学研究者 年収740万2,000円
- 製薬会社の研究職として、新しい薬を開発する業務
ドラッグストアの場合
ドラッグストアで働く薬剤師は、要指導医薬品や第1類医薬品を購入する顧客に対して服薬指導をしたり、お薬の提案やアドバイスをしたりします。
調剤併設店の場合は調剤業務も行います。ドラッグストアによっては、レジ対応や売上管理、在庫管理などの店舗運営全般を任される場合もあるかもしれません。
ドラッグストアの平均年収は約450万~500万円で、月収に換算すると40万円前後です。やや低めですが、調剤併設店への就職や管理職への昇進などで収入アップが見込めます。
薬剤師は初任給や年収の面でも魅力的な仕事
薬剤師の初任給の平均は27万8,400円であり、全職種の大卒の初任給よりも4万円ほど高くなっています。医療従事者の中でも高収入の部類に入るため、給与面でもやりがいがある仕事といえるでしょう。
薬剤師にはキャリアアップの道もあり、経験やスキル、知識を身に付ければ管理薬剤師も目指せます。
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