正社員を辞めたいと思っているけれど、自分が本当に働き方を変えても大丈夫なのか心配な人も多いでしょう。正社員を辞めてもよいかどうかの判断基準や辞めるタイミング・退職のステップを、実際に正社員を辞めた人の声とともに解説します。
この記事のポイント
- 正社員を辞めてよいか判断する基準
- 退職後の仕事が決まっている、十分な貯蓄がある、スキルがあるなどの判断基準があります。
- 正社員を辞めるタイミング
- 辞めても問題ない状態になった段階で、繁忙期は避け1〜3カ月前に退職を申告しましょう。
- 正社員の仕事を退職するときにすべきこと
- 新たな仕事の準備ができたら上司に申告して退職届を提出し、引き継ぎや有給休暇の消化を済ませて退職します。退職後は公的な手続きも必要です。
正社員を辞めてよいかの判断基準
正社員は安定した待遇が得られる反面、残業が多い・責任が重いなど負担の大きさがあります。時間の自由が欲しい、また気楽に働きたいといった理由から、正社員という働き方自体を辞めたいと考えている人もいるでしょう。
ただ、自分が正社員を辞めて本当に大丈夫なのかと不安に思う気持ちから、決断できない場合もあります。正社員を辞めてよいか判断する目安として、どのような基準があるのでしょうか。
退職後にする仕事がはっきり決まっている
同じ会社で非正規雇用に転換するという場合は、すぐに正社員を辞めても問題はありません。
ただそれ以外のケースでは、漠然と「正社員という働き方をやめたい」とだけ思っている状態で退職してしまうと、非正規雇用でもフリーランスへの転換でも、方向性が定まらず難航する可能性が高くなります。
契約社員・派遣・パート・フリーランスなど希望する働き方や、取り組みたい仕事の内容が決まっていて準備もできている場合、正社員を辞めてよいと考えましょう。
正社員の待遇でなくても生活できる貯蓄がある
フリーランスや個人事業主になる・起業するという場合、事業が軌道に乗るまである程度の期間は収入が減る可能性があります。
貯蓄に余裕があり、収入が減っても生活できる状態であれば、正社員の仕事を辞めても大きな問題は発生しにくいでしょう。
契約社員や派遣社員といった非正規雇用に働き方を変える場合には、正社員並みの収入が得られるケースもあります。しかし、逆に収入が下がる可能性も少なくありません。
貯蓄や副業収入が十分にある状態なら、非正規雇用として転職してもよいでしょう。
働くこと自体をいったん休むなら、その期間暮らしていけるだけの貯蓄が必要です。必要な貯蓄額は個々の生活環境によって異なるため、一概にいくらとは断定できません。自分の生活費を計算して、必要額を割り出すことになります。
正社員でなくても稼げるスキルがある
正社員からフリーランスになりたいなら、大前提として稼ぐためのスキルや経験が必要です。正社員は勤続していれば決まった収入を得られる場合も多くありますが、フリーランスはどの分野でもスキルを持たない人は仕事を得られません。
起業を考えているなら、経営に関する知識も必要です。派遣でも、特定のスキルに強みがあって経験豊富な人は重宝される傾向があります。
辞めた後の働き方に応じたスキルや知識の習得は、正社員を辞めるかどうか検討する際に重要になると考えましょう。
家族や同居人の了承を得られている
家庭を持っていたり家族・同居人と暮らしていたりする場合、正社員を辞めることを了承してもらわないと、トラブルに発展しかねません。子どもがいてお金がかかる場合は特に、事前の相談が必要です。
非正規雇用やフリーランスになって仮に収入が減っても、配偶者や親・同居人が快くサポートしてくれる環境であれば、安心して正社員を辞められるでしょう。
正社員を辞めた後の働き方についてしっかり計画・準備できていれば、家族や同居人に反対される可能性は低くなります。そのためにも、退職後の仕事について明確に決めて準備を進めましょう。
正社員を辞めるタイミングは?
正社員を辞めるに当たって、生活に不安を抱えず円満退社するためにはタイミングも大切です。具体的にいつ辞めるべきなのか、申告の時期と併せて解説します。
条件がそろったとき
会社との折り合いも大切ですが、そもそも自分が正社員を辞めてもよい条件がそろっていなければ、生活の不安は避けられません。
貯蓄が課題の場合は、目標金額をきっちり定めて達成したら辞めると考えましょう。スキルや経験が課題なら、資格を取ったり働きながら受けられる講座を受講したり、正社員をしながら副業で経験を積んだりと、地道な努力が必要です。
状況に応じた条件(十分な貯蓄やスキル・家族の了承など)がそろったら、正社員を辞めるタイミングと考えてよいでしょう。
繁忙期は避ける
自分としては正社員を辞められる条件がそろったとしても、繁忙期に辞めると会社に迷惑がかかります。円満退社を望むのであれば、繁忙期の退職はおすすめできません。
引き止めに遭う可能性が高くなったり引き継ぎが大変になったりと、自分の負担も増えてしまいます。業務の状況が落ち着いたタイミングであれば上司にしっかり時間を取ってもらえるのも、繁忙期を避けるメリットです。
繁忙期を過ぎてある程度会社に余裕ができた時期に、退職を申し出ましょう。
申告は1〜3カ月前までに
雇用期間が定められていない労働契約の場合、民法では退職の申告から2週間たてば辞められることになっています。
しかし1カ月前・2カ月前・3カ月前など、民法上の期間より前に退職の申告するよう就業規則で定めている企業も多く、労働者はそのルールに従わなければなりません。
就業規則が周知されていて合理的なものであれば、労働者が認知・賛成していなくてもルールとして適用されるためです。トラブルなく退職したいなら、辞める旨の申告は就業規則に定められている期間までに済ませる必要があります。
退職までには引き継ぎもある上、有給休暇が残っていれば有休消化もしなければなりません。退職までの期間に関しては、余裕を持った計画が必要です。
正社員を辞めるときのステップ
正社員を辞めてもよい条件がそろったら、いよいよ退職に向けて行動する段階です。具体的にどのような行動が必要になるのか、事前に頭に入れておきましょう。
1.新たな仕事を決める
会社を辞めて一定期間休む場合は、そのまま退職を申し出て辞めれば問題ありません。
それ以外のケースでは、派遣や契約社員・パート・フリーランス・起業など、どの働き方を選ぶにしても、在職中に準備をしておいた方が安心です。経済的な不安も少なく済む上、転職や自分で始める仕事がスムーズに進みやすくなります。
非正規雇用への転職なら、引き継ぎで忙しくなる前に求人を探しておくとよいでしょう。国内最大級の求人情報一括検索サイト「スタンバイ」なら、忙しい正社員でもスキマ時間を使って効率的に仕事を探せます。
2.辞めたい旨を上司に打診する
正社員を辞めると決意したら、就業規則や定められた申告の時期よりも前(引き継ぎその他に必要な期間も考慮した時期)に、直属の上司へ辞める旨を打診します。
一方的な通告である退職届とは違い、退職を願い出る「退職願」の提出でも問題ありません。
ただしこの段階では引き止められる可能性があるため、退職に納得してもらえるような伝え方が必要です。新しい仕事や働き方がすでに決まっていることを伝えると、辞めることに納得してもらいやすくなります。
円満退社を目指すなら、現職への不満を口に出すのは得策ではありません。あくまでも次に考えている働き方、休む場合は休むことへの前向きな思いを伝えましょう。
3.退職届を提出する
退職届は退職願と違って撤回はできず、会社側の意向にかかわらず「退職します」という明確な意思を一方的に示す届出です。口頭でもよいとされていますが、トラブルを避けるためには書面の方がよいでしょう。
退職届を提出するタイミングは、就業規則で定められた時期までです。会社で用意されたテンプレートがあればそれに従って作成し、なければ以下の順番で文章を構成します。
- 1行目:タイトル「退職届」
- 2行目:書き出しの言葉「私儀」
- 3行目:退職理由「一身上の都合」
- 4行目:退職日(確定した退職日)
- 5行目:文末の結び(「退職します。」と言い切りの形にする)
- 6行目:届出年月日
- 7行目:自分の所属部署と氏名
- 最終行:宛名(会社名の正式表記と代表者のフルネーム)
用紙のサイズはA4でもB5でも構いませんが、退職届は縦書きが一般的とされています。
4.引き継ぎを済ませる
退職の申し出が受理されて退職日が決まったら、担当していた業務の引き継ぎに入ります。丁寧にマニュアルを作り、関連する資料やファイルなどは整理しておくと、自分が退社した後に後任の担当者が困りません。
引き継ぎは、有休消化も見込んで余裕を持ったスケジュールで進める必要があります。いつまでに何を終わらせれば間に合うのか、慎重に考えて後任への引き継ぎをしましょう。
5.有給休暇を消化して退職する
有給休暇が残っている場合は、消化してから退職した方が得になります。退職前に消化する義務はありませんが、せっかく付与された有給休暇は、しっかり消化してから辞めた方がよいでしょう。
自分の有給休暇が何日残っているのかをしっかり確認して、上記1〜3の計画を立てておくと円滑に退職できます。
6.健康保険や年金・雇用保険の手続きをする
正社員を辞めてすぐに派遣や契約社員、社会保険加入のパートに転職する場合は、転職先の会社で社会保険や雇用保険の手続きをしてもらえます。ただし、健康保険証は退職すると使えなくなってしまうため、退職日に返却しましょう。
一定期間休みたい人やフリーランス・起業を考えている人は、自分で国民健康保険・国民年金に加入する手続きをする必要があります。役所の国民健康保険・国民年金それぞれを担当している課で、手続きが可能です。
次は非正規雇用での転職をしようと考えていても、万が一退職までに仕事が決まらなかった場合は、雇用保険(失業給付)の手続きも必要です。雇用保険の手続きはハローワークでできます。
出典:ハローワークインターネットサービス 雇用保険手続きのご案内
正社員を辞めた人のリアルな声
実際に正社員から働き方を変えた人の声は、正社員を辞めたい人にとって参考になります。Yahoo!しごとカタログに掲載されている、正社員を辞めた人の声をまとめました。
実際の書き込みは以下のページを確認しましょう。
出典:正社員を辞めて派遣社員やフリーターになった人いますか? やめて良かったとか、辞めなければ良かったとか. - 教えて!しごとの先生|Yahoo!しごとカタログ
自分の時間を持てて心に余裕ができた【派遣】
正社員から派遣社員に転職したベストアンサーの回答者が、派遣の利点として挙げているのが「正社員よりは休み等融通がききやすい」という点です。
派遣社員に転職した他の回答者からも、正社員のときは帰宅が11時など自分の時間がなかったが、派遣になってからは定時に終業できて自分の時間を持てた、心に余裕ができたという回答が挙がりました。
自己マネジメント力が求められる【フリーランス】
「請けた仕事」という言葉からフリーランスになったと思われる回答者は、正社員を辞めて得られたメリットとして、嫌な仕事と時間の制約から解放されたという点を挙げています。
その反面、時間を気にせず仕事をしてしまったり休日が明確でなくなったりするため、自己マネジメント力が求められるという難しさも感じているようです。
社会的信用の低さや社内での差別を感じる【派遣・パート】
派遣やパートといった非正規雇用に転職した回答者が挙げている正社員を辞めたデメリットが、「社会的信用の低さ」「社内での差別」です。
差別はしてはならないことですが、実情として「パートだから…」と軽視されるケースがあると回答している人もいます。
仕事は何をしているのか聞かれたとき引け目を感じるという声もあるため、そのような人の目が気になる場合、正社員を辞めるのは思いとどまった方がよいかもしれません。
正社員を辞めたいと思ったら現実的な判断を
正社員を辞めたいけれど迷ってしまうときは、退職後の仕事が決まっているか、退職後の働き方や過ごし方を実現するのに十分な貯蓄やスキルがあるか、家族の了承を得られているかを判断の目安としましょう。
条件がそろって辞めると決めたら、繁忙期の退職は避けて就業規則に定められた退職の申告期限までに退職届を提出します。引き継ぎや有休消化の期間も計画に入れなければなりません。
現実的に正社員を辞めてもよいのかを判断し、余裕を持った退職スケジュールを立てましょう。