セラピストの仕事に興味があっても「どうすればなれるのか分からない」「詳しい仕事内容を知らない」という人もいるでしょう。
セラピストには、美容やリラクゼーションに関係するものから医療行為に携わるものまで、幅広い種類があります。何になりたいかによって必要な資格が異なり、職種によっては国家資格が必要です。
この記事では、セラピストの仕事内容や向いている人の特徴、就職先、どうすればなれるのかといった点を紹介します。セラピストを目指す人向けの資格や、勉強時間なども併せて見ていきましょう。
この記事のポイント
- セラピストの仕事とは
- カウンセリングをもとに施術や治療を行い、心身をリラックスさせたり機能を改善させたりすることです。
- セラピストの種類
- 美容やリラクゼーション、医療、健康、メンタルケアなどさまざまな種類があります。
- セラピストになる方法
- 未経験者でも応募できる職場で働きながら知識を身に付ける方法や、資格の取得後に就職する方法などがあります。
セラピストの仕事内容
セラピストは幅広い分野で活躍する存在であり、心や体を癒やす人の総称として用いられています。セラピストについて理解するために、主な仕事内容を見ていきましょう。
カウンセリング
まずは事前にカウンセリングを行い、患者の状況や症状を把握します。カウンセリングは、施術の方向性を決める上で重要なステップです。
主に「何に困っているのか」「普段どのように過ごしているのか」などをヒアリングします。施術内容によっては、アレルギーや病歴などを確認するケースもあります。
カウンセリングをする人と施術をする人が分かれている場合もありますが、個人サロンや小規模なクリニックでは、セラピストがカウンセリングも担当するのが一般的です。
施術や治療
カウンセリングによって必要な情報を得たら、施術や治療を行います。患者や顧客をポジティブな方向に導くには、個々の状態に合わせた適切なアプローチが大切です。
また、施術する相手の心身の緊張を取り去り、信頼関係を築いていくのも重要なポイントです。
実際に体に触れながら施術や治療をする場合もあれば、メンタル系のセラピストのように対話をしながら進めていく場合もあり、セラピストの種類によって具体的なやり方は異なります。
アフターフォロー
施術が終わった後のアフターフォローも、セラピストにとって重要な仕事です。ホームケアが必要な場合は、自宅での過ごし方や日常生活における注意点などを伝えます。
セラピストによって、アフターフォローの仕方はさまざまです。例えば、エステティシャンのような美容系のセラピストは、利用者に合った美容アイテムなどを提案するケースもあります。
患者や顧客の状況によっては、何度か来院してもらうことになるでしょう。また、次回の予約や会計、見送りなどをセラピストが担当する場合もあります。
セラピストの仕事がきついといわれる理由
セラピストにはさまざまな職種がj含まれますが、他の仕事に比べて「きつい」といわれることがあります。どのような理由によるものか、見ていきましょう。
体力的にも精神的にも大変
職種によっても異なりますが、セラピストは体力的・精神的に大変だといわれることがあります。
例えば、リハビリ職やエステティシャンなどは、施術をするときに自分の手や体を使用するので、体力に自信がないと苦労するでしょう。対象範囲が全身に及ぶ場合、特に体力的な消耗は激しいといえます。
人を相手にする仕事なので、うまくコミュニケーションが取れないときや、クレームを受けたときなどに、精神的なプレッシャーを感じる場合もあるでしょう。
また、年収がやや低い傾向にある点も、きついといわれる理由の1つといえます。
セラピストには多くのやりがいも
セラピストは大変だといわれていますが、患者に感謝される機会が多く、達成感もある仕事です。カウンセリングや施術によって患者に前向きな変化が見られたときに、やりがいを感じる人も多いでしょう。
また、技術を磨いて十分な経験を積めば独立できる場合もあり、将来的な可能性の広がりも感じられる仕事です。
独立開業して成功すれば、企業に所属していたときは考えられなかったような、高収入を得られる可能性があります。
代表的なセラピストの種類
心理的・物理的なアプローチで人を癒やす役割を持つセラピストは、施術をする対象や目的、使用する道具などによって分類されます。主なセラピストの種類を見ていきましょう。
美容系・リラクゼーション系
美容やリラクゼーションを目的としたセラピストは、種類が豊富です。代表的なものを見ていきましょう。
【美容目的やボディケア目的のセラピスト】
- リフレクソロジスト:足裏・手などの血流を促して体調を整える
- タラソセラピスト:海水や海藻を使ったマッサージにより、健康的な肉体を目指す
- エステティシャン:マッサージや美容器具を用いて体をケアする
- カイロプラクター:カイロプラクティックという手技施術によって骨格のバランスを整える
【リラクゼーション系のセラピスト】
- アロマテラピスト:エッセンシャルオイルを使用して気分をリフレッシュさせる
- カラーセラピスト:色のイメージや心理効果などを活用して施術する
- ミュージックセラピスト:音楽によりストレスの緩和を図る
これらの職種は、施術をする上で必要な公的資格はありませんが、知識や技術を証明するための民間資格があります。
医療・健康系
セラピストの中には、病院や老人介護施設、クリニックなどで施術をする人もいます。医療行為を伴う施術や治療を行う場合には、以下のような国家資格が必要です。
- 鍼灸師(はり師・きゅう師):鍼(はり)や灸(きゅう)を使って体に刺激を与え、病気の予防・治療を行う
- あん摩マッサージ指圧師:あん摩・マッサージ・指圧により、血流やリンパの流れを改善する
- 柔道整復師:骨折・脱臼・打撲・捻挫などを治療する
- 理学療法士:けがや病気で障害を負った人の機能回復を目指す
これらは、セラピストと呼ばれる機会は少なく、資格名のままで呼ばれるのが一般的です。医療行為ではなく、体を整えるための施術を行う整体師などは、公的な資格が必要ありません。
心理・メンタル系
精神面のケアをメインとするセラピストもいます。例えば、臨床心理士・公認心理師・社会福祉士・精神保健福祉士・産業カウンセラーなどの種類があり、医療機関や教育現場、福祉施設、企業などで働いています。
カウンセリングをする相手や資格の有無によってさまざまな呼び名がありますが、いずれも心理学の専門知識や技術を用いて、心の悩みや不安の解消を手助けする仕事です。
心理カウンセラーとして認識される職種が多く、セラピストと呼ばれる機会は少ないといえます。
カウンセラーは話を聞き、アドバイスを提供する仕事です。セラピストはカウンセリングに加え、施術を行う点が主な違いといえます。
セラピストの就職先
セラピストの就職先は職種によって異なり、多くの場所で必要とされています。主な就職先を見ていきましょう。
エステサロンやホテル、スポーツジム
美容系やリラクゼーション系のセラピストは、専門のサロンで働いています。例えば、エステティシャンならエステサロンが主な就職先です。
施設内にサロンがあるスポーツジムや、ホテルなどで働くケースも珍しくありません。また、デイサービスのような福祉施設で活躍するセラピストもいます。
福祉施設の利用者向けに、生活の質や満足度を高めることを目的として、アロマテラピーなどを行っている人もいます。
病院や学校、福祉施設
医療系やメンタル系のセラピストの主な就職先は、病院・学校・福祉施設などです。中には、企業や警察署、刑務所などで働く人もいます。
仕事や職場の人間関係などから生じる心の悩みを解消に導く産業カウンセラーは、民間企業や公的機関なども活躍の場です。
医療機関で働きながら、非常勤として民間企業に勤務するケースもあるでしょう。資格を生かし、複数の場所で活躍する人もいます。
セラピストに向いている人の特徴
ストレス社会で健康を意識している人は多く、セラピストは社会的に必要とされています。大変な部分もありますが、やりがいも大きな仕事です。どのような人に向いているのか、見ていきましょう。
コミュニケーション能力が高い
セラピストはコミュニケーション能力を必要とする仕事です。人と接することが好きな人に向いています。患者の状況をしっかりと把握するには、カウンセリングが欠かせません。
日常生活や困っていることなどを聞き出すには、ヒアリング力が求められます。ただ話を聞くだけでなく、情報を引き出すためにどのような質問をすればよいかを考えて実行しなければなりません。
また、相手がリラックスして話せるような雰囲気作りも必要です。警戒している状態では必要なことを聞き出せず、適切な施術を行えない可能性があります。
ストレスをためにくい
患者をケアする立場のセラピストは、心身の状態が安定している必要があります。ストレスをためにくく、気持ちの切り替えが上手い人が向いているでしょう。
相手の気持ちに寄り添うことは大切ですが、共感しすぎると心を乱されてしまい、施術に集中できません。どのような話を聞いても動揺を表に出さず、プロ意識を持って接する力が求められます。
セラピストがストレスをため込み、不調を感じているとパフォーマンスが低下してしまうため、無理なくストレスを発散する方法を実践することが大切です。
知識や技術への向上心がある
根気強く学ぶ姿勢を持つ人や、学習意欲のある人は、セラピストに向いています。職種によっては難易度の高い資格を取得する必要があり、大学や専門学校などへ通わなければならない場合もあります。
また、患者や顧客を満足させるには、就職してからも技術や知識を磨き続けることが大切です。
向上心の有無は、職場での評価にも関係してきます。他のセラピストとの差別化を図るために、新しい技術を学ぶことも必要になるでしょう。
セラピストになるには?
セラピストになる方法はどの職種を目指すかによって異なり、必要な資格を取得後に就職や転職をする人もいます。代表的な2つのパターンを見ていきましょう。
未経験OKのサロンに就職する
未経験者を募集しているクリニックやサロンなどで働きながら、セラピストを目指す方法があります。
資格を持っているセラピストのもとで、雑用やアシスタントなどをこなしながら経験を積み、仕事を覚えます。人材育成に力を入れている職場であれば、働きながらの資格取得がしやすいでしょう。
研修制度やトレーニング環境が整っているかなども、しっかりとチェックすることが大切です。未経験者OKだからといって、必ずしも研修が充実しているとは限らない点に注意しましょう。
大学や専門学校などで学び資格取得を目指す
セラピストの国家資格の中には、大学や専門学校の卒業が受験資格になっているものも少なくありません。
民間資格であれば、スクールや通信講座、独学で資格を取得できるものもあります。目指す職種の資格を持っていれば、就職がしやすくなります。
実務経験がなかったとしても、専門用語や基礎知識などへの理解があった方が、採用されやすいでしょう。資格を取得すると、その仕事をする上で必要最低限の知識を持っている点をアピールできます。
美容系・リラクゼーション系の資格
美容系・リラクゼーション系の民間資格には、さまざまな種類があります。おすすめの資格や、取得条件などを見ていきましょう。
認定エステティシャン
認定エステティシャンは、エステティシャンとしての専門知識や技術を証明する資格です。
日本エステティック協会の「AJESTHE認定エステティシャン」や、日本エステティック業協会の「AEA認定エステティシャン」があります。
■AJESTHE認定エステティシャン
- 受験資格:エステティシャンセンター試験に合格、300時間以上コースまたは1,000時間以上コースの修了、または実務経験1年以上の正会員者
- 試験内容:筆記試験、技術試験
- 勉強時間目安:300時間
- 受験料:1万560円
■AEA認定エステティシャン
- 受験資格:登録養成校の300時間以上コースで所定の300時間カリキュラムを修了、またはエステティックに関連する実務経験(フェイシャルまたはボディ)が1年以上
- 試験内容:筆記試験、実技試験
- 勉強時間目安:300時間
- 受験料:1万560円
出典:資格・検定 | 日本エステティック協会
出典:AEA公式サイト|資格取得について
アロマテラピーアドバイザー
アロマテラピーアドバイザーは、公益社団法人日本アロマ環境協会(AEAJ)が主催する資格です。エッセンシャルオイルの安全な使い方やアロマテラピーの知識を持ち、アロマの活用法を提案できる力を認定します。
資格を取得すれば、アロマの安全性や法律を正しく理解できます。アロマの販売や企画開発などに携わりたい人におすすめな資格です。
- 受験資格:アロマテラピー検定1級合格、AEAJの会員であること、アロマテラピーアドバイザー認定講習会の受講、履修証明書の提出と資格登録手続き
- 試験内容:筆記試験、実技試験
- 勉強時間目安:3時間~
- 受験料:5,236円
- 資格登録認定料:1万450円
- 別途教材費(公式テキスト、クラフト材料)が必要
出典:(公社) 日本アロマ環境協会 | 検定・資格 | アロマテラピーアドバイザー
JREC認定ライセンス認定試験
リフレクソロジストは、足の裏や手、耳を刺激する施術を行い、健康の維持や疲労回復を助ける仕事です。
日本リフレクソロジスト認定機構が実施する「JREC認定ライセンス認定試験」には、レギュラー認定試験・マスター認定試験・トップインストラクター認定試験などがあります。
リフレクソロジーの専門知識や技術を身に付けていることを証明できる資格です。
■レギュラー認定試験
- 受験資格:JREC加盟校でレギュラーライセンス対応講座を修了、またはスクールの規定に則り受験資格を与えられた人
- 試験内容:筆記試験
- 勉強時間目安:不明
- 受験料:1万1,000円
- 登録料:1万6,500円
- 年会費:1万3,200円
出典:レギュラークラス - JREC日本リフレクソロジスト認定機構
医療・健康系の資格
医療や健康に関わるセラピストが施術を行う場合、国家資格が求められます。主な医療・健康系の資格を見ていきましょう。
作業療法士
作業療法士には、体や精神に障害のある人が日常生活や社会生活に復帰できるようサポートする役割があります。作業療法士になるには、国家資格が必須です。
筆記試験は、理学療法士国家試験と共通の問題100問と、作業療法士の専門問題100問に分かれています。
- 受験資格:高校卒業後、国や都道府県が指定した学校または養成施設で3年以上学びカリキュラムを修了
- 試験内容:筆記試験、口述試験、実技試験
- 勉強時間目安:2月の国家試験に向け、夏~秋頃から問題集を解き始める人が多い
- 受験料:1万100円
理学療法士
理学療法士は医師の指示のもと、患者のリハビリをサポートして機能改善をサポートします。理学療法士になるには、国家資格が必要です。
筆記試験では解剖学・生理学・運動学・病理学概論・臨床心理学などの一般問題、運動学・臨床心理学・リハビリテーション医学などの実地問題が出題されます。
- 受験資格:高校卒業後、国や都道府県が指定した学校または養成施設で3年以上学びカリキュラムを修了
- 試験内容:筆記試験、口述試験及び実技試験
- 勉強時間目安:2月の国家試験に向け、夏~秋頃から問題集を解き始める人が多い
- 受験料:1万100円
はり師・きゅう師
鍼と灸を使い、体のツボを刺激して病気の改善や予防の施術ができる資格です。施術によって、人が持つ自然治癒力を活性化させます。
はり師・きゅう師になるには、国家試験に合格しなければなりません。はり師・きゅう師の両方を取得した鍼灸師は、独立開業も目指せるでしょう。
- 受験資格:国や都道府県が指定した学校または養成施設で3年以上学びカリキュラムを修了
- 試験内容:筆記試験
- 勉強時間目安:500時間~
- 受験料:1万9,500円
出典:はり師国家試験の施行|厚生労働省
出典:きゅう師国家試験の施行|厚生労働省
心理・メンタル系の資格
心理・メンタル系のセラピストは、カウンセリングを通じて患者の問題解決をサポートします。医療系のセラピストと同様に、専門知識や経験を必要とする責任の重い仕事です。主な資格の概要や取得方法などを見ていきましょう。
精神保健福祉士
精神保健福祉士は、精神障害を抱える患者の社会復帰を手助けする仕事です。社会福祉士、介護福祉士と並ぶ三大福祉国家資格の1つとされています。
精神保健福祉士として働くには、国家資格が必要です。主な勤務先は、精神科病院・精神科診療所・一般病院・障害者福祉施設などです。
- 受験資格:
(1)4年制大学で指定科目を修めて卒業した人(所定の期日までに卒業見込みを含む)
(2)2年制(または3年制)短期大学等で指定科目を修めて卒業し、指定施設において2年以上(または1年以上)相談援助の業務に従事した人(所定の期日までに従事見込みを含む)
(3)精神保健福祉士短期養成施設(6月以上)を卒業(修了)した人(所定の期日までに卒業(修了)見込みを含む)
(4)精神保健福祉士一般養成施設(1年以上)を卒業(修了)した人(所定の期日までに卒業(修了)見込みを含む) - 試験内容:筆記試験
- 勉強時間目安:1日2時間を半年程度とされる
- 受験料: 2万4,140円
出典:[精神保健福祉士国家試験]試験概要:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
出典:精神保健福祉士について |厚生労働省
公認心理師
公認心理師は2017年度に設立された、日本初の心理職の国家資格です。問題を抱えた患者の心理状態を観察・分析し、アドバイスや指導を行います。
問題解決はもちろん、心の健康に対する理解や意識を向上させる役割もあります。合格するには、心理学の幅広い知識や応用力が求められるでしょう。
- 受験資格:4年制大学で25科目履修後、大学院で10科目履修、4年制大学で25科目履修後、認定施設で2年以上の実務経験など
- 試験内容:筆記試験
- 勉強時間目安:300時間~
- 受験料:2万8,700円
出典:心理師 |厚生労働省
臨床心理士
心理学の知識や技術を用いて、心の問題にアプローチする心の専門家と呼ばれる資格です。公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が、試験を実施しています。
臨床心理士は医療機関・学校・児童相談所など、さまざまな場所で活躍しており、複数の職場を掛け持ちするケースもあります。
- 受験資格:指定大学院(1種・2種)または専門職大学院の修了者、諸外国で同等以上の教育歴と国内で2年以上の心理臨床経験を有する人、医師免許取得後に2年以上の心理臨床経験を有する人
- 試験内容:筆記試験、口述面接試験
- 勉強時間目安:180時間~
- 受験料:申請書類1部1,500円、資格審査料3万円、登録料5万円
出典:臨床心理士になるには | 公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会
さまざまな場所で活躍するセラピスト
セラピストは多くの場所で必要とされ、さまざまな人に癒やしを与えています。ストレスが多い現代社会でリラクゼーションを求める人は多く、将来性のある仕事です。
特定の資格が必要ない場合も、民間資格を持っていると働きやすくなります。資格取得も視野に入れ、セラピストになる準備をしましょう。
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