アパレル業界におけるMDとは「マーチャンダイザー」の略称で、調査・リサーチ・企画・生産計画・販売計画と、幅広い役割を担う職種です。MDになる方法としては、営業職や商品開発の企画職となり、キャリアを重ねてMDアシスタント、MDとなるのが一般的です。
この記事のポイント
- MD(マーチャンダイザー)は、商品の企画から販売促進までを幅広く担う職種のこと
- 市場・トレンドの調査・分析、商品の開発・販売計画の立案までを担います。
- ファッション系の専門学校で学ぶと、MDになるのに有利になる
- 営業職や商品開発の企画職からMDアシスタントとキャリアを重ね、MDになるのが一般的です。
- MDには幅広いスキルが求められる
- 分析スキル、企画力、マネジメントスキル、コミュニケーション力が求められます。
アパレル業界におけるMDとは?
MDという言葉は、業界ごとに異なる意味を持ちます。では、アパレル業界ではどのような役割を指すのでしょうか。
MDはマーチャンダイザーの略
アパレル業界における「MD」は「マーチャンダイザー(Merchandiser)」の略称です。MDは市場調査をもとに、商品の企画・開発を行い、生産・販売計画・価格設定・在庫管理までを一貫して担当する専門職です。
また、新商品の開発・改良を提案したり、広告やPRなどのプロモーション戦略を考えたりすることもMDの仕事の一部です。
マーケティング・経理など、幅広い知識が求められるため、ファッションセンスだけでなくビジネスパーソンとしての視野も必要となります。
MD(マーチャンダイザー)とバイヤーの違い
「バイヤー」はアパレル業界に限らず、さまざまな業界で活躍する職種で、主に商品の買い付けを担当します。一方でMDは、商品の企画・販売戦略の立案まで広く携わる点が大きな違いです。
バイヤーの仕事は、市場のトレンドを分析し、売れる商品を見極めて仕入れることです。MDが策定した企画に沿って買い付けを行う場合もありますが、販売戦略への関与は比較的少ないのが特徴です。しかし、どちらの職種もアパレル業界において不可欠な存在である点は変わりません。
なお、中小企業では人員の関係でMDとバイヤーを兼任することも珍しくありません。
MD(マーチャンダイザー)の仕事内容
商品開発から生産・販売計画・予算管理までを一貫して計画・管理することがMDの役割です。具体的にどのような業務を行うのか、ここで見ていきましょう。
調査・リサーチ
まずは、市場調査や自社商品の売れ行きを分析し、次のシーズンに売れる商品を予測します。最近ではポイントカードなどを活用し、リアルタイムで購買データを収集することも可能です。
例えば「次のシーズンはジャケットが流行しそう」と分かれば、新作ジャケットの企画を進めることで、的確な販売戦略につなげられます。MDの仕事の土台となる調査・リサーチは、重要なプロセスのひとつです。
商品企画
調査結果をもとに、テーマやコンセプトをまとめ、デザイナーやパタンナーと協力して商品を企画します。
この段階で、デザインの細部を詰めたり、使用する生地を決定したりする他、生産数や広告戦略などの事業計画も策定します。また、展示会の準備も並行して進めることが一般的です。
生産計画
商品化が決まると、プロダクトマネージャーやバイヤーと連携し、資材の仕入れや生産管理を進めます。原材料の選定や工場の手配もMDの仕事の一環です。
さらに、販売開始後も売れ行きを分析し、必要に応じて追加生産を行います。実際に店舗を訪れ、顧客の反応を確認する場合もあります。
販売計画
MDは社内業務だけでなく、営業や販売促進にも関わります。広告戦略の立案や、店頭での陳列方法の検討もMDの重要な仕事です。
販売開始後は、販売スタッフへの指導や目標達成のための改善策を実施し、売り上げの向上に向けた総合的なマネジメントを行います。
MDの成果は売れ行きに直結するため、責任は重大ですが、その分大きな達成感を得られる仕事といえるでしょう。
MD(マーチャンダイザー)になる方法
MDになる方法はさまざまですが、一般的にはアパレルメーカーやショップの営業職・商品企画職として経験を積み、MDアシスタントを経てMDになるケースが多いといえます。
新卒の場合は、総合職として採用され、適性に応じてMD部門に配属されることもあります。
MDとして本格的に就職を考える場合、大学・専門学校で経済学・商学を学ぶと有利です。特に、ファッションビジネスや企画について学べると、より実践的な知識が身につきます。
MD(マーチャンダイザー)に求められるスキル
MDには、幅広い役割をこなすためのスキルが求められます。ここからは、代表的なスキルである分析スキル・企画力・マネジメントスキル・コミュニケーション力について詳しくチェックしていきましょう。
分析スキル
MDには、トレンド分析・データ分析の2つの力が必要です。
トレンド分析では、市場の動向やSNSの口コミなどをチェックし、次に流行するアイテムやスタイルを予測します。またデータ分析は、売り上げのデータをもとに、商品の選定や仕入れ数量を決定します。
販売戦略の成否を左右するため、感覚ではなくデータをもとに論理的に判断できる力が必要です。
企画力
MDは、次のシーズンの流行を見極め、ブランドの方向性・販売戦略を決める重要な役割を担います。
主力商品の企画をリードすることが多いため、情報分析力を生かしながら、素材選定から価格設定までを具体化する力が求められます。
またデザイナー・パタンナー・バイヤー・営業・売り場の責任者など、多くの関係者と連携しながら企画を進める力も必要です。
マネジメントスキル
MDは、商品の開発から販売までの全工程を管理する立場です。そのためスケジュール管理・予算管理など、総合的なマネジメント能力が必要となります。
商品の販売開始後も、売り上げ予測・販売促進の企画を考えつつ、企業の利益向上に貢献することが求められます。またメンバーの指導・市場変動への対応力・自己管理能力も欠かせません。
コミュニケーション力
MDは社内のデザイナー・営業や、取り引き先まで、幅広い人たちと関わる仕事です。企画した商品をスムーズに販売するためには、社内外の多くの関係者と連携しなければなりません。
社内では、デザイナーと商品企画について打ち合わせを行い、上層部へのプレゼンテーションも実施します。販売が決まった後は、営業や店舗スタッフとも密に連携を取ります。
また社外では、取り引き先との価格・納期・品質管理の調整なども担います。こうした業務を円滑に進めるためには、広い視野を持ちつつ、的確に意思を伝えるコミュニケーション力が必要となります。
MD(マーチャンダイザー)の仕事で意識したい5つのポイント
MDの仕事は、企業の売り上げに直接影響を及ぼす重要なものです。成功するためには、常に適切な判断を下すことが欠かせません。ここでは、特に意識したい5つのポイントを紹介します。
適切な商品を販売する
MDの最も重要な仕事は、顧客に合った商品を開発し、販売することです。ターゲット層にマッチしない商品を展開しても売り上げにはつながらず、ブランドの方向性を見失う原因にもなります。
例えば20代後半向けのフォーマルブランドが、10代向けのカジュアルアイテムを販売した場合、ブランドのイメージと乖離し、顧客が離れる可能性があります。常に顧客目線を意識し、ブランドのコンセプトに沿った商品開発・販売を継続することが重要です。
適切な価格で販売する
商品の価格設定も重要なポイントです。ターゲット層が手を出せないほど高額な商品では、どれだけ魅力的でも購入のハードルが上がり、売り上げにはつながりません。逆に価格を下げすぎると、ブランドイメージの低下を招く恐れがあります。
「品質と価格」「顧客層と価格帯」のバランスを考慮し、ブランドの価値を維持しながら、ターゲットにとって適正な価格で販売することが求められます。
適切な数量を販売する
販売する商品の数量も、需要に見合った適切なものでなければなりません。需要予測が曖昧だと、売れ残りによる在庫過多や、逆に品切れによる機会損失が発生します。
例えば、人気が出ると見込んで大量に仕入れた商品が、予想以上に早くトレンドから外れると、大量の在庫を抱えてしまう恐れがあります。
逆に、販売数を絞りすぎると、予想以上に売れた際に品切れとなり、ブランドへの信頼を損なうことにもなりかねません。需要予測を正確に行い、適切な数量を販売することが重要です。
適切なタイミングで販売する
商品の売りどきを逃さず、最適なタイミングで販売することも、MDの役割の1つです。販売時期を決める際には、季節・トレンド・イベント・購買者心理などを考慮しなければなりません。
例えば、冬物のコートであれば、需要が高まる10月中旬には販売を開始するのが理想的です。また、SNSや口コミで話題になったアイテムを素早く開発・販売したり、人気映画の公開に合わせてコラボ商品を展開したりと、状況に応じた柔軟な対応も求められます。
適切な場所で販売する
どこで商品を販売するかも、売り上げを左右する重要な要素です。全国展開しているブランドでも、地域ごとに売れる商品やニーズは異なります。地域の特性・気候・立地条件なども考慮し、それぞれのエリアに適した商品を販売することが重要です。
また、店内のレイアウトも工夫が必要です。例えば、トレンドアイテムや季節商品は、目立つ場所に配置することで購買意欲を高められます。地域・店舗・売り場の特性を考慮し、適切な場所での商品販売が求められます。
売れる商品を生み出すMD(マーチャンダイザー)を目指そう
MDは、アパレルメーカーにとって欠かせない存在です。売り上げを伸ばすためには、市場の動向やトレンドを分析し、それをもとに商品の企画・販売戦略を立てる必要があります。
さらに、需要と供給のバランスを考慮しながら販売計画を策定し、企業の利益を最大化するのもMDの重要な役割です。
アパレルメーカーが市場で競争に勝ち続けるためには、MDの的確な判断とマネジメントが不可欠といえます。
MDになるには、まずアパレルメーカー・ファッションブランドで、営業・商品開発の企画職として経験を積むことが一般的です。成果を上げ、MDアシスタントに抜てきされることで、MDへのキャリアパスが開けるでしょう。
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