「話すこと」に関する職業の1つにMCがあります。テレビ番組や披露宴、カンファレンスなどの場に欠かせない存在で、MCの手腕によって、イベントの印象や成否が左右されるといってもよいでしょう。MCの仕事内容や求められる能力を詳しく解説します。
MCとは?
テレビ番組や披露宴、カンファレンスなどでは、MCがその場を取り仕切ります。司会進行をしたり、会話を盛り上げたりすることから、「MC=司会者」と認識している人も多いのではないでしょうか?
マスター・オブ・セレモニーの略称
MCは、「Master of Ceremonies(マスター・オブ・セレモニー)」の略称です。Masterには支配者、Ceremoniesには儀式・式典という意味があり、直訳すると「式典などのイベントの支配者」となります。
主な役割は、参加者(出演者)の個性・能力を最大限に引き出しながら、イベント・会議を取り仕切ることです。淡々と司会進行をするのではなく、参加者に質問を投げかけたり、順番にコメントを求めたりして場を盛り上げます。
活躍する場面は、テレビ番組・披露宴・キャラクターショー・モーターショー・映画試写会・カンファレンス・会議など、多岐にわたります。テレビ番組では、タレントやアナウンサー、お笑い芸人などがMCを務めるケースが多いでしょう。
司会者との違い
MCと混同されやすいのが、司会者です。同じポジションと認識している人は多いですが、求められる役割・スキルは異なります。
司会者は、イベントを台本通りに進めるのが仕事です。本番にはハプニングがつきものですが、できるだけ台本から脱線しないように進めていく必要があります。
一方でMCは、参加者の個性・能力を引き出すことに重きを置いています。台本通りに進められるかどうかではなく、その場の空気を読み、ハプニングにも柔軟に対応しなければならないのです。
MCに求められる能力
MCはイベントを取り仕切る指揮役なので、MCの能力でイベントの成否が決まるといっても過言ではありません。参加者をうまくまとめながら場を盛り上げるには、どのような能力が求められるのでしょうか?
場の空気・雰囲気を読む力
台本通りに進めていく司会者とは異なり、MCにはその場に応じた臨機応変な対応が求められます。場の空気を読み、自分が何をすべきなのか、または何をすべきでないのかを瞬時に判断しなければなりません。
例えば、会場全体のテンションが下がっていれば、参加者にコメントを求めたり、自らのトークで場を盛り上げたりする必要があります。
センシティブな発言があった場合には、空気が重くなる前に話題を転換し、全体の方向性をうまくまとめるといった配慮が欠かせません。状況を鋭く察する能力がなければ、全体を取り仕切るのは難しいといえるでしょう。
柔軟性のあるトーク力
テレビやイベントで活躍する人気MCの多くは、トーク力があります。ここでいうトーク力とは、単におしゃべりが上手な人を指すわけではありません。自らのトークでみんなを楽しませると同時に、参加者からもよいトークを引き出す必要があります。
観衆の中には、参加者・登壇者のトークを楽しみにしている人も多くいます。MCがしゃべりっぱなしでは、見ている方はうんざりしてしまうでしょう。参加者ができるだけ平等に発言できるように、トークを回す力も求められます。
聞き取りやすい発声スキル
いくらトーク力が優れていても、声が聞き取りにくければ元も子もありません。イベントの印象は、よくも悪くもMCの声に左右されるため、聞き取りやすい発声スキルを身に付ける必要があります。
聞き取りやすく、万人に受け入れられやすい声(話し方)には、以下のような特徴があるでしょう。
- 滑舌がよい
- 聞き取りやすい声の大きさである
- 話すスピードがちょうどよい
- 抑揚がある
- 状況に合わせた話し方できる(表現力)
会場の雰囲気はMCの声によって変わるため、緊張を出さないように心掛けます。声に緊張が表れると、会場全体が緊張したムードになってしまうでしょう。
MCに向いている人の特徴は?
性格や資質の面で、MCに向いている人とそうでない人がいます。MCは一発勝負なので、コミュニケーション能力と臨機応変に対応できる力は欠かせません。
コミュニケーションが得意
参加者からトークを引き出して、誰もが楽しめるイベントにしていくためには、コミュニケーション能力が必要です。
コミュニケーションは、話す・聴く・共感するなどの複数の要素から成り立っており、単に外向的でおしゃべり好きな人を指すものではありません。相づちや間の取り方、表情もコミュニケーションに含まれます。
「声の仕事がしたいから、MCを目指す」という人もいますが、決められた台本を読み上げるだけではないため、言葉のキャッチボールが苦手な人・その場に合わせたトークができない人は、MCにあまり向いていないといえます。
アクシデントにも臨機応変に対応できる
ほとんどのイベントは一発勝負であり、やり直しが利きません。どんなに準備を万全に整えても、参加者の遅刻やスタッフのケガ、時間の延長・短縮といった思わぬトラブルが生じます。
何があっても冷静さを失わず、とっさの機転が利く人でなければ、MCの仕事は務まらないといってよいでしょう。
とはいえ、どんなに優秀なMCでも、1度や2度の失敗経験はあるものです。臨機応変に対応する力は、場数を踏む中で少しずつ磨かれていくため、恐れずにチャレンジする勇気を持ちましょう。
MCが上手になるコツ
MCになるには、発声スキルを身に付ける必要があります。専門学校でテクニックを学ぶ手もありますが、日頃の地道な練習が何より大事です。自宅でできるトレーニング方法の一例を紹介します。
日頃から発声と笑顔の練習
MCに元アナウンサーが抜擢されるのは、万人に聞き取りやすい声の持ち主であるためです。ボソボソとした話し方で声が会場に通らなければ、イベントは失敗に終わるでしょう。
また、MCが無表情だと参加者も観衆もしらけてしまうため、どんな状況下でも笑顔を保つ必要があります。
MC上達のポイントは、発声の練習と笑顔の練習を続けることです。5分・10分の隙間時間でもよいので、できるだけ毎日行いましょう。
声は息の使い方によって変わります。呼吸をコントロールできるようになると、声にハリと安定感が出てきます。早口でまくし立てるように話す癖がある人は、間を置く練習をしましょう。
発声の練習方法
声量が足りない人は、お腹からしっかり声を出す「腹式呼吸法」を身に付けましょう。腹式呼吸は、息を吐くときにお腹が凹み、息を入れるとお腹が膨らむのが特徴です。この方法をマスターすれば、喉を傷めることなく大きな声が出せるようになります。
滑舌が悪く、ボソボソと話す癖がある人には「母音法」が有効です。以下のように、言葉を母音(あ・い・う・え・お)だけで話す練習方法で、多くの劇団でも取り入れられています。
- おはようございます→おあおうおあいあう
- おやすみなさい→おあういああい
また、閉じた唇に息を当ててブルブルと震わせる「リップロール」は、息のコントロール力を鍛えるのに役立ちます。息を出しても唇が震えない人は、指で左右の口角を軽く押し上げてみましょう。
イベント・会議が始まる前の準備も大切
有能なMCほど、イベントや会議の事前準備を抜かりなく行っています。本番では、緊張で頭が真っ白になる可能性もあるため、以下のような準備はできる限り済ませておきましょう。
- イベントの全体の流れを把握する
- 時間配分を考える
- 参加者・登壇者の名前やプロフィールを確認する
- 取り扱うトピックについて理解を深める
- あいさつや話の内容を考える
- 運営スタッフとのミーティングを実施する
当日は、思いがけないトラブルが起こる可能性があります。万が一を考えて、トラブルの対処方法を運営スタッフと話し合っておくことも重要です。
MCは臨機応変に場を盛り上げられる存在
MCは、台本通りに場の進行を担う司会者と違い、参加者の個性を引き出しながら、臨機応変に場を盛り上げなければなりません。イベントやカンファレンス、会議には欠かせない存在です。
MCになるのに資格は不要ですが、コミュニケーション能力や発声スキルが問われます。スキルは一朝一夕には身に付かないため、日頃から練習を重ねましょう。
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