「ケースワーカー」がどんな仕事をしているのかについては、福祉関係の仕事に就いた経験でもない限り、イメージしにくいのではないでしょうか。なんとなく「相談に乗る人」といった、ざっくりとした認識しかない人も多いかもしれません。ケースワーカーに興味があるなら、具体的な仕事の内容や主な就職先、必要資格などの基礎知識を押さえておきましょう。似ている職業「ソーシャルワーカー」との違いや、平均年収・将来性も併せて解説します。
この記事のポイント
- ケースワーカーとは
- 生活に困っている人の相談に乗り、適切な支援につなげていく仕事です。自治体が設置する福祉事務所の職員を指しますが、その他の公的施設や民間施設の相談員をケースワーカーと呼ぶこともあります。
- ケースワーカーになるには
- 公的施設でケースワーカーになる場合、任用資格と地方公務員試験の合格が条件です。民間施設では「社会福祉士」や「精神保健福祉士」を取得していると有利になります。
- ケースワーカーの職場や年収
- 社会福祉事務所や医療機関などが主な職場で、厚生労働省の統計によると平均年収は約426万円です。
ケースワーカーとは何をする仕事?
ケースワーカーは、どこで、何をする人を指すのでしょうか?ソーシャルワーカーとの違いも確認しておきましょう。
生活における「困りごと」を支援する仕事
ケースワーカーとは、病気や貧困などが原因で生活に困っている人や、その家族から相談を受け、適切な支援を受けられるようにする人のことです。家庭相談員や生活相談員などと呼ばれることもあります。
ケースワーカーの多くは地方公務員です。主に各自治体の福祉事務所に所属し、生活に困っている人の窓口役として、必要な支援は何なのかを考えていきます。
また民間の施設で、同じような役割を担っている人を「ケースワーカー」と呼ぶこともあります。
ソーシャルワーカーとの違い
ケースワーカーと似た言葉にソーシャルワーカーがあります。ソーシャルワーカーは、社会的な支援を行う人の総称です。医療機関や介護施設など福祉関連の施設で、困っている人の相談に乗る職種全般を指しています。
病院で働く人は医療ソーシャルワーカー(MSW)、介護施設なら支援相談員のように、ソーシャルワーカーにはさまざまな職種があります。
ケースワーカーも、ソーシャルワーカーの1種です。福祉事務所で働くソーシャルワーカーのことを、ケースワーカーと呼ぶのが一般的です。
ケースワーカーの具体的な仕事内容
ケースワーカーは、相談窓口以外にも、さまざまな業務を担っています。詳しい仕事内容を知り、ケースワーカーに対する知識を深めましょう。
依頼者と面談して詳しく話を聞く
ケースワーカーの仕事は、まず生活に困っている依頼者と面談し、何に困っているのかを詳しく聞くことから始まります。主な困りごととしては、生活保護の受給・就労相談・不登校などが挙げられます。どこに勤めているかによって、相談内容は変わるでしょう。
生活に困っている人の中には、何が原因で今の状況に陥っているのか、理解できていない人もいます。原因が分からないために、解決方法はもちろん、何を頼ればよいのかも分からない状態にあるといえるでしょう。
そんなときに頼りになるのがケースワーカーです。ケースワーカーと会話を重ねる中で、困りごとの原因は何か、どのような支援を受ければよいのかが明らかになっていくでしょう。
支援内容を判断・手続きのサポート
面談を終えた後は、話の内容から必要な支援内容を判断し、支援開始のための手続きを進めていきます。体調や居住環境など、相談者との対話の中で引き出した数々の情報を基に支援内容を決め、医療機関や介護施設などに連絡して必要な手続きを行います。
手続きの際には、書類の準備や必要事項の記入など、相談者自身にやってもらうことも多くあります。難しい項目について、やり方を分かりやすく説明するのもケースワーカーの仕事です。
家庭訪問を行うケースもあり
相談内容によっては、ケースワーカーは定期的な家庭訪問も行います。家庭訪問の目的は、相談者の生活状況を把握し、より的確な支援につなげることです。現在行っている支援が適切なのかをチェックし、適宜支援内容を調整して、より良い支援の実現を目指します。
家庭訪問が必要なケースの代表例が、生活保護の受給です。生活保護受給世帯に対しては、支援内容の調整や自立への指導のために、年に2回以上の家庭訪問が必要とされています。
訪問頻度は世帯の状況によって異なり、年に6回以上訪問するケースもあります。
出典:厚生労働省「『今後の福祉事務所における生活保護業務の業務負担軽減に関する調査研究』を踏まえた対応について」
ケースワーカーになる方法と必要な資格試験
ケースワーカーになるには、どうすればよいのでしょうか?必要な資格や試験について解説します。
社会福祉主事任用資格
社会福祉法の定めにより、福祉事務所でケースワーカーとして働く場合は「社会福祉主事任用資格」が求められます。
取得するには、大学や短大の社会福祉学系学部や社会学系学部などに通い、厚生労働大臣が指定する社会福祉関連の科目を3科目以上履修した上で卒業する必要があります。
その他、特定の教育機関が実施している通信課程の修了・指定の養成機関を修了・都道府県などで開催される講習会を受講などの方法でも取得可能です。
また社会福祉士や精神保健福祉士などは、それだけで任用資格として認められます。
地方公務員試験に合格する
社会福祉主事任用資格は、公務員として福祉事務所で働く際に効力を発揮するものです。社会福祉事務所や児童相談所などの公的施設で働くケースワーカーになるには、地方公務員試験にも合格しなくてはなりません。
なお地方公務員試験には、年齢制限があります。制限に引っかかってしまうと、いくら熱意や資格があっても、公的施設でケースワーカーとして働くことはできません。
何歳まで受験できるのかは、自治体によって異なります。地方公務員試験の受験を考えている人は、勤めたい自治体の規定を確認しておきましょう。
取得しておくと役立つ資格
必須ではないものの、取得しておくと役立つ資格もあります。社会福祉士や精神保健福祉士などの国家資格は、その代表例です。
公務員として働く際の任用資格になるほか、民間施設の求人に応募する際の条件になっていることも少なくありません。
どちらも難易度は高めですが、取得できれば一気にケースワーカーへの道が開けるでしょう。
出典:[社会福祉士国家試験]資格制度の概要:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
出典:[精神保健福祉士国家試験]資格制度の概要:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
ケースワーカーに向いている人の特徴
どのような仕事にも、向いている人と向いていない人がいます。ケースワーカーの仕事に向いている人の特徴を見ていきましょう。
人と話すことが好き
人と話すことが好きな人は、ケースワーカーにぴったりです。ケースワーカーは相談者の話を聞くことが主な仕事ですから、「自分の話をするよりも人の話を聞いている方が好き」な人には、特に適性があるといえるでしょう。
困りごとを聞き取る際、相談者が言葉にできない感情や思いを察する力も必要です。ただ話を聞くだけではなく、共感力や洞察力を駆使して、相手の悩みに寄り添うことが求められます。
医師やケアマネジャーなどの他職種と連携する機会も多いため、相談者の現状や要望を的確に伝える力もあると、仕事がスムーズに進むでしょう。
感情に流されず客観的な判断ができる
客観的な視点を持っていることも、ケースワーカーには必要です。ケースワーカーは、相談内容を基にどのような支援が最適なのかを的確に判断しなければなりません。
「かわいそう」「大変そう」といった気持ちに流され、主観的に支援内容を考えていては、仕事が進まなくなってしまうでしょう。
相談内容によっては、所属する部署では対応できないケースもあります。そのような場合は、他部署に協力を求めたり、アドバイスをもらったりするなど、素早く判断し実行に移す必要があります。
人の役に立ちたいと思う気持ちがある
ケースワーカーはいわゆる「社会的弱者」と呼ばれる人たちに寄り添う仕事です。このため「困っている人の力になりたい」という思いを持っている人が向いています。
ケースワーカーの仕事に苦労はつきものです。残業が続いて肉体的につらくなることもあれば、ヘビーな相談ばかりで精神的に疲れてしまうこともあるでしょう。
そんなときに心の支えになってくれるのが志です。「困っている人を1人でも多く助けたい」との気持ちがあれば、苦難に直面したときでも挫折せずに仕事に臨めるでしょう。
ケースワーカーとして働く魅力
ケースワーカーは、「人の役に立ちたい」という熱意を持っている人にとって、やりがいのある仕事です。主な魅力を3つ挙げ、詳しく解説します。
仕事を通して社会貢献もできる
ケースワーカーのやりがいとしてまず挙げられるのが、福祉の現場から社会貢献ができる点です。困っている人の相談に乗り、話の内容から適切な支援をあぶり出し、サポートにつないでいく仕事は、社会的な意義が大きいといえます。
地元の病院や福祉施設などさまざまな機関と連携を取りながら、地域の課題を解決に導けることも、ケースワーカーの魅力の1つです。地域福祉の一翼を担っているという実感を持ちながら仕事に向かえるでしょう。
困っている人の役に立てる
困っている人の力になれる点も、ケースワーカーの魅力といえます。相談者と直接話す立場にいるケースワーカーは、人の役に立てる喜びを感じやすいでしょう。
親身になって相談者に寄り添った結果、困りごとを解決できたときには、大きな達成感や充実感を得られます。
相談者から「ありがとう」や「助かったよ」などの言葉をもらった際には、うれしいだけでなく「この仕事に就いてよかった」と感じ、さらにモチベーションが高まるでしょう。
法律・制度の知識を深められる
仕事を通して福祉関係の法律や制度に詳しくなれるメリットもあります。相談者の困りごとに合わせて的確な支援計画を立案するケースワーカーは、老人福祉法や生活保護法などの法律に精通している必要があります。
自分の知識を生かして、相談者に最適な制度を紹介できたときや、支援内容を分かりやすく説明できたときには、大きなやりがいを感じられるでしょう。
法律や制度を理解するにはそれなりの努力が必要ですが、「大変な勉強も無駄ではなかった」と思える瞬間が必ずあるはずです。
ケースワーカーに関するQ&A
ケースワーカーを目指す人にとっては、年収や将来性なども気になるポイントです。ケースワーカーの働き方に関する知識を確認しましょう。
ケースワーカーの主な勤務先は?
ケースワーカーの代表的な勤務先は、自治体の福祉事務所です。福祉事務所では「福祉六法」と呼ばれる法律に基づく業務を担います。各分野の専門家と連携しながら、課題の解決に尽力するのが仕事です。
地方公務員かつ児童福祉司の任用資格があれば、児童相談所で働くこともできます。児童相談所では、18歳までの子どもと保護者を対象に、非行や不登校、育児の悩みなどさまざまな相談に応じます。
その他、病院や保健所などの医療機関や、介護施設などで勤務する人も少なくありません。
出典:福祉事務所 |厚生労働省
ケースワーカーの年収はいくらが平均?
厚生労働省の職業情報提供サイトによると、福祉事務所のケースワーカーの全国平均年収は約426万円です。地方公務員の場合は、各自治体の公務員給与規定に沿うことになります。自治体によって、実際の年収には差があると考えてよいでしょう。
また、社会福祉士や精神保健福祉士の保持者には、資格手当が付く可能性があります。ケースワーカーとして年収アップを目指すのであれば、こうした資格の取得をおすすめします。
出典:福祉事務所ケースワーカー - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
ケースワーカーには将来性がある?
ケースワーカーの将来性は高いとされています。将来性の高さを保証する要素の1つが、社会全体の高齢化です。全人口に占める65歳以上の人口が3割に迫る日本では、今後さらに高齢化が進行するといわれています。
高齢者が多い社会では、病気や障がいによって生活に困難を抱える人が増えると考えられます。苦難に直面する高齢者の話を聞き、的確な支援につなげていくのがケースワーカーの役割です。高齢化が進む日本で、ケースワーカーの存在感が薄れる可能性は低いといえるでしょう。
出典:統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-|総務省
知識を高めてケースワーカーとして働こう
ケースワーカーはソーシャルワーカーの1種で、主に福祉事務所で困りごとの相談に乗る人を指します。民間の施設で、同じ役割を担う職種をケースワーカーと呼ぶこともあります。
いずれにしても「人の役に立っていると実感できる仕事をしたい」と考えている人にとっては、魅力的な仕事といえるでしょう。
公的施設で働くためには、まず地方公務員になる必要があります。所定の任用資格も求められるため、誰でもなれるわけではありません。
民間施設への就職を目指すなら、国内最大級の求人情報一括検索サイト「スタンバイ」で仕事を探すのがおすすめです。検索条件を指定して、自分にぴったりの求人を絞り込めます。
スタンバイを活用して、ケースワーカーへの扉を開きましょう。