建設現場や土木工事現場など、鳶職(とびしょく)はさまざまな場所で活躍しています。これから鳶職への転職を目指す人は、主な職種と適性がある人の特徴を確認しましょう。自分に合った仕事なのか見極めるためにも、あらかじめ把握しておくことをおすすめします。
鳶職とは?具体的な職種と仕事内容
一般的に鳶職とは、建築現場や土木工事現場で高所作業を専門に行う職人の総称で、高い空を飛ぶ鳥の「鳶(とび)」に由来するとされます。鳶職は活躍する分野に応じて、大きく以下の4種類に分類できます。
足場鳶
鳶職の代表的な職種の1つが足場鳶です。足場鳶は、建設現場などで作業員が使用する足場を組み立てる職人で、安全性や作業効率を高めるために欠かせません。主に以下のような現場で活躍します。
- 住宅やビルの建築現場
- マンションの大規模修繕現場
- 住宅リフォーム現場
足場を組むのに必要な材料を調達して現場に搬入し、状況に応じて適切な方法で組み立てるのが主な仕事です。工事が完了した後に行われる足場の解体も、足場鳶が担当します。
鉄骨鳶
マンションやビルをはじめとした大規模な建築物の建設現場において、鉄骨を取り扱うのが鉄骨鳶の仕事です。具体的には、以下のような仕事に携わります。
- 鉄骨の搬入
- クレーンを使用した鉄骨のつり上げ
- ボルトを使用した鉄骨同士の固定
大規模な建築物において、鉄骨は建物の骨組みを構成する重要な材料です。鉄骨の取り扱いに熟達した鉄骨鳶は、安全性が高い建物を建築する上で欠かせない存在といえるでしょう。高い専門性が求められる仕事の1つです。
重量鳶
建物の内部や屋上などの定められた場所に、工作機器やインフラ設備をはじめとした重量物を設置するのが重量鳶です。重量鳶が活躍する現場には、以下のようなものがあります。
- 工場に大型の工作機器を設置する
- ビルの屋上に高置水槽を設置する
- ビルの内部に大規模な電気設備を設置する
どのような現場であっても、図面に従って重量物を正確に運搬・設置しなければなりません。クレーンなどの作業機器を安全かつ正確にコントロールするスキルが求められる、専門性が高い職種です。
橋梁鳶
橋梁鳶は土木現場で活躍する職人で、鉄骨を組んで橋梁や高架橋、鉄塔などを構築するのが主な仕事です。主に以下のような現場で活躍しています。
- 河川橋梁の架橋現場
- 鉄道用高架橋の建設現場
- ダム建設現場
- 歩道橋・陸橋・渡線橋の架橋現場
橋梁の下には河川や湖・道路・鉄道といった、さまざまなものが存在するのが通常です。既存の環境への影響を最小限に抑えながら鉄骨を組まなければならないため、一般的な鉄骨鳶よりも高度なスキルが求められます。
鳶職の1日のスケジュール例
これから鳶職を目指す人に向けて、1日のスケジュール例を紹介します。就職先の企業や現場によっても違いがあるため、1つの例と考えましょう。
午前中のスケジュール
鳶職人の朝は早く、早朝に出勤して必要な準備やミーティングを済ませて現場に向かうのが一般的です。企業によっては、午前6時半~7時半に出勤しなければならないケースもあります。
現場に着いたら作業を開始し、途中で小休憩を挟みながら正午頃まで作業します。午前の作業が一段落したら昼食です。
なお、現場によっては、会社に出勤せず直接現場に向かうスタイルの場合もあります。出勤の流れは企業の方針や担当する現場の状況によって異なるため、一概にはいえません。
午後のスケジュール
昼休みが終わったら、午後の作業がスタートします。一般企業と同様に、午後の作業は13時頃にスタートするのが一般的です。午後の作業でも午前と同様に、途中で小休憩を挟みながら、その日やるべき作業を進めます。
現場によって差があるものの、午後の作業は17~18時に終了するのが一般的です。このあたりも、一般企業と似たようなスケジュールといえるでしょう。作業が終了したら現場を片付け、翌日の打ち合わせをして帰宅します。
鳶職に適性がある人の特徴
鳶職を目指そうと考えているものの、本当に自分に適性があるのか判断できず悩んでいる人もいるでしょう。鳶職に向いているか判断する上でチェックしたい、2つのポイントを紹介します。
十分な体力がある
建設現場や土木工事現場をはじめとして、屋外の現場で1日中作業する仕事であるため、鳶職として活躍するには十分な体力が必要です。鉄骨をはじめとした重量物を運搬する機会も多いため、体力面に問題があると務まりません。
普段からスポーツに取り組んでいる人など、体力に自信があるならこの点は大きな問題にならないでしょう。一方で体力面に不安がある人は、定期的にトレーニングするなどして対策することをおすすめします。
注意力がある
高所で危険性が高い作業に携わるため、事故を防止するために高い注意力が求められます。高所で重量物を運搬する場合、注意力が欠けていると資材の落下や転落・転倒による重大事故につながりかねません。
事故が発生すると、場合によっては重傷を負ったり命を落としたりするため、安全性を確保するために、作業中は周囲の状況に注意を払うことが大切です。
現場には安全を確保する目的で定められたさまざまなルールがあるため、ルールを厳格に守ることも求められます。
鳶職への転職で役立つ資格の例
建築現場・土木工事現場で鳶職として働くために、資格が必須というわけではありませんが、より高度な作業に携わりたいのであれば、一定の資格を取得するのがおすすめです。鳶職としてキャリアアップするのに役立つ3つの資格を解説します。
鳶職の登竜門「とび技能士」
鳶職を対象にした国家資格が「とび技能士」です。とび技能士は1~3級の3段階に分けられており、各級の実技作業試験では以下の内容が問われます。
- 1級: 真づか小屋組の作業・重量物の運搬・重量物の目測
- 2級: 片流れ小屋組の作業・重量物の目測
- 3級: 枠組応用登り桟橋の組み立て
上記のうち、1級・2級の受験資格を得るには、一定の実務経験が必要です。3級の受験には実務経験を求められないため、まずは3級の取得を目指すとよいでしょう。
クレーン作業に必須「玉掛け技能講習」
玉掛け技能講習を終了すると、つり上げ荷重1t以上のクレーンを使用するときに必要な「玉掛け作業」に従事できるようになります。鳶職として働いていると鉄骨のつり上げなどでクレーンを使用する機会が多いため、この資格を取得しておくのがおすすめです。
資格を取得するには、現有している資格・業務経験に応じて、15~19時間の講習を受けなければなりません。具体的な講習日程は講習機関や区分によって異なるため、通えるエリアでどのような講習が行われているか、チェックしてみるとよいでしょう。
足場鳶に必須「足場の組立て等作業主任者」
建設現場などで足場を設置する作業に従事する場合に資格は不要ですが、作業主任として働くには、足場組立て等作業主任者の資格取得が求められます。
労働安全衛生法によって定められているルールのため、資格を取得していない人は作業主任者にはなれません。作業員から作業主任にキャリアアップしたいと考えているなら、足場組立て等作業主任者資格の取得を目指しましょう。
講習を受講するには、状況に応じて2~3年の実務経験が求められます。
鳶職は建設業で活躍する将来有望な専門職
鳶職はさまざまな建設現場・土木工事現場で活躍しており、将来性にも期待できる職種です。多種多様な鳶職があるため、転職を検討している人は自分のスキルや経験を考慮して、適した職を選ぶとミスマッチを防げます。
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