執事は、スケジュール管理や物品管理などにより、クライアントの日常生活をサポートする専門職です。富裕層に仕えることが多いことから、幅広い知識と教養が求められます。執事の仕事内容と求められるスキル、向いている人の特徴を紹介します。
この記事のポイント
- 執事の仕事
- 家事・料理・掃除などの日常生活のサポートに加え、監視・管理業務、代行業務など多岐にわたります。
- 執事に必要なスキル
- 傾聴力を兼ね備えたコミュニケーション能力、細やかな配慮ができるサービス精神、さまざまな要望に応えられる幅広い知識と教養が求められます。
- 執事になる方法
- 高度な技術・知識を得るのであれば専門機関での学習をおすすめしますが、高級ホテルで働きながらバトラーを目指す方法もあります。
【執事とは】どのような仕事?
執事と聞くと、格式高い邸宅に仕える人を思い浮かべるかもしれません。現代における執事は単なる家事代行ではなく、豊富な知識とスキルでクライアントをサポートするサービスのプロフェッショナルへと進化しています。まずは、執事の仕事を見てみましょう。
日常生活のサポート
執事の仕事の中心となるのは、クライアントの日常生活のサポートです。家事・料理・掃除といった家事全般の他、クライアント本人やクライアント家族のスケジュール管理、来客や電話対応なども行います。
日常生活のサポートで特に重要となるのが、食事面のサポートです。執事はクライアントの栄養管理を任されることもあるため、クライアントの要望に合わせて食材を選んだり、栄養バランスを調整したりもします。
パーティーなどでは執事自ら調理することもあり、知識だけでなく技術も必要です。スケジュール管理においては、予定の調整やリマインダー、移動手段の手配などを行い、時間を有効活用できるようサポートします。また、予定の変更や遅れの連絡、手続きも執事の役割です。
監視・管理業務
執事はクライアントの身の安全を守る役割もあるため、不審者の侵入を防ぐ、外出時の安全を確保するなどのセキュリティー面のサポートもします。
目が行き届きにくくなる多勢の人が集まる場所、厳重な注意が求められる場所では、ボディーガードや警備会社と連携します。クライアントをどのように守るか、その時々に合わせた判断・対応も重要な役割です。
この他、金銭や施設の管理業務も執事が担います。金銭管理の主な内容は予算作成や会計処理、財務報告などの財務管理、預貯金・株式などの資産管理です。
資産価値のある物品を持つクライアントに対しては、資産運用のプロと協力して資産維持を手助けすることもあります。施設管理業務では、施設のメンテナンスや修繕の手配をして住環境の維持に貢献します。
代行業務
クライアントの要望に応じて、さまざまな代理業務を行います。代表的な代行業務は、次の5つです。
- ショッピング
- 旅行手配
- 診療予約や入院手配
- 子どもの送り迎え
- ペットの世話
ショッピング代行では、クライアントに代わり日用品や贈答品などを購入します。旅行手配では 航空券やホテルの予約にとどまらず、旅行プランの作成なども行います。
上記に挙げたもの以外にも、手紙の返信や会合への出席、パーティーなどの会場手配・設営・撤収などもあるため、代行業務は多岐にわたるといえるでしょう。
【執事とは】求められるスキルとは
執事には、単なる家事スキルだけでなく、高いコミュニケーション能力やサービス精神、幅広い知識と教養が求められます。
これらのスキルを総合的に備えていることが、プロフェッショナルな執事として活躍するための必要条件です。
コミュニケーション能力
執事はクライアントの他、訪問客などクライアントに関わる大勢の人と接します。そのため、コミュニケーション能力や対人スキルは必要不可欠です。
その中でも大切となるのは、相手の話をよく聞き、要望・ニーズを正確に理解するヒアリング力です。執事はクライアントの要望に応えることが職務のため、話し上手であることよりも、聞き上手であることが求められます。
クライアントの要望に応えるには、他のスタッフや業者との連携も必要です。円滑なコミュニケーションを取ることで、よりスムーズに業務を遂行できます。
そのために必要となるのが、相手に不快感を与えない丁寧な言葉遣いや表現力です。プライバシーに踏み込んだサービスを行う機会も多いため、相手の心に寄り添うコミュニケーションを心がける必要があります。
サービス精神
クライアントをサポートする仕事という面から、高いサービス精神が求められます。要望に応えることはもちろん、より満足してもらうにはどうすればよいか、考えて動ける人ほど執事に向いています。
クライアントと信頼関係を築くには、心地よい環境・快適な生活を提供するための細やかな気遣いが必要です。
飲み物1つにしても、好みの種類を覚えるだけでなく温度にまで配慮することが求められます。期待以上のサービスを提供することで、長期的な関係を構築できるでしょう。
この他、予定外の状況が発生した場合の柔軟な対応力も必要です。ホテルマンや社長秘書に匹敵するサービス精神を持つことが、質の高いサービスへつながります。
幅広い知識と教養
クライアントの多くが富裕層となるため、一般教養に加え社交マナー・語学・ワイン・紅茶・芸術など幅広い知識が求められます。
この中でも執事の歴史と深く関わりのあるものが、ワインと紅茶です。現代執事の基盤となった中世ヨーロッパ時代の執事は、家政管理とワイン管理を主な職務としていました。
ワインの選択や管理、提供は重要な役割となり、現在も食事に合ったワインの選択、スマートな提供などが求められています。
紅茶においても、中世ヨーロッパ時代・ヴィクトリア王朝時代に勢力を広げていた英国の文化が根付いています。茶葉の種類や特徴の違いを把握する他、入れ方や提供の仕方もマスターしなくてはなりません。
近年は、グローバル化により英語を中心とした語学力も必要です。クライアントによってはパソコンなどのITスキル、運転免許の保持なども求められます。
執事になる方法
執事になる方法は、大きく2つあります。1つは専門の機関で知識やスキルを習得する方法、もう1つは高級ホテルでバトラーとして働き、経験を積む方法です。どちらも執事に必要なマナーや知識を習得できますが、所属する先が異なります。
専門の機関で学ぶ
執事になる一般的な方法が、専門機関での学習です。執事の専門学校では、執事としての基礎知識やスキル、マナーなどを体系的に学べます。
料理・お酒・法務・財務、ラグジュアリーブランドなどの幅広い分野の知識に加え、機密保持・法律・英会話・異文化理解などの専門知識を学べる専門機関もあります。
学校への入学が難しいという人には、短期集中講座もおすすめです。認定試験に合格することで、修了書や認定証を受け取れます。執事の専門学校は英国やオランダ、カナダなどの諸外国にもあり、伝統的な執事の技術・思想の学習が可能です。
高級ホテルのバトラーを目指す
バトラーサービスを提供している高級ホテルやクラシックホテルで働き、バトラーを目指す方法もあります。バトラーはホテルに宿泊する顧客に仕える執事を指し、身の回りの世話や客室アレンジ、ショッピングへの同行といったリクエストに応えるのが主な業務です。
宿泊客へのサービスとなることから邸宅での業務はなく、クライアントもその時々で変わります。また、海外から来るゲストへの対応が増えるため、邸宅執事よりも語学力が必要です。
邸宅執事同様、高いサービス力とホスピタリティーが求められるため、ホテル勤務未経験での転職は難しいでしょう。ベルパーソンなどで経験を積み、接客スキルを身に付けてからバトラーを目指すのが堅実的です。
ホテルバトラーに必要な知識や技術は、ホテルに勤める他、ホテル系の専門学校でも学べます。
執事に対するよくある疑問
日常生活で執事を目にするのはテレビドラマやアニメ、漫画となることから、実際の執事の働き方がイメージできないという人もいるでしょう。ここでは、執事の服装や話し方、雇用形態など、働くに当たってのよくある質問を解説します。
執事の服装の決まりは?
執事の服装はクライアントや働く場所によって異なりますが、フォーマルな服装が基本です。スタンダードな服装は男女ともにタキシードで、状況に合わせてロングコートやロングテールコートを着用します。
女性のタキシードはパンツスタイルの他にスカートスタイルもあり、クライアントによってはワンピースを着用することもあります。ヘアスタイルも服装と同じくクライアントによって変わりますが、清潔感が何よりも大切です。
現在のトレンドは男女で異なり、男性がクラシックとモダンを融合した洗練されたヘアスタイル、女性は清潔感と機能性に女性らしさを取り入れたヘアスタイルです。
執事自身の個性を生かしつつも、クライアントの好みに合わせたヘアスタイル・スタイリングが求められます。
執事の話し方は?
執事は、格式高い丁寧な言葉遣いが求められます。尊敬語・謙譲語が正しく扱えることはもちろん、適切な文法を用いているか、相手を不快にさせない言葉を選べているかなど、細かなところまで気を使う必要があります。
富裕層が主なクライアントとなることから、カジュアルな言葉やスラングはご法度です。スラングについては、日本人クライアントだけでなく海外のクライアントへも注意を払う必要があります。
来客対応の際は、言葉遣いだけでなく相手の文化的背景も考慮しなくてはなりません。相手に失礼のないよう、個々に合わせた柔軟な対応を心がけましょう。
執事の雇用はどこから?
執事の雇用主は、主に富裕層・資産家の一般家庭、企業です。雇用形態は一般的な社会人と同じ正社員・契約社員があり、フルタイムもしくはパートタイムで働きます。
企業と契約する場合は正社員や契約社員のどちらかとなり、福利厚生も受けられます。フリーランスは執事自身で雇用主を探し、個人で契約を結ぶ働き方です。個人契約となるため福利厚生は受けられません。
一般家庭が雇用主となる場合は、住み込みで働くこともあります。誰に雇用されるのか、どのような雇用形態となるのかによって、働く環境は大きく変わるでしょう。
執事とは接客サービスのプロフェッショナル
執事は接客サービスのプロフェッショナルとして、クライアントの生活を総合的にサポートします。
高いコミュニケーション能力やサービス精神、幅広い知識と教養が必要となりますが、誰かのために誠心誠意尽くせるやりがいのある仕事です。執事になるには専門の機関で学ぶ方法と、高級ホテルで経験を積む方法があります。
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