言語聴覚士は、聞く・話す・飲み込むなどの動作に障害がある人をサポートする職種です。将来性がある仕事とされていますが、どのような理由があるのでしょうか?現代社会における需要や、今後必要とされるスキルなどを紹介します。
この記事のポイント
- 言語聴覚士の将来性
- 言語聴覚士は人手不足であり、高齢化が進む社会において今後も需要が見込まれる職種です。
- 言語聴覚士は人手不足
- 言語聴覚士の数が少ない理由は、歴史の浅さや受験する人が少ないためだと考えられます。
- 言語聴覚士の勤務先
- 主な勤務先は医療機関の他にも、高齢者福祉施設や教育分野などがあります。
言語聴覚士は将来性が期待できる職種
言語聴覚士は、リハビリ職種の中でも有資格者の数が少なく、供給が足りていない職種だとされています。資格を持っている人の人数や社会の動向などを知り、将来性があるといわれる理由を見ていきましょう。
言語聴覚士は人手不足
言語聴覚士は、理学療法士や作業療法士に比べて人数が少なく、人手不足です。2024年までに、リハビリ職種の国家資格を取得した人の数は以下の通りです。
- 理学療法士:21万3,735人
- 作業療法士:11万3,649人
- 言語聴覚士:4万1,657人
国内最大級の求人情報一括検索サイト「スタンバイ」の求人件数を見ても、リハビリ職種の需要は高いといえます。
全国の言語聴覚士の求人数は、67万1,694件、理学療法士は57万8,761件、作業療法士159万9,825件でした。(※2025年3月6日時点)
出典:統計情報|協会の取り組み|公益社団法人 日本理学療法士協会
出典:一般社団法人日本作業療法士協会「日本作業療法士協会誌 第150号」
出典:会員動向 | 日本言語聴覚士協会について | 一般社団法人 日本言語聴覚士協会
高齢化が進む社会での需要が高まる
内閣府が公表している「令和6年版高齢社会白書」によると、日本の総人口は1億2,435万人、65歳以上の人口は3,623万人です。総人口に占める割合は、29.1%(2023年10月1日時点)となっています。
65歳以上の人口は、今後も増加していく見込みです。人手不足なことに加え、高齢化が進んでいるため、今後言語聴覚士の数が増えたとしても飽和状態になりにくいと考えられます。将来的な必要性は、ますます高まっていくでしょう。
出典:令和6年版高齢社会白書(全体版)(PDF版) - 内閣府
活躍の場が幅広い
言語聴覚士が活躍する場はさまざまです。医療・介護の分野以外に、学校教育や児童関連施設でも需要が見込まれます。また、診療報酬改定や介護保険法が改定され、言語聴覚士が必要な対象が増加傾向です。
2020年度の診療報酬改定により、リハビリテーションに関わる施設基準などの見直しが行われ、呼吸器リハビリテーション料の実施者、難病患者リハビリテーション料の施設基準などに、言語聴覚士が追加されています。
2021年度の介護保険法の改定では、指定通所リハビリテーション事業所に関する算定要件が変更になり、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を必要とする項目が新たに増えました。
言語聴覚士の数が少ない理由
言語聴覚士は需要があるのに、なぜ人数が少ないのか疑問に思う人もいるでしょう。その理由は、言語聴覚士の歴史や養成校の数などが関係しています。以下で、詳しい内容を見ていきましょう。
一般的な認知度が低いから
一般的な認知度が低いことが、言語聴覚士を目指す人が少ない理由の1つになっていると考えられます。
言語聴覚士は、リハビリ職種の中でも歴史が浅い職種です。第1回国家試験が実施されたのは1999年3月なので、まだまだ新しい職種だといえます。
一方、「理学療法士及び作業療法士法」が施行されたのは1965年です。翌年に「第1回理学療法士・作業療法士国家試験」が実施され、日本初の理学療法士が誕生しました。
言語聴覚士とは30年以上の差があるため、認知度が低いのは仕方がない部分もあるといえます。
出典:・理学療法士及び作業療法士法(◆昭和40年06月29日法律第137号)
出典:50年の歴史 | 日本理学療法士協会50周年記念サイト
合格率が低いから
理学療法士や作業療法士などに比べ、言語聴覚士の国家資格合格率は低い傾向です。
【2024年のリハビリ職種の合格者数と合格率】
- 理学療法士:1万1,266人(89.2%)
- 作業療法士:4,822人(84.1%)
- 言語聴覚士:1,761人(72.4%)
言語聴覚士の合格者の数は、毎年1,600〜2,000人程度です。また、養成校の数が少なめなことも、合格者が少ない理由になっていると考えられます。全国の言語聴覚士の養成校の数は、82校(2025年3月時点)です。
理学療法士の養成校は、全国に279校(うち7校は募集停止中)あり、大きな開きがあります。選べる学校の数が少なく、学びにくい点も言語聴覚士の数に影響しているのでしょう。
出典:第59回理学療法士国家試験及び第59回作業療法士国家試験の合格発表について|厚生労働省
出典:第26回言語聴覚士国家試験の合格発表について|厚生労働省
出典:養成校一覧|理学療法士を知る|公益社団法人 日本理学療法士協会
言語聴覚士の需要が高い職場
言語聴覚士の主な職場は病院ですが、それ以外の選択肢もあります。働く場所の特徴を知ると、働き方をイメージしやすくなるでしょう。ここでは、勤務先の種類について解説します。
病院や診療所などの医療機関
病院やクリニックは、言語聴覚士の主な活動場所です。日本言語聴覚士協会会員の約6割が、一般病院・特定機能病院・診療所などに所属しています。
言語聴覚士が勤務する主な診療科は、耳鼻咽喉科・口腔外科・形成外科・リハビリテーション科・小児科などです。
病院やクリニックでは、主に難聴・嚥下障害・言語障害などの患者と接し、話す・飲み込む・聴く・書くなどに関するリハビリテーションを担当します。
出典:会員動向 | 日本言語聴覚士協会について | 一般社団法人 日本言語聴覚士協会
介護施設や高齢者福祉施設など
介護保険施設や居宅サービス事業所などの介護・福祉施設は、医療機関に次いで言語聴覚士が活躍している場所です。施設利用者に対し、言語コミュニケーションや食事訓練などを実施します。
高齢者の生活をサポートする施設にはさまざまな種類があり、同じ入所型の施設でも違いがあります。例えば、介護老人保険施設は、介護を受けながらリハビリテーションをして、自宅に戻れるようにサポートするための施設です。
また、特別養護老人ホームは、介護や生活支援を受けながら長く居住します。食べ物をうまく飲み込めない状態では誤嚥の危険があり、どちらの施設でも利用者が安全に暮らせるように努める必要があります。
児童発達支援や教育分野
言語聴覚士は、特別支援学校や小中学校、高等学校など教育分野でのニーズもあります。子どもの発達を促す療育分野では、言語障害・吃音などに取り組むケースが多いでしょう。
言葉の遅れの有無や、発音がうまくできるかどうかなどを調べ、必要な訓練を行います。聴覚障害を持つ子どもに対し、補聴器の使用や調整に必要なサポートをする役割も求められます。
対象が子どもとなるため、大人を訓練する際とは違った気遣いも必要です。自発的に訓練に参加したくなるような工夫をするなどの環境づくりも、役割に含まれます。
また、訓練の対象となる子どもだけでなく、保護者や教職員との連携も重要です。
言語聴覚士として成功するためのポイント
言語聴覚士は需要がある職種ですが、周囲から信頼を得るために注意したいポイントもあります。どのようなスキルが求められるのか、詳しく見ていきましょう。
専門分野を強化する
言語聴覚士は、「認定言語聴覚士」「呼吸ケア指導士」を取得するなどの方法で専門性を高め、ステップアップすることが可能です。
認定言語聴覚士は、一般社団法人 日本言語聴覚士協会の制度です。認定言語聴覚士になるには、満5年を超える臨床経験や、生涯学習システム専門プログラムを修了するなどの条件をクリアし、認定言語聴覚士講習会の最終日に行われる試験に合格する必要があります。
呼吸ケア指導士は、一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会の認定資格です。呼吸ケアに関する最新の基礎的知識や、臨床的技術を得られます。
いずれも、高度な専門知識や技術を持っている証明に役立つでしょう。
出典:生涯学習プログラムについて | 資格をお持ちの方へ | 一般社団法人 日本言語聴覚士協会
出典:呼吸ケア指導士について:一般社団法人日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
コミュニケーションスキルを磨く
言語聴覚士は、通常の会話が難しい患者の評価や訓練をするので、非言語的なコミュニケーションスキルを必要とします。
時には、表情やしぐさから、言いたいことを読み取らなければならないシーンも出てくるでしょう。患者をサポートするには、観察力を磨き、根気強く意思疎通を図ることが求められます。
また、他の医療従事者と連携してリハビリテーションに当たる際にチームワークを築くためにも、コミュニケーションスキルは欠かせません。
将来性のある言語聴覚士を目指そう
言語聴覚士は、認知度の低さや養成校の少なさなどが原因で、リハビリ職種の中でも人手不足の傾向です。将来性のある職種として、今後の注目度が高まると予想されます。
聴覚や言語によるコミュニケーション、ものを飲み込むなどの動作がスムーズにいかないと、日常生活で不便を強いられます。高齢化が進むにつれ、ますます言語聴覚士の需要は高まっていくでしょう。
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