管理職とは、チーム・組織のマネジメントや目標達成に責任を持つ役職です。一般社員への指揮・監督を任されることから、管理職へのオファーは「企業からの信頼と期待の表れ」ともいえます。とはいえ近年は、「管理職になりたくない」という声が多く聞かれるのが実情です。
管理職になりたくない人が増えた背景にはどのようなことがあるのでしょうか?管理職になりたくない人の割合や、管理職になりたくない理由、さらには管理職へのオファーが来たときの対処法を詳しく紹介します。
この記事のポイント
- ・管理職になりたくない人の割合は約6割
- 厚生労働省の調査によると、一般社員のうち「管理職になりたくない」という人は約6割に上ることが分かりました。管理職だけではなく出世そのものに対して消極的な人も多く、働き方への価値観が変化していることが分かります。
- ・管理職になりたくない人は無理のない働き方を求める傾向が強い
- 特に若い人は、「管理職は個人の時間や精神的な余裕を削ってでも、組織の目標達成にコミットすべき」という価値観に抵抗を覚えがちです。仕事における過度な責任や精神的プレッシャーを嫌忌する人が増えており、全ての人にとって管理職へのオファーが喜ばしいこととは限りません。
- ・管理職をオファーされたら、メリット・デメリットを冷静に判断して対処しよう
- 管理職のメリットは「キャリアパスの拡大」「給与や待遇の向上」などです。一方デメリットとしては「責任の増大」「肉体的・精神的な負担の増大」などが挙げられます。自分のキャリアプランやライフスタイルを鑑みて、オファーを受けるべきかどうかを見極めましょう。
管理職になりたくない人の割合は?

「管理職になりたくない」と考えるのは、日本社会全体で広がっている風潮です。実際のところ、「管理職になりたくない」と考える人はどのくらいいるのでしょうか?日本の労働者のトレンドや傾向を見ていきましょう。
全体では約6割が「なりたくない」
厚生労働省は「平成30年版 労働経済の分析」の中で非役職者を対象に管理職への昇進希望等についての調査を実施しています。調査では、全体の約61.1%が「管理職になりたくない」という意向を示しました。
一般社員の管理職への意欲が低下する傾向は現在も続いており、一時的な現象ではありません。
株式会社パーソル総合研究所が実施した2025年の調査でも、「現在の会社で管理職になりたい」と答えた人は16.7%にとどまりました。管理職への意欲低下は継続的なトレンドであり、日本社会全体で管理職を避けたいと考える人が増えています。
出典:第2-(3)-27図 役職に就いていない職員等における管理職への昇進希望等について|平成30年版 労働経済の分析 -働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について-|厚生労働省
出典:株式会社 パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」
出世自体を望んでいない傾向もあり
「管理職になりたくない」と考える人の多くは、地位や肩書きなどの昇進について重視しない傾向です。
株式会社セルバが社会人300人を対象に実施した調査では、約71%の人が出世を望んでいないことが分かりました。
出世意欲の少なさが、管理職を忌避する傾向に結び付いていると考えられます。
実際のところ、若い社員の多くは従来の「出世=成功」という出世モデルに魅力を感じていません。地位や肩書を得ることが労働のモチベーションに直結しにくく、管理職の選定や育成に苦しむ企業が増えているのが実情です。
管理職になりたくない人が増えた背景

中堅・若手社員の多くが「管理職になりたくない」と考えるのは、社会構造や価値観の変化・働き方の多様化などが関係しています。
管理職になりたくない人が増えた背景を詳しく見ていきましょう。
社会構造・働き方の変化
管理職が魅力的だったのは、終身雇用・年功序列が当たり前だった時代です。管理職への昇進は、昇給や裁量権の拡大・社会的信頼の向上に直結しました。
しかし現在、多くの会社では終身雇用や年功序列が崩壊し、業務のデジタル化が進んでいます。管理職になっても大幅な昇給や裁量権の拡大は期待できず、管理職は単なる「指示・調整役」に過ぎません。
またワークライフバランスが重視される昨今の風潮から、管理職には複雑化するコンプライアンスやリスク管理への理解と知識が求められるようになりました。社員の間では、管理職は「責任だけが重く、報われない」という認識が定着しつつあり、忌避されています。
管理職の魅力が低下したことが「管理職になりたくない」と考える人が増えている要因の1つです。
価値観の多様化と労働人口不足
現代では「働くこと」への価値観が変化しており、仕事よりもプライベートや自己実現を重視する社員が増えています。従来のような「出世=成功」という価値観を持たない人は、管理職になるメリットを感じにくいでしょう。
また少子高齢化が進む日本では、労働人口の不足が深刻です。管理職1人当たりの担当業務や責任の増加に伴い、管理職の心理的・時間的な負担が増える傾向があります。
常に仕事に追われている管理職を間近で見る社員は、「管理職=ブラック労働」というイメージを抱かずにはいられません。将来管理職を打診されたとしても、引き受けるのをためらってしまいます。
管理職になりたくない主な原因

多くの社員が管理職になりたくないと考えるのは、「責任が重い」「適性がない」「割に合わない」などが原因です。
管理職が敬遠される原因について、詳しく紹介します。
責任が重くなる
管理職になると、部下や部署全体の成果に対する責任が重くなります。例えば以下は、管理職に課される責任の一例です。
- 部下の育成・指導
- チームや部門の目標達成
- チームメンバーの労働環境の整備
- 業務の調整・指示
- コンプライアンス・リスク管理
- 人材マネジメントとチームの健康管理など
万が一、目標未達やコンプライアンス違反が発生した場合、トップ層から厳しい追及を受けるのは管理職です。
課される責任の重さから、多くの社員が「管理職になりたくない」と考えます。
自分に適性がないと感じている
実際のところ、管理職として期待される役割を果たすには、実務能力以外のスキルや資質が重要です。
「現場でバリバリ働きたいプレイヤータイプの人」「専門性を突き詰めて業務をこなしたい職人タイプの人」などは、管理職になってもストレスがたまるだけかもしれません。
業種・職種による違いはありますが、日本の管理職には以下のような資質や能力が求められます。
- コミュニケーション能力
- リーダーシップ
- マネジメント力
- 柔軟性と適応力
- ストレス耐性
- 広い視野
- 統率力
- 責任感
- 判断力 など
これまでの経験や自己分析から「管理職への適性がない」と考えている人は、管理職を敬遠する傾向が顕著です。
収入が減ることがあるため割に合わない
管理職への昇進が、必ずしも収入増加につながるとは限りません。実質的に収入が減少する「報酬の逆転現象」が起きることも、多くの人が管理職を敬遠する大きな理由の1つです。
「報酬の逆転現象」が発生するのは、管理職には原則として残業手当が支給されないためです。
労働基準法第41条第2号では、「監督若しくは管理の地位にある者」については労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用除外が定められています。
管理職は条件などにより「管理監督者」と見なされることが多く、「残業代で手取りを増やす」という働き方はできません。残業の多い企業や部署で管理職になった場合、一般社員時代よりも給与が減る人もいるでしょう。
また管理職になって基本給が上がった場合、社会保険料や税負担が増加します。手取りが増えたという実感を得にくく、「割りに合わない」と感じる人が多いのが実情です。
プライベートの時間がなくなる
管理職は、実務とマネジメントをこなすプレイングマネージャーです。
人手不足や業務効率化の遅れにより、管理職が部下の業務を引き受けたり、過重な業務を担ったりするケースは少なくありません。管理職は一般社員と比較して業務の幅と量が大幅に増加することから、長時間労働が常態化しやすくなります。
近年の仕事に対する価値観に照らすと、長時間労働は美徳ではありません。「長時間労働を強いられる管理職=ブラック」というイメージが定着することにより、管理職は特にワークライフバランスを重視する層から忌避される傾向です。
管理職にならない場合のキャリアパス

働き方の自由度が高まっている昨今、管理職以外のキャリアパスを選択することも十分に可能です。
将来のキャリアにおいて、管理職以外の選択肢を紹介します。
スペシャリストとしての地位を確立する
スペシャリストとは、特定の職務や技術・学問分野において、深い専門性と高度なスキルを持つ専門家です。管理職のようにチームや組織をマネジメントするのではなく、自身の専門スキルを最大限に生かして企業に貢献します。
特定の技術や分野のスペシャリストになるメリットは、代替性が低く、市場価値が高いことです。
スペシャリストとして地位を確立できれば、年収アップや長期的なキャリアの安定も難しくはありません。現在はIT・情報処理系の技術職の需要が高く、特に先端技術分野で専門知識を持つ技術者は活躍できる場がさまざまあります。
スペシャリストを目指す人は、専門知識・技術を体系的に習得し、実務に生かすことが大切です。実際のプロジェクトや業務で成果を出し続ければ、唯一無二のスペシャリストとしてキャリアを確立できます。
フリーランスとして独立する
フリーランスとは、特定の組織や企業に属さず、個人で契約を結び仕事を請け負う働き方です。報酬は、成果物や契約条件に基づいて支払われます。
原則として、フリーランスは会社組織内のマネジメントや部下育成などに時間を割く必要はありません。自分の裁量がきく部分が大きく、業務時間や働く場所を柔軟に決められるのが魅力です。
ただし、フリーランスとして安定的に報酬を得るには特定分野での高い専門性やスキル・豊富な実務経験が不可欠です。案件獲得のための営業活動・契約交渉・経理・税務処理・保険手続きなども行う必要があり、高い自己管理能力が求められます。
「管理職が嫌だから」という理由だけで安易に選択すると、管理職とは異なる大変さに苦しむ可能性があります。
管理職になるメリット・デメリット

管理職はネガティブなイメージを持たれがちですが、管理職になることのメリットがあるのも事実です。「管理職は嫌だ」と頭ごなしに拒否するのではなく、まずはメリット・デメリットを適切に理解しましょう。
管理職になるメリット・デメリットについて、詳しく紹介します。
【メリット】キャリアパスが広がる
管理職になると、チーム運営・部下育成・組織方針の立案・他部署との調整など、幅広い仕事に携わります。
経験できる分野・領域が広がることで、将来選択できるキャリアパスが広がるのが魅力です。
このほか管理職になることで、以下のようなメリットを期待できます。
- 自分の判断で業務方針を決めやすくなる
- 給与が上がる
- やりがいや充実感が大きくなる
- マネジメントスキルが身に付く
- 経営者に近い視点を得られる
- 組織横断の仕事に携わることで、広い視野を養える
また管理職でマネジメント経験・組織運営力・リーダーシップなどを獲得すれば、人材としての市場価値が向上します。社内でさらに上を目指しやすくなるのはもちろん、より裁量の大きいポジション・経営層に近い役職への転職も可能です。
【デメリット】人間関係に悩む可能性
管理職はトップ層と現場との間に位置するポジションです。上司から・部下から真逆の要求を突き付けられることもあり、人間関係に苦労するリスクがあります。
このほか以下のような点も、管理職のデメリットです。
- 責任と精神的負担が増える
- 長時間労働によりワークライフバランスが崩れるリスクがある
- 業績や成果へのプレッシャーが強くなる
- 収入と労働時間のバランスが悪くなるリスクがある
管理職のデメリットの多くは、管理職がプレイングマネージャーであることに起因しています。管理職になり自分の業務とマネジメント業務を並行して行えば、業務量や精神的な負担が増えるのは必至です。
一般社員時代よりもワークライフバランスが崩れやすく、たとえ給与が上がっても「割に合わない」と感じる働き方になってしまいます。
管理職へのオファーが来たときの対処法

管理職へのオファーが来たときは「オファーを受ける」「断る」「転職する」という3つの選択肢があります。
それぞれの選択について、詳しく見ていきましょう。
管理職に挑戦してみる
管理職へのオファーは、企業から一定の評価を受けているという証拠です。オファーが以下のポイントを満たしている場合は、前向きに検討しましょう。
- 自分のキャリアプランと一致している
- 待遇と責任が見合っている
- 報酬・待遇が適切である
- やってみたい気持ちがある
管理職を経験することで、組織運営や部門横断の業務を担える「ジェネラリスト」として活躍できる機会が広がります。
「管理職に挑戦したいけれど不安が大きい」という場合は、信頼できる上司に相談するのも1つの方法です。
断るなら明確な理由が必要
管理職のオファーを断る場合は、明確かつ納得感のある理由を伝えましょう。
あいまいな返事や感情的な拒否は、企業との関係悪化につながるリスクがあります。また、あまりにも遠回しな辞退は意向がうまく伝わりにくく、再度管理職を打診されることになるかもしれません。
管理職へのオファーを断る理由としては、以下のようなものがあります。
- 業務の専門性を高めてスペシャリストを目指したい
- 管理職をこなす自信がないため、現在の業務で必要なスキルを身に付けたい
- 健康面に不安があり、重責を担えない
- 育児や介護があり、仕事の負担を抑えたい
管理職人事は、企業の人員配置や組織計画と大きく関係しています。企業側が代替案の検討や人員配置の見直しをスムーズに行えるよう、妥当性のある理由を真摯に伝えることが大切です。
管理職以外で頑張れることを伝える
管理職を辞退するときは、「管理職以外の立場で会社にどのように貢献できるか」を具体的に伝えましょう。
貢献への意欲を伝えるときのポイントは、言葉に具体性を持たせることです。「チームリーダーとしてプロジェクトの進捗をしっかりと管理していきたい」「専門スキルを生かして、売上目標達成に貢献したい」などと伝えれば、信頼関係を維持しつつ自分の価値もアピールできます。
なお管理職へのオファーを断るときは、オファーを受けたことへの感謝を示したり、将来への可能性を示したりすることも大切です。
辞退とともに「このような機会を与えていただき、ありがとうございます」「将来的には管理職の役割にも挑戦したいと考えています」などと伝えれば、企業との関係を円滑に保ちやすくなります。
断り切れないなら転職も一つの手
「管理職へのオファーを断り切れない」「断ると不当な評価を受けるリスクが高い」などの場合は、転職を選択するのも有効です。管理職の責任やプレッシャーがない業務・ポジションを選択することで、より自分らしい働き方を実現できる可能性があります。
転職を選択肢の1つとして検討したい人は、まず自分のキャリア志向や価値観を明確にして「転職の軸」を明確にすることが大切です。自分の価値観や目標に合った企業を見極めやすくなり、転職のミスマッチを減らせます。
「たくさんの求人から自分に合ったものを選びたい」と考える人は、国内最大級の仕事・求人情報一括検索サイト「スタンバイ」がおすすめです。
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管理職になりたくない理由を明確にしよう

管理職になりたくない人の主な理由は「責任や精神的負担・長時間労働を避けたい」「報酬と責任のバランスに納得できない」「適性がなく不安がある」などです。ワークライフバランスを重視する現代の価値観からすると魅力に欠ける部分が多く、管理職にはネガティブなイメージが定着しています。
とはいえ管理職の条件や待遇は、企業によって異なるのが実情です。オファーを受けた場合は頭ごなしに拒否せず、管理職になるメリット・デメリットを冷静に見極めましょう。管理職になることが今後のキャリアにとってプラスであれば、挑戦してみることも大切です。
また「どうしても管理職は嫌だ」という人は、転職を選択する方法もあります。人材の流動性が高まっている昨今、転職は珍しいことではありません。自分の能力を生かして働ける企業・ポジションを探しましょう。