運動指導の現場で活躍できる認定資格として「健康運動実践指導者」があります。この資格を取ると、どのようなメリットがあるのでしょうか?取得方法や費用、難易度などが気になる人もいるでしょう。健康運動実践指導者の概要から試験対策、就職先まで詳しく解説します。
健康運動実践指導者とは
健康運動実践指導者とは、どのような資格なのでしょうか?似た資格「健康運動指導士」との違いを含め、概要を見ていきましょう。
運動指導のための民間資格
健康運動実践指導者は、「公益財団法人 健康・体力づくり事業財団」が認定する民間資格を指します。主な役割は、一般の人への健康づくりのための運動指導です。
フィットネスクラブや公共の運動施設、医療機関などで、それぞれが用意する運動プログラムに基づき指導します。自らプログラムを作成し、指導に当たることもあります。
実際には、健康運動実践指導者資格がなくても指導は可能です。ただし資格を持っていることで、集団への指導技術や参加者の手本となる実技を示す能力があることを、客観的に証明できます。運動指導に携わる機会の多い人には、おすすめの資格といえるでしょう。
出典:健康ネット | 健康運動実践指導者 | 健康運動実践指導者とは
健康運動指導士との違い
健康運動指導士も、健康運動実践指導者と同じく「公益財団法人 健康・体力づくり事業財団」が認定する民間資格です。両者には、役割と求められるスキルに違いがあります。
健康運動指導士の主な役割は、対象者それぞれの心身の状態に応じた運動プログラムの作成と、指導計画の立案です。一方、健康運動実践指導者は、作成されたプログラムに基づき、実際の運動指導を担当します。
例えば生活習慣病予防の運動指導では、健康運動指導士が対象者の状態を評価してプログラムを作成し、健康運動実践指導者がそのプログラムに沿って具体的な指導を実施します。
プログラム作成や計画立案を担う健康運動指導士には、医学や運動生理学、栄養学など、より専門的で幅広い知識が必要です。健康運動実践指導者には、対象者が安全かつ効果的に運動できるよう、分かりやすく説明する力が求められます。
健康運動実践指導者資格の取得方法
健康運動実践指導者になるためには、財団が開催する養成講習会を受講後に、認定試験を受ける必要があります。講習会受講の条件と、資格取得までのプロセス、費用を紹介します。
出典:健康ネット | 健康運動実践指導者 | 健康運動実践指導者養成講習会開催要領・申込
講習会受講の条件
健康運動実践指導者養成講習会には、いくつかの受講条件が設けられています。体育系短期大学や体育専修学校の卒業者(卒業見込みを含む)は、受講資格を持ちます。3年以上の運動指導経験者と、下記の資格保持者も対象です。
- 運動指導に関連する資格(健康運動指導士、アスレティックトレーナーなど)
- 保健医療関連の資格(柔道整復師、理学療法士など)
- 学校教育に関する資格(幼稚園教諭、小・中・高等学校教員免許)
なお、健康運動実践指導者養成校の養成講座を修了した人は、講習会を受講する必要はありません。
資格取得までの流れと費用
養成講習会では、健康づくり施策概論から運動生理学・栄養学・救急処置まで、幅広い分野を学習します。座学だけでなく、ウォーキングや水中運動など、健康づくり運動の実習もあります。
最終日は試験となりますが、欠席などで未修了科目がある人は、受験できません。次回以降に開催される講習会で、未修了科目を補講する必要があります。
講習終了者は指導実技と筆記の両方の試験に合格し、健康運動実践指導者として登録することで、正式な資格保持者として認定されます。
講習会の受講料はテキスト代を含めて税込13万7,500円、認定試験の受験料は税込1万3,619円です。補講や再受験の場合は別途費用がかかります。合格後の初回登録料は税込2万5,300円です。講習会場までの交通費や食費などを含め、約20万円ほど準備しておくとよいでしょう。
資格の有効期限と更新方法
健康運動実践指導者資格は5年間有効です。期間を延長するためには、規定の更新手続きを済ませる必要があります。手続きを忘れたまま有効期限を過ぎると、もう一度試験を受けることになるため注意しましょう。
更新手数料は税込2万2,000円です。また更新には、講義・実習合計10単位以上(うち実習5単位以上)の登録更新講習会の受講が必須です。受講時期は特に決まっておらず、5年の間に受ければよいことになっています。
登録更新申請書に履修証明を添付しなければならないため、直前になって慌てないよう、早めに受講しておくとよいでしょう。
試験内容と合格に向けた対策
講習は開始から修了までに約2カ月かかり、費用の負担も少なくありません。1回の受講・受験で合格するためにも、講習の日程や試験の詳細、効果的な学習方法をチェックしましょう。
講習の内容と注意点
講習は講義が16単位、実習が17単位の合計33単位で構成されています。1単位は90分です。日程は3期に分かれており、各期3日間の計9日間全てに参加する必要があります。期間中は体育館やプールでの実習があることも覚えておきましょう。
受講の受付は、開催日の約2カ月前から始まります。所定の申込書に顔写真を貼り、卒業証明書や資格登録証などの必要書類を添えて郵送する決まりです。受講決定者にはメールで通知が届くので、内容を確認し、受講料及び受験料を納めます。
書類審査には3週間ほどかかるケースもある上に、定員に達した時点で受付が終了します。受講したい会場や日程をよく確認し、早めに申し込むようにしましょう。
試験の内容と難易度
健康運動実践指導者の認定試験は、指導実技と筆記の2つで構成されています。合格率は例年70~80%とされ、しっかり勉強すれば十分に合格を目指せる難易度です。
指導実技試験では、4~5名を相手に運動指導を行います。必須科目として「レジスタンストレーニング」と「有酸素性運動」があり、選択科目として「陸上運動」か「水中運動」のいずれかを選びます。合格のポイントは、分かりやすい見本の提示と、明確な指導ができることです。
筆記試験は、パソコンを使用した多肢選択式です。健康づくり施策や運動生理学、運動指導の心理学基礎などから出題されます。これらは全て講習会で学ぶ内容ですので、テキストを使った事前学習が重要です。
勉強方法と合格のポイント
効率的な試験対策として、講習会で使う教材の活用が挙げられます。特に筆記試験の問題は、講義内容と密接に関連しているため、テキストを繰り返し読み込むことが重要です。
実技試験では、DVDの映像を何度も見ることが推奨されます。正確に再現できるまで、イメージトレーニングを繰り返しましょう。
家族や友人に協力してもらい、模擬指導を行うのも効果的です。実際の試験を想定した環境で練習すれば、本番での緊張も軽減されるでしょう。
インストラクターとして働いている人は、日々の業務が学習のチャンスです。講習で学んだ内容を自分の言葉や動きに変換し、他のスタッフや客に伝えることで、知識の定着が期待できます。
資格を生かせる就職先
健康運動実践指導者の資格を取ると、どのような場所で働けるのでしょうか?具体的な活動の場を見ていきましょう。
スポーツジムなどの運動施設
健康運動実践指導者の主な就職先といえば、スポーツジムやフィットネスクラブ、公的な運動施設などが挙げられます。資格を生かし、インストラクターとして運動プログラムに基づいた指導を担当できます。
指導の予定がないときは、運動器具の整備・点検や受付業務を兼任することもあるでしょう。
スポーツ関連施設におけるインストラクターの求人は多く、知識と技術を証明できる有資格者を募集するケースも少なくありません。雇用契約を結んで働く以外に、フリーランスとして複数の施設と契約するといった働き方もあります。
医療機関
診療所や病院などの医療機関でも、健康運動実践指導者の資格を生かせます。ここでの役割は、患者の状態に合わせた運動指導や、リハビリテーションのサポートです。
医師や看護師、理学療法士などの医療スタッフと連携しながら、患者の回復や健康維持・増進に貢献します。疾病予防から機能回復まで、幅広い分野での指導が可能です。
メタボリックシンドロームのように、運動習慣が重要とされる疾患に対する指導のシーンでも、知識やスキルを発揮できるでしょう。
介護・福祉施設など
介護・福祉施設では、健康づくりやリハビリテーションのために運動を取り入れているケースがあります。体を動かしにくい高齢者や障害のある人にも、安全に指導ができる知識や技術を持つ健康運動実践指導者は、施設にとって頼りになる存在です。
他にも企業の健康経営推進部門や、自治体の健康づくり事業、幼稚園や学校など、活躍の場は広がっています。健康意識の高まりとともに、健康運動実践指導者の需要は着実に増加しているといえます。
年収の目安とキャリアパス
健康運動実践指導者の資格を取ることで、収入やキャリアにどのような影響があるのか、気になる人も多いでしょう。年収の目安や、将来のキャリアアップの可能性について解説します。
年収の目安
健康運動実践指導者は能力を証明する称号であり、職業ではありません。このため年収は、どこでどのように働くかによって変わると考えてよいでしょう。
厚生労働省の職業情報提供サイトによると、2023年のスポーツインストラクターの平均年収は約425万円です。国税庁の発表では、給与所得者の2023年の平均給与は年460万円ですので、やや低いのが現状です。
ただし同じスポーツインストラクターでも、健康運動実践指導者資格を持っていれば、昇給したり資格手当が付いたりして、年収は上がると予想できます。
もし待遇に不満があるなら、より好条件で転職できる可能性も高まるでしょう。指導者として経験や実績を積むことで、収入アップの可能性は十分にあります。
出典:スポーツインストラクター - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
資格取得で得られる具体的なメリット
健康運動実践指導者の資格を取得するメリットは、キャリアの幅が大きく広がることです。専門性を認められることで、パーソナルトレーニングの担当者として指名されたり、特別プログラムの企画・運営を任されたりなど、より重要な業務に携われるようになるでしょう。
これにより、基本給のアップや手当の付与といった収入増加の機会も生まれます。就職先の選択肢も広がり、医療機関・健康増進施設・介護施設など、さまざまな分野で活躍できます。
特に医療との連携が必要な場面では、資格保有者が重宝されるでしょう。もちろん、独立開業を目指す人にとっても資格は大きな強みとなります。個人での健康指導やフィットネス指導の事業展開において、資格保有は信頼性の向上につながります。
資格を生かしたキャリアアップの方向性
健康運動実践指導者の資格を生かしたキャリアアップには、多様な可能性があります。まず、スポーツ施設でのマネジメント職への昇進が考えられます。運動指導の専門知識を持つ人材なら、プログラム開発やスタッフ育成など、より責任ある立場で活躍できるはずです。
健康運動指導士へのステップアップを視野に入れてもよいでしょう。近年はリハビリテーション施設や予防医療の分野で、専門的な知識を持つ指導者の需要が高まっています。
従業員の健康管理や運動指導プログラムの企画立案など、企業の健康促進施策に貢献できる機会も増えています。より高度な運動プログラムを立案し、自ら指導できるようになれば、活動範囲が広がるでしょう。
健康運動実践指導者資格でキャリアアップを
健康運動実践指導者は、健康づくりのための運動指導の知識や技術を証明する資格です。運動プログラムを作成することもありますが、メインは現場での直接指導です。参加者が楽しく、安全に運動できるよう、自らが手本を示しながら指導します。
取得には体育系の学歴や実務経験が必要で、講習受講後に実技・筆記試験に合格しなければなりません。有効期限は5年と決まっており、更新には講習受講と更新料が必要です。
有資格者はスポーツ関連施設での採用優遇が期待できるほか、医療や介護施設、企業など、運動指導を必要とする場で活躍できます。
健康運動実践指導者としてキャリアを広げたい人は、国内最大級の求人情報一括検索サイト「スタンバイ」を利用しましょう。勤務形態や勤務地、キーワードで絞り込み、条件に合う求人を探せます。