ランドオペレーターは、旅行にかかわる職業の1つです。旅行好きな人や、語学力を生かして働きたい人にとっては、関心の高い職業ともいえるでしょう。具体的な仕事内容や取得するべき資格など、ランドオペレーターになるための基本情報を解説します。
ランドオペレーターの役割
ランドオペレーターは、旅行業界において、どこでどのような役割を担っているのでしょうか。まずはランドオペレーターの定義と仕事場所をチェックしましょう。
旅行先での手配を専門とする
ランドオペレーターとは、旅行会社の依頼を受けて、旅行先でのさまざまな手配を専門に行う人や会社のことです。日本では「ツアーオペレーター」とも呼ばれます。
主な業務にはホテルやレストランの予約、ガイドやバス・鉄道などの手配が含まれます。国内外に多くの支店があるような大手を除き、旅行会社は現地に詳しいランドオペレーターに手配を委託するのが一般的です。
宿泊や移動、観光といった旅行プランを滞りなく進めるために、ランドオペレーターは重要な役割を担っています。
海外と国内の2通りの働き方がある
ランドオペレーターの働き方には、大きく分けて2つのパターンがあります。1つは、海外旅行する日本人向けに、外国で働くパターンです。現地の文化や習慣に精通し、日本人旅行者のニーズに合わせたサービスを提供します。
もう1つは、訪日外国人や国内旅行者向けに、日本で働くパターンです。近年はインバウンド観光の増加に伴い、特に訪日外国人向けの需要が高まっています。
どちらも旅行者と観光地をつなぐ架け橋として、重要な役割を果たすことに変わりはありません。
ランドオペレーターの具体的な仕事内容
ランドオペレーターは、旅行者に安全で魅力的な体験を提供するために、さまざまな業務をこなします。主な3つの業務について、具体的に見ていきましょう。
旅行プランの情報提供や企画提案
ランドオペレーターの仕事は、旅行会社からの依頼を受けて始まります。まず打ち合わせをして依頼内容を確認し、実現可能かどうかを調べます。
具体的な調査内容としては、ホテルのクオリティや予約状況の確認、コースの下見、ガイドやドライバーの必要性などが挙げられるでしょう。コースの下見では、電車・バスの運転間隔や道路の渋滞など、実際の所要時間もチェックします。
旅行会社に対し、現地の魅力を最大限に引き出せるプランを代わりに提案することもあります。オプショナルツアーを企画したり、「同じ料金でよりグレードの高いホテルに変える」「季節ならではのイベントを旅程に組み込む」といった代替案を考えたりするのも、ランドオペレーターの役割です。
プラン通りにホテルなどを手配
プランの詳細が決まったら、実際に手配を進めます。手配するものは、ホテルの部屋からレストランの座席・交通手段・イベントやレジャー施設のチケット・ガイドやドライバーなどの現地スタッフまで、多岐に渡ります。
参加人数や旅行代金に見合う内容にするために、相手先と交渉することもあるでしょう。例えば団体旅行では、ホテルの部屋割りやレストランの座席予約が、うまくいかない可能性があります。
そのようなときでもスムーズに手配できるように、日頃から人脈を強化し交渉力を磨いておくのも、仕事のうちです。
旅行中のトラブル対応
ランドオペレーターは現地の責任者として、旅行中に起こるさまざまなトラブルに対応します。どんなに綿密に手配しても、予期せぬトラブルは起こるものです。
例えばホテルの予約ミスや交通機関の遅延が起きたとき、ランドオペレーターは代替案を素早く提示し、旅行への影響を最小限に抑えます。
旅行者が急病になった場合は現地の医療機関と連携し、適切な治療を受けられるよう手配します。自然災害や政情不安などの緊急事態が発生した際の対応も、常に考えておかなくてはなりません。
ランドオペレーターは、旅行者が安心して旅を楽しめるよう、陰ながら支えるポジションといってもよいでしょう。
ランドオペレーターに必要な資格
ランドオペレーターになるために、看護師や弁護士のような特別な資格は必要ありません。ただし旅行関連の資格を取得するほうが、業務に役立ち就職・転職活動も有利に進むでしょう。おすすめの資格を3つ選んで紹介します。
旅行業務取扱管理者
旅行業務取扱管理者は、旅行業法で定められた国家資格です。旅行業者や旅行業者代理業者の営業所ごとに、選任が義務付けられています。主な役割は、旅行の取引条件の説明や業務の管理・監督です。
以下の3種類があり、それぞれ取り扱える旅行の範囲が異なります。
- 総合旅行業務取扱管理者:海外・国内
- 国内旅行業務取扱管理者:国内
- 地域限定旅行業務取扱管理者:主たる営業所所在地の隣接市町村まで
総合及び国内旅行業務取扱管理者試験の実施機関は、一般社団法人日本旅行業協会です。すでに国内旅行業務取扱管理者資格を持っている場合、総合旅行業務取扱管理者試験の一部科目が免除されます。
また地域限定旅行業務取扱管理者試験は、観光庁が実施しています。
出典:旅行業務取扱管理者 | 旅行業法 | 観光政策・制度 | 観光庁
旅行サービス手配業務取扱管理者
旅行サービス手配業務取扱管理者は、ランドオペレーターのためにあるような資格です。2018年の旅行業法改正により、旅行サービス手配業の登録が義務化されました。
登録するには、営業所ごとに旅行業務取扱管理者または旅行サービス手配業務取扱管理者の選任が必要です。なお旅行業務取扱管理者資格を持っている人は、新たに旅行サービス手配業務取扱管理者をする必要はありません。
一般社団法人日本旅行業協会が主催しており、所定の研修受講と修了テストでの一定以上の成績が取得条件となっています。
受講対象は旅行サービス手配業に従事中、または従事予定の人です。オンラインで受講でき実務経験も問われないため、事前に取得しておけば、就職活動で有利になる可能性もあるでしょう。
出典:令和6(2024)年度 第2回旅行サービス手配業務取扱管理者【初回】研修の開催について | 一般社団法人日本旅行業協会
インバウンド実務主任者
インバウンド実務主任者は、訪日外国人観光客向けのビジネスに携わる人材を育成するための資格です。インバウンド市場の急成長に伴い、注目を集めています。
試験では、インバウンドの現状や動向・ビジネス戦略・訪日外国人への対応方法など、幅広い知識が問われます。受験資格に制限はなく、誰でもチャレンジできるのが特徴です。
試験は年に数回、全国の主要都市で実施されており、オンラインでの受験も可能です。この資格は、ホテルや旅館、観光施設など、インバウンド観光にかかわるさまざまな業種で評価されています。
ランドオペレーターとしてのキャリアアップを目指す人にとっても、有利な資格の1つといえるでしょう。外国語検定取得者には加点制度もあるため、語学力を生かしたい人にもおすすめです。
ランドオペレーターに求められるスキルと適性
顧客満足度の高い旅行を実現する、優秀なランドオペレーターになるには、どのようなスキルが求められるのでしょうか。向いている人物像も併せて紹介します。
語学力とコミュニケーション能力
ランドオペレーターには、高度なコミュニケーション能力が求められます。旅行会社との打ち合わせを円滑に進めるためにも、現地での手配においても、情報をしっかりと伝えて相手に理解してもらう必要があるからです。
基本的にコミュニケーションが得意な性格であることはもちろんですが、それ以上に重要なのが語学力です。近年は訪日外国人が増加しており、国内のランドオペレーターも英語力は必須です。
外国で働く場合は、英語だけでなく、その国の言葉もマスターするのが望ましいでしょう。
臨機応変に対応する判断力
旅行会社や旅行者にとって、ランドオペレーターは現地の地理的特徴や文化・歴史に精通した頼れる存在です。特にホテルや交通機関、観光施設など旅行関連の事柄については、最新情報を持っているものと認識しています。
とはいえ、ただ詳しいだけでは、満足する旅を提供できるとは限りません。持っている知識や情報を、顧客のニーズに合わせて柔軟に生かすセンスが求められます。
トラブルに速やかに対処するためにも、臨機応変に対応する力は欠かせません。例えば交通機関のトラブルでホテル到着が大幅に遅れそうなとき、旅行者に赤ちゃんがいたら、おむつやミルクが足りない可能性があります。
このとき、タクシーに優先的に乗車できるようにしてあげたり、近隣の薬局を案内したりすれば、両親は助かるでしょう。
ランドオペレーターに向いている人の特徴
ランドオペレーターに向いている人の特徴は以下の通りです。
- 観光が好き
- 気配りが得意
- 地道な作業が苦にならない
自分が観光を楽しいと思えないようでは、「こうしたらもっと楽しめるはず」といった想像力が働かず、他人に楽しい旅を提案できません。実際の旅行経験が少なくても、見知らぬ土地への興味がある人は、向いているといえるでしょう。
急な予約やキャンセルが入る可能性も少なくないため、常日頃からお世話になっているホテルやレストランの担当者への気配りも大切です。
旅行の成功は緻密な手配にかかっているため、責任感を持ってコツコツと作業できる人も適しています。
ランドオペレーターの年収と求人の現状
ランドオペレーターを目指すなら、おおよその年収や求人市場の現状も気になるポイントです。未経験からのキャリアパスも含めてチェックしましょう。
ランドオペレーターの平均年収
今のところ、ランドオペレーターの年収に関する統計データはありません。求人情報などから、300万〜450万円が平均的な年収と考えられています。
多くの職種と同じく、勤続年数・会社の規模・勤務地域などでも、大きく異なるでしょう。海外の営業所で働く場合、為替レートも影響します。
資格の有無や語学力の高さ、海外在住経験など、個人的な能力が年収に及ぼす影響も小さくありません。実力次第では、年収500万円を超えることも十分可能です。
ランドオペレーターの求人市場
ランドオペレーターの求人市場は、近年のインバウンド需要の増加に伴い、活況を呈しています。多くの旅行会社が新たな旅行商品の開発やツアー催行数の増加を進める一方で、語学力や専門知識を持つ人材は不足しており、志望者にとってはチャンスの時期といえるでしょう。
ただし、旅行手配業者の多くは、旅行会社のように毎年新卒採用するのではなく、欠員が出たときに募集する傾向にあります。求人件数自体がそれほど多いとはいえず、競争は激しいと予想されます。
未経験からランドオペレーターになるためのステップ
未経験からランドオペレーターを目指す場合、まずは旅行業界の基礎知識を身につけることが大切です。旅行業法や専門用語、地理情報などを学び、関連資格を取得するとよいでしょう。
語学力に不安がある人は、英検やTOEICにチャレンジするのもおすすめです。次に、自分の興味関心に合う分野の求人を探します。未経験歓迎の求人も多いので、チャンスは十分にあります。
応募の際は、旅行業界への熱意や語学力をアピールし、自身のスキルをどう生かせるか具体的に説明できるよう準備しましょう。採用後は先輩社員のサポート業務から始め、実務経験を積みながら専門知識やスキルを習得していきます。
ランドオペレーターは現地手配のスペシャリスト
ランドオペレーターは、旅行業界において重要な役割を果たす専門職です。主に旅行会社と現地サービス提供者の間を取り持ち、旅行プランの企画や手配をします。
就職には、旅行業務取扱管理者などの資格取得が武器となるほか、一定の語学力やコミュニケーション能力も求められます。
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