鍵師は、日常生活において鍵のトラブルが発生した際に頼りになる存在です。鍵師として活躍するための道や必要な資格、具体的な仕事内容などを解説します。向いている人の特徴も紹介するので、興味のある人は就職・転職の参考にしてみましょう。
鍵師になるにはどんな方法がある?
鍵師を目指すには、いくつかのルートがあります。まずは、自分のキャリアや現在の環境に応じて、どの道を選ぶべきか検討しましょう。鍵屋で働くだけではなく、セキュリティ関連企業に就職したり、まず専門学校でスキルを磨いたりする道もあります。
鍵屋に就職する
求人誌などを確認して、人材を募集している店舗に応募し就職を目指すのは、鍵師になる最もスタンダードな方法です。現場での経験を通じて、解錠や交換・合鍵の作製といった基本的な技術を習得できます。
さらに、経験豊富な先輩から指導を受けることで、給与をもらいながら効率的にスキルを身に付けられる点も魅力です。鍵屋には、実店舗を運営している事業者や出張専門の事業者、合鍵専門店などもあるので、自分に合ったところに応募してみましょう。
ただし、未経験者を採用している鍵屋は少なく、採用時には熱意や学ぶ意欲をしっかりとアピールする必要があります。
鍵に関わる企業に就職する
サッシや家具メーカー、セキュリティに関わる企業など、鍵に関連する企業に就職するのも選択肢の1つです。
これらの企業では、鍵の設計や製造、販売業務を通じて、鍵に関する専門知識を深められます。特に大手の企業であれば業務範囲が広いため、鍵に関連する幅広い経験を積めるでしょう。
入社後すぐに鍵に関する業務に携われるとは限りませんが、転職時に有利になる可能性もあり、業界について広く学べるのもメリットです。企業での勤務経験を生かして、後に鍵屋として独立開業を目指すことも十分に可能です。
鍵に関わる専門学校に進む
専門学校に進学し、鍵に関する専門知識や技術を事前に身に付けておく方法です。一部の学校では鍵の技術を教えるコースを設けており、基礎から応用まで幅広いスキルを学べます。
また、最新の設備や教材を活用することで、実践的な技術を効率的に習得できる点も魅力です。
就職支援を受けられる学校も多く、専門的な学びを通じて、スムーズに資格の取得を目指せる場合もあります。就職後すぐに実務に生かせる知識や技術を備えられるため、就職・転職の可能性を高めたい人におすすめです。
鍵師に必要な資格
鍵師に関連する資格もいくつかあるので、ここで押さえておきましょう。資格を取得することで、スキルの証明や信頼性の向上につながります。
鍵師の仕事をする上で必須の資格はない
鍵師の仕事を始める上で、法律に定められている必要資格は特にありません。未経験からでも、技術を習得すれば鍵師として活動できます。
ただし、鍵師として働く際には、確かな技術と信頼性が求められるため、現場での経験を積みながらスキルを磨く努力を欠かさないようにしましょう。
たとえ鍵に関連する資格がなくても、関連するトレーニングや講習を受けることで、技術の幅を広げられます。
鍵師を名乗る場合は「鍵師技能検定試験」が必要
上記のように、鍵に関する仕事自体は資格を取得しなくても可能ですが、公に鍵師を名乗るには「鍵師技能検定試験」に合格する必要があります。鍵師技能検定試験は、鍵師としての知識や技術を証明する資格です。
「二級鍵師」「一級鍵師」「マスター鍵師」の区分があり、同試験に合格することで顧客からの信頼感が高まり、仕事の幅が広がりやすくなるでしょう。
試験では鍵の種類や構造、セキュリティに関する知識などが問われるため、事前にきちんと学習して臨む必要があります。
鍵師の具体的な仕事内容
鍵師の仕事は多岐にわたりますが、基本的には解錠や鍵の交換、合鍵の作製といった業務が中心です。具体的な仕事内容を確認しておきましょう。
解錠や鍵交換
解錠作業や古くなった鍵の交換は、鍵師の代表的な業務です。鍵を紛失してしまった場合や、屋内・車内に鍵を残したままロックしてしまった場合などに、持ち主に代わって解錠します。これらの作業は迅速かつ正確に進めなければならず、高い技術が必要です。
さらに、バラエティ番組で見るような金庫の鍵を開けるケースもあります。古い金庫はすでに鍵を紛失してしまっている場合も多いので、構造や仕組みを理解した上で、さまざまなアプローチで解錠を試みる必要があります。
壊れた鍵を交換したり、より防犯性の高い鍵を取り付けたりするのも、鍵師の仕事です。例えば、顧客の自宅にピッキング対策の施された鍵や電子錠、スマートロックなどを設置し、セキュリティレベルの向上を図ります。
合鍵の作製
建物などで使う合鍵の作製も、鍵屋の重要な業務です。1つ1つの鍵の構造を正確に理解した上で、専用の機械を使って作製します。高度な集中力と技術力を必要とする作業です。
なお、合鍵作製を主に行っている店舗の場合、金物の販売や靴の修理など、多岐にわたる業務に対応している鍵屋もあります。さまざまなサービスを提供することで、地域住民の幅広いニーズに応えている鍵屋も少なくありません。
鍵師に向いている人の特徴
鍵師として成功するためには、特定の性格やスキルを持っていると有利になる可能性があります。鍵師に向いていると考えられる特徴を知っておきましょう。手先の器用さはもちろん、高い倫理観が求められる仕事でもあります。
手先が器用・細かい作業が得意
鍵を扱う仕事は繊細な手作業が伴います。鍵開けや合鍵作製など、細かな作業が多いため器用さは必須といえるでしょう。加えて、細かい作業に集中できる人は、鍵師の仕事に向いています。
鍵は種類が豊富で、シンプルな形状のものから非常に複雑なものまで多岐にわたるため、それぞれの仕組みを正確に理解しておかなければなりません。また、調整や修理などの際にはミリ単位の作業が必要な場合もあるため、正確性が求められます。
これらのスキルは経験を積むことで磨かれますが、もともと手先の器用さを持っている人は、技術をより早く習得できる傾向があり有利です。
鍵師としての業務は、1つ1つの作業が顧客の安全や満足度に直結するため、慎重さと器用さを兼ね備えた人に適しているといえます。
倫理観が高く真面目
鍵は個人の安全や財産の保護に直結する存在のため、鍵師には高い倫理観と責任感が必要です。厳しい社内ルールが設けられているケースも多く、スタッフ1人1人にルールの順守が求められます。
例えば、解錠作業の際には、依頼者が正当な権利を持つ人物であることを確認しなければなりません。確認を怠ると、不正行為に加担するリスクが生じるため注意が必要です。また業務上知り得た顧客情報は厳重に管理し、外部に漏らさないことも重要です。
自ら学ぶことができる
鍵の技術やセキュリティは日々進化しています。昔ながらの手で回すタイプのほかに、昨今では電子キーも一般化しているため、最新の技術に対応する必要があります。鍵師には新しい知識を積極的に学び続ける姿勢が欠かせません。
具体的にはピッキングの腕が落ちないように、仕事以外でも練習するといった努力も求められるでしょう。また、防犯性の高い最新の鍵やセキュリティシステムに関する情報を収集し、適切なアプローチを提案できる能力を磨くことも大事です。
人とのコミュニケーションが好き
鍵師は繊細かつ根気のいる仕事であるのに加えて、人と関わることも多い職種です。顧客の要望を聞き出したり、不安な気持ちをなだめたりする場合もあるため、コミュニケーションが得意だと仕事を進めやすくなります。
特に、鍵の紛失といった緊急対応の際には、顧客がパニックに陥っているケースも珍しくありません。落ち着いた口調で状況を説明し、安心感を与えられる人は信頼されやすいでしょう。
鍵師のやりがいと注意点
鍵師の仕事には多くのやりがいや魅力がありますが、注意すべき点もあります。両者をよく理解した上で、本格的に目指すべきか検討しましょう。将来のキャリアを考えて、就職・転職を目指すことが大切です。
【やりがい】顧客から感謝される
トラブルを迅速に解決した結果、顧客から直接感謝の言葉をもらえるのは、プロとして大きなやりがいにつながるでしょう。
特に、鍵を失くした人や急を要する状況にある人からの依頼の場合、鍵が開いた瞬間に心から喜んでもらえることも多く、達成感を得られます。
また、自身の技術向上を実感できたときや、難易度の高い案件を無事に解決できた際に、やりがいを感じる人もいるでしょう。こうした経験は日々の努力の成果を実感でき、自信にもつながります。
【注意点】仕事の量に波がある
他の職種に比べてリピーターが少なく、常に新規顧客の開拓が必要なのは、鍵師の仕事の大変なところです。鍵のトラブルは突発的なケースが多く、仕事量には季節や時間帯によって波があります。
繁忙期には複数の緊急対応をこなさなければならない一方、閑散期には依頼が少なくなる可能性もあるでしょう。そのため、鍵以外のセキュリティ関連の案件もこなしている鍵師も、決して珍しくありません。
案件数に波がある仕事だからこそ、スケジュール管理や計画的な収入確保の工夫が肝要です。
鍵師・鍵職人としてトラブルを解決しよう
鍵師は、鍵に関するトラブルの解決を通じて、多くの人の安全と安心を支える重要な役割を果たしています。
解錠作業や防犯対策の提案など、多岐にわたる業務を通じて、顧客の問題を迅速かつ確実に解決する仕事です。高度な技術と経験はもちろん、迅速な判断力や誠実な対応も求められます。
顧客から直接感謝の言葉を受け取れる点がやりがいにつながる一方で、仕事の量に波があることや、最新技術に対応するための自己研鑽が求められるなど、挑戦も多い職業です。大変な面もありますが、壁を乗り越えることで大きな達成感を得られるでしょう。
これから鍵師を目指すならば、技術の習得はもちろん、信頼されるための人間性も磨く必要があります。スキルを身に付けるため、まずは資格の取得を目指すのも選択肢の1つです。目指すべきキャリアを明確にした上で、自分に合った道を選びましょう。
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