転職を考えているなら、ボーナスをもらうタイミングを考慮することが重要です。適切なタイミングで退職できれば、ボーナスに関する損を抑えて転職できるでしょう。ボーナスの基礎知識や平均支給額、転職時に損をしないためのコツを紹介します。
ボーナスとは
ボーナスとは具体的にどのようなお金のことを指すのでしょうか。まずは、ボーナスの基礎知識を知っておきましょう。
ボーナスの受け取り時期
ボーナスとは、毎月支給される給料とは別に支払われる一時金です。「賞与」や「特別手当」と呼ばれることもあります。
会社は従業員に対し給料を毎月1回以上、決められた期日に支給しなければなりません。一方、ボーナスには支払い義務がなく、回数や時期も会社が自由に決められます。
年1~2回支給する日本型のボーナス制度は、日本独自の慣習です。海外企業や外資系企業では一般的に年俸制を採用しており、あらかじめ決められた年俸を12分割し毎月の給料としていることが多いようです。
ボーナスの種類
ボーナスの代表的な種類には、基本給連動型賞与・業績連動型賞与・決算賞与の3種があります。
基本給連動型賞与とは、「基本給×数カ月分」の計算式で支給額を決めるボーナスです。最も多く採用されています。
企業の業績や従業員の成果と連動して金額を決めるボーナスが業績連動型賞与です。外資系企業によく見られるタイプで、会社にとっては固定費を減らせるメリットがあります。
決算賞与は会社の決算時に支給されるボーナスです。1年間の業績が良ければ、利益の一部が従業員に配分されます。
パートやアルバイトはもらえる?
非正規社員でも、ボーナスをもらえる可能性があります。2021年4月から、全ての企業に「同一労働同一賃金」が適用されているためです。
「パートタイム・有期雇用労働法」および「同一労働同一賃金ガイドライン」では、正社員と非正規社員との間で給料や賞与などの不合理な待遇差を設けることが禁止されています。正社員がボーナスをもらっているなら、会社はパートやアルバイトにもその職務内容を勘案したボーナスを支給しなければならないのです。
ですが、会社によってはパートやアルバイトにボーナスを支給しないルールにしているケースもあります。法律やガイドラインに即した労働条件になっているか、雇用契約書や就業規則で確認することが大切です。
参考:パートタイム・有期雇用労働法が施行されます | 厚生労働省
ボーナスの平均支給額
世の中の働く人たちは、ボーナスをどのくらいもらっているのでしょうか。公的なデータを参考に、年代別と業種別の年間平均額を紹介します。
年代別
厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」を見ると、年代別のボーナスの年間平均支給額が分かります。事業規模が10人以上の企業における20~60歳までの年代別平均支給額は以下の通りです。
20~24歳 | 約38万円 |
25~29歳 | 約67万円 |
30~34歳 | 約80万円 |
35~39歳 | 約94万円 |
40~44歳 | 約104万円 |
45~49歳 | 約113万円 |
50~54 | 約122万円 |
55~59 | 約119万円 |
年齢を重ねるごとに支給額は増えていき、50~54歳が最も多い金額をもらっています。定年退職前の55~59歳でも、平均支給額は2番目に多い金額です。
業種別
専門的・技術的職業 | 約109万円 |
事務 | 約94万円 |
販売 | 約79万円 |
生産工程 | 約72万円 |
建設・採掘 | 約65万円 |
輸送・機械運転 | 約51万円 |
サービス職業 | 約47万円 |
農林漁業 | 約45万円 |
運搬・清掃・包装等 | 約44万円 |
保安職業 | 約36万円 |
専門性が高い業種ではボーナスが多く支給され、単純作業がメインの業種はボーナスが少ないことが分かります。
参考:令和2年賃金構造基本統計調査 表番号2 | 厚生労働省
ボーナスの手取り額はいくらになる?
ボーナスは給料と同様、支給額の全額が手取りにはなりません。ボーナスから社会保険料や税金を控除した後の金額が、実際の手取り額としてもらえることを確認しましょう。
社会保険料や税金が差し引かれる
ボーナスが支給されても、額面の金額を全額もらえるわけではありません。給料と同様に、社会保険料や税金が差し引かれます。
ボーナスから控除される社会保険料の内訳は、厚生年金保険料・健康保険料・雇用保険料です。40歳以上の場合は介護保険料も差し引かれます。
ボーナスから引かれる税金は所得税です。2037年までは、所得税に加えて復興特別所得税も負担する必要があります。
なお、住民税は控除されません。住民税は、12分割した金額が毎月給与天引きされるため、ボーナスは住民税の控除対象にはならないのです。
手取り金額の計算方法
ボーナスから控除される金額は人によって異なります。社会保険料や所得税の金額が、年齢・収入・家族構成などにより変わるためです。
一般的には、額面金額の約2割が社会保険料や税金として差し引かれるため、残りの約8割が手取り金額になります。給料の手取りと同じような考え方です。
例えば、ボーナスの額面が50万円なら手取りは50万円×約80%=約40万円、額面が100万円なら手取りは100万円×約80%=約80万円となります。
ボーナスから社会保険料が引かれないケース
育児休業や産前産後休業を取得した人は、休業を開始した月から休業終了日の翌日を含んだ月の前月まで、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料が免除されます。
従ってボーナスからもこれらの社会保険料は差し引かれません。休業中も支給されている場合は、雇用保険のみボーナスから控除されます。
ボーナス支給月に退職するケースは、退職月の健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料は控除されません。ただし退職日が月末の場合は、退職月の社会保険料は差し引かれます。
ボーナスが支給される時期
一般企業のボーナスはいつごろ支給されるのでしょうか。公務員の支給日と併せて確認しておきましょう。
公務員は支給日が決まっている
公務員のボーナス支給日は、国家公務員が法律、地方公務員は条例で定められています。国家公務員の支給日は6月30日と12月10日の2回です。地方公務員の場合も、国家公務員の支給日と同じか近い日にちが設定されています。
公務員のボーナスに該当するのは期末手当と勤勉手当です。期末手当は、生活費が一時的に増えやすい時期に、生活費を補てんするための補給金として定率で支払われます。
勤勉手当は勤務成績に応じて支払われる手当です。能力給としての意味を持っており、人によって金額が異なります。役職が高くなるほど手当金も増えていくのが基本です。
一般企業は時期や回数が違う
一般企業の場合、ボーナスの支給日や回数は企業によって異なります。夏のボーナスは6月30日~7月10日、冬のボーナスは12月5~25日に支給されることが多いようです。
企業によっては日にちを定めず、月初の第1または第2金曜日としているケースもあります。月末から月初にかけて取引先からの入金が集中し、ボーナス用の資金を用意しやすくなるためです。
ボーナスが年3回支給される企業では夏と冬以外に、資金を集めやすい繁忙期の直後にも支給日を設定するケースが多いでしょう。1回あたりの支給額を低く抑えたい場合も、支給日が年3回になることがあります。
転職時にボーナスで損をしないためには
転職を検討しているなら、今の職場や転職先のボーナスを考慮して時期を決めましょう。転職時にボーナスで損をしないために考えるべきことを解説します。
ボーナス支給後の退職がベスト
ボーナスが出る会社を辞める場合は、ボーナスをもらってから退職届を出すのが賢明です。経営者の判断で支給額を決めている会社では、支給額を減らされかねません。
企業によっては、ボーナス支給前に退職届を出すとボーナスを支給しないことをルール化している場合もあります。一方で、退職届をいつ出しても満額もらえるケースもあるため、雇用契約書や就業規則でルールを確認しておきましょう。
経営者の判断で支給額が変わる場合は、ボーナスをもらうまで辞める雰囲気を出さないことが重要です。退職する気配が伝わってしまうと、退職届を出す前に支給されるボーナスを減らされてしまう恐れがあります。
「もらい逃げ」と思われないためのポイント
ボーナスをもらってから退職するのは、決して悪いことではありません。しかし、周囲に『もらい逃げ』と思われやすいのも事実です。
退職日まで職場の人と気持ち良く過ごせるように、在籍中は残された仕事や引き継ぎを精一杯頑張りましょう。上司や同僚への感謝の気持ちを忘れずに働くことも大切です。
退職の意思を会社に伝える時期にも注意しなければなりません。法律上は退職する14日前までに退職を申し出れば大丈夫ですが、30日前や1カ月前など就業規則で時期が決められているなら、ルールに従って行動するのが無難です。
支給前に辞めたほうがよいケースも
転職のタイミングによっては、現職のボーナスをもらう前に辞めたほうが得をするケースもあります。ボーナスに関するルールが会社により異なるためです。
基本的には、できるだけ早く転職したほうが、転職先での最初のボーナスを多めにもらえるでしょう。転職先のボーナス支給額が現職より多い場合は、現職のボーナスを待たずに転職したほうが得をするかもしれません。
一方、転職先がまだ決まっていない場合は、ボーナスをもらって当面の生活費に充てるという考え方もあります。ボーナスをもらってから辞めることに固執せず、状況を考慮して最適な方法を選択しましょう。
ボーナスを考慮して転職活動を進めよう
転職を検討しているなら、ボーナスをもらってから退職するのがベストです。ただし、次の会社で早く働き始めたほうが、結果的に得をするケースもあります。
転職先のボーナスを調べる際は、手取り額がいくらになるのかを見ることも大切です。現職と転職先のボーナスについてしっかりと考え、適切なタイミングで転職しましょう。
就業規則など社内諸規程作りのプロフェッショナル。人事労務コンサルタント・特定社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー(AFP)。企業人時代を含め通算24年の人事コンサルを経験。一部上場企業から新設企業までを支援。セミナー講師、雑誌・書籍の執筆実績も多数。
All Aboutプロフィールページ
公式サイト