志望動機は、採用面接でよく聞かれる質問の1つです。スムーズに言えるように準備しておかなければなりませんが、どの程度の長さで伝えればいいのか悩む人は多いでしょう。口頭で志望動機を伝える際に適切な長さや、うまく伝えるコツを紹介します。
面接で志望動機を聞かれる理由
面接で志望動機を聞かれる理由が分かっていないと、的外れな内容を話してしまいやすくなります。面接で志望動機を聞かれる理由を見ていきましょう。
働く意欲の高さを知りたいから
面接官は志望動機を通じて、応募者の働く意欲を探りたいと考えています。働く意欲が薄い人を採用しても、すぐに辞めてしまったり入社後の成長を感じにくかったりと、企業にとってメリットがありません。
企業は意欲的に仕事に取り組んでくれる人を求めているので、志望動機を作成する際は『やる気』をアピールすることが重要です。
「お金が欲しいから」「安定した生活がしたいから」といった自分の都合だけでなく、『どんなふうに働きたいか』『入社後に実現したいこと』なども伝えましょう。
自社とのマッチングを見るため
多くの企業は、応募者の仕事の進め方が自社にマッチするかを知りたがっています。同じ業界に属していても、仕事の仕方やその会社における常識や文化は違います。そうした環境の違いなどによって、その人個人としての仕事の進め方が形作られます。
また、応募者のやりたいことや目指しているものが、企業が実現したいものとあまりにもかけ離れていると、採用されにくいでしょう。
企業が従業員に期待している働き方を理解し、どのように貢献していくかを伝えると「この人なら、うちで活躍できそう」と思ってもらえます。
志望動機の適切な長さは?
志望動機は長すぎても短すぎても、評価されにくいといえます。短ければやる気がないと思われ、長すぎれば冗長だと感じられてしまうのです。どのくらいの長さで伝えればいいのか、確認しましょう。
履歴書に書いた内容をベースにする
面接では履歴書に書いた志望動機をベースに、自分の言葉で伝えましょう。書面で提出したものとまったく違った志望動機を述べると、矛盾が生まれてしまいます。
書いたものを丸暗記する必要はありませんが、言うべき内容の要点は同じでなければなりません。覚えられない場合はメモを取っておき、面接の当日までに自分の言葉で伝えられるようにしましょう。
履歴書では記入スペースが限られているので、熱意があっても気持ちの全てを伝えきれません。話に説得力を持たせるためのエピソードや、深掘りされた場合の答えなども用意しておきましょう。
面接で志望動機を伝える長さは1~2分
面接時の状況にもよりますが、志望動機は1~2分の長さで伝えます。面接官から指定がない場合は、1~2分で話し終えるようにしましょう。一言ではあっさりとしすぎてしまい、長すぎると要点をまとめにくくなります。
履歴書に書く志望動機の文字数は、200~300字程度です。その人の話すスピードにも左右されますが、300字をしゃべったときの長さは1分程度とされます。
一般的に1次面接では簡潔に、最終面接ではより具体的に掘り下げた内容を伝える傾向です。段階に応じて、適切な長さで伝えられるように準備しておきましょう。
持ち時間が決まっている場合も
採用面接では、応募者と面接官が1対1の場合もあれば、複数人の応募者を一度に面接する場合もあります。集団面接の際は、1人あたりの持ち時間が少なくなりがちです。
応募者は自分1人だけではないので、あまりにも長々と伝えると周囲に気を使えない人だと判断されてしまいます。
「1分以内で志望動機を述べてください」というように、あらかじめ時間を指定されるのもよくあるケースです。簡潔に志望動機を伝えるバージョンと、やや長めに伝えるバージョンの2種類を想定しておくと、焦らずに対処できるでしょう。
緊張していると早口になりやすい人もいれば、反対に言葉に詰まりやすい人もいるので、実際に声に出して志望動機をしゃべり、時間を計る方法がおすすめです。何度か練習して、長さやしゃべり方を調整しましょう。
志望動機に盛り込む要素
志望動機がうまく書けない人は、まずは盛り込むべき要素を押さえましょう。熱意を伝えるために、どんな内容を書けばいいのか紹介します。
その業界を志す理由
応募する企業が属している業界で働きたい理由を聞かれる機会は、少なくありません。さまざまな職業がある中で、なぜその業界で働きたいと思ったのかを志望動機の中に盛り込みましょう。
その業界を志す理由を伝えるには、業界研究が欠かせません。社会における役割や今後の見通しなどを押さえておくと、話に説得力を持たせやすくなります。
未経験の業種の場合、業界への理解度が不十分でも仕方ありませんが、少し調べれば分かるような内容は理解しておかなければなりません。その業界にとって大きなニュースだけでも、あらかじめチェックしておきましょう。
なぜその企業でなければならないのか
多種多様な求人情報がある中で、なぜその企業を選んだのかも企業側の関心が高いポイントです。自社を選んだ理由からは、『応募者の熱意』が読み取れます。
給与や待遇が良い・家から近いなどの理由以外にも、その企業で働きたいと思った理由があるはずです。応募する企業の特色を探り、志望動機に生かしましょう。業界内でのポジションや経営理念などをチェックすると、その企業の考えが見えてきます。
例えば同じ食品メーカーであっても、地域密着型の企業とグローバルに展開している企業では求める人材が異なる場合が多いので、企業研究は欠かせません。
企業に対しどのように貢献したいか
志望動機には、入社後にどのように働きたいかを盛り込みましょう。企業は応募者が『自分の能力を生かして、どのように貢献してくれるのか』を知りたがっています。
これまでの経験や実績をもとに、何ができるのかを志望動機に加えましょう。壮大な目標を掲げるのではなく、確実にできそうな範囲で真面目にコツコツと頑張りたい気持ちを伝えても構いません。
堅実な人柄を求めている企業であれば、評価の対象となるはずです。長い目で見たときどのように活躍していきたいのかも含めて伝えられると、より明確なビジョンを持って仕事に取り組んでくれそうだと思ってもらえるでしょう。
面接で志望動機をうまく伝えるコツ
志望動機をうまく伝える方法が分かっていれば、採用される確率がアップします。志望動機を伝える際に、押さえておきたいコツを見ていきましょう。
結論から話し始める
志望動機を最後まで聞かないと何が言いたいのか分からないようでは、面接官の心に強く訴えかけられません。なぜその仕事を志望しているのかを、冒頭で話すようにしましょう。
私が御社を志望する理由は○○です。なぜなら、○○だからですというように話し始めれば、最も重要なポイントを最初に伝えられます。
最後まで結論が出ないと、「いつまで聞いていれば本題に入るんだろう」と相手に思われ、回りくどい印象を与えてしまうでしょう。結論を最初に持ってきて、内容を補足する構成にした方が、言いたいことをスムーズに理解してもらえます。
聞き取りやすいスピードで話す
どんなに素晴らしい志望動機でも、早口すぎて何を言っているのか分からなければ、意味がありません。一気にまくし立てるように話すより、丁寧に話した方が分かりやすいと感じる人が少なくありません。
緊張していると焦ってしまいがちですが、相手が理解できるように気を使いながら話しましょう。『ハキハキとした明るい口調』で話せる人は、それだけで印象が良くなります。接客業を志望する場合は、特に重要なポイントです。
曖昧な表現は避け具体的に話す
志望動機を伝える際に「自信はありませんが」「できるか分かりませんが」などの前置きをしたくなる場合もありますが、曖昧な表現をすると良い印象を与えません。
できるだけ確実な内容を、率直に伝えましょう。また、志望動機をより具体的に伝えようと思うあまり、たくさんのエピソードを盛り込みたくなりますが、多すぎるとそれぞれの印象が薄くなります。
「結局、何が重要な話だったのか分からない」と思われないように、あれもこれもと話すのではなく、重要だと思われるものに絞りましょう。
【長さ別】志望動機の例文
志望動機に盛り込む要素やうまく伝えるコツを確認したところで、ここまでにチェックしてきたポイントを踏まえて、志望動機の例文を長さ別に見ていきましょう。
1分以内でまとめる場合
1分以内で志望動機をまとめるには、結論から話し始め内容をできるだけコンパクトにする必要があります。志望の理由から、その企業で働く姿をイメージさせる方向につなげましょう。
【例文】
御社は『感謝の気持ちを忘れないこと』を経営理念に掲げており、私が人生において重要だと思っていることと一致していたので志望しました。
私はこれまで、倉庫での軽作業や配送補助などのアルバイトを経験する中で運送業界に出会い、物や人の流れを扱う仕事に興味を持ちました。
未経験でも温かい指導をしてくれた職場の先輩方や同僚に対し、今でも感謝の気持ちを持ち続けています。今の自分があるのは周囲の人のおかげだと感じる機会が多く、自分も人から感謝されるような働き方をしたいと考えています。
ドライバーの仕事は人と接する機会がそれほど多くはありませんが、誰も見ていない場所でも、荷物を待ってくれている人の気持ちを大事にしながら仕事をしていきたいです。
2分程度でまとめる場合
2分程度の時間があれば、より掘り下げた内容を伝えられます。『仕事への思い入れの強さ』や『自分の能力を印象づけられるエピソード』などを、積極的にアピールしましょう。
【例文】
私が御社を志望する理由は、御社がおいしさや新鮮さだけでなく、口にする人の健康を考えている点に共感したからです。消費者にとって、より付加価値が高い製品が求められている、時代のニーズに合った考え方だと感じます。
食品製造業を志す理由は、食品は市民にとって命綱であり、暮らしに欠かせないものだからです。私が希望する品質管理の仕事は、安全な食品を届けるためになくてはならないものであり、大きなやりがいがある点にも魅力を感じています。
私の強みは責任感が強く、自己管理能力に自信を持っている点です。これまで、スムーズに仕事をするために必要だと感じた点は、改善するように努めてきました。
例えば前職では、余計な工程を省いてより迅速に梱包ができるように工夫し、残業時間を50%以上短縮した実績があります。この方法をほかの従業員と共有し、部署全体の残業時間を減らしました。
効率的に仕事ができるようになったことで精神的な余裕が生まれ、チームワークも向上しました。この強みを生かし、不良品を出さないようにするために必要な改善点を見つけ、御社の製品に対する消費者からの信頼度をより高めていきたいです。
限られた時間で熱意を伝えよう
面接で志望動機を伝える時間の長さは1~2分が目安です。短すぎる場合は内容を掘り下げ、長すぎる場合は必要な要素だけを加える方法をおすすめします。
なぜその企業・業界でなければならないのかという点や、入社後に何ができるのかなどは重要視される部分です。はっきりとした内容を話せるようにしておくと、限られた時間の中でも十分に熱意が伝わります。
企業は応募者が自社に利益をもたらしてくれる人物であるかを知りたがっているので、あまり難しく考えすぎず、自分がどのように貢献できるのかを伝えるようにしましょう。
若者の就職支援を専門とするキャリアカウンセラー。アメリカの大学を卒業後、アクセンチュアを経てリクルートに入社し100社以上の新卒・中途採用のコンサルティングを経験。独立後は採用と就職活動の双方を知る「若者就職支援のプロ」として官公庁や人材企業の若年就労支援プロジェクトに携わる。全国の大学で教員やキャリアカウンセラー向けの研修を行うなど、若者支援者の養成にも力を入れている。
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著書:
美文字履歴書の書き方&マナー