試用期間とは?設定する目的や期間、解雇される条件についても解説

企業から内定をもらったはよいものの、試用期間についてさまざまな疑問が生じている人もいるのではないでしょうか?待遇や解雇のリスクを理解しておけば、安心して転職できるでしょう。試用期間の目的や待遇、解雇される条件について解説します。

そもそも試用期間って何?

社員のイメージ

(出典) photo-ac.com

入社後に設けられる試用期間には、どのような目的があるのでしょうか?試用期間の意味や、研修期間との違いについて解説します。

本採用前に試験的に雇用する期間

試用期間とは、試験的な雇用を目的として、入社直後から本採用までの間に設けられる期間です。

試用期間は、雇用形態を問わず適用することが可能です。正社員だけでなく、契約社員・パート・アルバイトとして入社するケースでも、試用期間を設けられる場合があります。

また試用期間後に、雇用形態が変更されることはありません。試用期間は、あくまでも1つの雇用契約における最初の一定期間に過ぎず、「試用期間中は契約社員で、本採用後は正社員に切り替わる」といった内容での雇用契約を結ぶことは不可能です。

試用期間を設定する目的

試用期間は、採用後の従業員について、企業がさまざまな観点からチェックを行うために設けられます。能力・適性を見ることや、企業との相性を確認することが、試用期間を設ける最大の目的です。

応募書類を見たり面接を行ったりするだけでは、応募者のスキル・人柄をきちんと判断するのは困難です。特に、既存従業員や担当業務との相性が合うかどうかは、実際に働いてもらわなければ分かりません。

試用期間中に従業員の仕事ぶりや振る舞いを見ることで、企業は本採用しても問題ないかを判断できます。

従業員側にとっても、自分と会社との相性を実際に肌で確認することが可能です。結果的にミスマッチを減らせることが、試用期間を設けるメリットです。

研修期間との違い

試用期間と混同しやすい言葉に、研修期間があります。研修期間も試用期間と同様、入社後に一定期間が設けられるため、違いがよく分からない人もいるでしょう。

研修期間とは、通常業務をスムーズにこなすための知識・スキルを習得する期間のことです。最低限のビジネスマナーを学習したり、業務に必要な専門性の高いスキルを身に付けたりします。

研修期間には、従業員の能力・人柄を見る目的はありません。あくまでも、入社後の教育を目的として設定される期間です。企業によっては、試用期間と研修期間が重なるケースもあるでしょう。

試用期間は何カ月?

スケジュール帳に記録する女性

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一般的な試用期間の長さについて解説します。状況によっては、期間の延長を求められる場合があることも覚えておきましょう。

試用期間の長さは法律上の決まりはない

試用期間の長さは、企業により異なります。法律でルールが決まっているわけではないため、企業が自由に長さを決められるのです。

ただし、1年以上の試用期間を設けるのは適切ではないとされています。試用期間中の従業員は身分が不安定な状態であり、いつまでも本採用されない状況は従業員への配慮が足りないとみなされるためです。

また、業務の性質の違いを考慮し、雇用形態により試用期間の長さが変わる可能性があることも覚えておきましょう。例えば、正社員の試用期間が3カ月なら、契約社員・アルバイトはより短い1カ月程度に設定されるのが一般的です。

一般的な試用期間は3カ月

試用期間の一般的な長さは3カ月で、企業によっては試用期間を6カ月にしているケースもあります。

「独立行政法人 労働政策研究・研修機構」の調査結果を見ると、新卒・中途採用別の正規従業員の試用期間が分かります。中途採用の場合、試用期間「3カ月程度」が全体の65.7%で最も多く、次いで多いのが「6カ月程度」の16.5%です。

試用期間を3カ月にしている企業が多いのは、助成金制度「トライアル雇用」の影響が大きいと考えられます。トライアル雇用とは、一定の条件を満たした労働者を3カ月間試行雇用した場合、企業が助成金をもらえる制度です。

参考:従業員の採用と退職に関する実態調査 P15 | 独立行政法人 労働政策研究・研修機構

試用期間の延長はお互いの合意があれば可能

状況によっては、企業側が試用期間の延長を申し出てくることもあります。企業と従業員がお互いに合意すれば、基本的には試用期間の延長が可能です。

採用後の従業員が病気・ケガなどで長期間休んだ場合は、勤務状況の判断ができないため、延長を求められることがあるでしょう。

従業員の勤務態度に問題があるものの、解雇するほどではないケースでも、企業が試用期間の延長を提案する可能性があります。

試用期間の延長は、合理的かつ客観的な理由がある場合のみ可能です。ただし、試用期間を延長できる旨が就業規則に記載されている場合は、就業規則で決められている範囲で延長できるようになっています。

試用期間中の待遇は?

パソコンを前に資料を見ながら作業をする手元

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試用期間の目的を考えると、待遇は本採用より低くなるのではないかと思う人もいるのではないでしょうか?試用期間中の待遇はどうなるのかを解説します。

就労条件は企業により異なる

試用期間について法律で特にルールが定められていない以上、待遇に関しても企業が自由に決められます。

試用期間中は、本採用後の給与より低めに設定することも可能です。ただし、給与を下げる場合は、原則として地域の最低賃金以上に設定する必要があります。

また、試用期間の待遇を低くする場合は、入社後のトラブルを防ぐためにも、募集要項にその旨を記載することが求められます。試用期間があることが内定後に分かった場合は、募集要項を見て就労条件を確認してみるとよいでしょう。

ボーナスがもらえるかは企業による

試用期間中にボーナスがもらえるかどうかは、企業により異なります。そもそもボーナスは、法律で支払い義務が定められているわけではありません。支払うかどうかは企業が自由に決めることが可能です。

ボーナスがもらえるかは、試用期間がボーナスの査定期間に含まれるかどうかによります。試用期間を査定期間に含めないルールになっていれば、ボーナスは「減額」または「なし」です。

また、試用期間であることのみを理由に、ボーナスを支給しない場合もあるでしょう。いずれにしても、試用期間中にボーナスを満額もらえるケースはあまりありません。

年次有給休暇の基準日は入社日から計算

試用期間と年次有給休暇の関係は、どのようになっているのでしょうか?まずは、労働基準法で定められている「年次有給休暇の取得条件」をおさらいしておきましょう。

  • 6カ月間の継続勤務
  • 全労働日の8割以上の出勤

「6カ月間の継続勤務」に、試用期間も含まれています。試用期間中も従業員として働いているとみなされるため、年次有給休暇の基準日は試用期間が始まる入社日から計算できるルールです。

また、「全労働日の8割以上の出勤」の条件に関しても、試用期間を含めた期間で割合を算出できます。

結論としては、試用期間が設けられていても、年次有給休暇は入社日からのカウントで考えることが可能です。

参考:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省

試用期間中に解雇されることはある?

解雇予告通知書

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試用期間は、採用後の従業員を見定めるための期間です。入社後に何らかの問題があった場合は、解雇されてしまうのでしょうか?

試用期間中でも理由なく解雇はできない

労働契約を締結した従業員は、相応の理由がない限り、企業側から簡単には解雇できません。

試用期間中は、「解約権留保付労働契約」とされています。いつでも解雇できる権利を、企業がとりあえず保留している状態といえるでしょう。

しかし、試用期間中であっても、労働契約は結ばれている状態です。労働契約法第16条により、漠然とした理由では、従業員を一方的かつ簡単には解雇できないのです。

参考:労働契約法 | e-Gov法令検索

解雇が認められる具体的なケース

原則として試用期間中に解雇はされないものの、場合によっては解雇が認められることもあります。具体的なケースを確認しましょう。

  • 担当業務を遂行する能力を著しく有していない
  • 応募書類や面接で聞いていたスキルを実際には持っていない
  • 職歴や学歴に重大な虚偽があった
  • 「遅刻・早退が多い」「協調性がない」など勤務態度に著しい問題がある

企業が本採用を拒否する場合は、「解雇の前に指導や注意などの企業努力が行われていたか」がポイントになります。企業が努力したのにもかかわらず、改善が見られない場合は、解雇の客観性を認められる可能性があるでしょう。

そのため、1・2回の遅刻や早退で何も指導や注意がなければ、解雇が認められる可能性は低いといえます。

また、特定の免許や資格がなければ業務を務められない職種で、実際は該当の免許や資格を持っていないケースも解雇が認められる可能性があります。

「資格や免許を持っていないことが内定の前に分かっていたなら採用しなかった」というような重大な虚偽申告があった場合は、解雇の客観性が認められるかもしれません。

参考:労働基準法 | e-Gov法令検索

試用期間についてのよくある疑問

疑問を覚える女性

(出典) photo-ac.com

試用期間中は、いつから社会保険に加入できるのでしょうか?試用期間中の退職が可能かどうかについても解説します。

いつから社会保険に入れる?

試用期間中は労働契約が結ばれるため、健康保険・厚生年金保険といった社会保険にも入社時に加入できます。雇用保険・労災保険についても同様です。

これらの保険への加入は企業側が勝手に決められるものではなく、従業員が加入条件を満たしているなら、企業は必ず加入させなければなりません。

試用期間中に各種保険への加入を認められない場合は、会社に相談してみましょう。相談後も改善されないようなら、労働基準監督署やハローワークに相談してみるのがおすすめです。

試用期間中の退職は可能?

民法によると、原則として退職希望日の「2週間前」までに退職の意思を伝えれば、退職できるとされています。試用期間中であっても、この条文を適用することは可能です。

ただし、企業によっては「退職を希望する場合は、希望日の1カ月前までに申告すること」と就業規則に書かれているケースもあります。

就業規則より法律の方が優先されるものの、円満に退職したいならできるだけ企業のルールに従いましょう。相談すれば、即日で辞めさせてもらえる可能性もあります。

参考:民法 | e-Gov法令検索

試用期間中でも待遇に差はない!

デスクワークのイメージ

(出典) photo-ac.com

試用期間とは、本採用前に企業が従業員を見定めるための期間です。一般的な試用期間の長さは、3カ月に設定されています。場合によっては、企業から延長の申し出を受けることもあるでしょう。

試用期間中の就労条件は、企業により異なります。妥当な理由もなく、試用期間中に解雇されることはありません。

試用期間についてきちんと理解し、気になる点があるなら内定をもらった企業に聞いてみましょう。