失業中に雇用保険をもらっている場合、再就職が決まったら採用証明書をハローワークへ提出しなければなりません。スムーズに手続きを進めるためには、提出までの流れを理解しておくことが重要です。採用証明書の記入・提出方法や注意点について解説します。
採用証明書が必要な理由
採用証明書とは、雇用保険の受給中に再就職が決まったときに必要となる書類です。採用証明書の提出を求められる理由について解説します。
雇用保険の受給を停止するため
失業中に一定の条件を満たせば、雇用保険(いわゆる失業保険)を受給できます。雇用保険は、次の仕事が見つかるまでの生活をサポートすることが目的の1つです。
そのため、雇用保険の受給中に再就職が決まった場合は、受給を止める必要があります。雇用保険の受給を停止する手続きで必要になる書類が採用証明書です。
原則として再就職先で働き始める前日までに、受給停止手続きを済ませておかなければなりません。受給停止の手続きでは、採用証明書以外に雇用保険受給資格者証と失業認定申告書も提出します。
再就職手当の申請をするため
失業中に一定の条件を満たした場合、再就職手当をもらえるケースがあります。再就職手当の主な受給条件は以下の通りです。
- 雇用保険の給付日数が1/3以上残っている
- 待期期間満了後に再就職した
- 再就職先で1年以上働く予定がある
- 再就職手当を過去3年以内にもらっていない
- 以前勤めていた会社と再就職先との間につながりがない
再就職の時期が早いほど、受け取れる手当の金額も大きくなります。再就職後に一定の条件を満たせば、就業促進定着手当も受給できます。
再就職手当を受け取るためには採用証明書・再就職手当支給申請書・雇用保険受給資格者証の提出も求められます。
採用証明書を提出する流れ
採用証明書を初めて扱う人のために、提出するまでの具体的な手続きの流れを解説します。再就職先に記入を依頼しなければならない上、提出期限も決まっています。手続きの流れを頭に入れて、スムーズに行動しましょう。
ハローワークに再就職を報告
雇用保険の受給中に再就職が決まったら、まずはハローワークに報告します。管轄のハローワークに電話で連絡するだけで構いません。
再就職を報告しても雇用保険の受給は続きます。正式な手続きを行わない限り、雇用保険の支給が止まることはないため、内定をもらえたら、まずは早めにハローワークへ連絡を入れましょう。
採用証明書の原本を入手
ハローワークに再就職を報告したら、次に採用証明書の原本を準備します。雇用保険の受給申請時にハローワークから渡される「受給資格者のしおり」に、採用証明書が同封されています。
採用証明書を紛失してしまった場合は、ハローワークのホームページからダウンロードできるので、印刷し原本として使いましょう。
採用証明書の様式は自治体ごとに異なる場合があるので、できるだけ管轄のハローワークからダウンロードします。他のハローワークから入手する場合は、自分の住む市区町村で使用されている様式と同じかどうかを確認しましょう。
受給資格者のしおりを紛失していたり、ホームページからダウンロードできなかったりした人は、最寄りのハローワークに足を運べば入手できます。
記入した採用証明書を提出
採用証明書の必要事項の大半は、再就職先に記入してもらう必要があります。記入が済んだら、失業認定申告書と雇用保険受給資格者証も一緒にハローワークに提出します。書類に不備があると受理されないため、忘れずに準備しておきましょう。
どうしてもハローワークへ足を運ぶ時間が確保できない場合は、郵送での提出も可能とされているところもあります。郵送でもよいと確認できたら、必要書類一式を同封し、管轄のハローワーク宛てに郵送します。
採用証明書の提出期限はいつまで?
採用証明書は、原則として就職日の前日までに提出しなければなりません。提出した書類一式が受理されたタイミングで、雇用保険の受給がストップします。
雇用保険を期日ぎりぎりまで受け取りたいなら、就職日の前日に提出する必要があります。ただし、就職日の前日は何かと忙しくなる可能性があるため、できるだけ余裕を持って提出するのがおすすめです。
書類を郵送する場合は、郵送にかかる日数も考慮しなければなりません。再就職先が迅速に対応できないケースも想定し、計画を立てて、できるだけ早めに行動しましょう。
採用証明書を記入してもらうポイント
採用証明書は自分1人で記入して完結する書類ではありません。大半の項目は再就職先に記入してもらう必要があるため、時間に余裕を持って行動することが大切です。
返送希望日を明確に伝える
再就職先に採用証明書の記入を依頼する際は、返送してもらいたい日を明確に伝えましょう。企業側も慣れているとスムーズに対応してもらえますが、全ての企業がそうとも限りません。
また、採用証明書には社印を押す欄があり、企業によっては社印が押されるまでに時間を要するケースもあります。返送希望日を伝えなかった場合、返送されるまで1週間は見ておく必要があるでしょう。
そのため、書類のやりとりに関するスケジュールは、内定をもらったときに決めておくのがおすすめです。どのような流れで対応してもらえるのか、いつ頃までに返送できるかなどを確認しておけば、ハローワークへの提出までの流れを捉えやすくなります。
記入漏れがないか確認する
ハローワークに提出する書類に不備があると、手続きが遅れてしまいます。再就職先から採用証明書が返送されたら、記入漏れがないか提出前に確認しなければなりません。
万が一、記入漏れを見つけた場合は、再就職先に再度記入をお願いすることになります。書類に不備があるリスクも考慮し、時間に余裕を持って行動することが重要です。
雇用保険の受給を止める手続きでは、再就職先との連携が不可欠になるため、まだ入社していない相手とのやりとりで遠慮がちになってしまうこともあるでしょう。
しかし、手続きをきちんと進めることは、自分の信用を高めることにもつながります。決してマイナスな印象を与えることはないため、遠慮せずに迅速な手続きを目指しましょう。。
採用証明書を記入する際の注意点
採用証明書の必要事項で間違いやすい点について解説します。事前にポイントを押さえておけば、手続きをよりスムーズに進めることが可能です。
支給番号は自分で記入する
採用証明書には支給番号という項目があります。支給番号とは、雇用保険受給資格者証に記載されている番号のことです。
雇用保険受給資格者証は、求職者がハローワークから受け取る書類であり、企業は書類の中身を確認できません。支給番号も求職者本人しか分からないため、採用証明書の支給番号欄は自分で記入する必要があります。
再就職先に書類の記入を依頼する前に、雇用保険受給資格者証を見ながら、支給番号のみ書いておきましょう。支給番号以外の項目は、基本的に企業側が記入するので空欄のままで問題ありません。
雇入年月日は在籍の初日を記入
再就職先が記入する項目のうち、間違えやすい項目が雇入年月日です。出勤日や出勤予定日ではなく、再就職先に在籍となる初日を記入しなければなりません。
例えば、年明けの1月4日から働き始める場合も、1月1日から雇用が開始するなら、雇入年月日は1月1日です。雇用初日に欠勤するケースや、試用期間・アルバイトを経て正社員になるケースでも、雇入年月日には在籍初日を書く必要があります。
雇入年月日は、企業側が記入する部分ですが「慣れているだろう」と思い、丸投げするのではなく、依頼時にひと言伝えたり、確認したりしておきましょう。
採用証明書の気になる疑問
採用証明書の提出が期限に間に合わないときの対処法を紹介します。派遣社員の場合の手続きや、再就職先への郵送書類に添える、添え状の書き方も覚えておきましょう。
提出期限に間に合わないとどうなる?
再就職先の都合によっては、採用証明書の提出がどうしても期限に間に合わないこともあるでしょう。期限に遅れることが分かった時点でハローワークに連絡を入れれば、基本的には提出を待ってもらえます。
再就職先が遠方にあり、働き始めた後にハローワークへ足を運べない場合は、郵送でも提出することが可能とされているところがほとんどです。
ただし、失業認定申告書の提出だけは、再就職の前日までに済ませておかなければなりません。失業認定申告書の記入に再就職先が絡むことはないため、採用証明書が遅れると分かったタイミングで早めに手続きを進めましょう。
派遣社員の採用証明書の入手方法は?
再就職手当は、派遣社員でも条件を満たせば受給することが可能です。派遣社員が再就職手当をもらうケースでも、採用証明書の準備が必要になります。
派遣社員が書類の記入を依頼するのは、自分が在籍する派遣会社です。実際に働く予定の派遣先ではないことに注意しましょう。
派遣会社によっては、採用証明書の発行をホームページから直接依頼できるケースもあります。時間や手間を大幅に削減できるため、在籍予定の派遣会社が対応しているか確かめてみましょう。
添え状の書き方は?
再就職先に、採用証明書の記入を郵送で依頼する際は、添え状も一緒に送る必要があります。添え状とは、同封の書類が何なのかを説明するものであり、添え状の同封はビジネスにおける基本的なマナーです。
採用証明書の添え状には、郵送日・宛名・差出人・あいさつ文・同封書類の一覧・本文を記載します。本文では、採用証明書が同封されていることを述べましょう。
添え状は手書きでもよいといわれていますが、丁寧な字を書く自信がない人は、パソコンで作成する方が無難です。
再就職が決まったら採用証明書を提出しよう
採用証明書は、雇用保険の受給を止めるときや、再就職手当を受け取るときに必要な書類です。原則として再就職日の前日までに、ハローワークへ提出しなければなりません。
採用証明書の項目のうち、ほとんどは再就職先が記入します。提出期限も決まっているので、再就職が決まったら、時間に余裕を持って、できるだけ早めに手続きを進めましょう。