契約社員として働く場合、ボーナスの有無は気になるポイントです。契約社員は、ボーナスの支給対象なのでしょうか?支給の有無や平均支給額など、契約社員特有の事情を解説します。法律上のルールや、ボーナスをもらうためにできる行動も見ていきましょう。
契約社員にボーナスはある?
契約社員は、正社員とは異なる契約形態です。契約社員として勤めた場合、ボーナスはもらえるのでしょうか?一般的な傾向を解説します。
ボーナスの有無は企業との契約次第
ボーナスの有無は、雇用形態ではなく企業との契約によって決まります。ボーナスは給料と別の仕組みであり、最低賃金のような支給金額の決まりはありません。企業の経営状態や利益によって、金額や支給の有無が変わるのが一般的です。
「契約社員にもボーナスを支給する」と契約にあれば、ボーナスの支給対象になります。求人情報や提示された待遇・条件から、ボーナスの有無は判断が可能です。求人情報に記載がないときは、面接後に詳細な待遇や条件を提示されることが多いでしょう。
契約社員に支給する企業は少ない
契約社員は、正社員と仕事内容や労働条件が異なるケースがあります。企業の判断により支給しないところもあり、正社員と比べるとボーナスがもらえる契約社員は少ない傾向です。
契約社員は時給制・日給制・年俸制など、月給制以外の給与形態もあります。時給や日給のように正社員とは異なる給与形態では、ボーナスがもらえないこともあるでしょう。
契約社員としての勤務を考えている場合、ボーナスの有無は契約前に確認するのが基本です。ボーナスの支給金額は月給の数カ月分が一般的で、ない場合は見込まれる年収が大幅に下がります。
年俸制の場合は給料が増えるケースもある
年棒制は、年間の給料をあらかじめ決めておく契約形態です。年棒制には1年ごとの契約が多く、契約社員と同じ有期雇用契約に分類されます。
年棒制の多くは成果主義を主体とした契約であり、業績に連動したボーナスを別途設定している企業も多いでしょう。年棒とは別にボーナスが設定されていれば、給料は増えます。
ボーナスの設定がない場合は、1年分の給与を12で割るタイプ、ボーナス時期に多く配分しているタイプの2種類が主流です。支給方法は企業ごとに異なります。
法律におけるボーナスの位置づけ
ボーナスの支給に関する法律はあるのでしょうか?基本的な方向性と、ボーナスを受け取るための条件について解説します。
ボーナスに関する法律上の規定はない
「ボーナスを必ず支給しなければならない」とする法律は、現状存在しません。ボーナスがない代わりに月給を高く設定しているところもあり、年収が同等であればどちらでも問題はないでしょう。
支給の有無は企業が決定できます。正社員のみ支給対象で契約社員に支給しないというルールがあったとしても、法律上問題はありません。
ただし、日本でも「同一労働同一賃金」を政府が推奨しており、まったく同じ内容の仕事で待遇が違うケースでは、給与形態や待遇を是正する動きは出ています。
ボーナスがない場合は月給や福利厚生を重視し、応募する企業を年収で選ぶのもよいでしょう。
ボーナスを受け取れる条件
ボーナスを受け取るための主な条件は、「企業側がボーナス支給を就業規則で定めていること」「従業員側がボーナスがもらえる条件をクリアしていること」です。そのほか、企業によって業績が悪い場合はボーナス支給を取りやめる規則を定めているケースもあります。
契約社員でもボーナス支給が定められ、条件をクリアしていれば賞与請求権が発生します。しかし、もともとボーナス支給が企業で定められていない場合、請求はできません。
ボーナス支給が定められている場合、基準や算定方法も決まっています。記載されている条件を満たし、利益が出ているにもかかわらずボーナスが受け取れない場合は相談が可能です。
契約社員と正社員のボーナス事情
契約社員と正社員は、ボーナスの支給金額や待遇に違いがあります。主な違いと、ボーナスの平均支給額を見ていきましょう。
そもそも契約社員と正社員の違いは?
契約社員と正社員の主な違いは、雇用契約の期間です。正社員は無期、契約社員は有期となっています。
ただし、有期雇用契約といっても両者の合意があれば更新は可能です。更新により労働期間が5年を超えたときは、無期雇用に転換できるルールも設けられています。
そのほか、給与・福利厚生などの待遇にも違いがあります。待遇の差は就業規則や契約条件によるため、個別に確認しましょう。
ボーナスに関しては正社員と契約社員に差をつけているところもあり、契約社員は低い傾向です。
ボーナスの平均支給額に差がある場合も
契約社員と正社員のボーナスは、平均支給額から見ても差があります。契約社員を含む正社員以外の職員は、平均支給額が大幅に下がる傾向です。
大まかな分類にはなりますが、厚生労働省による賃金構造基本統計調査では正職員と正職員以外のボーナス平均支給額を公開しています。
「令和4年賃金構造基本統計調査」の「年間賞与その他特別給与額(企業規模計10人以上)」を見ると、正社員・正職員では100万3,500円、正社員・正職員以外では21万9,600円です。
契約社員は正社員・正職員以外に分類されます。契約社員以外の雇用形態が含まれるものの、約80万円の差があることが分かるでしょう。ただし、あくまで平均であり、差を設けていない企業もあります。
参考:賃金構造基本統計調査 令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 雇用形態別 | ファイル | 統計データを探す | e-Stat
同一労働同一賃金で不平等が是正される?
働き方改革によって、正規職員と非正規職員の待遇差を改善しようとする動きが出ています。不平等を是正するための「同一労働同一賃金」の考え方と、今後法律的にボーナス不支給がどう捉えられるのか、主な方向性を解説します。
同一労働同一賃金とは?
「同一労働同一賃金」は、雇用形態のみを判断基準とした待遇差を禁止する考え方です。この考え方をもとに作られた「パートタイム・有期雇用労働法」で、仕事内容や権限の範囲が同じであれば正規雇用・非正規雇用を問わずに同等の賃金が請求できるとされています。
契約社員が正社員と同じ権限を持ち、仕事内容に差がなければボーナスも同じように支給しなければならないという考え方・法律です。
しかし、契約社員と正社員の仕事内容に差があり、合理的な理由が認められる場合は賃金にも差があります。
参考:
同一労働同一賃金ガイドライン|厚生労働省
パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために|厚生労働省
ボーナスの不支給は違法になるか?
契約社員と正社員に大きな差がない企業では、同一労働同一賃金のガイドラインに従ってボーナスの支給条件や金額を是正する動きが出ています。
しかし、同一労働であるかは個別の判断となり、ボーナスの不支給だけで違法とはなりません。正社員にしか任せていない仕事があり、残業の有無や権限、責任の程度が異なる場合には、同一労働とは判断しにくいためです。
正社員と完全に同じ仕事と見なされる内容で著しい不平等があれば、違法と判断され指導が入る可能性はあります。
現時点では契約社員であってもボーナス支給があるか、月給を高く設定している求人を探すのが好待遇の仕事を見つける近道です。
給与や他の待遇も是正の可能性あり
同一労働同一賃金は、賃金だけでなく福利厚生にも関連する考え方です。各種手当や休暇制度など、あらゆる面で是正が期待できます。
契約社員が担う仕事や責任が正社員と同程度であれば、企業が是正に動く可能性は高くなります。
一方で、正社員とそれ以外の雇用形態で仕事内容に差を設けている企業も少なくありません。不合理な待遇差でなければ同一労働同一賃金の考え方は適用されず、格差は続きます。
正社員よりも責任や労働時間が少ない契約条件を希望する場合には、ボーナスの支給がないことも受け入れる必要がありそうです。
ボーナスがもらえない場合の対処法
本来ボーナスの支給対象なのにもらえないときや、契約社員であってもボーナスが欲しいときには、自分から動くのが大切です。ボーナスをもらうためにできる行動や、相談先について解説します。
会社にボーナスの支給を交渉・依頼してみる
ボーナスを支給するかどうかは、会社が決定します。決定権を持つ責任者に交渉すれば、ボーナスの支給対象となる可能性もあるでしょう。
ただし、契約社員のままでボーナスの支給が決定するとは限りません。ボーナス支給対象である正社員としての雇用に切り替わるか、同等の仕事や責任を求められる可能性もあります。
ボーナスの支給を交渉する場合は、支給対象と同等の業務をこなし責任を果たしていることを説明するか、正社員登用も視野に入れておく方がスムーズです。
公的機関に相談してみる
支給条件を満たしているのにボーナスが受け取れないときや、同一労働同一賃金の考え方に反し明らかな不平等があるときは公的機関に相談するのもおすすめです。
会社が法律を詳しく知らない場合には、公的機関からの指導で状況が改善する可能性もあります。
労働条件に関する相談は、各自治体が運営する労働局が対応しています。ボーナス以外でも、待遇や労働時間などさまざまな相談が可能です。
しかし、最初は上司や本社の担当者への相談をおすすめします。公的機関への相談は、誰に相談しても改善が見られず法律上も問題があるときにとどめた方が、周囲と揉めるリスクは少なくなります。
ボーナスを受け取れる企業に転職する
契約社員にもボーナスを支給している企業はあります。勤務先や検討している企業でボーナスが支給されないときは、ボーナスが支給される企業への転職を検討しましょう。
契約社員にボーナスを支給している企業は少なく、求人情報を探しても候補が見つからない可能性もあります。その場合は正社員として働くことも考え、転職先を検討するのがおすすめです。
ボーナスをもらうことを重視するのか、正社員とは異なる雇用形態を重視するのか、優先事項を決めましょう。
同一労働同一賃金制度に注目
契約社員は正社員に比べると、ボーナスの支給額や支給の可能性が低くなります。しかし、同一労働同一賃金の考え方により、今後は契約社員の待遇も見直されていく方向です。
しかし、仕事内容に差がある場合は、賃金差も発生します。ボーナスの支給を重視するなら、雇用形態を問わずボーナスを支給している企業に転職するか、正社員求人を探すことを検討しましょう。
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