再就職手当は、早期に再就職が決まった人に支給される手当です。「ハローワークを経由しないともらえないのでは」という声も聞かれますが、実際にそのような条件はあるのでしょうか?再就職手当の支給条件や手続き、申請方法を紹介します。
再就職手当はハローワーク以外の就職だとNG?
再就職手当は、失業手当の支給日数を一定以上残して再就職した場合に支給される手当です。ハローワーク以外のルートで再就職した場合、受給可能なのか見ていきましょう。
一定条件をクリアすれば受給できる
結論をいえば、ハローワーク以外の求人から就職した場合でも、要件さえ満たしていれば受給できます。
再就職手当が支給される条件は以下のとおりです。
- 受給手続き後、7日間の待期期間の満了後に就職、または事業を開始したこと
- 就職日の前日までに失業認定を受けた上で、基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あること
- 離職した前の事業所への再就職ではないこと
- 離職した前の事業所と密接な関わり合いがない事業所に就職したこと
- 待期期間満了後1カ月以内は、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介によって就職したものであること(自己都合による退職で給付制限がある場合)
- 1年を超えて勤務することが確実であること
- 原則として、雇用保険の被保険者になっていること
- 過去3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けたことがないこと
- 求職申込み前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと
1つでも非該当の事項があれば、手当の受給が認められません。各項目については、次項で詳しく紹介します。
参考:雇用保険受給資格者のみなさまへ 再就職手当のご案内|厚生労働省 都道府県労働局 公共職業安定所(ハローワーク) 地方運輸局
再就職手当の受給要件
再就職手当を受けるなら、各種要件の確認は必須です。詳細を見ていきましょう。
参考:雇用保険受給資格者のみなさまへ 再就職手当のご案内|厚生労働省 都道府県労働局 公共職業安定所(ハローワーク) 地方運輸局
雇用保険の被保険者である
まず必要なのは、再就職先で雇用保険に加入することです。
雇用保険の被保険者となるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
上記に該当する場合は、働く人や雇う側の意向を問わず雇用保険の対象となります。雇用形態は関係なく、正社員はもちろんパートやアルバイトも対象です。
ただし繁忙期などにのみ採用される短期雇用で、「4カ月以内の契約で就職する人」「1週間の所定労働時間が30時間未満の人」は被保険者には該当しません。
待期期間満了後の内定である
待期期間とは、雇用保険の対象外となる期間です。この期間中に再就職が決まっても、再就職手当は受けられません。
待期期間は、ハローワークに離職票を提出して求職の申込みを行った日から、通算7日間です。
また失業手当の受給資格が確定する前に就職が決まっていた場合も、再就職手当は支給されません。
就職の経路が条件に当てはまっている
ハローワーク経由でもハローワーク以外の媒体・事業所経由でも、就職が決まれば手当の対象となります。
ただし自己都合で退職した人は、待期期間後1カ月間はハローワークまたは職業紹介事業者経由での就職しか対象となりません。一方、会社都合で退職となった人はルートを問わず、いつでも手当の対象となります。
なお待期期間後1カ月でも、就職活動をすることは可能です。ハローワークと並行して、求人サイトを利用してはいかがでしょうか。
日本最大級の仕事・求人探しサイト「スタンバイ」なら、スマホで気軽に仕事を探せます。1カ月後にすぐにアクションできるよう、めぼしい応募先をピックアップしておきましょう。
失業手当の受給期間が1/3以上ある
失業手当の受給期間が所定給付日数の1/3以上残っていることも、再就職手当が支給される条件の1つです。例えば、所定給付日数が90日の人は、受給期間の残りが30日以上あれば手当の支給対象となります。
なお所定給付日数とは、その人ごとに定められた失業手当を受給できる日数です。日数は、離職の理由や雇用保険の加入期間によって異なります。
例えば自己都合で離職した人は、90・120・150日のいずれかです。一方、会社都合の人は90〜330日までとなっています。
参考:ハローワークインターネットサービス|基本手当の所定給付日数
就職先と退職前の職場が密接に関わっていない
退職した会社に出戻った場合は、当然ながら手当は支給されません。また、退職した会社ではなくても関連会社への就職も対象外となります。
例えば、退職した会社の親会社や子会社だったりグループ企業だったりする場合は、退職した会社と関連があるとみなされます。再就職手当を希望するなら、再就職先は前職と無関係の会社を選びましょう。
1年を超える雇用が確定している
1年以内の短期雇用契約で就職する場合、手当の対象外となります。また、雇用期間の定めがある派遣社員も更新が見込めない場合は対象外となります。
このほか、一定の条件をクリアしないと雇用の継続が望めない仕事に就いた場合も、手当は支払われません。例えば、契約更新に条件の決まりがある保険の外務員などは、手当が出ないと考えましょう。
過去3年間に再就職手当を受給していない
過去3年間に再就職手当を受給したことがある人は、対象外です。一般企業に就職して手当を受け取ったケースのほか、自身で起業した際に手当を受け取った場合も含まれます。
また身体障害者などの就職困難者に支給される「常用就職支度手当」を過去3年間に受給した人も、再就職手当の対象外です。
短期間での手当受給を認めた場合、手当を目的として離職や就職を繰り返す人が出る恐れがあります。手当の主旨に反するとして、制限期間が設けられています。
そもそも再就職手当とは
再就職手当とは、どのような目的で設けられている制度なのでしょうか?詳細を見ていきましょう。
早期の再就職を促すための手当
再就職手当は、雇用保険の「就職促進給付」の1つです。ハローワーク版の「就職お祝い金」のようなもので、定められた条件を全て満たして再就職が決まった人に支給されます。
金額は所定給付日数の残日数をベースに計算されるため、早めに就職を果たすほど受給できる金額が大きくなるのが特徴です。
失業手当をフル受給しようとすると再就職までの期間が空き、失業者の就職活動が不利になります。
再就職手当は失業者が感じがちな「失業手当がもらえなくなるから損」という意識を減らし、失業者の早期再就職を後押しするのが狙いです。
参考:雇用保険受給資格者のみなさまへ 再就職手当のご案内|厚生労働省 都道府県労働局 公共職業安定所(ハローワーク) 地方運輸局
失業手当との違い
失業手当(基本手当)は、雇用保険に加入していた失業者の生活を支えるために支給されます。受給のためには、ハローワークで失業の状態を確定させることが必要です。
また受給までには待期期間や給付制限期間が設定されており、これを過ぎるまでは手当を受給できません。いったん受給が始まると、受給者は「失業の認定」「受給」を繰り返しながら仕事を探す決まりです。
失業手当は「失業中の生活をサポートする手当」、再就職手当は「早期再就職を支援するための手当」です。両者の同時受給は認められておらず、就職が決まった時点で失業手当の支給は終了します。
参考:ハローワークインターネットサービス|雇用保険の具体的な手続き
就業手当との違い
就業手当も再就職手当と同様に、就職が決まった場合に支給される手当です。再就職手当と違って雇用期間の条件がなく、条件の問題から再就職手当を受給できない人にも支給されます。
例えば就業手当なら、再就職手当の対象外となる1年以上の雇用が見込まれないアルバイトやパートも対象です。また3年以内に再就職手当を受け取った人も、就業手当については支給の対象となります。
就業手当が支給される条件は、失業手当の残りの日数が所定給付日数の1/3以上で45日以上となっています。
再就職手当はいくらもらえる?
再就職手当は、就職したタイミングによって金額が変わります。計算方法を確認しておきましょう。
計算方法をチェック
再就職手当については、支給残日数が2/3以上残っている場合は基本手当の支給残日数の70%、1/3以上残っている場合は60%の金額が支給される決まりです。以下の式で算出できます。
- 支給残日数が1/3以上:基本手当日額×所定給付日数の支給残日数×60%
- 支給残日数が2/3以上:基本手当日額×所定給付日数の支給残日数×70%
なお支給残日数は、再就職日の前日からの残日数に待期期間の7日を含めて数えます。例えば、所定給付日数が270日の人が50日目で再就職した場合、残日数は220日ではなく228日です。
また基本手当日額は離職前の賃金を基に算出された、失業手当の1日当たりの支給額です。年齢に応じて上限が設定されており、毎年8月1日に改定されます。
参考:雇用保険受給資格者のみなさまへ 再就職手当のご案内|厚生労働省 都道府県労働局 公共職業安定所(ハローワーク) 地方運輸局
再就職手当の申請方法
再就職手当を受給したい場合は、ハローワークで手続きが必要です。申請の手順を見ていきましょう。
ハローワークに採用証明書を提出
採用証明書は、再就職先が決まったことを証明するための書類です。これを就職した会社に提出し、必要事項を記入してもらいましょう。
就職先から採用証明書を戻されたら、自身の支給番号を記入します。「採用証明書」「雇用保険受給資格者証」「失業認定報告書」をそろえてハローワークに提出すれば、手続きは完了です。
書類の提出期限は、原則として再就職日の前日までです。万が一間に合いそうにない場合は、後日提出する旨をハローワークに伝えましょう。
なお採用証明書は、失業手当の申請時に配布される「受給者のしおり」に含まれています。紛失した場合は、厚生労働省のHPからダウンロードできます。
就職先に再就職手当支給申請書の記入を依頼
ハローワークで就職の届出を行うと、「再就職手当支給申請書」が発行されます。これを就職先に持参し、必要事項を記入してもらいましょう。
再就職手当支給申請書の申請期限は、就職日の翌日から1カ月以内とされています。忙しい会社の場合、すぐに記入してもらえないかもしれません。焦って提出することのないよう、早めに依頼しておくのがおすすめです。
ハローワークに必要書類を提出
会社に再就職手当支給申請書の必要事項を記載してもらったら、雇用保険受給資格者証と併せて提出します。このときハローワークに求められれば、各種証明書や書類が必要です。
例えば、人によっては就職先と離職した会社が無関係であることを証明できる書類や、勤務実態の分かるタイムカードの写しなどを求められるケースがあります。万が一、ほかの書類の提出が必要になったときは、適切に対応しましょう。
知っておきたい「就業促進定着手当」
再就職手当を受給した後は、一定の条件を満たせば「就業促進定着手当」を受給できます。どのような手当なのか、詳しく見ていきましょう。
就業後のサポートをしてくれる手当
就業促進定着手当とは、再就職後に離職前よりも賃金が下がってしまったときに受給できる手当です。再就職手当の給付率に応じて、基本手当の支給残日数の40%または30%が6カ月間支給されます。
手当の対象となるのは、以下の要件を全て満たした人です。
- 再就職手当を受給した
- 再就職の日から同じ雇用主に6カ月以上「雇用保険の被保険者」として雇われている
- 再就職後6カ月の賃金の1日分の額が離職前の会社の賃金を下回っている
離職前の会社の賃金日額が下限額であった場合は、それを下回ることはないとみなされます。離職前より賃金額が下がってしまっても、就業促進定着手当の対象外です。
参考:
再就職手当を受給した皆さんへ|厚生労働省
ハローワークインターネットサービス|就職促進給付
就業促進定着手当の申請方法
就業促進定着手当の申請に必要なのは、以下の書類です。
- 就業促進定着手当支給申請書
- 雇用保険受給資格者証
- 就職日から6カ月間の給与明細または賃金台帳の写し
- 就職日から6カ月間の出勤簿の写し
申請書は、再就職手当の支給決定通知書に同封されています。上記を全て持参して、再就職手当の申請をしたハローワークで手続きを行いましょう。
申請期限は、「再就職手当の支給申請を行った日」から6カ月経過した日の翌日から2カ月間です。2月14日に再就職手当の支給申請を行った場合、8月15日から10月15日までの申請が必要となります。
また、就職日が賃金締切日の翌日ではない場合、就職日からカウントせず「就職後最初の賃金締切日」から6カ月とします。
参考:
再就職手当を受給した皆さんへ|厚生労働省
就業促進定着手当についての事業主の皆様方へのお願い|厚生労働省
いくらもらえる?計算式
支給額の計算式は、以下のとおりです。離職前の賃金日額とは、受給資格者証の1面14欄の金額です。
- 就業促進定着手当支給額=(離職前の賃金日額-再就職後6カ月間の賃金の1日分の額)×再就職の日から6カ月間内における賃金の支払いの基礎となった日数
ただし手当には上限が設けられており、必ずしも全額支給されるとは限りません。
上限の計算式は以下のとおりです。
- 上限額=基本手当日額×支給残日数×30%または40%
最後に掛ける比率は、再就職手当の給付率によって変わります。給付率が70%だった人は30%、60%だった人は40%です。
再就職手当に関するQ&A
再就職手当の受給方法について、多くの人が気になる点をまとめました。分からないことは、ここでクリアにしましょう。
申請を忘れてしまったら?
申請を忘れてしまった場合でも、就職日の翌日から2年間までは申請できます。雇用保険の給付金の時効が2年間とされているためです。ただしあまりギリギリになると、必要な書類を集めるのに苦労するかもしれません。
時間が経ってから会社に手続きを依頼しても「今さら?」といわれることも想定されます。就職後は何かと忙しくなりますが、なるべく早めに申請するのがおすすめです。
参考:申請期限が過ぎたことにより給付を受けられなかった方へ|厚生労働省
正社員以外は対象外なの?
再就職手当は、雇用形態によって区別されません。正社員はもちろん、アルバイトやパート・フリーランスでも条件を満たせば受給できます。ただし、いずれのケースでも受給の条件を全て満たすことが必須です。
アルバイトやパートにとってネックなのが、1年以上の継続した雇用・雇用保険の加入などの条件です。再就職手当の受給を希望する場合は、長期雇用に加え、雇用保険加入の条件を満たす働き方・職場を選ぶ必要があります。
一方、フリーランスは事業の継続性がカギです。ハローワークの判断次第では、受給が困難になるでしょう。
再就職手当の使い道は決まっている?
再就職手当は、早期の就職を促進するために設定された手当です。何かの目的を達成するために支給される助成金などとは異なり、使い道について定める法律はありません。受給されたお金をどのように使うかは、個人の自由です。
おすすめの使い道は、仕事に必要なアイテムや衣類をそろえることです。就職すると、生活スタイルや生活サイクルがガラッと変わることがあります。再就職手当で必要なものを買いそろえれば、新しい環境にもスムーズに適応できるでしょう。
再就職手当を申請して新しいスタートを
再就職手当は、早期再就職を促すための制度です。就職が決まったときは、基本手当の支給残日数に応じた金額が支給されます。残日数が多いほど金額も増えるので、就職が決まったらすぐに手続きするのがおすすめです。
待期期間後の1カ月後を経過して仕事を探すなら、ハローワーク以外の経路でも再就職手当の対象となるので、できるだけ多くのルートから職を探すのがおすすめです。
早めに就職活動をスタートさせることが、早期再就職のカギとなるでしょう。