法律事務所で弁護士のサポートを担当する事務職員を、パラリーガル(法律事務員)と呼びます。パラリーガルの選考において、志望動機をどのように書くと効果的なのでしょうか。志望動機を書く上で押さえておきたいポイントを、例文とともに紹介します。
パラリーガルの志望動機作成前に把握すべき点
志望動機を書くにあたり、効果的なものにするためにも、パラリーガルがどのような仕事なのか正しく理解することが欠かせません。志望動機の作成前に押さえておきたい、主な仕事内容を2つ紹介します。
法律事務所で弁護士をサポートする仕事
パラリーガルは法律事務所で働き、さまざまな事務作業を担当することで弁護士をサポートする仕事です。具体的な仕事内容として、以下が挙げられます。
- 裁判所へ提出する書類の作成・起案
- 事件に関係する資料の整理
- 所属弁護士のスケジュール管理
- 文献調査
- クライアントに対するヒアリング
- 来客への対応
訴状をはじめとしたパラリーガルならではの仕事もあれば、電話対応・来客対応といった一般的な事務仕事も担当します。専門的な仕事ばかりではない点を覚えておきましょう。
法律に関する高度な知識は要求されない
法務に関する専門的な仕事を担当する場合もあるものの、転職する段階では法律に関する高度な知識が求められないのが一般的です。未経験者を対象にした求人が数多く存在することからも分かるでしょう。
ただし、長く働くにはパラリーガルとしての業務を担当するのに必要な、専門性が求められます。実務経験を積みながら必要なスキルを習得しましょう。
パラリーガルとしての仕事に必要なスキルは、法律に関する高度な知識というよりは法律事務に関する知識です。
パラリーガルの志望動機に盛り込む内容
履歴書や職務経歴書に記す志望動機は、基本的なポイントを押さえておくことが大切です。ポイントを押さえて説得力がある志望動機を書くことで、選考に突破する確率を高められるでしょう。志望動機に盛り込みたい3つの要素を解説します。
パラリーガルを目指す理由ときっかけ
世の中には数多くの仕事がありますが、その中でなぜパラリーガルという仕事を選んだのかという点は忘れずに盛り込みましょう。自分がパラリーガルを目指す理由というよりは、パラリーガルでなければならない理由にフォーカスするとよいでしょう。
パラリーガルとして弁護士をサポートすることで、どのようにキャリアを形成したいかを含めることをおすすめします。「弁護士をサポートすることで、さまざまな悩みを抱えている人を法務面でサポートしたい」などのように書くとよいでしょう。
志望動機を書いた後に見直すときには、書いた内容が他の職種にも通用するものになっていないか確認することが大切です。
十分な事務スキルを有していること
法律事務所でさまざまな事務を担当するため、十分な事務スキルが求められます。パラリーガルは一般的な事務作業に加えて、裁判所に提出する書類を作成したり、関係者との交渉を担当したりする機会もある仕事です。
そのため、いずれは専門的なスキルが求められるようになるでしょう。しかし、転職する段階で高度なスキルが求められるケースは少ないため、まずは転職して徐々にスキルアップするのがおすすめです。
円滑なコミュニケーションができること
日々の業務では弁護士と協力する必要があるため、誤解がないように意思疎通するためのコミュニケーションスキルが欠かせません。状況によっては、弁護士と依頼者の仲介を担当するケースもあります。
そのため、双方の意図を正しく把握して、明確に伝えることが大切です。コミュニケーションスキルを一朝一夕で習得するのは難しいため、転職前から常に意識しましょう。
他者とのコミュニケーションが苦手な場合は、パラリーガルとして活躍するのは難しい可能性があります。
パラリーガルの志望動機で避けたいNG要素
実際に志望動機を書く上では、避けたいNG要素がいくつか存在します。特に注意したいNG要素を2つ確認しましょう。志望動機が書き上がって見直すときは、NG要素を避けて効果的なものに仕上がっているかチェックすることが大切です。
パラリーガルの仕事内容を勘違いしている
パラリーガルという職種について正しく理解していないと、仕事内容を勘違いした状態で志望動機を書いてしまう可能性があります。「法律に関する知識を深めて困っている人を助けたい」という志望動機は、上記に該当するでしょう。
弁護士の選考ではよい志望動機ですが、パラリーガルはあくまでもサポートであることを考えると、適したものではないといえます。上記の志望動機を見た採用担当者は、「弁護士を目指せばよいのではないか」と考えるでしょう。
志望動機では、弁護士をサポートする仕事を通して、何を実現したいかを示すことが大切です。
記述内容に具体性がない
当たり障りのない内容だけを記し、具体性がない志望動機になってしまうという状況もありがちです。採用担当者側から見ると、具体性がない志望動機はなぜパラリーガルを目指すのか、応募先を選んだ理由はどのようなものなのかが分かりません。
例えば「社会貢献できる仕事に携わりたいと思い、パラリーガルを志望した」という理由は、上記に該当します。
社会貢献できる仕事はパラリーガルに限らず、どのような職種にも当てはまるためです。そのため、パラリーガルの仕事内容である法律事務にフォーカスする意識が欠かせません。
基本的な志望動機の書き方
具体的で説得力のある志望動機を書くために意識したい、4つのポイントを紹介します。志望動機を書くときと書き上がって見直すときは、以下のポイントが簡潔かつ明確に盛り込まれているかチェックしましょう。
結論を簡潔かつ明確に記述する
志望動機を書く際にはPREP法を意識し、最初の文章で結論を明確に示しましょう。履歴書や応募書類は、ビジネス文書の一種であるためです。ビジネス文書ではPREP法が基本とされており、まずは結論を明確に示すことが大切と考えられています。
志望動機で書かなければならない結論は、自分がパラリーガルを目指す理由と応募先を選択した理由です。この2つを冒頭部分で伝えることで、採用担当者に響きやすい志望動機になるでしょう。
経験やスキルをどう発揮できるかアピール
続く部分では、自分の経験やこれまでのキャリアを通じて発揮したスキルをアピールします。ここで意識しなければならないポイントが、自分を採用するメリットを相手に伝えることです。
経験やスキルを生かせると言及するだけでは不十分で、転職後にスキルを発揮して、どのように応募先に貢献できるかを盛り込まなければなりません。
「法務部での勤務経験を生かして弁護士をサポートし、より業務を効率的に進めることに貢献したい」など、具体的な経験を交えて記述すると説得力が高まります。
応募先でなければならない理由を示す
世の中には数多くの法律事務所があるため、なぜ応募先の法律事務所を選んだのかを明確に示しましょう。法律事務所には、交通事故に強かったり債務整理に強かったりと、それぞれ特徴があります。
応募先の法律事務所が何を得意分野としているのかを確認し、うまく絡められると効果的です。
法律事務所の特徴や得意分野を志望動機に絡めるには、念入りな企業研究が欠かせません。法律事務所の公式サイトなどを隅々までチェックし、どのような事務所なのかを正確に把握しましょう。
将来的なキャリアプランを簡単に伝える
パラリーガルとしてどのように成長したいかを含め、キャリアプランを含めることも忘れないようにしましょう。「パラリーガル認定資格を取得し、いずれは部門のリーダーとして活躍したい」などのように、向上心を感じられるものにすると効果的です。
パラリーガルとして長期的に働き、専門性を高めたいと考えているのであれば、ある程度のキャリアプランを思い描いていることでしょう。自分が考えているキャリアプランを実現するために転職先で何ができるかを考え、簡潔に盛り込みます。
パラリーガルの志望動機の例文を紹介
上記で紹介したいくつかのポイントを踏まえた、志望動機の例文を紹介します。効果的な志望動機とNGな志望動機の例を見ていきましょう。それぞれなぜ効果的・NGなのかも併せて解説します。
効果的な志望動機の例文
私は債務整理を得意分野としている貴法人で弁護士をサポートし、多重債務などで悩んでいる人をサポートしたいと思い志望いたしました。前職では企業の法務部で事務作業を担当しており、法律事務に触れる機会が多くありました。
法務部では、顧問弁護士との折衝やスケジュール調整なども担当しており、その経験を生かして、効率的に業務を進められるように業務をサポートしたいと考えています。
また、金融機関で融資業務を担当していた経験もあり、そこで培った金融に関する知識を生かして活躍できる職場であるとも感じました。将来的にはパラリーガルとしての知識を深め、認定資格を取得してリーダーとして活躍することを目指します。
上記の例文では、なぜ債務整理を得意としている応募先の弁護士法人を選んだのか、経験やスキルをどのように生かせるのかが簡潔に盛り込まれています。
採用担当者は、「経験やスキルを発揮してくれそうだ」と感じるでしょう。将来のキャリアプランからも向上心を感じられ、効果的といえます。
NGな志望動機の例文
私は法律に関する専門知識を習得し、さまざまな悩みを抱えている依頼者の問題解決をサポートできればと思い、貴法人のパラリーガル職に応募いたしました。
転職後は法律に関するより高度な知識を学び、さまざまな案件に対応できるようになりたいと考えています。
上記の例文を読んだ採用担当者は、法律に関する専門知識を生かして依頼者をサポートしたいと思っているのであれば、弁護士を目指せばよいと感じます。なぜパラリーガルなのかが見えないだけでなく、応募先を選んだ具体的な理由も分かりません。
パラリーガルは法律を使って依頼者を助ける仕事ではなく、弁護士をサポートする仕事であることを意識しましょう。応募先を選んだ理由も、忘れずに盛り込む必要があります。
ポイントを押さえた志望動機を作ろう
パラリーガルは、法律事務に関するさまざまな知識・スキルを生かして弁護士をサポートする仕事です。パラリーガルを目指す人は、職種について正しく理解した上で、効果的な志望動機を書く必要があるでしょう。
さらに、自分に合った職場を探すには、それぞれの法律事務所の特徴を正しく理解し、自分のスキルや経験を生かせそうなところを探すことも大切です。
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