一口に資格といっても、ジャンルや難易度はさまざまです。20代の転職やキャリアアップに有利なのは、どのような資格でしょうか?取得のメリットや選び方のポイントを踏まえながら、おすすめの資格を厳選して紹介します。
「20代」転職の幅を広げる資格
20代はポテンシャル採用が多く、資格や実務経験は必ずしも必須とはいえません。ただし、資格があると応募できる求人数が増えたり、従事できる仕事の幅が広がったりする可能性が高くなります。転職時に役立つ資格には、次のようなものがあります。
普通自動車運転免許
普通自動車運転免許には、第一種免許(普通自動車第一種運転免許)と第二種免許(普通自動車第二種運転免許)があり、以下のように区別されています。
- 第一種免許:日本の公道で自動車や二輪自動車などを運転できる免許
- 第二種免許:バスやタクシーなど、旅客自動車運送事業用の自動車を運転できる免許
免許があると、車の運転が必要な求人に応募できるのがメリットです。地方で営業職に就くのであれば、第一種免許はほぼ必須と考えましょう。
免許を取得する方法には、「警察の運転免許試験場で学科試験・技能試験を受ける方法」と「指定自動車教習所に通った後、運転免許試験場で学科試験を受ける方法」があります。
TOEIC
外資系企業や英語を日常的に使う職場では、TOEICのスコアが重視される傾向にあります。TOEICは、英語のコミュニケーション能力を診断するテストで、アメリカの非営利団体「Educational Testing Service(ETS)」が開発しています。
テストの種類は複数ありますが、受験者が多いのは「TOEIC Listening&Reading Test」です。リスニングとリーディングの能力を測る内容で、合計スコア(10~990点)で評価されます。
仕事で英語力をアピールできるラインは、600点以上が一般的です。仕事で英語を使わなくても、スコアで努力を示せるでしょう。
ITパスポート
ITパスポート(iパス)は、ITに関する基礎知識を証明できる国家試験です。対策学習では、企業活動・経営戦略・会計・法務といった知識も身に付くため、ITの知識が必須ではない部署への就職・転職でも役立ちます。
2022年度の試験の応募者は78%が社会人で、うち43%が20代でした。非IT系企業に勤める人が社会人全体の82%を占めており、IT初心者でも比較的取り組みやすいといえます。
2023年10月度の合格率は53.7%(社会人57.2%・学生41.5%)です。しっかりと受験対策をすれば、合格は十分に可能でしょう。
「20代」事務系への転職に役立つ資格
20代に人気の職種の1つが、事務職です。事務職に必須の資格はありませんが、業務に関連する資格があると、転職に有利になります。ポジションに対して複数の応募者がいた際は、資格の有無が採用の決め手になるかもしれません。
日商簿記
日商簿記は、日本商工会議所および各地商工会議所が実施する簿記の検定試験です。原価計算初級・簿記初級・3級・2級・1級があり、希望の等級から受験できます。2023年度における合格率(統一試験)は、以下の通りです。
- 3級:34.0%
- 2級:21.1%
- 1級:12.5%
3級を取得すれば、簿記の基本知識を備えていることを証明できます。2級の有資格者は、転職時に有利になるほか、社内での評価アップも期待できるでしょう。1級の有資格者は、極めて高度な知識を有する人材として、大企業の経理部門でも重宝されます。
MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)
MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)は、Word・Excel・PowerPointなどのMicrosoft Office製品のスキルを証明する資格です。
Word・Excelの試験科目は、一般レベルと上級レベル(エキスパート)に分かれており、どちらもコンピューターを使った実技試験(CBT)でスキルを判定します。
事務職に資格は必須ではありませんが、MOSを有していれば就職・転職時に事務スキルを明確に示せるのがメリットです。対応学習によってスキルがアップすれば、日々の作業効率が向上するでしょう。
参考:MOS公式サイト-マイクロソフト オフィス スペシャリスト
中小企業診断士
中小企業支援第1条に基づき、経済産業大臣が登録する国家資格です。有資格者は、中小企業の経営課題に対し、専門的見地から経営診断・助言を行えます。企業と行政、企業と金融機関をつなぐパイプ役として、幅広いシーンで活躍できるでしょう。
中小企業診断士になるには、第1次試験に合格する必要があります。合格後は、以下のいずれかのルートを経て「中小企業診断士登録」を行います。
- 第2次試験に合格後、実務補習を修了するか、15日以上の実務に従事する
- 中小企業基盤整備機構または登録養成機関の養成課程を修了する
2022年度の合格率は、以下の通りです。
- 第1次試験:28.9%
- 第2次試験(筆記試験・口述試験):18.7%
参考:中小企業診断士資格取得を目指す方に中小企業診断士試験のご案内です
「20代」医療・福祉系の転職に役立つ資格
少子高齢化が進む日本では、医療・福祉に携わる人材が不足しているといわれています。長く安定して働きたい人は、医療業界・福祉業界への転職を検討しましょう。20代のうちに関連資格を取得しておくことで、着実にキャリアを積めます。
医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)
医療事務技能審査試験は、診療報酬請求事務や受付業務といった、医療事務全般のスキルを審査する試験です。医療事務関係の試験としては最大規模で、1974年にスタートしました。
試験は医科と歯科に分かれており、医科の試験は毎月行われています(年12回)。学科・実技I・実技IIの3部構成で、実技ではコミュニケーション(医事課患者応対)や診療報酬請求業務などのスキルが審査されます。
年齢・学歴の制限は設けられておらず、医療事務の実務経験がない人でも受験可能です。
参考:医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)|資格試験/技能認定|日本医療教育財団
介護福祉士
介護業界における唯一の国家資格が、介護福祉士です。資格がなくても介護に携われますが、資格があればできる仕事の幅が広がる上、給与アップも期待できます。
日本では、介護業界の人手不足が深刻化しています。介護のプロフェッショナルである介護福祉士は、引く手あまたといっても過言ではありません。
受験資格を得る方法は、4種類あります。社会人の場合「指定の養成施設を卒業するルート」か「3年以上の実務経験を積んで、所定の研修を受けるルート」を選ぶ人が多いでしょう。2023年度の合格率は84.3%です。
参考:[介護福祉士国家試験]受験資格:福祉系大学等:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
保育士資格
日本では少子化が進んでいますが、保育士の数は不足しているといわれています。共働きがスタンダードになりつつある現代、今後も保育士の需要はなくならないでしょう。
保育士資格は、一度取得したら一生涯有効で、特別な理由を除いて更新の必要がありません。資格の取得方法は、「厚生労働大臣が指定する保育士養成施設に通う」と「保育士試験に合格する」の2パターンがあります。
受験資格はおおむね短期大学卒業程度ですが、一定の要件を満たせば、最終学歴が中卒・高卒の人でも受験可能です。試験は筆記試験と実技試験で、筆記試験に合格した人が、実技試験に進めます。2022年度の合格率は約29.9%です。
参考:保育士試験を受ける方へ|一般社団法人全国保育士養成協議会
「20代」金融・不動産系の転職に役立つ資格
金融業界や不動産業界で活躍するには、多くの専門知識・経験が必要です。関連資格があれば転職で有利になる上、就職後のキャリアアップや昇給も期待できるでしょう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定
ファイナンシャル・プランニング技能検定(以下、FP検定)は、ファイナンシャル・プランナー(以下、FP)を目指す人のための国家資格です。
FPは、人生の夢や目標を実現したい個人の相談者に対し、経済面からアドバイスをする「家計のホームドクター」です。
資格を取得すると、金融・保険・不動産業界などへの転職でアピールできるほか、専門知識を生かし、自身の収支管理の振り返りもできます。
FP技能検定の実施機関は、「日本FP協会」と「一般社団法人金融財政事情研究会」です。3級・2級・1級の3つの等級があり、3級は年齢・学歴・実務経験の有無にかかわらず、誰でも受験できます。
以下は、2023年9月度に日本FP協会で実施された試験の合格率です。
- 3級:(学科)74.78%・(実技)77.67%
- 2級:(学科)53.54%・(実技)52.02%
- 1級:(実技)96.2%
なお、日本FP協会が実施するFP資格には、FP技能検定のほかに、民間資格の「CFP資格」と「AFP資格」もあります。
参考:FP技能士の取得者数 及び 試験結果データ | 日本FP協会
宅地建物取引士
宅地建物取引士(宅建士)は、宅地建物取引業法が定める国家資格です。宅地建物取引業者が行う不動産の売買・交換・貸借などの取引に際し、双方の間で公平な取引が行われるようにチェックを行います。
業務独占資格でもあり「宅建業法第35条に定める重要事項の説明」「重要事項の説明書面への記名」「同法第37条に定める書面への記名」は、宅健士のみしか行えません。
宅地建物取引士国家試験は、50問・四肢択一式による筆記試験です(登録講習修了者は45問)。2022年度の合格率は17.0%でした。
日本国内に居住する人であれば、年齢・学歴に関係なく受験できますが、合格後の資格登録には一定の要件が設けられています(宅建業法第18条)。
参考:一般財団法人 不動産適正取引推進機構 | 宅建試験 | 宅建試験の概要
20代で資格取得するメリットと選ぶポイントは?
資格を取得すると、特定の資格が必須とされている求人に応募ができます。仕事の選択肢が広がるほかに、どのようなメリットがあるのでしょうか?資格選びのポイントも解説します。
資格取得はスキルや努力の証明になる
宅地建物取引士や保育士資格のように、資格がなければ従事できない仕事がある一方で、医療事務や一部の介護職は必ずしも資格を必要としません。
「資格よりも実務経験の方が大事」「資格は意味がない」という意見もありますが、20代は社会経験が浅いため、就職・転職では資格がスキルや努力の証明になります。
ポイントは、「資格を生かしてどのように企業に貢献できるか」をしっかりとアピールすることです。同じ条件の応募者が複数人いた場合、無資格者よりも有資格者の方が選考が有利に進む可能性が高いでしょう。
資格の種類と難易度を確認するのがポイント
資格の種類は、国家資格・公的資格・民間資格に大別されます。国家資格は難易度が高いものが多く、受験要件・登録要件が細かく設定されているケースが少なくありません。
転職・キャリアアップに役立つといっても、無計画で目的のない資格取得は時間の無駄です。まずは、自分の将来の目標・キャリアプランを明確にした上で、以下のポイントをチェックしましょう。
- どのような種類の資格が役立つのか
- 受験要件や登録要件を満たせるか
- 難易度はどれくらいか
- 取得までにどのくらいの日数がかかるのか
仕事と勉強の両立が必要な人は、試験日から逆算し、無理のない勉強計画を立てる必要があります。
20代は資格取得とポテンシャル採用を狙おう
社会経験・実務経験が少ない20代にとって、資格は自分のスキルや努力を証明する武器になります。資格取得がゴールにならないように、目的・目標を明確した上で勉強に励みましょう。
20代は、30代・40代に比べ、若さやバイタリティーをアピールしやすいのがメリットです。多くの企業は、20代のポテンシャル採用に力を入れているため、資格がなくても就職・転職は成功しやすいといえます。
資格の有無や経験にこだわらず、気になる求人があれば積極的に応募しましょう。仕事探しには、希望する条件で検索できる求人検索エンジン「スタンバイ」の利用がおすすめです。